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アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 【感想・レビュー】そこにアイはあったのか。 


 アイトーニャ
 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
 (2018年 アメリカ映画)  
 90/100点



面白い!! とにかく面白かった! そして、ひどかった。 こんな奴おらんやろ~? というくらい、ひどい人間模様です。

だけど、実話です。

本作は、フィギュアスケート史上最大のスキャンダル、【トーニャ・ハーディングの事件】(1994年)を描いています。はっきりと記憶している事件です。フィギュアのオリンピック選手であるトーニャが、ライバル選手:ナンシー・ケリガンの足を負傷させた、と言われている事件。

疑惑の渦中での競技中、トーニャが靴紐が切れたと審査員に訴えているニュース映像を、今でも鮮明に覚えています。ゆえに、彼女にはふてぶてしいイメージより、すごく泣き虫のイメージが印象に残っています。なんか…、どこか哀れな雰囲気で…
ハーディング
(実際の映像です)


それもさもあらん。

本作によると、トーニャの人生が、支配欲と暴力にさらされていたことが分かります。

アイトーニャ2


本作は、事件に関与した者たちのインタビューをもとに構成されているそうです。ゆえに、100%真実とは限らない、という感じ。だから、証言者によって話が食い違ったりしますが、あとは我々の想像次第、ということ。

実は、「事件の真相」は二の次なんです。本作は、トーニャの周囲の人物の描写がはるかに強烈!!

トーニャの母親の異常ぶりが本作の最大の仰天ポイントです。徹底したスパルタ教育でトーニャを育てます。本作では、この母親がトーニャに対し、優しくしている描写は一切ありません。

この異常さ。愛のムチとか、そんな生易しい様子ではありません。『セッション』でも観た、凶悪なしごき。

果たして、トーニャの母親に、一寸の愛情でもあったであろうか。しかし、離婚後、決して裕福ではないのに、フィギュアスケートにかかるお金を惜しみなくトーニャにそそぎます。

それは愛情ゆえ、にも見えますが…。トーニャは、そうとは受け止めていなかったでしょうね。

「しつけ」として、親が子に厳しく接することがダメなわけではないです。けれど、大事なことは、厳しさの根底が「愛情」であると、子供に伝わらなければなりません。

例えば、勉強に関して。
親が手を焼いたり、厳しく叱ったりしても、それが本人の将来を心配しているからだと伝わらなければ、一ミリの効果はないと断言します。間違っても、「親の見栄」「支配欲」と勘繰られてはダメです。けれど、そう誤解を受けている親の多いこと。

子供への厳しさを間違うと、子供はまっすぐに成長なんぞしませんよ。いやいや! 誰も花田優一の話なんてしてないよ!

アイトーヤ4


で。

トーニャの母親ですが。
見事なほど、彼女は支配欲・自己顕示欲で動いているのでした。あちゃー。それも、トーニャに歯向かわれると、発作的に刃物を投げつけるほど、強烈です。それがトーニャの腕に刺さるんだから、一周回ってコメディだ、こりゃ!

裏返すと…、この母親は、強いコンプレックスとストレスにさらされていたのかもしれません。偉そうな態度と言動ですが、彼女はウェイトレスで生計を立てています。その仕事っぷりが、決して優秀な雰囲気ではありません。

あたしの人生、こんなはずじゃない。もっと成功した人生があったはず。あいつが悪い。こいつが悪い。私は、間違ってない。鬱屈した感情に駆られ、不満にさいなまれ、不遇から抜け出したい願望がトーニャに託されたのでは。

トーニャの素晴らしい演技を伝えるニュースを見て、母親は誇らしげな顔をします。そこに、一瞬カタルシスを感じます。「実は、愛情があった」と思わせるからです。ついに終盤、「誇らしいよ」と述べる母親に、トーニャが泣き顔で喜ぶのも、「愛情を疑っていた」彼女に希望をもたらしたからです。物語としては文句なしの正解でしょ? 

でもね。本作は身も蓋もない顛末を叩きつけます。事実なのかなあ…。だとしても、そこはサービスで脚色してほしかったな…。そう思えるくらい、救いがないんです。

おまけに。

トーニャには、DV夫までいます。

ここの描写も凄惨です。女性に対し、あんな手加減もなく、殴る? そこにあるのもまた、邪悪なる「支配欲」です。しかし、逆にここでは、トーニャが時折それを「愛情」と誤解するのだから、皮肉なものです。

アイトーニャ5


そう。トーニャは、人間関係に絶望的に恵まれていません。

愚かしい人間には、愚かしい人間が集まるようで。この旦那の友人もまた、誇大妄想癖を抱えたイタい人間で。こいつらの低レベルの発想で、トーニャのライバル選手を襲撃する作戦が進められていくのでした。この辺り、あきれ果てると同時に、やっぱり一周回ってギャグのようで笑えた。

さて。

なんだかんだ言っても、トーニャが素晴らしいフィギュアスケーターであることに間違いはありません。トリプルアクセルを成功させた史上2番目の女子選手です(ちなみに一人目は伊藤みどり)。フィギュアの場面は圧巻です。カメラは競技中のトーニャを接写します。実際の中継と違うので、とても新鮮な視点です。滑らかなカメラワークも、気持ちいい。

けれど、トーニャは審査員から評価されません。技術はあっても、芸術性に欠けると判定されます。それにブチ切れるトーニャ。裕福でないため、競技に着るドレスを手作りする彼女の健気さに感心するからこそ、確かに、その評価は不快です。差別的な印象さえ受けます。

素人意見でしょうけれど、「芸術点」なんて、実に胡散臭い基準です。そこに、一片の曇りもないのでしょうか。世の中には、明確なペーパーテストの点数でさえ低くなるよう細工する医大もあるというのに。

つまり。

誰もかれもが、トーニャに優しくないんです。それが、観ていて哀しい。徹底して、「愛」に裏切られてきたトーニャ。実際のニュースで見た、彼女の泣きはらした顔がまたもや思い出されます。

この事件を茶化したバラエティー番組を、彼女が暗い顔つきで観ている様子なんて、たまらないですよ。こういう場面、佐村河内氏を追ったドキュメンタリー『FAKE』でもありました。

「どいつもこいつも、いい加減にしてよ!!!! ちゃんと愛してよ!!!!」 そう、心の叫びが聞こえてくるようでした。

アイトーニャ3

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Posted on 2019/01/27 Sun. 23:20 [edit]

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