素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。

インセプション /フロイトも驚く、「夢」の新ルール。 


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 インセプション
 (2010年 アメリカ映画)  
 85/100点



<ネタバレ感想です。>


これこれ。クリストファー・ノーラン監督といえば、これなんです。
なんというか、この…。

インテリチックな大風呂敷。

仰々しいだけだと嫌う人がいるのは分かります。監督のドヤ顔もチラつきます。でも、私は個人的に大好きです。ハッタリも、ここまで噛ませれば一級品です。

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本作は、「夢の世界」を描きます。
夢を題材にした映画や小説は山のようにあります。『ビューティフル・ドリーマー』や『パプリカ』、黒澤明も『夢』という作品があります。『エルム街の悪夢』もそうですね。
そんな中、本作で描かれる夢の特徴を一言で言うと、「現実」とほとんど変わりなしってところ。

もちろん、時間の進み方や物理現象に異変がありますけど、ぱっと見の世界観は「現実」のまんまです。
スゲーなー。
ノーランくらいになると、夢もこんなにクールなの?

ここ、冷やかしどころではあります。

特殊に調合された「鎮静剤」を利用した深い眠りのうえ、夢の「設計士」が、そういう風に世界を作っているというエクスキューズはあるけれど…。
本来、夢ってもっと突拍子もなく、下世話なものですよ。場面展開の激しさはもちろん、人物もめまぐるしく変わるし、欲望そのままだったり、抑え込んでる鬱憤が飛び出しちゃったり。あまり公では言いにくいことだって起こるものでしょう。
それなのに。
本作の夢っぽさって言ったら、せいぜいロサンゼルスの街中に列車が走り込んでくるという、「美的ハイセンス」なものばかり。

うむ? みなさんの夢はこのような感じではないのかな?

なんて、したり顔で問うてきそうで、もーノーランったらー。

さらに。
聞いたことのない夢のルール設定で、まことしやかに物語を進めていく様子は、まるでダウンタウンの「意味不明な作業をする職人コント」の類と変わりません。

でも。

嫌味に書いてきましたけど、私は結構好きなんです。『ワクワク』するんです。
それだけ本作における『夢』の設定は、あまりに都合がいいとはいえ、魅力的です。

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<<その魅力いっぱいのルールとは>>

・特殊な機械があれば、夢は共有できる!   
この発想、我々はもう何年も前に、『ドラえもん』で経験済みです。人と人の夢をくっ付ける「夢のり」とか。人の夢に出入りできる「夢はしご」(演歌のタイトルみたいだな)とかありました。至極やたらに荒唐無稽でしょう? 本作のそれも、冷静に考えれば、あまりにドラえもんテイストなのです。

が、「夢を共有する」ことは、人類共通の「憧れ」です。いかに無理がある設定でも、目をつぶって受け入れたくなるほど十分に魅力的なのです。


・夢は自由に「構築」できる!   
夢には「設計士」というのがいてだな…。
なんと、夢を自由自在に作り上げることが出来るのです。
これによって、現実と大差ない夢を作り、ターゲットを騙すことができるわけです。
ただし、それが果たして、どのような仕組みで、どのような能力と工夫によって実践することができるのか、あまり説明はありません。それもそのはず、どんな既存の科学を都合よくいじってみても、首相の加計問題くらい絶対に説明不可能なのだから。

ちなみに、私は幼少の頃、夢に出てきてほしいアニメキャラクターの画像を枕の下に敷けば、その夢が見られると本気で信じていた時代がありました。


・『夢の世界』には、第1階層、第2階層、第3階層、そして虚無がある!   
第1階層で眠ったら、より深い深層意識に降りるというわけです。そもそも、夢の中で眠るっつーのが、もう意味が分かりませんが、この世界ではそうなんです。

確かに、朝、目が覚めて、顔を洗い、朝食を食べ、歯を磨き、さあ出かけようと思った瞬間に、目が覚める事があります。すなわち、あの状態は夢の中で寝てたわけだ! しかも、本作の夢は、第3階層まであります。
さらにその下には、「虚無」があります。
虚無とは、強い鎮静剤(眠り薬)が効いている最中に夢の中で死に至ることで落ちる、恐ろしいところ。
そこでは夢と現実の区別がつかず、二度と目が覚めないと知らされ、仲間たちはおののきます。まさに、死んだ状態で戦って再度死ぬと「無」になるよと聞かされた時の、ベジータの胸中。

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・夢の中では現実と時間の進み方が違う!   
「脳の動きは20倍ずつ加速する」 すなわち、現実世界の10時間が、夢の第一階層で1週間、第2階層で6ヶ月、第3階層で10年近く、虚無ではさらに数百年に相当する。…だそうです。
…。
ノーランの世界では、夢の中にも規則正しい決まり事があるのですね。
けれど、その見せ方が実に面白いのでオッケー! 時間軸を操るノーラン節全開です。第1階層で車が橋から落っこちて着水するまでの短い間、第2階層、第3階層で伸びた時間内に、様々なミッションがこなされていくことになります。


・夢から目覚める為には「キック」しろ!   
本作での夢の中からの脱出方法…、つまり「目覚め方」を、「キック」といいます。
それは、単純に言えば、「ショックを与える(受ける)」というもの。起きてる者が寝てる者を起こす場合は、「水の中に落とす」が最も確実のようです。寝てる者自ら起きるには、夢の中で「死ぬ」ことが、確実だそうです。

