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凶悪 喝采! リリーフランキーとピエール瀧! 


凶悪 [DVD]
 凶悪
 (2013年 日本映画) 90/100点


何が凄いって、普段バラエティで見かけるリリーフランキーとピエール瀧が、もはや人殺しにしか見えなくなったところでしょう。お二人のファンにとっては、それはそれはショックで青ざめるほどの「凶悪さ」です。
ここまで凄い「悪人」を演じられてしまっては、「アウトレイジ」が霞んでしまいますわい!

「アウトレイジ」の三浦友和や加瀬亮の悪人への変貌ぶりも素晴らしかったんですが、こちらは芝居とは思えないほどの「ほんまもん」の狂気がありました。すでに、本作を見た方々が口を揃えてこう言っています。きっと彼らは、本当に人を殺した事があるのだと。

それほど、リリーフランキーとピエール瀧には感服しました。
二人の芝居が楽しい楽しい。
とはいっても、物語はひたすらに「凄惨」です。鑑賞には覚悟が必要です。


<あらすじ>
記者の藤井( 山田孝之)は、連続殺人犯の死刑囚・須藤(ピエール瀧)から、『先生』と呼ばれる首謀者・木村(リリーフランキー)の存在を明かされる。藤井は、須藤と木村の犯した殺人事件を調べる内、周囲を顧みないほど事件にのめり込んでいく…
というお話。


今回、本作のテーマについて言及したいので、ネタバレです!


登場人物をご紹介!

【須藤】特徴:わるい、そぼう 口癖:ぬーん ぶっこんでやっからよー 一言:チュウチョなくコロしすぎ。

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ミラクルさんの面影ないし! (ミラクルさんは、そもそも声だけ)
「ぬーん」て言わないピエール瀧。
というか、本当にヤクザにしか見えません。何度も言いますが、彼の本性はきっとこうなんだろーな…と思い込んでしまう程、おっそろしい男になっていて…ある意味、彼のキャリアにとっては損かもしれないと心配になるほどです。ちょっと古いけど、以前のファブリーズのCMで見せていた良きパパの姿は微塵もありませんよ。

須藤は複雑な心理を抱えています。
普段は粗暴なヤクザものです。人を殺すことに何の躊躇もありません。しかし、時には殺人を後悔したり、被害者へ線香をあげたりします。やけに礼儀正しかったり…。しかし、気に入らないとすぐに怒声をあげたりもします。
個人的に…普段は凶悪だけど、たまに人間味を見せる…というこの手の人間は、やはり非常に胡散臭いものだと思います。ギャップ効果で、「ホントはいい人なのでは?」と見られることもありますが、冗談じゃない。
彼が線香をあげたり、殺しを後悔したりするのは、ただの「バランス取り」です。そういう意味では人間味があるとも言えますが、彼は反省した態度をとることで、単に罪悪感をチャラにしようとしているだけです。だから、こういう人は決して心から改心することは…断言はしませんが、難しいと思います。

ゆえに、彼は警察に捕まるまで、ひたすら私欲のために人を殺し続けるのでした。


【木村(先生)】 特徴:わるい、へんたい 口癖:ニクのヤけるいいニオいがするなー 一言:ウレしそうにコロしすぎ。

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「東京タワー(フランキーの小説)」の感動が!!
須藤とは打って変わって、こちらは知能犯です。地主を殺して奪い取った土地を転がしたり、保険金をかけて殺したりと常軌を逸した「あくどさ」です。おまけに人をいたぶることに快楽を感じる変質者でもあります。共感能力のない、圧倒的犯罪者気質の男です。リリーフランキーがこれまた凄い。「ホンショウをアラわしたなこのヘンタイめ もともとおかしいと思ってたんだよ いいともにダッチワイフをもちこむくらいだもんなーこのヤロウ!」と、うっかり本人を目の前に声を荒げてしまいかねないほど、本当に堂に入った演じっぷりです。
木村は、須藤以上に「悪」です。冷静に淡々とした雰囲気で、時に困った人を助けるそぶりは紳士なのですが、一瞬で空気が変わる「恫喝」の凄味といったら、もう。


【藤井】 特徴:くらい、へんたい・・・かも。 口癖:へんしゅうちょー! 一言:カゾクをほったらかしすぎ

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主人公です。記者で、常に暗い雰囲気を醸しているキャラクターです。どことなく、悪人側の二人においしい所をもっていかれて目立たない感じですが、きっちり山田孝之が演じています。いつもの山田孝之だー、という感じです。寡黙でいい人だけど変態っぽいキャラ代表、山田孝之。
しかし、彼自身の取材力のおかげで木村は追い詰められていきます。しかし、彼は事件にのめり込むあまり、家族の抱えた介護問題から目をそむけ、奥さんから愛想をつかされる羽目に陥ります。


【奥さん】 特徴:イケワキチヅル 口癖:シュウチャン! 一言:シュウチャンシュウチャン、イイすぎ

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藤井の奥さんです。自宅で痴呆になっている藤井の母親の面倒を見ていますが…家族を顧みない旦那の態度に、我慢の限界を感じています。池脇千鶴って、やっぱ薄幸のキャラクターが似合いすぎるなあ。夫の内面にある闇の部分を、グサリと指摘して見せる重要な役どころでもあります。彼女は夫の事を「しゅうちゃん」と呼びますが、この可愛らしい呼称が、圧倒的に山田孝之に似合わないことといったら。

