素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

必殺3 裏か表か /主水、切腹を申し付けられる。 


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 必殺3 裏か表か
 (1986年 日本映画)
 80/100点



ちょっと今回は、「息抜き」にマニアックに偏った本作を書いていきたいと思います。
テヘヘ。

「必殺シリーズ」は1972年から現在まで、今だ続いているロングランシリーズです。
ここで、端的に。ええ、そりゃもう、うっとうしくない程度に端的にシリーズを説明しますと…。

1972年に始まった『必殺仕掛人』以降、昼行燈の同心・中村主水(藤田まこと)が登場する『必殺仕置人(1973年)』や『必殺仕業人(1976年)』または、中村主水が出演しない『必殺からくり人(1976年)』など、数々の名を変えたシリーズが生まれました。しかし、物語の残酷さ、暗さなどがマニアック過ぎたのか、視聴率は低迷し始め、ついに打ち切り寸前に生まれたのが国民的認知度を獲得した『必殺仕事人(1979年)』なのであります。中村主水に加え、三田村邦彦演じる飾り職人の秀が女性人気を獲得し、さらに『新・必殺仕事人(1981年)』から登場した、中条きよし演じる三味線屋の勇次の華麗な殺し技や、中村主水をいじめる嫁と姑のコントがお茶の間に大受けし、一躍ファミリードラマへと進化。30%を越える視聴率をたたき出し、実にこれまで6度(主水が出ない映画も含めるともっとある)も映画化を成し遂げているのです。そして、現在も東山演じる渡辺小五郎を主人公とした新しい『必殺仕事人』が年1回のペースで放映され続けており、それが意外に好評であることから、今を持って若い世代の必殺マニアを生み続けているのでありました…

おっ! まだ読み続けて頂けるとは幸いです。
これでもかなり端的なのです。

今回は、思いっきり個人的趣味全開!

というわけで、『必殺仕事人』で3番目に映画化された本作を取り上げております。

本作は、ファミリー路線に転換した本シリーズに喝を入れるべく、初期の「必殺シリーズ」を彷彿とさせる残酷さ、暗さを兼ね備えています。相当ハードに仕上がっています。その為、賛否両論の渦巻く問題作でもあるのです。

映画ならではの描き方で、主人公「中村主水」が窮地に追い込まれる物語は、ヒリヒリした緊張感に満ちています。

物語や演出、映像の作り方にも並々ならぬこだわりを感じます。
本作は、日常的に見るテレビシリーズの枠を(きちんと)飛び越えて、「本物の映画」になっていると思うのです。


<下記、ほぼネタバレしています。>


最大の見どころは、「中村主水」のいたぶられ方。
ある両替商による同心殺しのネタを掴んでしまった主水は、その夜に数名の刺客に襲われます。
さて、ここがびっくり。
いつものテレビシリーズであれば、主水は相当な剣豪ですから、数人の敵くらいバッサバッサと切り捨ててしまうことでしょう。
何より、主人公ですからね。

それが、ここでは思いもよらぬ「大苦戦」を強いられます。

ほとんどの敵を倒せず、逃げ惑うばかり。
え…?
初めて見たときは頭が混乱してしまいましたよ。

も、主水が弱い。
…というか、現実的な強さという設定になっているのでした。

本作は、「仕事人」を超人ではなく普通の人間として描きます。
それが、際限ないリアリティと緊張感を生み出しているのです。

先ほどの刺客との死闘では、狭い路地に敵をおびき寄せ、主水はなんとか奮闘します。しかし、路地の反対からも敵が回りこんできて、あわやもうダメ…というところまで追い詰められるのです。

無題1


本作の殺陣は、刀が重い。そして怖い。

主水暗殺に失敗した敵側は、今度は主水にハニートラップを仕掛けます。

チッチッチッ。
しかしながら我らが主水は頭脳的にも優れた人物です。そんな見え透いた悪人の手口に、簡単にひっかかるほど間抜けでは…
あ、あれ? …簡単に乗っかっとるわい!?

