素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

大人は判ってくれない 子供を判ってあげることは、難しい。 


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 大人は判ってくれない
 (1959年 フランス映画)80/100点


「たまにはクラシカルな名画を」シリーズです。
前にも書きましたけど、昔の映画の鑑賞は、たとえ名作といえども十分な体力と心の余裕が必要です。
やはり今の映画とはテンポも違うし、分かりやすくはないし、絵が暗かったりしますから…。最初の15分~30分は退屈でも我慢です。それを越えた頃に、徐々に物語は動き始め、さすが歴史に残る名画! とうなる場面が現れてきます。

素人鑑賞の極意「名画の鑑賞は、まず30分我慢」

ということで、今回はフランソワ・トリュフォーの長編デビュー作「大人は判ってくれない」
素人目線なので、名画を分かったようなフリをせず、素直に感じたことを書いていこうと思います。
本作をトリュフォーの最高傑作という人もいます。まずこの作品を見ておけば、「トリュフォーはさー、『大人は判ってくれない』がサイコーだよね」とのたまうことが出来ます。

素人鑑賞の極意「名匠モノは、まず最高傑作をおさえよ」

さてさて。

あらすじは、「アントワーヌ・ドワネルは12歳。学校でも家庭でも叱られてばかりの毎日。学校の先生には目の敵にされ、夜な夜な両親のケンカを聞かされ、たまらず家出をしてみるものの、事態は悪くなるばかり。大人たちの勝手な悪評に転がされ、ドワネルの生活は最悪の道をたどっていく」というお話。

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意外と明るく軽快な雰囲気を醸しながらも、事態はどんどん悪くなるという不思議な映画です。
つまりは、子供目線の「大人批判」映画です。

「判ってくれない大人」の代表格として、「教師」「母親」「父親」が出てきます。

・教師は判ってくれない!
物語冒頭で、授業中に生徒たちは女性のグラビアを回しています。それが主人公・ドワネル少年の元に回ってきた瞬間、教師に見つかってしまいます。ドワネル少年だけが叱られ、「ずっと立っていろ」と罰せられるドワネル少年。「何でオレだけ…」と、懲罰を不当だとする不満を壁に書き出してしまうドワネルなのでした。
他にも教師が出てきますが、どの教師も生徒いびりが大好きでいけ好かない人物ばかりです。生徒を叱咤しては愚か者と決めつけます。「叱咤激励」というよりは、「叱咤侮辱」という感じ。この時代も現代でも、子供は「なにくそ精神」で這い上がるなんてことは稀です。あからさまに見下げた態度をとられると、子供は、大抵はひねくれるか、へこたれるだけです。「褒めてやる気にさせる」ことが基本です。子供も大人でも、褒められたら良い気分になって頑張ろうと奮闘します。
山本五十六の名言にもある通り。「やってみせ。言って聞かせて、させてみせ。褒めてやらねば、人は動かじ」


・母親は判ってくれない!
ドワネル少年と母親には確執があるようです。
おそらく、母はドワネル少年のいい加減な所、生意気な所が気に食わないのでしょう。母は仕事と家事の両立に疲れ、夫への不満も抱え、常にカリカリしているのでおおらかな気持ちで子供と接することができません。親子関係は一度こじれると、互いに「甘え」があるだけに修復が難しかったりします。
おまけに、母は浮気に専念しており、その姿をドワネル少年は目撃してしまいます。
目撃後、急に優しく接してくる母の思惑が、かえってドワネル少年の心に悲しい影を落とすのでした。
本作では、ドワネル少年の母親の気まぐれは強烈です。
一番判ってくれず、一番判ってほしいのは、この母親なのですが、急に優しさを見せたり、「子供が不要だ」と最大の禁句を言い放ってしまったり、非常に不安定です。
ドワネル少年は、母親の愛情に飢えています。
学校のずる休みの理由として「母が死んだ」と嘘をつくのは、母親への渇望の裏返しだと思います。そのことは、ラストシーンで「母なる海」に向かうドワネル少年の疾走にも感じました。
心理学的に、母と息子は一心同体とも言われているそうです。
母親の日々のイライラは、息子にも伝染して非行へと走らせます。
母親は、出来るだけ元気に、笑顔であるべきなのだと思います。(無論、夫がそうなるように力を尽くすことが重要ですな)

