素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

アバウト・タイム 人類史上、最高のスペック。 


 poster2.jpg
 アバウト・タイム
 (2013年 イギリス・アメリカ合作映画)  75/100点


タイムトラベルものは大好物です。
『ある日どこかで』『時をかける少女』『恋はデジャブ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などなど。海外小説『リプレイ』も大好きです。
取り戻せるはずのない時間を遡って過去の失敗をやり直す、というのは人類最高の夢であると思います。
そういった物語は大抵、心の底から這い上がってきた後悔の念や、取り戻したい強烈な渇望が渦巻いており、対して、あがらい難き残酷な運命が立ちはだかったりして、とても切なかったりするのです。

本作もまた、時折切ない人間ドラマが展開されてはいるのですが。
どっこい、そんなこと以上に人間賛歌の愛の物語が、これでもかと爽やかに紡がれているのでした。

本作を観れば、きっと心から晴れやかな気分になって、人生の素晴らしさを再確認できることでしょう。

もとからポジティブな人ならね!

・・・そう、またしても持ち前のひねくれた見方が災いし、本作にノレない自分がいたのでした。
『LIFE!』みたいな、生きるって素晴らしいね! って手放しに油断しまくった映画が苦手なもんで…。
本作の感想をネットで探してみましたが、ほとんどのブログでは拍手喝采の高評価ですよ。
分かる。分かります。
本作は愛に溢れ、優しさにまみれ、輝かしいほどの素敵な物語なのです。
これを批判的に見ることが、どれほど野暮であることか。

では。

あらすじは、「ティムは21歳になった時、父親からタイムトラベルの能力を教わる。ティムはその能力を使って彼女を作ろうとするが、うまくいかない。ロンドンで弁護士として働き始めたティムは、あるパブでメアリーという女性と運命の出会いを果たす…が、知人を助ける為にタイム・トラベルを用いたら、メアリーとの出会いがなかったことになってしまって…」というお話。

アバウト


タイム・トラベルの手法がとっても簡単です。
暗い所で、戻りたい場面を思い浮かべながら拳を握るだけ…。しかも何度でも可能。未来には行けませんが、過去に行っても元の時代にはすぐ戻れます。若干のリスクが示されますが、大したものではありません。
テイムは、人類史上最高のスペックをお手軽に手にしたのです。

…。

もともと、『素敵な家族』『裕福』『職業・弁護士』『容姿端麗』という恵まれた人生環境を保持している主人公が、さらに鬼に金棒なスペックを携え、人生をほいほいと順調に進めていく物語の、いったい何に共感すれば良いというのか…?

ただ、本作の素敵なところって、ティムが妻となるメアリ―との出会いに、この能力を使っていないところですよね。それどころか、知人を助ける為にタイム・トラベルをしてしまった結果、メアリーとの出会いがなくなって大変なことに。夢の中で、当たりの宝くじを手に入れて目が覚めた時に、(当然)クジが手元になかった時くらいのショックです。ティムはメアリーと再会すべく、能力を駆使しして「出会い」を取り戻そうと奮闘します。この場面がとてもワクワクしましたよ。思わず応援してしまいましたよ。ゆえに、ティムは自分の幸せに、決してこんな能力を使っているわけではない…なんてことはありましぇん!

「ティムの人生の成功に、実はタイム・トラベルの能力は直接関わっていない」 …という声が四方から聞こえますが、そんなことはないでしょう! タイム・トラベルの能力があるからこそ、「何度でもやり直せる保険」が効いた人生だからこそ、一切の緊張もなく、彼は悠々と物事に関わることができているのではないでしょうか。それだけでも、かなりのアドバンテージです。げんにティムは、タイムトラベルを用いて1日の出来事を落ち着いて観察すれば、それはそれは素晴らしい部分に気づくのだ…と言っています。そんなことが出来る人生は、なんと楽なものでしょう。人生、取り返しのつかない後悔の連続のはずなのに、一切そういったリスクを排除できるのですから。そんなティムが偉そうに、映画の終盤で「タイム・トラベルを使わなくたって幸せになれるのだ」と言い放ちますが、散々タイム・トラベル能力を用いてメアリーを虜にしてきたくせに、どの口が言うたものか、とあきれたものでした。

あばうとたいむ


そう、本来この能力は反則技なのであります。確かにメアリーとの出会い自体には能力を使っていませんが、事前にメアリーの気に入る話題を知っていたし、素晴らしい初夜を演出することができたし、より良いプロポーズの瞬間を目指して何度もリトライしていたではありませんか。ある意味、これは「詐欺」に近いですよ。そんなことはない! と言うならば、堂々とメアリーにこのことを告白すべきだと思いますよ。ティムよ、おぬしにそれが出来ると申すか。どうなんじゃ、答えてみい!

