素人目線の映画感想ブログ

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デッドゾーン 超能力者は、ウジウジと苦悩する。 


 無題
 デッドゾーン
 (1983年 アメリカ映画)80/100点


最近では、優秀なバイオレンス映画で話題になることの多いデヴィッド・クローネンバーグ監督の初期作品です。
結構古い映画で、主演のクリストファー・ウォーケンが若い、若い。
お話の流れはいたってシンプルで、「交通事故で5年の昏睡状態から回復したジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、手を握っただけで看護婦の家が燃えているのを知ったり、他界していると思われていた担当医の母親が生きていることが分かるなど、不思議な能力が目覚めたことを知る。その能力を使い、殺人犯を突き止めるのだが、能力の向上と反比例に体は衰退していく。ある日、議会選挙の最有力候補である政治家の手を掴んだところ、この政治家が、将来核戦争を引き起こすことを予知してしまい…」というお話。


というわけで、ストーリー自体は本当にシンプルで小ネタ的な感じなんですけど、当時としてみれば「透視能力」「予知能力」といった超能力は、衝撃的かつ斬新なアイディアだったのかもしれません。
どうしても昔の映画を見ると、「設定古いなー」「ありきたりだなー」と思うこともありますけど、先駆け的存在だったりするわけなので、その辺りは「新ジャンルを切り開いた先人へのリスペクト」を忘れずに観賞しなきゃいけない、と心がけております。

ただ、シンプルですけど、「超能力を持った主人公」という設定を最大限に生かした展開は楽しいし、何より見やすくて安心します。
複雑に入り組んだ映画を最近よく観るものだから、余計にほっとしてしまいました。

クリストファー・ウォーケンも大変魅力的に主人公・ジョニーを演じています。一見素晴らしいと思える、この特別な能力に苦悩する男です。
高校教師ジョニーが交通事故から5年後に目覚めたら、相思相愛だった恋人が別の男と結婚していて子供までいる、という大変打ちのめされる事態に陥ります…孤独に打ちひしがれ…ちょっぴり泣いちゃったりなんかして…そいで無愛想にむっすりしているかと思いきや、急きょフニャっと笑顔を見せたりなんかして…そんなシーンをやたらと挿入するところに、若干の狙いを定めた「いやらしさ」を感じないわけではないですが。いや素晴らしい! うらやましい! こんちくしょう!! …と思うほど、クリストファー・ウォーケンの魅力に溢れた描写です。

無題3
不機嫌…?(ハラハラ…)


無題2
良かったー。(人たらしめ!)


映像センスもばっちり良くて、とりわけ超能力者ジョニーの特殊能力で見える「ビジョン」の映像が鮮烈です。何も特別な特撮をしているわけではないんですけど、微妙に不思議な空気や異質感を滲ませるあたりが、さすがクローネンバーグ監督。初めての「ビジョン」である火事の場面から、ドキリとさせます。
殺人の被害者の遺体に触れて見える殺された局面の「ヴィジョン」では、まさに過去にタイムスリップしたように現場に居合わせ、事件を直視させられます。…この能力を持てたら便利で素敵だろうな、とは思わせないショッキングな描写なのです。
最近では、クリント・イーストウッドの「ヒアアフター」でも、霊能力を秘めた主人公がその能力の行使を嫌がり、殻に閉じこもる感じでした。本作の主人公もまた非常に苦悩し、引っ越してまで身を隠そうとします。多くの透視依頼も断ってしまうのです。
えー。使いまくって人助けすりゃーいーじゃん。せこいなー。
と思いがちですが、この能力は相手の受けたショックと同化してしまうため、心が持たないのでしょうね。
ビジョンを見るたびに目ん玉パチクリさせるジョニーの体は、能力の進化とともにどんどん衰えていくのでした。

無題1
(まさに核戦争前夜の瞬間を見てしまう)


周りの反応も、能力者に対し好意的なことばかりとはいえません。
これも「ヒアアフター」でありましたけど、あまりにズバリと言い当てるものだから、怖がられてしまい、人が離れていったりします。
「オレを透視してみろよ、ふっふっふ」と挑発的に迫っておいて、ジョニーに知られたくない秘密を透視されてしまった記者は、「この化け物め!」とののしります。勝手なものです。
ジョニーの教え子がある事故で死んでしまう未来が見えたので、父親に注意を促すも「帰れ!」と怒鳴られてしまったり…。
この辺りは、ちょっとモヤモヤしてしまいました。
ただ、ジョニーを信じたれよーとは思うものの、実際この手のことを言う人は、「99%が偽物」と言われていますから、確かに警戒されるのも無理はないのかもしれません。
ゆえに、本当に能力を持った人ほど、「能力を隠す」と聞いたことがあります。

映画の終盤は、将来核戦争を起こすと予知した政治家のエピソードです。
生真面目な気苦労人・ジョニーは、またまた悩みます。
信頼している担当医に相談します。
「先生、ある男の未来がヒットラーであったなら、その男を殺しますか」と。
一人で抱え込むタイプのジョニーは、ついにその政治家を殺そうと考え始めているのです…

…。

…ちょっと極端じゃないかなあ?
他に何かしら手段があるんじゃないかなあ。
核戦争を起こすのは、将来その政治家が大統領に登り詰めた後のことなので、まだ先の話です。
何とか他に手はなかったものか…。
確かに、主人公は能力の強さゆえに体が弱り、余命いくばくもなかったため焦ったのかもしれません。その政治家の人気は、裏側のあくどさに反して非常に高く、大多数の民衆はころりとダマされていましたし。

それにしても、ジョニーに相談された担当医の先生は力強く言います。「僕なら殺すね!」って、責任問題だよこれ。
架空の話だと思ってたって? ただの例え話かなって? ジョニーの超能力のこと知ってたのに?
可愛そうなジョニーは悩みます。「ああ、そうなんだ…やっぱりそうだよな…殺さなきゃ…ああ、でもサラにも会えなくなるかも…ああ、どうしよう…どうし…」
担当医「君には未来を変える能力があるんだ、素晴らしいね!」
って背中を押すんじゃない!


無題4
(ほらー、やる気満々になっちゃったじゃないかー)


<ネタバレします。>


さて、ラストもラスト。その政治家が、ジョニーをきっかけにして、ある醜態を市民にさらしてしまうのですが、これはちょっと出来過ぎかなあ。とっさのことだったとはいえ…、「そんなやつ、おらへんやろー」とちょっと思いました。
ただ、オチとしては少し予想外の展開だったので、面白かったですが。

本作を鑑賞する方の大半は、なかなか人たらしなジョニーに、この人報われてほしいなあと思わされることでしょう。
果たしてジョニーの運命やいかに。ぜひお確かめください。


  

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Posted on 2013/01/27 Sun. 11:00 [edit]

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