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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 トラに友情は芽生えるか。 


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 ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
 (2013年 アメリカ映画)90/100点


観る前はそこまで期待していませんでした。
動物ものはあまり興味がないし、まー、トラと人間が種族を越えた友情を育み、仲良くなって一緒に漂流生活を乗り切る…というようなほのぼのムービーかなあと…思っていたのですよね。
…全く違っておりました。舐めきっておりました。

この映画は、すごかった。

ビートたけしのネタで、「動物園で何年も餌をあげてる飼育員を、今だに食おうとするワニ」の話がありますが…まさにそんな映画です。(伝わるかなー)

本作は回想シーンで構成されています。
主人公の少年パイが、本作での冒険を終えた後の中年時代が、「現代」となっています。
パイを訪ねてきた1人の小説家の男に、自分の経験した不思議な冒険談を語るという流れです。
「回想」という構成は、本作のラストに大きく意味を持っておりますので、ご用心。

映画冒頭でいくつも紹介される動物映像からして、何とも美しい。
『ミッドナイト・イン・パリ』では冒頭でパリの風景が延々と切り替わっていきましたが、あれの動物版。
見たこともないような鼻を持つサルなど、印象的な動物たちが次々に画面に登場していきます。

さて、すぐに漂流の話が始まるのではなく、しばらくは少年期・パイの名前にまつわるイジメ問題やら、パイ(π)だけに、円周率を超暗記する天才的な頭脳や、宗教への風変わりな好奇心などが描かれ、パイの只者ではない性格描写が続きます。
また、パイの家族はインドで動物園を経営しています。
パイとトラの出会いはその中で起こりますが、けっして生易しいものではありません。
トラと心が通じ合うのではないかと思い込んだパイは、親の目を盗んでトラの檻に近付き、素手でエサを与えようとします。
じっと見つめあうパイとトラ。
しかし。
直後に父親に見つかり、パイは檻から引き離されるのです。
怒った父は、トラの怖さをパイに伝えるため、一匹のヤギをそのトラに与え、残虐な捕食の瞬間をパイに見せつけます。
瞬殺されるヤギ。
一歩間違えば、パイもそうなっていたわけです。
この一件は、パイと私たち観客に、「このトラはヤバイぞ」と見事に印象付けたのでした。
ここでの父のセリフが印象的です。
「トラと心が通じたと思ったか。…お前は、トラの目に映った己の心を見ただけだ」
お人よし少年パイの心に、その言葉は深く突き刺さるのでした。

その後数年の歳月が過ぎ、家族とともにカナダに移住することになったパイ一家は、動物たちとともに日本船に乗船し出航します。
そして、大嵐に出くわしてしまうのです。

一足先に放り込まれた救命ボートの綱が切れ、ただ一人、パイはボートとともに流されてしまいます。
そこで、パイの救命ボートに乗り込んできたのが、シマウマ、オランウータン、ハイエナ…
そして、当然あいつも飛び乗ってくるのです。

あの獰猛な…!


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寅!

あ、ちがっ!


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トラ!(すみません、ベタで)


さあ、ここからが本作の素晴らしいところ。
もちろんCGなのでしょう。そうだと思います。そうだと分かっていても、ここから目を疑うようなパイと動物たちとタコ社長の熾烈な攻防戦が繰り広げられるのでした。
パイを捕まえようとするトラの動きがすごい。
狭い救命ボートには、その面積の半分に布がピンと貼られており、パイはその布の上に上がっています。トラは布の上にうまく上がることはできないので、かろうじてセーフゾーンなのですが、だんだん攻め方を変えてきたりするものだからいやらしい。
結局、パイはボート上ではなく、救命具やボートの床板で作ったミニボートに移り、そこで漂流生活を始めるのでした。
救命ボートには、漂流した場合の手本書や食料が乗っていたし、パイには知恵があります。それで、そこそこは大丈夫なのですが、問題は「トラ」です。
共同漂流者として、これほどまでに厄介な存在はありません。話が通じない上に、常にこちらを食おうとしていますので。
自分を食おうと躍起の「トラ」の気持ちを抑えるため、トラの空腹を満たそうと、魚を釣って与えてみたり、頂き物のメロンをきちんと残しておいたり、涙ぐましい努力のパイなのでした。
これは過酷です。
漂流の映画というのは数多くありますが、これに「トラ」の問題が加わるとは。斬新でわくわくします。

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(人間の知恵VSトラのパワー)


本作は非常に美しく、ダイナミックな映像もふんだんに挿入されます。
まず真っ青な空と海に、美しい黄色の毛並みのトラがまぶしいくらいに映えています。
海底からせりあがって飛び出すクジラのすさまじさ。
無数のクラゲが漂い、光り輝く海面。
まるで葛飾柴又極楽浄土に渡ってしまったかのような夕暮れの景色。
漂流自体は過酷で過酷で泣いちゃうくらいですが、この壮美な風景の数々がパイに神の存在を感じさせ、生きる力を引き出すのでした。
もちろん、大嵐の場面は心が吹き飛ばされそうなほど迫力のある映像に仕上がっています。
2Dで鑑賞しましたが、これ3Dで見たら凄いかも、とさえ思いましたよ。

本作は結末まで、全く油断がなりません。
予告編でもばらされている通り、パイは助かります。
こんなひどい状況で、なぜパイが助かったのかを目撃する映画なのです。
しかし、ちょっとしたどんでん返しが用意されております。
リリーとの別れ以上に、それは、あまりにも残酷な結末でした。
今回はネタバレなく終わりますが、この衝撃はズシリと重たいものです。
しかし、それがまた、本作をさらに一歩も二歩も至高の極みに押し上げていると思います。
あ…それとこの結末が、本作途中で生じるある疑問に大きな答えを出していました。
その疑問とは、(以下、反転)シマウマ、オランウータン、ハイエナ、そして大量のトビウオの死体が、突然綺麗さっぱりなくなっていたこと。おっかしいなあと思ったんだ、どーりでね。

しかし、あれですねー。CGでここまで動物を表現できるならば、ホントなんて言うか…将来は「役者」なんていらなくなる時が来てしまうような、うすら寒い予感さえします。
それだけ、本作の「動物たち」の表現には、隅から隅まで驚かされたのです。

決して甘くないところがまた、いい! トラの背中が泣かせます。必見。

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(思わず、お兄ちゃん! と声をかけてしまいそうになる背中)


↓ネタバレもあるレビューです。
今生の別れ「ライフ・オブ・パイ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー/カゲヒナタのレビュー

映画レビュー「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」/映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


  

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Posted on 2013/02/07 Thu. 00:10 [edit]

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コメント

 

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。

URL | 投資 #- | 2013/04/12 13:12 | edit

Re: タイトルなし 

コメントありがとうございます。
素人丸出しで恐縮ですが、
是非またご覧くださいませ。

よろしくお願いいたします。

URL | タイチ #- | 2013/04/12 18:50 | edit

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