素人目線の映画感想ブログ

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メッセージ /異星人が、見切り発車でやってきた。 


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 メッセージ
 (2017年 アメリカ映画)  80/100点


各方面から、絶賛の声が聞こえる本作。
センチメンタル系のSFでもあり、異星人とのコミュニケーション描写にリアルさを追求した骨太なSFでもあります。
とりわけ、独自性の強い演出が印象的です。そういった点からも、本作が傑作であることは確かです。

が。

正直に言うと、個人的に気になった点もちらほら。
どうせ絶賛されていることなんだし、ここでは、気になる点を含めて書いていこうと思います。


<結末までネタバレしています。>

メッセージ4


未知との遭遇をリアルに描く様子が、ジョディ・フォスター主演の傑作SF『コンタクト』のようだと言われています。けれど、『コンタクト』は宇宙から発信されてきた謎の電波信号から、宇宙人の存在を解明しようとしました。その「地味さ」が、かえってリアリティを増幅させていました。
それに比べ、本作は序盤から宇宙船らしき巨大建造物が飛来してくるし、それが物理現象を丸無視した浮遊をしてみせるものだから、荒唐無稽感は否めません。

また。
『コンタクト』では、政府の役人の対応にもリアルさがあり、まるで実話のようにさえ感じたものです。しかし、本作冒頭で言語学者である主人公の元にやってくる軍人は、いきなり異星人が喋っているテープを聞かせ、「何て言ってるの? どんな様子なの? 分かるんでしょ。学者さんですもんねえ。…ねえ。はよ。プリーズ」と無茶ぶりをかまします。「いや…、実際会ってみないと…」と至極まっとうな反論をしても、「みえみえだな! 会わせねーし!」とキレ出す始末。高名な言語学者でも首をかしげる未知の言語…という説明的なシーンだったのかもしれませんが、この軍人の話の分からなさも宇宙人レベル。この乱暴な描写に、出だしからちょっと不安になるのでした。

そして。
ついに異星人がその姿を現した時には、度肝を抜かれました。
ま さ か のタコ型! 
異星人が出てくるSFは、その造形が斬新だったり、怪物みたいだったり、はたまた今や一般的になった「グレイ」と呼ばれる姿である場合が多いですが、まさか往年の火星人スタイルを踏襲してくるとは。文明がはるかに進化を遂げると、人間もあんな風に変化するのでしょうか。ぬめった肌を、服を着ることもなく、人前に晒すのでしょうか。確かにあの図体でパンツなんか履かれたら、まるでデカパン先生ですけど。

そんな異星人を目の前にし、主人公・ルイーズ(エイミー・アダムス)は、持ち前の言語知識を駆使し、何とかコミュニケーションを図ろうと奮闘します。
これは、「異星人との言語でのコミュニケーション」を、学者の視点で、真面目に描く映画なのです。その先にある目的は、「この異星人たちは、一体、何をしにきたのか?」の解明です。
異星人が次々に示す「円形文字」を調査し、彼らの意図を探ろうとします。このあたり、とても学術的な描写で興味津々。考えてみれば分かることですが、異星人は決して、「ワレワレハ、ウチュージンダ」などと言うわけないのです。ましてや、「全宇宙一の強戦士、サイヤ人の誇りを見失ったのか!! カカロットよ!!!」等と分かりやすく叫んでくれることもありません。本来は、文字も含めてゼロからのスタートなのです。無論、文化や表現方法、倫理観や常識的な思想も地球人と一緒とは限りません。主人公がたくされた翻訳作業は、困難を極めながら進んでいきます。このリアルな描写はとてもいいですね。『シン・ゴジラ』がリアリティを追求して面白くなったように、本当の世の中でこういった出来事が起きたらどうなるか? それが最近の風潮です。現代社会に、実際いつ何が起きるか分からない不安があるからこそ、そういった描写に食いついてしまうのかもしれません。

ただこの作業、意外にも着々と進みます。終盤でだいぶ「会話」に近づいているのには、圧倒的な置いてけぼり感がありましたよ。随分とまあ、優秀だなーと。

メッセージ1


で。

そこで異星人から出てきた言葉「武器(weapon)」を聞いて、各国首脳は上へ下への大騒ぎ。
やっぱり侵略のつもりだな、こんにゃろー! と戦争準備を進める国もある始末。「武器を提供して、各国を戦争させ、弱った隙を突くつもりだな」と息巻く姿は、被害妄想レベルのような気もします。それと本作では、中国が一線を越えようと動き出すのを、主人公が必死に止めようとしますが、いやいや…、真っ先にやりそうなのはあんたたち(アメリカ)でしょ。自分たちが冷静な平和国家のつもりだもんなあ…。

