素人目線の映画感想ブログ

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怒り/「信じないこと」は、悪いことか。 


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 怒り
 (2016年 日本映画)  
 90/100点



久しぶりの更新です。

またまた凄い邦画を見た…。

本作の物語・構成は、一風変わっています。
ある夫婦惨殺事件の犯人では? とおぼしき人物が「3人」登場します。鑑賞者の私たちは、この3人の内、果たして誰が「犯人」なのかを、固唾を飲んで見守ることになります。

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でも、決して捜査や推理が「犯人」に近付いていくようなサスペンスではありません。
そもそも、彼らは物語上「容疑者」ではありません。
その上、事件に直結するような「疑わしさ」など、ほとんど見られません。

あるのは。

「過去の素性が不明」で、「何となく犯人に似ている」 
…ってこれだけなんです。

けど。

それだけで、周囲の人々は次第に「眉をひそめ」だすのです。
「あいつ…おかしくない? もしかして、犯人じゃない?」

本作は、そんな人の心の「疑心暗鬼」を、オムニバス風の物語であぶりだします。

これが、けっこうエグい。皮肉なことに、「信じる」ことの脆弱さも同時に描いてしまう意地の悪さ。
ちょっと…、ハネケの映画のような「意地の悪さ」なんです。

だから、鑑賞にはそこそこ精神力がいります。見終わった後、ちょっとぐったり。

それでも。

一見の価値ありと思わせるのは、なんたって渡辺謙を初めとした豪華キャスト。
それも、「芝居で魅せられる」人たちばかり。

中でも、広瀬すずの体当たりの芝居は驚いた。ちょっと今まで、アイドル俳優のように見誤っていたかも。

それから。
宮崎あおいと渡辺謙の、大物共演が凄い。なんか親子を演じながらもバチバチ芝居合戦してるみたいです。オーラとオーラがぶつかってて、一足先に『ゴジラVSキングギドラ』を見たような気分だもの(?)

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それから…。
妻夫木聡って、泣き芝居専門俳優でしたっけ?
なんか、いっつも、どの映画でも泣き芝居している気が…。

で、容疑者の3人ですが。
森山未来、 綾野剛、松山ケンイチ。凄まじい布陣です。
そして、犯人の顔写真に3人とも微妙に似ているという、計算の巧さ。
彼らが、後半から加速して「怪しさ」を増幅させていき、誰もかれもが犯人だと思わせるようになっていきます。
そうなると、もう目が離せません。その辺りの展開も良かったです。

あ、それから。「素性が不明な男はモテる」、ということも本作で判明しましたのでご報告しておきます。

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そうそう。広瀬すずの相手役の少年(佐久本宝)も、えらい巧かったです。地味なのかと思わせ…、豪華キャストに負けない存在感残すポテンシャル!

さて。

本作で描かれる「怒り」とは…。
実は、これがちょっと最後までよく分からなかった気がします。
犯人の動機となる「怒り」は、果たして何に向けられていたのか。
世の中なのか、被害者なのか、自分自身だったのか。
ただ、個人的には、「怒り」が犯行の本当の動機とは思えません。
だって、そもそも…。

犯人が自身の犯行動機として、「怒」と文字を残すなんて、あまりに安易な気がします。

犯行動機は…、どうしようもない「衝動」とか…、たぶん、容易に解明できるものではないのだと。
『ヒメアノール』とかで、古谷実が時折描く「運命的な不条理」に基づいているのだと思います。

だって、物語終盤で犯人が見せた「最低さ」は、まー胸をえぐったものです。もはや「怒り」とか言ってる場合じゃない。「だめだこりゃー」だもの…、いかり…、だけに。

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ところで。

ラストは、ぐちゃぐちゃに泣いたねー。
一点の救いが、強烈に効いたねー。
頼む―! 帰ってきてくれー! 電話を切らないでー! とまんまと同化してしまった。

というわけで。
心をえぐるけど、いつまでも印象に残る傑作です。

信じることができずに傷ついた心。
信じたことで傷ついた心。

海援隊の『贈る言葉』
「信じられぬと嘆くよりも、人を信じて傷つくほうがいい」
のだろうか…。

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個人的には、「信じる」ってのは、ある種「思考停止」だと思うのです。
だって、「信じる」方が楽だもの。
本当に心から心配し、責任を感じていたら、簡単には「信じない」ものです。
「オレが信じられないのか!?」とか言いますけど、信じないのは、心底「想い」があるから。その裏返しでもあるのだよ。なんちて。

今回は、こんなところです。

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Posted on 2018/08/05 Sun. 15:27 [edit]

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