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・父親は判ってくれない!
物語の冒頭では、物わかりの良い父親の役割かと思っていました。叱咤することもなく、ドワネル少年に優しいからです。母親がドワネル少年にきつく接することを気にしており、ドワネル少年をなぐさめる場面もあるくらいです。
しかし、この父親はドワネル少年の本当の父親ではありませんでした。
父は、ドワネル少年が窃盗を犯したことを知った途端、とうとう堪忍袋の緒が切れ、警察に突き出します。少年鑑別所に入れてくれと警察署長に頼み込みます。
もはや、ドワネル少年を放り捨てる姿勢を見せつけるのでした。
生意気なことを言いますが、親とは子供がたとえどんな悪人になろうとも、最後まで愛し続ける存在であるべきだと思っています。たとえ子供が「殺人犯」になっても、です。
時折、ワイドショーなんかで、「殺人犯」の両親にインタビューをしている場面があります。その時に、少しでも親が子供を庇うような発言をすると、「不謹慎だ」「反省のない親だ」「犯罪者を庇うなんて許せない」と好き放題に攻撃的な意見が溢れますが、私は個人的に、「犯した罪は当然反省させるべきだが、たとえ世界が全て敵に回っても、親は最後まで味方であり続ける義務がある」と思っています。それが、真の親の愛情というものではないでしょうか。「お利口だから愛する」「言う事を聞くから愛する」なんて、そんなの条件付きの愛なんぞ、「愛」ではないと思います。それは過保護でもなんでもなく、「なにがどうあれ、子供は愛おしい」という姿勢でなければ、親の愛情は子供に届きません。子供はシビアに見ています。時には「親の愛」を試そうと、あえて「悪事」を働くことがあります。その時、「叱咤」するのは当然ですが、同時に、「愛情」を伝える努力が必要なのです。

さ、話しを戻しますと…

結局、本作の父親は、ついにはドワネル少年を見捨てるのでした。
その瞬間、今までの「優しさ」と「寛容」は、全て「嘘」になってしまいました。
いうなれば、これまでの「優しさ」は、単に本当の子供ではないための「無関心」「無責任」の行動の帰結に過ぎなかったとも見えるのでした。

 無題3


私は職業柄、中学生以上の学生と接する機会が多くあります。
つたない経験から感じる事ですが、ドワネル少年を非行に突き動かした要因は、確かに「大人」にあるようです。
これは、現実の非行の問題も同じ。
例えば、不登校になるほど心の傷を抱えている生徒の境遇を見ていると、どうしても「家庭」や「学校」に問題がある場合が多く見受けられます。
「不登校」の原因は、全てが「親」のせいだと断罪することは出来ません。出来ませんが、要因の一つである場合が多いのは、事実です。ある「不登校生の矯正施設」では、親に大量の反省文を書かせるそうです。「親が変わらねば、子供も変わらない」という考えだそうです。ちょっと極端なやり方かもしれませんが、しかし、不登校の対応に携わる者として、「現実的な考えだ」とも思います。
学校の先生の過剰な叱咤のために「自信喪失」に陥ったり、最悪、自殺を考える生徒もいます。学生の自殺を食い止める事が出来るのは、担任の教師だけという考え方もあるそうです。最後の砦である担任の教師が、その生徒の抱える問題に「無関心」だったり、「無理解」だった場合に、生徒は最悪の決断をしやすいとも言われています。

ただ、確かに思春期の子供の心理は、非常に難しいものです。
子供は、時に自分自身のことを「何ものにも代えられない稀有な存在だ」と感じることもあれば、次の瞬間には「全く無価値だ」と落ち込んだりし、激しい感情の波に揺られています。
不条理なほどに強烈なプライドを抱えると同時に、失敗を異様に恐れる臆病者だったりもします。
接し方を間違うと、何を言っても反抗したり、殻に閉じこもって耳を塞いだりします。
どんな時にでも、「かけがえのない存在」であることを、子供に疑わせないようにする周囲の大人の努力が必要なのです。もちろん、それは容易ではありません。

大人は判ってくれないと言いますが、大人だって、判りたいと思っているのです。
子供だって判ってくれないじゃないか、と大人は思っているくらいです。

無題


本作では、最悪の事態は教師による「無理解」から始まり、両親の「無責任」でとどめを刺します。
ドワネル少年は、本来は良い子です。よく手伝いをするし、人の気持ちを汲むことも出来るし、真似事でもバルザックの詩を理解しようとする賢い子どもです。
「バルザックの詩を盗作しやがって!」
教師に罵倒され、母親の期待を裏切ったショックで、彼はまたもや家出をします。
食べるために窃盗を働き、ついには鑑別所に入れられるのでした。
警察に捕まった理由が、盗品を元の場所に返しに行った時だった、という不運と不器用さが切ないです。

ドワネル少年は、母親から最後通告を受けてしまいます。
それは、「絶縁宣言」のようなものでした。
ドワネル少年は、少年鑑別所を脱走します。
疾走します。
長い長いカットです。
目的があるかのように、目指す場所があるかのように、休むことなく、ぐんぐんぐんぐん走り続けます。
しかし、ついに海辺に到達したドワネル少年は、行き場を失くし、その場をさまようのです。
ラストカットは、ドワネル少年のうつろな表情で終わります。

深く、心に沈み込んでいきそうな、悲壮なラスト。


果たして。
誰が、彼を、救うのか。


  

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Posted on 2013/07/28 Sun. 16:38 [edit]

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