素人目線の映画感想ブログ

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船を編む 見てるだけで肩凝った。 


舟を編む 通常版 [DVD]
船を編む
 (2013年 日本映画)88/100点


作中で、「右」を説明せよと言われて頭を悩ませました。

確かに、「辞書」ってありとあらゆる言葉を説明しているんですよね。
当たり前な言葉ほど説明するのは難しい。
それで、本作に出てくる難しい語の代表が「右」なわけです。
本作中では、様々な「右」の説明アイディアが出されます。
「北を向いたとき、東にあたる方」とか。
「時計の3時の方向」とか。
「辞書の偶数ページの方」とか。
「10という数字の0の方」とか。

素晴らしい表現手法だなあとアイディアの数々に思わず唸ります。
私なんか、「右とは・・・

左でない方かな…?」とか思っちゃったくらいなんで、なおさらです。

それにしても、昔から不思議に思っていたものです。
こんなに細かく、大量の言葉を説明している「辞書」って一体どうやって作ってんだろうと。
「言葉」なんて、この世に無数にあるものをどうやって集めているんだろう。
誰が説明文を考えているんだろう。
何人で作っているんだろう。
どれくらいの日数で出来上がるのだろう…。

その謎を明かしてくれるのが本作なのです。これは、辞書作りの尊い尊い物語。

 船3
(加藤剛の存在感が光ります。よっ! 大岡さばき!)


驚きました。こんな4,5人程度の部署で辞書を作っているとは!?
主人公のマジメ君(馬締君・松田龍平)と責任者の国語学者・松本先生(加藤剛)、チャラ男な先輩社員(オダギリジョー)、事務作業員のおばさん(伊佐山ひろ子)だけ。
終盤ではアルバイトを雇ったりしてにぎやかになりますが、基本、社員はこれだけです。
つまり、出版社にとって、辞書編集部とは、あまり重要視されていない部署ということなのです。
そのために、途中で「辞書作り中止」の動きが出てしまったりします。

オダギリジョーは言います。
「電子辞書が中心になったら、紙の辞書なんて売れなくなるって判断じゃね?
的を得ています。
主人公・マジメ君とオダリギジョーが直談判した局長が言います。
「君たちもサラリーマンなら、自分の給料分くらい稼げよ」と。
これも…的を得ています。
主人公・マジメ君は、辞書作りの中止要請に怒り心頭です。普段感情を見せない彼が感情を剥きだしてますから相当でしょう。しかし、社員として働く以上、「売り上げ」を気にするのは当然のこと。しかし、マジメ君はそういう発想がありません。その点からも分かる彼の社会性のなさは、人によってはイライラする描写かもしれません。
好きな事を仕事にする。それを一生涯の仕事にする。というのは、マジメ君の下宿屋の御主人も言っていたように素晴らしい事です。しかし、会社組織の中で働く以上、「売り上げ」意識は最低限必要です。好きな事だけやってればそれでいいという世の中ではありません。私も、マジメ君の意識の低さはちょっと引っかかりました。
しかし。
局長はその後、「他の現代風の面白辞典」も作る事と、オダギリジョーを部署変えするという条件で、辞書作り続行を承諾します。のちに協力的になったりもします。ちょっと簡単すぎかなーと腑に落ちませんでしたよ。そうそう、条件である「他の現代風の面白辞典」を作っている描写もなかったので、その辺りのハードルのクリアの仕方が曖昧だったように思います。

 船2
 (後ろの真ん中にいるのは背後霊ではありません。主人公・マジメ君です。)


その後、順調に辞書作りは続けられていきます。
辞書は「大渡海(だいとかい)」と名づけられました。
なかなかのネーミングセンスです。
グラサンかけた刑事がヘリの上からスナイパーライフルをぶっぱなしそうな、この世の混沌を表現しているようでいいですな。(それ「大都会」ね!)
かつて007にも出演した大御所日本人俳優が提唱した、まさに死んだら驚いた不思議な世界までも表現しています。(それ「大霊界」ね!)
眼光鋭い占い師が決めた人生の困難期さえ象徴しているような…(それ「大殺界」ね!)
あなたのそば~で~暮らせるなら~ば~つらくはない~わ~。(それ「東京砂漠」ね!)(?)


