素人目線の映画感想ブログ

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シン・ゴジラ 日本と、日本の娯楽映画の底力! 


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 シン・ゴジラ
 (2016年 日本映画)  90/100点



<前半は、極力ネタバレをしません。>

まず、最初に言いたいと思います。これは、驚くほどの傑作でした。はっきり言って、2014年のハリウッド映画『GODZILLA』を見た時よりも、はるかに心の残る映画体験でした。完全に、ハリウッド映画を越えています。
『GODZILLA』を観た当時、「日本が近年作っていた『ゴジラ』なんてろくなもんじゃない。それに比べたら素晴らしい出来で、何も文句言えない…」と、実は感じていた物足りなさを抑えて感想を書いたものです。しかしいつかは、日本人が、日本人だからこそ描ける素晴らしい『ゴジラ』を作って欲しいという願いも込めていました。
なんと。
それからわずか2年で、こんなにも求めていた通りの『ゴジラ』が日本人の手で作られるとは! 本作には、「日本の再生」を思わせる描写がふんだんに盛り込まれていますが、それと同時に、「日本の娯楽映画の再生」であると思わせるほど、感激したものです。

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私は。
「ゴジラ」は、人類にとって「敵」であってほしいとずっと思っていました。「ゴジラ」が時折ヒーローのように描かれることに違和感をずっと持っていました。「ゴジラ」は、日本人にとって「災厄」の象徴だと思うのです。1954年の初代『ゴジラ』では、原爆によって日本人に刻まれた放射能への恐怖を、無情に掻き出していたからです。
本作の「ゴジラ」もまさに、今の日本人の心に沈み込んだ「恐怖」をあぶりだします。それは、「大震災」であり、「原発事故」です。ちょっと大丈夫かな…と心配になるほど、それは直接的に表現されていたのです。序盤、ゴジラが海から川を進行する事で溢れてくる水と船の描写や、終盤の作戦内容自体と、そこで利用される「あの重機」なんて、もう…。まさに、「そのもの」の再現に驚きました。それは、日本が実際に襲われた現実の未曾有の悪夢を、改めて思い出させます。
だからこそ、そのトラウマを乗り越えるべく、日本の英知と「絆」を結集し立ち向かっていく展開に意義があります。『ゴジラ』はやはり、日本人(人間)が戦って倒す映画であってほしいのです。

そして。
巨大生物が現代社会に現れたら、世の中はどう対処するのか。その一切を驚くほどリアルな描写でシミュレートしていきます。そう、私が「ゴジラ」に求めていたもう一つが叶えられたことが、嬉しくて仕方ありません。「ゴジラ」のもたらす災厄は、人類の存亡を脅かすほど凶悪なものです。だからこそ、人間社会の皮をはがすには、最も効果的な装置なのです。これは、2014年の『GODZILLA』では本当に不十分でした。所詮一部地域の災難程度にしか描かれていないと感じたのです。あれほどの異常事態に、大統領が登場しないなんて! と憤ったものです。
本作では、首相を始め、日本の政治家・官僚を主軸とした「対ゴジラ」の作戦模様が、とにかくリアルに展開していきます。自衛隊出動には、どの法律を適用させるのか。日米安保はどう発動させるのか。記者会見はどうするのか、避難計画はどうするのか、いざ市街で攻撃するとなった際に逃げ遅れた人がいたらどうするのか…。相当に、細かいです。だから、本作は怪獣映画というより、ポリティカル・フィクション(政治ドラマ)と言っても、過言ではありません。キャッチコピーの「現実対虚構」は、秀逸に本作を表しています。「圧倒的リアルなニッポン(現実=日常)」があるからこそ、中盤から「ゴジラ(虚構=想定外の災厄)」がいよいよ本領を発揮した時、「マジかよ…」という、あぶら汗ものの恐怖を感じるのです。本作の「ゴジラ」は、本当に怖い!

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ゆえに。

賛否両論は当然あるかと、思います。
かなり異色な作り方であることは、確かです。
総監督・脚本を手がけた、『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明は、持ち前の特撮オタク魂をふんだんに盛り込み、鳥肌を立たせる娯楽性をきちんと確保しながらも、その作家性をいかんなく発揮させています。60年もの歴史あるシリーズを、ここまで好きにさせた映画会社も凄いものです。
細かいカット割り、早口な上に、(あえて?)聞き取りにくいセリフの応酬、登場人物どころか、場所や軍事兵器名までも説明するテロップ。その他、庵野節をあらゆるところで垣間見せます。きちんと昔のBGMを使うタランティーノばりのオタクな選曲(エンディングにタイアップ曲を流すようなヘマをしないだけでも、嬉しい)。そして恥ずかしげもなく、自身の代表作である「エヴァンゲリオン」を思い起こさせる仕掛けも忘れません。ちなみに、本作タイトルに付く「シン」は、「新」か「真」か「神」かと言われてますが、私は単純に「シン・エヴァンゲリオン」の「シン」だと思いますよ。
で。
これらに対し、ハリウッド版を含め、近年の「ゴジラ」が好きな人は、ポカンとするかもしれません。怪獣映画を見たいのであって、特にリアルを求めていない人、怪獣同士の激バトルを求めている人には、裏切りさえ感じさせるような気もします。
しかし、ハマる人にとっては、身震いするほど面白い本作には、ぜひヒットしてほしい。日本の娯楽映画を活気づかせ、輝かせるためにも、ぜひ、この力作が報われて欲しいと願ってやまないのです。