ただ、異星人も軽率ですよ。失言政治家ばりの配慮のない言葉使いです。もしかすると、「武器」という訳し方自体が間違っていたのかもしれません。それこそ序盤でルイーズが説明した「カンガルーの逸話」のように。そういう言葉の行き違いだったのかどうか、それは分かりません。ただやはり、何でもお見通しのはずの異星人にしては、迂闊なのです。「どうせうまくいくんだし…」という余裕があるから油断してやがるんです。所詮こちらのことを、3000年遅れてる星人くらいにしか見てないんでしょ。「教えてやるから」という傲慢さが透けて見えるって。こっちが慌てたように対応しているんだから、そちらも少しは汗をかいてよ。ぬめっとはしてるけれども。「お前たちが頑張って訳しなさい」って全部こちら任せでさ。大した下準備もして来ちゃいないもの。

それはいいとして。

余談ですが。
本作の秀逸なのは、「音」 
異星人の発声や、酸素確認のために連れて行った小鳥の鳴き声にしても、印象に残ります。全般的に、本作にはとても不思議な雰囲気があり、独特な間と静けさの中で、「音」がそれを見事に強調しているのです。ちょっと、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』の捕食シーンを思い起こしました。


さあ。<以下から、結末です>

メッセージ3


主人公・ルイーズが時折回想する「娘とのシーン」には、大きな秘密が隠されていました。
ルイーズは、娘との死別を経験していた…のではなく、これから体験する未来を見ていたのです。これは、異星人の能力でした。ルイーズは異星人の言語を身に付けるにつれ、その能力まで会得していったのです。
ここが、本作最大のポイントであり、感動的な場面だと言われています。
タコだの何だの言ってきましたが、そんなことはどうでもいいのです。

で。
これが、私には意味が分からなかった。
本作終盤で、私は首をかしげてしまったのです。

異星人は、3000年後に自分たちに危機が訪れた際に、地球人に救ってもらうため、その能力をルイーズに習得させたそうです。ん? 「現在」と同時に「未来」を見据えられる力が、なぜ救いに繋がるのでしょうか。
確かに、本作では、この力のおかげで「戦争が回避」できました。
とはいえ、過去も現在も未来も同時に存在する感覚を身に付け、「時間概念」を超越することで、この世のすべての問題は回避できるのでしょうか。本作は、「それがなぜ?」という問いに答えてくれません。
それに。
ものすごく深遠な哲学的提示のように思えますが、その「戦争回避の方法」も、単に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のような、よくあるタイムマシンものの解決策でしかありませんでしたし。

さらに、私は思うのです。

ルイーズは、不幸になっているじゃないか。

その能力のせいで、ルイーズはとんでもない不幸を背負いました。…と、私は思ったものです。
娘の「未来の死」を知ってもなお、その未来に向かっていくルイーズの姿に、世間の声のような感動はできなかった。あまりにも、気の毒だからです。
未来を知らず、過去にも縛られず、「ただ、今ある幸せ」を噛み締めることだけが、唯一、人間が「幸せを感じる」ことができる方法なんです。「時間」という概念を超越するっていうのは、本来はそういうことだと思います。「喜び」と「哀しみ」を同時に感じることは、幸せになりえない。「未来の死期」を知るなんてのは、それこそ「時間の概念」の執着につながるんだ。娘の「死」の哀しみより、「生」の喜びを取ったって…、そんなのは大間違いでしょう。「喜び」を感じられるわけないし、感じたとしても、10分の1くらいに減っていることでしょう。むしろ、哀しみを増やしたんだ。私は、なんてことをルイーズにしてくれたんだと、異星人に怒り心頭です。彼らは、自分たちが救われるために、ルイーズから人間的な幸せを奪ったんです。ルイーズも怒らないとダメです。『パッセンジャー』のジェニファー・ローレンスばりに怒って! そんな気の毒な状況にしておいて、「ミッション・クリアー!」ばりに颯爽と宇宙船が去っていく様子に、感動もへったくれもありません。石を投げつけてやりたいくらいだった!

メッセージ2


未来では、ルイーズが異星人の言語についての出版をします(最近の映画は、出版エンド多いなー。それも気になりました)。この先、多くの地球人がルイーズと同じ能力を手にするのでしょう。けど、未来がどうなるかなんて分かったら、それこそ『ガタカ』のような差別的な世の中になりますよ。能力のある人間ない人間で、超絶な格差が生まれるでしょう。…どうしても、この能力の良さが分からない。

第一。

この能力のせいで、ルイーズは夫・イアンから愛想を尽かされたじゃないですか。戦争は回避できても、夫婦一組を破壊しているんです。

ちっとも人類は進化していないですよ????


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Posted on 2017/05/29 Mon. 20:34 [edit]

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