悪魔のいけにえ【感想・レビュー】ある日森の中、レザーフェイスに出会った。

悪魔のいけにえ
(1974年 アメリカ映画)
80/100点
<結末まで言ってますよ>
ホラー映画の金字塔と言われる本作をついに鑑賞。
しかし…、タイトルがまたおどろおどしいですね…。この頃の邦題センスって…・。「いけにえ」だの、「はらわた」だの、「したたり」だの。誤解を生みかねないようなものばかり。
こんなタイトルでは、夜な夜な犬や猫を引き裂いて回っている人が観る映画だと思われかねません(そこまでじゃない)。
ホラー映画の中には、映画的に素晴らしいものもありますが、「全て悪趣味なスプラッター・ムービー」と断罪される下地を作った映画会社の罪は、重いと思うのです。
本作は、ただの残酷映画と違いますよ。
マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されるほど、芸術性を認められた映画です。
怖くてもイザ観てみると、終盤の狂気に人間性の奥深さを見るでしょう。

実は。
当然、バイオレンスが強烈そうに思えますが、どっこい。
直接的な残酷描写は「皆無」、という演出の凄味。
おまけに。
温かい目で見ると、レザーフェイスと呼ばれるチェーンソーを持った大男に、愛敬さえ感じます。
おまけに、森でのヒロインとの追いかけっこが、やたらダラダラしてるので、段々笑えてきたりもします。
「あるぅ日~♪ 森の中~♪ レザーフェイスさんに~♪ 出あぁった~♪」みたいなノリにさえ思えます。(思えない…か…)
けどね、あと一歩で追いつかないレザーフェイスの加減した足並みに、「お逃げなっさい~♪」 と言っておいて、「お待ちなっさい~♪」って逆のこと言ってる『森のクマさん』みたいだって、パーマ大佐が言ってた(嘘です)。
とにかく。
若者ホイホイのように、次から次にレザーフェイスの家に入り込んでは、やられていく皆さん。
第一、勝手に人の家に上がり込んでいく無作法っぷりは何なんでしょうか。
レザーフェイスの家でなくたって、不法侵入でぶっ放されたって文句言えませんけど。

で。
本作の展開のひねりが好きです。
逃げ込んだ先のガソリンスタンドのオヤジが、どうも様子が変なんで緊張させます。
そして、「レザーフェイスの家族」が集合するところが、斬新!
これ、『バイオハザード7』の元ネタなんですね。
それに。
その狂気の家族が、「おじいちゃん」に刃物を持たせるけど力が入らなくて全然ダメっていう、丸っきり無駄な描写が素敵です。今の映画に足りないのは、この無駄な行間の味わいだと思いますよ。
この異様なグダグダが、怖いというより、珍妙で面白い。
それで案の定、ヒロインにまんまと逃げられる痛快さ。アンガールズだったら、ジャンガジャンガジャンガジャンガ~と始めるところです。

で。
ラストシーンが、本当に凄い。
踊り狂う、レザーフェイスのチェーンソー演武。
笑いが止まらなくなるヒロインの狂喜。
この場面だけでも、一見の価値のある映画です。
まさに、芸術性が爆発したラスト・カット。
画像は古くて荒いけど、いつまでも印象に残る鮮烈な場面です。
でもお願いだから…、とヒロインに言いたい。
レザーフェイスに追いかけられている時は、こっちに逃げて来ないでね。

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