もし、仮にティムの幸せにタイム・トラベル能力が関わっていないと言うならば、なおさらのこと、もとから幸せ街道まっしぐらな主人公の物語の、一体何を楽しめばいいというのか…?
金持ちにどんどんお金が集まって来るように、もとから幸せな人間に、さらに幸せな能力がやってきたという物語。
私は、大した波瀾のない自慢話のような物語には、一切興味が持てないのでした…。

もちろん、終盤で巻き起こる家族との物語の中で、この能力を持っているがゆえのティムの葛藤には、考えさせられるものがありました。やり直せるはずだと思っているからこそ、やり直しが効かない事態に、ティムは混乱してしまうのです。
父親だけがこの能力の存在を知っているという設定はいいですね。だからこそ、ティムのある行動の意味に気づいた父親の悲しみが胸を打ちました。そこは、よかった。

あばうとたいむ3


それと、メアリーを演じるレイチェル・マクアダムスの魅力が全開です。パッツンにした風変わりな前髪も、ちょっと人付き合いが苦手な所もいいね。おまけに家庭的な優しい愛に溢れていて、爽やかです。『ミッドナイト・イン・パリ』では、夫の気持ちをないがしろにする妻の役だったものだから、この180度違う役柄にピッタリとハマるなんて驚きでした。そこは、とっても見所だったかな。

思えば、人生とは1回こっきりのギャンブルです。その場その場の選択肢一つで、大きく人生が変わってしまいます。特に男は…「男なら勝負しろ」といった世の中に蔓延したプレッシャーにせっつかれ、無理に行動を起こしてみてはコテンパンにされて後悔に頭を抱えるものです。
そこまで大きな問題ではなくとも、やり直したいことは頻繁に起きます。
財布を失くしたり、自分の不注意で子供が怪我をしたり、余計なひと言で商談を失敗したり、思わぬ準備不足によるミスなんか日常茶飯事でしょう。
私が、もしこの能力を持っていたら、絶対に使いまくります。
ティムが、本当に「もうタイム・トラベルを使わない」で済んでいるのならば、その人生には「リアル」が欠けていると思います。それでいて「愛と人生のガイドブック」なんてキャッチコピーには、寒気がするのでした。
とはいえ、逆にティムが能力を使いまくったところで、それもまた問題です。
人は失敗を重ねるごとに反省し、工夫を凝らし、勉強し、たくましく成長するものだからです。
ティムのような能力をもつことは素晴らしいのだけれども、やはりそれは「人生の怠惰」を招くだけだと思います。どちらにせよ、失敗のないファンタジーな人生を送るティムは、決して成長することもなく、いつまでも大甘な顔つきをして生きていくのだと思ってしまったのでした。

あばうとたいむ2

あばうとたいむ4


…。

なぜこんなにも厳しい事を言いたくなったのかというと、本来ならば、こういった映画では厳しい(あるいはホロ苦い)結末が求められてほしかったからです。『ドラえもん』だってそうです。便利な道具を用いた主人公は、必ず痛い目に遭うようになっています。「便利なものに頼ってはいけない」という原作者/藤子・F・不二雄のメッセージが込められています。本作には、それがないから、観ていて何とも歯がゆい思いがしたのでした。(昔『ジャンパー』というハリウッド映画がありました。瞬間移動を手にした主人公が、最後まで好き放題やって終わる映画。あれを思い出しました)

ちょっと辛らつな感想になり過ぎましたけれど…素直に観れれば、素敵な映画ですので…。
ということで、今日はこの辺で。


    

記事を読んで頂きありがとうございました。
↓よかったら、クリック1票お願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
<スポンサードリンク>

関連記事

Posted on 2015/09/21 Mon. 22:52 [edit]

TB: 0    CM: 2

21

コメント

同感 

こんにちは。
評判は良かったようですが、私もこの映画は素直に良かったとは思えませんでした。なんか、え?また?都合良過ぎる!と・・(-_-;)

感想を読んでちょっとスッキリしました~

URL | ソリュース #- | 2015/12/13 13:58 | edit

ソリュース様 

コメントありがとうございます。
SFファンタジーなんで、ある程度飲み込まないといけないとは思うのですが、
あまりに綺麗にまとめようとしている様子が嫌だったのかな…。

便利過ぎるものを使ったら、かわりに何かが狂うものなんだと思うのです。

URL | タイチ #- | 2015/12/13 23:24 | edit

Comment
list

コメントの投稿

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→http://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/268-69031974
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Trackback
list