素人目線の映画感想ブログ

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アルキメデスの大戦/最後のカイの判断は、出しゃばりです。 


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 アルキメデスの大戦
 (2019年 日本映画)  
 84/100点



<後半ネタバレします。>


SNS上での意外な高評価につられて鑑賞してきました。悪名がちらほら聞こえる山崎貴監督作品。確かに、『永遠のゼロ』のラストで、主人公に意味不明な笑みを浮かばせたのを観た時以来、私にとっても、良い印象はありません。

で、本作ですが。

確かに、面白かった。結構、食い入って観ました。でもなんか…、まぐれな気もしますけど(ひどい言い方)。

アルキメデス2


なんたって、主人公:櫂 直(かい ただし/菅田将暉)が面白いです。第二次大戦開戦直前の時代に、これほどマイペースな理系キャラクターは斬新。まるで未来からタイムスリップしてきたかと思えるほど、時代との空気感が違います。

軍人を前にして、「軍人が嫌いだ」と言い放つほど、思ったことを全部口に出すタイプ。何でも巻き尺で測るのは誇張だとしても、研究になると周りが全く見えなくなる没頭ぶり。カイの言動・行動が笑えます。劇場内に、結構笑いが起きてた。

もちろん、実際こういった人物はいたはずですが、この時代の人物設定といえば、堅物な軍人か真摯な軍人か粗暴な軍人ばかりだったので、めっぽう斬新な気がします。

これは。

完全に『風立ちぬ』の二郎を思い起こさせます。人への気遣いに興味がないところとか、「美しい」という口癖など、共通項が多いです。二人とも、「戦争」は嫌いでも、「美しき造形物」に対する執念が並外れているのでした。その対象が、たまたま「戦争の道具」だったということ。

本作は、主人公・カイと山本五十六が、戦争に不必要な「大和(ヤマト)」の造船を、数字の力で阻止しようとする物語です。

で。

「大和」を作りたがっている人たちは、「大和」の造形に魅了されています。

方や、「大和」の造船を阻止したい五十六は、「合理的」です。戦争の戦略として有効な「母艦」を作りたいと躍起です。

五十六は、報告されている「大和」の造船費用が過小であると見抜き、具体的な値段をカイに計算させようとするわけです。

カイ自身は、「戦争」自体が計算上無駄である(絶対に勝てない)として、戦争を導きかねない「大和」の造船阻止に協力します。

けれど、カイはそもそも、「大和」派と同じ。二郎と同じ。「美しさ」に魅了される男なわけで…。

このあたりのねじれが、終盤の展開の「伏線」として活きてきます。

が。

アルキメデス3


<結末のネタバレします。>


最後に出てくるのは、「日本人の戦意を削ぐためにこそ、大和が創られるべきなんだ」というどんでん返しな「理屈」。

一瞬、確かに「面白いな」とは思いました。けれど、最後の最後でそれに加担したカイは、間違っていると思います。第一、設計士もカイも、大和に乗船する若者に対し、あまりに失礼だよ。

もちろん。

彼らの犠牲に、直接カイの責任はありません。ただ、「空母」に決まっていたものを「大和」に変えさせたのは、奢ってます。お前が判断することじゃない、と思う。

少なくとも、そのカイの判断が納得できるほどの「理屈」とは思えなかった。だって、その「理屈」、あくまで「推論」レベルだもの。

邦画にありがちなんです。「説得力」は乏しいのに、「主人公の判断だから正しいのだろう」というごり押し。

うーん。

だって、そもそも。

結局、日本人は上手に負けていないじゃない。

それに。

歴史に「たられば」はご法度だけど。
もしかしたら、五十六の狙い通り「空母」にしていれば、史実は変わっていたかもしれませんよ。勝てずとも、短期決戦で善戦し、有利な条件で休戦協定を狙えたかも、しれませんよ。

何度も言うけど、「空母」か「大和」か、カイが判断することじゃない。カイは言われた通り、「大和」の造船費用の計算だけしていれば良かったんです。

アルキメデス4


その他。
カイが計算をする時に画面に数字が表れる演出が、推理物のテレビドラマみたいでダサい…。菅田将暉がドヤ顔で、「犯行手口を算出し、犯人への解を得ました」って決めセリフ言いそう。

上官に挨拶もしなかったカイが、急に土下座しだすし、他人や日本に興味がない様子だったのに、急に日本が戦争になることに恐怖を感じるし…。キャラクターの心境の変化が、あまり巧く描かれていない。つまり、キャラクターがブレてるんです。

その点、『風立ちぬ』の二郎は一貫してましたよ。二郎は、戦争にも人にも、最後まで興味なかったもんね。それでこそ本物のヘンタ…、天才ですよ。カイも、そこまで突き抜けたキャラクターであってほしかったな。

それから細かいんですけど。
序盤、母艦から戦闘機が飛ぶたびに、五十六がニヤリニヤリするんです。ちょっと気になったなあ。山崎貴監督は、「無駄なニヤリ」をさせ過ぎ。

アルキメデス5


変な部分はご愛敬と気にしなければ、キャラクターの面白さで結構面白く見られます。超変人のカイと、側近である超常識人の田中正二郎(柄本佑)の掛け合いが、めちゃくちゃ楽しい。柄本佑がいい!!

求める数字に近づいていく過程に、爽快感もあります。天才が崖っぷちでさらに能力を開花させる場面が、『サマー・ウォーズ』の超絶暗算シーンのようでカッコいい!!

五十六の人物像も良かったですね。失礼極まりないカイを許容する懐の深さに痺れます。そういう風に一歩引いて、俯瞰して見る力がある五十六は、優れた軍師なんだと思います。

だからこそ。

やっぱり、「母艦」を作ってあげて欲しかったなあ、と思うんだけどな。

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Posted on 2019/08/18 Sun. 16:25 [edit]

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