本作の主水は、金には汚い、女にはだらしない「かっこ悪い中年」という描かれ方です。

敵側である両替商の枡屋(成田三樹夫)との揉め事も、もとはと言えば女に頼まれた主水が、十手をかざして枡屋を脅しつけようとしたことが発端です…。

両替商組合肝煎・真砂屋(伊武雅刀)から「金の流れ」の大事さを説かれても、「そんな理屈は分かりたくないわい!」とちょっと青臭くて、もの分かりの悪いオヤジになってましたね…。

話は戻って、まんまとハニートラップに引っかかった主水。
その後、真砂屋によって女は自害したように仕掛けられ、その責任から主水は奉行所より切腹を申しつけられます。

この切腹は任意だったので、主水の拒否により実施はされませんでしたが、奉行所は何とか「殉職」という形を取ろうと、危険な事件現場への突入を主水に命じます。

浪人3人が立て篭もる現場への突入命令に、やむなく従う主水。
ここでも、「大苦戦」です。
役名もない3人の浪人に手こずる時代劇ヒーローが、今までいたでしょうか?

足を負傷しながら、浪人二人は何とか切り捨て、命からがら逃げ出す主水。
その主水を助けようともしない他の同心たちの視線を背中に感じながら、主水はつぶやきます。
「あいにくだが…、オレはこんなことじゃ死なねえよ…」
渋いっ! 最高レベルの名シーンでしょ、こりゃあ!

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本作のタイトル『裏か表か』というのは、主水の裏稼業でのピンチを描くだけではなく、表家業での窮地も描き、だんだん裏と表の区別がつかなくなる、という意味だそうです。

例えば、枡屋へ暴力的な取り調べを強行する主水は、上司(山内としお)が止めに入るや否や、マジギレで「どけぇええ!」と怒声を上げます。本当に裏表の区別がなくなっていくのです。

主人公を…、時代劇ヒーローをここまで追い込む冒険心。凄いものです。

その他、物語は「金と人の命」をテーマに、単純な娯楽劇であった『必殺仕事人』を、見事な社会派ドラマに昇華させるのです。

追い込む悪人たちも、堂の入った役者陣です。
前述したとおり、枡屋・成田三樹夫の強面商人と、真砂屋・伊武雅人の闇に堕ちたほの暗い目が印象的です。
もういい!…中村主水はオレがやる。生きた屍にしてやるのだ…」とつぶやく伊武雅人の禍々しい空気が恐いです。

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しかしながら、本作には欠点も少なからずあります。

本来3時間あったフィルムを2時間にまでカットしたことによる話のわかりにくさ。
ハニートラップを仕掛けた少女に秀が惚れていたという唐突な話も、カットされた部分に詳細な描写があったようです。

・また、ゲストの松坂慶子の存在が大きすぎて、物語を邪魔している気がします。キーポイントのキャラですが、無理やりにそうしたような…。
一番問題なのはラストの扱い方。
どうせ誰も見ないだろうからネタバレしますけど、「(一応反転で)主水は、ラスト、他の仕事人たちとの迫力満点の死闘の末に、ようやくボス・真砂屋の元にたどり着きますが、そいつを松阪慶子があっさり殺してしまいます…。
それはないわー! って思ったものですよ。

松阪慶子が最後まで邪魔をしてしまった感じがして仕方ありません。
最後をエンターテイメントで締めていたら、本作は大傑作だったでしょうに。

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・そんなこんなで、ラストで台無しになった本作は、一部では「黒歴史」とまで言われるようになってしまいました。


さて。

笑福亭鶴瓶演じる「参」という仕事人が、ギッタギッタのメッタメタにやられる場面は、トラウマ級の怖さです。
そして、有名な仕事人の一人、組み紐屋の竜(京本正樹)までも、本作で殉職します。

最近の「仕事人」が好きな人には、ちょっと耐えられないほどハードな作品です。
しかし、重厚な演出など見応えは十分にある傑作だと、私は思っております。

ついでに言うと、BGMも初期の頃の必殺の名曲が多くて、そこも個人的にツボでした。

さらに余談で言うと、最近の東山の「必殺」も、初期の名BGMを多用している所が大のお気に入りです。

というわけで、まあぜひ、機会がありましたらどうぞ。




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Posted on 2013/02/27 Wed. 20:34 [edit]

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