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オオカミは嘘をつく タランティーノは嘘をつく!? 


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 オオカミは嘘をつく
 (2013年 イスラエル映画) 79/100点


ポスターにデカデカと表示されているように、タランティーノが「今年のナンバー1だ!」と言ったとか言わないとか、いや、言ったからこそ宣伝に使われているのでしょう。タランティーノファンの私ですから、やっぱりその謳い文句は気になってしまうわけで。しかし、本作公開の2013年。毎年発表される「タランティーノが選ぶ今年のお気に入り映画ベスト10」に、まんまと本作が入っていないという衝撃。映画会社も真っ青の結末(知っていたのかも)。そっちの方が驚いた!

たぶんタラったら、本作を見終わった瞬間のテンションでは「スゲーよ、コレ。ナンバー1だよ!」と興奮していたのでしょう。その後、次第に冷静になっていったのだと思います。もしくは、2013年度初頭に鑑賞したのかもしれませんが。そんな一瞬の発言を切り取ったとはいえ、タランティーノが「スゲー!」と思ったのですから、一見の価値があるのではないかと。

で。

珍しいイスラエル映画として観ると、イスラエルの人の感覚であるとか考え方や文化的な背景なんかが垣間見れて、そこが興味深かったように思います。

てゆーか。

タランティーノの琴線に触れたのは、間違いなくここ。いわゆる本作が「拷問映画」だというところ。鑑賞にはいささか勇気がいります。所々、目を伏せながら鑑賞したものです。拷問志向のタランティーノは、まさにそこに心を高ぶらせて上記の発言をしたのですな。その後、「ええ加減にしとけ…」と誰かにたしなめられたに違いありません。

タラ
(「お ち つ け」と諭されるタラ氏)


あらすじは、「1人の少女が行方不明になり、その後無残な遺体で発見される。刑事ミッキは、容疑者の男・ドロールを拉致し、尋問しようとするが、少女の父親・ギディもまた、容疑者への憎悪に駆られ、おぞましい拷問の準備を進めていた…」というお話。

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『プリズナーズ』にことさら似ています。
しかし、あちらとは異なり、本作ではすでに娘は殺されているのですから、拷問の目的は「娘の遺体の一部」をどこに隠したのかを探すため、という実にやるせないもの。ある意味、すでに物語は終わっているのです。
誰も救われない。誰も得しない。誰にも理解されることがない。ただただ、容疑者の男がいたぶられる無残な拷問劇が幕を開けるのでした。

ただ。

さぞや凄惨な映画だと思われることでしょう。
ところが本作には、どういうわけか、そこはかとない「コメディ要素」が味付けされています。
この要素の受けとめ方で、本作の賛否が分かれるところです。
個人的には。
猟奇殺人とコメディのバランスは、『殺人の追憶』がピカイチに凄かったし、あちらは、警察の間抜けな捜査への皮肉が利いていて、それが事件解決の遅れにリンクしていたので「意味」もあるものでしたけれど、本作の笑いには、今一つノリにくい気がしたのです。
警察署長の息子が刑事・ミッキに威張り散らす場面だとか、少女の父親・ギディが拷問の途中に軽快な音楽と共にケーキ作りをしてみたりだとか…。

それ、いる?

という感覚があったのは事実です。
けど終盤で、ある人物が突如拷問に参加するくだりはクスっとなりました。さっきまで拷問に反対していたのに。いざとなると一番凶悪だったとは! 『アウトレイジ ビヨンド』で、揉め事に終始浮かない顔をしていた大友(ビートたけし)が、いざとなったら一番ウキウキして電動ドリルを握っていたあの感じ。

ということで、若干日本人の感覚から逸れている気もするブラックジョークに彩られた、なかなか不思議な雰囲気の本作です。

登場人物はあまり多くなく、前半からの流れはいたってシンプル。だから、「誰が本当の犯人なのか?」と推測できる人物は極めて限られています。

・刑事・ミッキ 犯人の可能性40% 彼の謎:主人公なのに地味
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暴力刑事です。しかしその原動力はあくまで正義感。出世欲や自己顕示欲で動くわけではないので、基本良い人に思えます。しかし、なかなかのドジっ子で、ギディに二度も昏倒させられる失態を演じてしまいます。つーか、一応主人公なのでしょうが、地味な風貌の為に分かりづらい。誰を主軸に鑑賞すれば良いのか、序盤は少し迷いました。