と、興奮したところで。
もちろん、不満点がないこともありません。


<これ以下、ネタバレがあります。鑑賞後にご覧ください>

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概ね、本作の破壊描写は凄いです。ビル群が崩れてくる描写は、1ミリもCG感を感じさせないどころか、ハリウッド映画に負けていないと本当に感じました。ここまで出来るんだ…と嬉しく想ったものです。…が、逆に、「え?」と思わせるほど陳腐な「絵」もわずかにあります。あの…最初に上陸するゴジラの形態デザインは、変では? あれが初めて出てきた時は驚いた! 「あれ? ギャグ映画なの!?」と思ってしまうくらいでした。ドリフのコントの終了テーマが流れてきそうなほどでした。あれがゴジラの初登場シーンだから、あの瞬間、『風立ちぬ』の庵野の第一声の時と同じくらいの不安がよぎりました。まーその後、すぐに「ゴジラ立ちぬ」になったので、随分ほっとしたものです。

それから、あまりに政治家と官僚中心の映画なもので、「一般市民目線」が皆無でした。ハリウッド映画なら、主人公の家族をその役割として登場させます。それを邪魔と感じる人もいるかもしれませんが、個人的には、本作には必要だったように思います。逃げ惑う人々は完全にモブキャラでしかありません。そのために、市民の被害描写が薄味なので、「絶望感」や「切迫感」が緩和されてしまっているのです。ただ、作風がリアルであるだけに、市民の犠牲が見え過ぎると、娯楽作としては重すぎるという判断なのかもしれません。あの地獄絵図の下に、何人の犠牲があるのか…。娯楽として楽しむには、やはりそこだけはファンタジーとして濁すべきなのかもしれませんね。考えてみれば、『インディペンデンス・デイ』でも、『アルマゲドン』でも、とてつもない犠牲者が出ているはずですが、やはり市民の被害描写はそこまで多くありません。

賛否あるのは、石原さとみ演じる米国大統領特使:カヨコ・アン・パタースン。珍妙な英語発音を織り交ぜるセリフに、やけにツンデレな彼女の人物設定は、それまでドキュメンタリー風だったリアルさをそこそこ奪います。退屈しのぎとして機能しているようにも思えるし、失笑ものにも思えるし、結構ギリギリでしたね。そりゃあ、かーわいーんだけどねー。

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それから、たくさんの俳優さんが参加していることも特徴の本作ですが、一人一人には、そこまでの見せ場はありません。いいな、と思うキャラクターは少なからずいるのですが、途中からふっといなくなります。ほとんど、ワンシーンのみしか出てこなかったりします。もう少し群像劇として、複数のキャラクターを大事に扱っても良かったような気もします。最後に美味しい所を持っていく総理代理の平泉成は、巧かったと思いましたけど。内閣総理大臣補佐官の赤坂を演じた竹野内豊は、本作で最も滑舌が良く、聞き取りやすいので、彼が画面に出ると非常に安心しました。
…そうそう。どうでもいいようにも思える「ゴジラ=野村萬斎」の配役ですけど、「能・狂言」をゴジラの動きに重ねるという発想は、どこか古き良き日本映画へのリスペクトのような気がして、深い思惑があるような気もします。

それからそれから。今一つ、最悪な状況に対するリアクションが薄いような気がします。ゴジラに一切の攻撃が効かなかった時や、閣僚の大半がいなくなった時、「どうすんじゃー!」という焦りの描写がもっと欲しかったと思うのです。
最も物足りなさを感じたのは、ゴジラ封印作戦が成功した時、それを見守る人々のリアクションがまた、うっすーーーーい。ハリウッド映画なら、大歓声になるはずのところ、本作では、それはそれは静かな勝利表現だったものです。達成した瞬間、高揚よりも脱力…というこの演出には、こだわりや新鮮さも感じますけど、もうちょっと喜んでも良かったじゃないかなとも思いました。もちろん、多大な犠牲者がいる上、今後の復興を考えたら、はしゃいでいる場合かよ、という考えなのは分かります。果たして、あの姿のまま、ゴジラをアンダー・コントロールできるのか、という不安もありますしね…。

というわけで。

そういった気になる点もありますが、それを見事にゴジラの咆哮が吹き飛ばします。
主人公・矢口(長谷川博己)の終盤の演説は、『インディペンデンス・デイ』の大統領に負けない気迫で鳥肌が立ちます。
存分に日本の娯楽映画の底力を見せてくれた本作は、「日本は、まだまだやれるんだ」というポジティブな日本賛美にも溢れています。映画が傑作だからこそ、そのメッセージは存分な説得力を持ち、琴線を震わせるのです。

鬱病から還ってきた庵野秀明は、それはそれは見事な仕事をしてくれたのです。
あまりの出来の良さに、もう…これが『シン・エヴァンゲリオン』でもいいよ…とさえ、一瞬思わせましたよ!


   

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Posted on 2016/08/02 Tue. 00:41 [edit]

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