さて、やっとこさ物語について。

まず構成が面白い。そして、そのつなぎ方が抜群にうまいです。

序盤:藤井と須藤が面会室で出会います。須藤が藤井に、木村の犯罪を暴いて記事にし、木村を追い詰めるようお願いします。

中盤:過去の須藤と木村の犯罪の数々が展開します。物語冒頭でちらりと見せていた殺人事件の詳細を見せ、そうだったのかーと見事に伏線回収します。

終盤:藤井が、取材によって木村を追い詰めていきます。藤井の家族も崩壊寸前です。

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序盤から中盤へのつなぎ方は…藤井が、とある家屋の中を窓から覗くと、そこで過去に木村が犯した犯罪の様子が出現するというもの。そしてそこから、木村と須藤の過去の物語が始まります。
そして1時間ほど過去の物語が進んだ後、木村がとぼとぼ歩いているところに、離れた車の中からカメラを構えている藤井が現れます。…何の説明もなく、突然に過去から現在に到達した瞬間を描くスゲー気持ちのいいタイミング! これには相当な監督の手腕を感じました。

中盤の「殺害場面」の数々は、相当に凄惨です。被害者には自業自得の人たちもいます。いますが、それでも過酷な仕打ちに嫌気がさします。死にたくないです。助けてください。と泣きつく老人に、「早く死ねよ」「みんなそれを待ってるんだよ」と容赦なく吐きつける須藤。致死量の酒を飲ませ、スタンガンで痛めつけてニヤリニヤリと笑っている木村。
中盤は終始そんな感じです。嫌気を通り越して、何と言いますかめっちゃ楽しいです。なんなんですかねー。相当に残酷なんですけど。やっぱり、二人があまりにテレビとギャップの違う芝居を完璧に演じているモノだから、もう楽しくって。目を背きたくなるほど過酷な犯罪描写ですが、ある種ファンタジーとして楽しめばいいのではないかと思います。あ、本作は実話ですけどね。(脚色はありますが)
ただそれによって、本作のピークは中盤に迎え、須藤と木村が大人しくなっていく終盤は失速感が否めません。

途中で。

木村と藤井が、家族や舎弟を交えて、クリスマスパーティーをやっているシーンが印象的です。ただの普通の家族にしか見えません。彼らは、普段は普通なのです。子供たちにプレゼントを用意し、子供の喜ぶ顔に幸せを感じている普通の親なのです。この時の子供をあやす須藤は、唯一ピエール瀧に戻った瞬間でした。もちろん、この直後にも、人を弄る描写は続きます。「凶悪な人間」と「普通の人間」の境界は紙一重。本作のテーマを描き出します。

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さて。

終盤は、前述した通り木村を追い詰める物語です。なかなか動かない雑誌会社を説得。なかなか動かない警察組織を説得…と藤井はたくさんの困難を乗り越えていきます。

しかし。

藤井は、この事件に狂気を纏ってのめり込みます。ほとんど当事者意識です。木村と須藤を厳罰に処せなければならないと、藤井は強く想うのでした。

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キリスト教に入信し、詩を書き、「生きる実感」を感じているとのたまう須藤に、藤井は「あなたは生きちゃいけない」と辛らつに告げます。それを聞いて須藤は、「でもね、神様が生きて償えと言ってるよ」と澄まして答えるのでした。

終盤、本作はちょっとした「死刑賛成・反対論」の物語に転換します。

私はどちらかというと、「賛成派」ですので、この須藤の態度にはいらつき、藤井の考え方に共感しました。よく死刑反対論の一つに、「改心の余地があるから」というのがありますが、「無残に人を殺し、改心する権利あるんですか?」と言いたいです。冤罪の問題もあるので、反対論に一利あることは分かりますが…私は、本作の二人のような、「人でなし」は確かに存在すると思います。
須藤が藤井に真実を話すことで木村を追い詰めたのは、これまでの償いのように見せかけて実は、死刑を免れる情状酌量のための作戦でした。
そもそも改心すら、反省すら出来ない人間は存在するのです。

とはいえ。

本作は、もちろん「賛成派」のための一方的な描き方をしません。
証拠不十分のため、木村は無期懲役に処せられます。「そんなのおかしい」と憤る藤井に向かって、木村は「オレを殺したがっているのは被害者でも須藤でもなく…」と藤井を指差します。
藤井の妻は、「この事件、面白かったんでしょ。私も面白かったもの」と指摘します。さらに、「私だって、あなたのお母さんを殴ったもの」と告白します。
つまり。
人間、誰しもが「木村・須藤」の面を持っている…ということ。
同じ穴のムジナが、偉そうに断罪する権利なんかあるのかよ…と。
これが本作のテーマなんですが…

しかし。

断じて違う。

と個人的に思います。

「人は誰でも闇に堕ちうる」と言いますが、普通の人が須藤や木村になる可能性は、私は皆無だと思います。
彼らは、やはり特別です。
人が殺される描写を楽しいと思う残酷な気持ちは誰にでもあるとしても、実際に実行する者とそうでない者との距離は、果てしなく永遠なほど離れていると思います。
共感能力の欠如、ドS根性、常軌を逸した我欲、無慈悲…おおよそ犯罪者気質なるモノは存在します。ただ究極で言うと、そんな気質を持って生まれたこと自体が、殺人鬼の「悲しみ」だと言えるのかもしれませんが。
そういうわけで、本作のテーマに関してはちょっとノレなかったし、また、ちょっとありふれたモノだったようにも思います。

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というわけで、真面目に書いちゃった。
とにもかくにも、この芝居を見過ごすなんてこたあ、それはそれは大きな損ですから!


本作を見た後に、↓こういう「やり取り」が実に楽しい。
殺人シーン撮影の合間に、ピエール瀧とリリーフランキーが「動物の森」で一緒に遊んでたなんて話、なごむわあ。




  

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Posted on 2014/04/29 Tue. 20:26 [edit]

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