素人目線の映画感想ブログ

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ジョーカー/イジられたくないコメディアン。 


 ジョーカー
 ジョーカー
 (2019年 アメリカ映画)  
 90/100点



第76回ベネチア国際映画祭の金獅子賞 受賞。間違いなく傑作です。

アメコミ映画というより、重量級の社会派ドラマです。ハッキリ言って、バットマンに出てくるジョーカーだと意識せずに観たほうが、しっくりくると思います。「ある男:アーサー(ホアキン・フェニックス)が不幸にまみれ、ついに闇に堕ちる物語」 シンプルだけど、その中身はとんでもなく濃い。

そうそう。ハイセンスな映像も見ものです。画面いっぱいのオープニングタイトルを見た瞬間、その期待値はうなぎ登りだったものです。


<<ネタバレして書いていきます>>


ジョーカー2


とにかく、アーサーが不幸でね…。

ストレスがかかると笑いが止まらなくなるという障害を負っています。それが人を怒らせてしまうのです。「笑ってはいけないシリーズ」をリアルにやると、本当に笑えない事態になるという事実。

その他、『アルマゲドン』かってくらい次から次へと悪いことが起こり、転がり落ちていくアーサー。

彼には、コメディアンという夢がありました。「夢は大事」と言いますが、不相応な「夢」は自身を傷つける凶器にもなります。思う通りに行かないと「自尊心」がゆらぎ、心をゆがませることもあります。

本作を観る限り、アーサーには、「笑わせる才能」はないようです。そもそも緊張すると例の障害が出て、まともにセリフを話すこともできません。

おまけに、「ドスベりしたライブ映像」をテレビ局に勝手に放送され、笑い者にされる始末。アーサーはそれに対し、怒りをたぎらせるのでした。

ジョーカー3


しかし。

アーサーよ、ちょっと待ってくれ。

君には、イジラれ芸人になる道あったんじゃ!? とか思ってしまった。

不本意でも、せっかくそこで注目を浴びたのだから、それ活かせよ! とか思ってしまった。

司会者「初めまして、アーチャー君」
アーサー「アーサーだよ!」

って路線もあったじゃん!

そんな風に思ったのは、初めてバラエティ番組に出たアーサーが、ちゃんと面白かったから。なぜか堂々とした風格も。マトの外れたコメントを言うアーサーに司会者が巧くツッコんで笑いをとってる様子も。オードリーなみに面白いよ!

なのに。

残念なことに、アーサーはイジられるのが嫌なタイプの芸人でした。笑い者にされて腹が立つ理屈は分かるけど。あのスタジオで起きた「笑い」は、アーサーが作ったれっきとした「笑い」です。イジられたくないなんて! 1流のイジラレニスト:アンガールズ田中を見習って!!

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つまり、物は考えよう。

不遇をチャンスに変える発想の転換ができれば、闇から救い上げられる余地もあったのではないか。隠し撮りされた映像を笑われるなんてのは、おぼんこぼんだってやってんだ!

とはいえ。

発作が起きると、必死に口を押えて「笑い」を抑えるアーサーの姿は、とても気の毒だったのは確かです。「笑い」に焦れた男が、「笑い」に苦しめられる皮肉は、あまりに残酷でした。

思えば、彼は心から笑ったことがないのでは? 口の両端を指で押し上げてみても、すぐに曇った表情に逆戻り。何を笑えばいいのか。実は彼は、もうとっくの昔から、「笑い」に背を向けていたのだと思います。

だからこそ。

開き直った彼の狂気はすさまじい。

本作は、危険な思想を推す「社会派映画」だと警戒されているそうです。貧困や病気にまみれたアーサーが暴動を扇動し、それを肯定しているかのように描いているからです。

それに対する批判もあるでしょう。暴動は「悪」だし、冷静であるべきだと。けれど、明日をも知れぬ者にとっては、そんな正論、「金持ち喧嘩せず」にしか聞こえません。ガラガラポンとすべての者が振り出しに戻るほどの「混沌」を望み、恵まれた者に一矢報いたいと思っている人は、大勢いたって不思議じゃない。

だから、本作の終盤には危険なカタルシスが満ち満ちています。覚醒したアーサーが、急速にカリスマ性を帯びていくカッコ良さ、美しさたるや。

ジョーカー5


でも。

アーサーに同調するのも、実はちょっと違う。

アーサーの不幸の最大の要因は「家族」です。育児放棄の母親と虐待の父親。そんな地獄がこの世にある限り、政治が良くなったって救われるもんじゃない。この世の不幸の源だと思うから、たぶん、「虐待」ってこの世で一番重たい罪ですよ。

それも含め。
アーサーは、この世のありとあらゆる不幸を背負った男なんです。ちょっと滅多にあるもんじゃない。

幸いにも、育児放棄や虐待のない家族なら。障害を持たない体であるなら。職場で銃を落として失職したことがないなら。それだけでも、とてつもない幸運なんです。アーサーほどの不幸でないならば、「ジョーカー」になる資格はありません。「誰もがジョーカーになりうる」だなんて、そんなのは大間違い。

だから。

本作の言いたいことは、「暴れようぜ」ということでは決してない。

アーサーに優しかった男が命を救われたように。
実にシンプルに、「困っている人に優しくあろう」ということだと思うのです。その思想こそ、一周回って、自分の幸福にもつながってくるんだと。

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Posted on 2019/10/08 Tue. 22:18 [edit]

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