・娘の父親・ギディ 犯人の可能性80% 彼の謎:驚きの年齢設定
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父親が犯人ってのは、アンビリーバボー的で定番ですな。まさかそんな定番はないだろうと思うのですが、容疑者への執拗ないたぶり方が正気とは思えず、おまけに楽しげに薬剤入りのケーキを作り始めるものだから、異常性を見せ、一躍犯人説のトップに躍り出るのでした。おまけにこの風貌にして45歳設定という謎のキャスティング! 彼の年齢が判明した時が、本作で最も目を丸くした瞬間でした。ギディの親父も出てきますが、あんまり風貌に違いがないんだもの。『酔拳2』に出てきたジャッキーチェンと両親を思い起こさせる程の無理やりな親子設定。それから、宣伝用ポスターでも、何気に彼が一番ドヤ顔に見えるのは気のせいでしょうか。
それにしても、容疑者への脅しの二択が「苦しんで死ぬか、苦しまずに死ぬか」ってのは、駆け引き能力に疑問あり。


・容疑者・ドロール 犯人の可能性30% 彼の謎:痛みの耐性
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冒頭から拷問の憂き目に遭っているとても可哀想な人。職業は教師。ほぼ証拠もないのに、警察から、被害者の父親から、職場の上司から、生徒から、みんなから疑いの目を向けられています。ほとんどイジメです。腹が立ちます。彼の唯一の希望は、自分の娘のようです。彼は言います。「娘を持つ者が、少女を殺すわけがないだろう」と。しかし、拷問者たちは彼をとことんまで拷問し続けるのであります。しかし、これ以上続けるとシカゴ大火災だって放火したと白状するぜ(『レザボア・ドッグス』より)と思えるほどの拷問を受けても、何故かそこまで痛そうに見えません。これは意図的なのか、芝居・演出の問題なのかは分かりませんが…。

<以下、犯人が誰かは言いませんが、ほぼネタバレです。>


・ギディの親父 犯人の可能性60% 彼の謎:人が焼ける匂いが好き
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彼には笑った。息子のひどい拷問場面を目撃し、「やめるんだ」とギディを説得します。唯一まともな人間が現れたとホッとしたのも束の間、突如ギディに理解を示し、あろうことか「…火責めは試したかね…?」と耳を疑う提案をする始末。そう、狂気に駆られた登場人物だらけの中、終盤に登場した彼こそ真のボスだったのであります。「動物と一緒なのだよ。人間も火が苦手なのさー!」と鬼畜にはしゃぎます。「お前誰よ…?」と言いたげなミッキとドロールのあんぐりした顔が見もの。


ということで、我々鑑賞者にとっての容疑者はたった上記4人なのであります。

そして。

確かに驚きました。

この結末。

「犯人が誰か」が、本作の胆ではありませんでした。

思慮の浅い「行き過ぎた暴力」が生み出す強烈な悲劇だったのです。

勘のいい人は結構早めに気付けるそうですが、私は、ミッキの言いつけ通りにドロールがウソの遺体の隠し場所を話した後、確認のためギディが一目散に車を飛ばす所でハッとしました。確かに油断していたのでドキリとしました。

そしてその直後。
本作には、もう一つの事件が隠されていたことが分かります。

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これがなんたる後味の悪さ…。
完全にブラックに終わるこの結末は、確かに「ほほー」と唸らせるものがあります。
だけど、不思議な事に、最後の悲劇に見舞われたある人物のリアクションが、若干弱い気がするのは気のせいでしょうか。
それとも、これがリアルなのでしょうか。
そういった、見慣れた国の映画とは何か少し違う感覚が、逆に面白くも感じました。

まー、この人は「拷問映画」なら、何でもいいんでしょーけれどね。

タラ2
(ちょっと反省してみるタラ氏)


 

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Posted on 2015/06/30 Tue. 14:11 [edit]

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