…というわけで。

出てくる出演陣の豪華さというか、うまさに惹かれます。
加藤剛演じる、実直で物腰の柔らかい国語学者が、柔軟な発想の持ち主で素晴らしいです。小林薫演じる、秘めた感じが渋いベテラン編集者も味わいがあります。特に、オダギリジョー扮する先輩が、チャラいながらも妙に頼もしくて良かったなー。オダギリジョーってこういう自然体の役柄になると、途端に抜群の芝居を見せてくれます。

マジメ君は本当に頼りない感じの人間ですが、純粋に本当に真面目なために、周りが何とか助けてあげようと思える好人物なんです。マジメ君のために一肌脱ごうとするジョー先輩は、自分でも何やってるのかわからないほど、マジメ君のサポートにまい進。何故か影響されて、遊び相手のはずだった彼女と結婚まで決意します。年月が立ち、子煩悩な電話をしながら再登場する姿は笑えました。うまいなー。

辞書作りは本当に細かく、作業量の膨大さには息をのむほどです。
様々なトラブルにも見舞われます。
「ガイアの夜明け」的に言うと、「マジメさん、窮地に陥りました(by蟹江敬三)」みたいな。
途中、1個のミスを見つけたがために全てを始めからチェックし直す姿は、見ているだけで肩が凝ってしまいそうなほどでした。けれど、やはりみんなマジメ君のためにひと肌脱ごうと、バイト学生まで徹夜で作業する一致団結の美しさは、まさに日本人好み。あの作業の仲間に入りたいなーと思いました。「売り上げ」を気にせずに好きなことして働く幸せもまた、うらやましいものです。そして、夜食の焼きそばがうまそうだったなー。

さて。

肝心の宮崎あおいの件について。実はここ、個人的には難所でありまして。
物語序盤では、マジメ君と宮崎あおい扮する下宿屋主人の孫娘・かぐやとの恋愛が描かれることになります。
憧れている女の子とひとつ屋根の下で暮らす…めぞん一刻的なミラクルシチュエーションに象徴されるように、正直言いますと、リアルな辞書作りの流れの中での、この完全ファンタジックな二人の恋愛には、うーん乗れなかった。マジメ君がかぐやに一目惚れする描写は古臭いし、とんとん拍子に恋が成就する流れは非現実的だし(やっかみではあるけれど)。はっきり言って、これなら最初から「夫婦設定」にしてもらいたかったくらいです。なれ初めのシーンは蛇足です。
さわやかではありますけどね。
さわやかに耐性のない私が悪いのですけどね。
けどなー、宮崎あおいの元・旦那のイメージがあると、なんか嘘くさいんですよねー。意思表示がからっきし不得手な上、常にローテンションのマジメ君なんかとくっつくかなーって。…うーん、女優さんってイメージ大事ですな…。

ただ、二人が住んでいた下宿の雰囲気は良かった。シンとしていて、それでいて温かみがあります。ジョー先輩と彼女がマジメ君の部屋で寝ている傍で、マジメ君とかぐやがひっそりと廊下で話す感じがすごくリアルと言いますか…、ここに住みたいなあと思わせます。

 船4
 (6年越しの恋だった五代君が観たら、発狂間違いなし。)


難点も感じながら、でも全体的には好感のある作風。
終盤、辞書作りにかかる膨大な年数のために、ある「成し遂げられなかった課題」が胸を打ちます。
悲しみの果て、爽やかに終わるラストが秀逸。
本当に辞書作りって大変。けど、下手ながら文字を書く趣味を持っている自分には、とても魅力的な仕事に感じました。
思わず辞書を手にとって、いろんな説明を読みたくなりました。
「右」以外にも、いろんな難しい言葉があります。
例えば…
「時間」とか。
「空間」とか。
「平ら」とか。
「丸」とか。

斬新な発想が転がっていそうで興味深い。辞書の中には、まさに言葉の海が広がっているのです。
まさに「大渡海」なわけです。「東京砂漠」ではありません。

そうだ。
辞書以外にも、作るのに膨大な作業量を強いられそうなものがあります。
それは「車のナビ」です。昔から、どうやって作っているんだと不思議に思っていたのです。
全国津々浦々の道をコンピューターに入れ込むって…一体どんなに大変なんだろう。
今度は、「ナビ作り」の映画も見てみたいものです。

あ…それこそ「ガイアの夜明け」でやってそうかな…?


   

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Posted on 2014/02/25 Tue. 01:30 [edit]

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