夢の中で落下すると目が覚める、というのはよおく分かります。私もその手をよく使います。怖い夢を見ていると気づいた時、室内であれば窓を探します。そして、そこから飛び降りると目が覚めるのです。
わからんちんな設定の中に、ふと、「夢あるある」を入れ込んでくるのがニクい。おまけに「専門用語」を作ってみせるのが、またインテリな手法ですな。

ちなみに私は…、(夢の中での感覚として)目をこじ開けるという方法も使います。


・夢が現実かわからなくなったら「トーテム」を使え!   
まあた、カッコイイ言葉に変換していますが、ようは「コマ」です。夢か現実かが分からなくなったら、コマを回します。そのコマが回り続ければ「夢」 止まったら「現実」ということです。

しかし、コマが止まったからって、なんで「夢ではない」ことになるんでしょう。「コマが止まる夢」を見ているだけかもしれないじゃないですか??


・夢の中でも痛みを感じる。   
これも、よく分かる「夢あるある」です。歯が抜ける夢をよく見ますが、抜けている感覚が凄くリアルですもんね。


ということで。

以上のようなルールを、したり顔で登場人物たちが語ります。
もしフロイト先生が知ったら、今までの夢に対する考え方に、赤面すること間違いないでしょう。 

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さて。

ここで簡単にあらすじを言うと…、「コブ(ディカプリオ)は、人の夢に侵入し、アイディアを盗み取る凄腕の産業スパイ。彼はサイトー(渡辺謙)から、逆に人の深層心理にアイディアを植え込むインセプションという仕事を依頼される。仲間を集めて任務を遂行しようとするが、コブの深層心理にこびりついた亡き妻(マリオン・コティヤール)が、ことごとく彼の行く手を阻む…」という物語。

そう。

本作の主人公・コブの脳裏には、「亡くなった妻」への想いが強烈に残っています。本作のピンチの大半は、いわば全部コブのせい。妖しい空気を纏い、コブにまとわり付く妻が悪いように思えますが、それ自体コブ自身の想いの投影なわけだから。

そんなものを抱えたまま、元から危険なミッションに駆り出される仲間が気の毒です。中でも「見学気分」だったサイトーなんて、撃たれるわシンガリさせられるわ、散々です。
それに対して全く怒らないサイトーは、器がでかいのか、コブに、深層心理に居座る北新地の№1ホステスを掴まれたのか、どっちか。

そもそも。
このコブ夫妻は変なんです。彼らは二人っきりで、50年(夢時間)を夢の中で過ごしたといいます。そのために妻は、「夢」を完全に「現実だ」と思い込んでしまいました。気が付かせるために、コブは妻に「ここは夢だ」とインセプションをしていたのです。その後遺症で、現実に戻った妻はなおも「夢の中にいる」と思い込み、「自殺」をしてしまいました。

子供を置いて50年も過ごしますかね…?
もともと、妻には何らかの精神的な問題があったとしか思えません。夢の中での生活は、コブによる精神治療の意味もあったのではないでしょうか。その努力もむなしく、現実世界で、妻はコブの元を去ります。

おまけに、「夫に命を狙われている」という余計な手紙を弁護士に渡していたため、コブは警察に追われる身となってしまうのです。別に「恐怖のノート」を見つけて錯乱したわけではありません。恐らく、コブを追い詰め、一緒に飛び降りようと(妻にとっては、「現実」に戻ること)考えたのでしょう。

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いろいろと突っ込みどころもある本作ですが、とても見応えはあります。面白いです。無駄に、知的好奇心を刺激されます。
(あ、でも、第3階層の雪山のシーンはちょっと退屈なアクションが続きますね)

キャスト陣も豪華。助演にも今や主役級の方々が並びます。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットに、トム・ハーディ、エレン・ペイジ、マイケル・ケイン、渡辺謙。
特に渡辺謙の役は、日本人でなくてもいいキャラクターなのに、渡辺謙の為に日本人のキャラにし、序盤の舞台を「日本」にしたのだから、まさに「世界のワタナベ」なのです。決して、「北新地のワタナベ」ではないのです。

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で。

音楽は、当然ノーランご用達のハンス・ジマー。いつまでもがなり立てられる重厚な曲調は、物語を物語以上に盛り上げます。
余談ですけど、ハンス・ジマーの曲をたまに高速道路の長距離運転中に聞いていると、妙に緊迫した心持ちになります。
家に帰っているだけなんですけどね。

思えば、「ノーランって、仰々しくってハッタリだらけで、無駄に煽情的だ」なんて言われるものだから、『ダンケルク』では一切そういった手段を排除して作ったんじゃないでしょうか。「このような感じでも、できるんだよ」と言わんばかりに。

そんなスカしたノーランの夢の中に侵入して、彼の本性を暴いてやりたいような気がしないでもありません。所詮、あんな女優やこんな女優と乳繰り合ってる夢かもしれませんぜ。

ついでに言うと、「次回作はIMAXで撮らないように」と、インセプションしてやりたいなと。いや、個人的に。


  

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Posted on 2017/09/29 Fri. 23:23 [edit]

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