素人目線の映画感想ブログ

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レザボアドッグス 「オタク」の熱弁が奇跡を起こした! 


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 レザボアドッグス
 (1992年 アメリカ映画)85/100点


言わずもがな、タランティーノ処女作にして、その類まれなる才能に世界が驚愕したバイオレンス映画です。
1作目からしてタランティーノ節が炸裂しており、低予算ながら見応えたっぷり。
あらすじは簡単で「黒スーツに身をつつんだ強盗たちは、銀行強盗に失敗。散り散りに逃げながら、アジトの倉庫に集まってくるが、警察のスパイが仲間に紛れ込んでいると察し、裏切り者を探し始める…」というもの。

記念すべきファーストシーンは、レストランで朝食をとる強盗たちの他愛のない会話です。
ここで語られるマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」の変態解釈はあまりに有名。
他の者に任せておけるか! という目立ちたがり根性なのか、こんな台詞は恥ずかしくって他の役者さんにお願いできないという羞恥心なのか、タランティーノ自らがノリノリで講釈します。
案の定、あとでマドンナからクレームをつけらていますが。

そして直後に始まるオープニングテーマ「リトル・グリーン・バック」の流れるオープニングクレジットのシーンも、本当にかっこいい。
SMAP木村拓也のお気に入りなのか、スマスマのパロディコントのみならず、キムタクのウイスキー(だったかな?)のCMでもこのテーマソングが使われていました。

男たちは、このテーマソングにのせていざ銀行強盗へ出発するのでした…
が!
テーマソングの終わり頃、まだタイトルクレジット中の暗い画面に、男の悲痛な声が聞こえます。
強盗の一人、オレンジ(ティム・ロス)が、車の後部座席で血まみれで苦しんでいるのです。
運転しているのは、ホワイト(ハーヴァイ・カイテル)。必死にオレンジに声をかけています。
タランティーノ特有の時間軸の操作の始まりです。
強盗シーンが始まるかと思わせておいて、すでに失敗して逃げ出している場面が始まる異才のセンス!

こうして警察から蜘蛛の子散らして逃げ出した強盗たちが、お互いを警察の犬だと疑い、この上なくピリピリしながらアジトに集まってきます。
その合い間に、キャラクターそれぞれ、この銀行強盗チームに加わったいきさつが振り返られていくのです。

低予算を逆手にとった、憎い程斬新かつ実験的で、攻撃的な展開!
さすがは、たった2作で天下を獲ったタランティーノの処女作だと唸らせます。

ではここで、実に個性豊かな登場人物たちをご紹介。
ちなみに強盗達は、それぞれに色の名前の通称名が付けられております。

☆ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)
最後まで、負傷したオレンジを守ろうとする姿から、相当に仁義の熱い男だと分かります。
それは、たとえ仲間でも本名・故郷を話してはならないというプロの強盗のルールを破り、死にかけているオレンジの気持ちに応えて、正直に話してしまうほどです。
ゆえに、本作では主人公のポジションです。

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「オレの仲間に手を出すんじゃねー」キャラです。


☆オレンジ(ティム・ロス)
冒頭で撃たれ、瀕死の状況です。
「誰に撃たれたのか」がポイントになるとは思いもよらず、後半でそれが判明したときには、なるほどなー! やるなー! と驚いたものです。
一度映画を見終え、オレンジの事情を全て知った後に冒頭の場面を見返してみると印象が変わります。オレンジが「戻ってくれ! おろしてくれ! 病院に置いてきてくれ! 俺のことはいいから! 気にしないでいいから! 本当にいいんだからー!」と必死に懇願しているのに、ホワイトが「そんなことするわけねーだろ(キラッ)」と、男気満々に連れて逃げてやろうとしている様子が、ちょっとクスっとなります。

無題3
「もう、うちに帰りたい!」


☆ブロンド(マイケル・マドセン)
銀行で大殺戮を行ったブロンドは、見るからに危なそうな男です。
現に警官一人を捕まえ、仲間たちが裏切り者を吐かせるために拷問している中、ブロンドはただ快楽的に警官を焼き殺そうとします。警官の耳削ぎシーンは恐ろしかったですが、削ぐ所を直接見せるバージョンも撮影されていたにもかかわらず、見せないバージョンを本編に使用したのは、タランティーノの優れたバランス感覚かな。
彼の友人であるエディは、「ブロンドが裏切り者だ」という意見を真っ向から否定し、「どんなに自分の利益になろうが、ヤツはオレたちを売るような奴じゃない」と断言します。ブロンドは、情に厚い面もあるようです。ま、リアル社会でも、残酷で変態な奴って、逆に良い奴な面を見せたりもするから怖い。
ちなみに、彼の本名はヴィック・ベガ。これ、『パルプフィクション』でトラボルタが演じたヴィンセント・ベガの兄弟設定だということでした。小ネタだねー。

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まさに普段の残酷なジャイアンと映画の熱いジャイアンが混在しています。


☆ピンク(スティーブ・ブシェミ)
合理的で計算高いタイプの男です。実は、一番賢いヤツかもしれません。一見頼りない風貌のようですが、警官から逃げる時の様子はタフガイそのもの。実は、彼と警官の銃撃戦は本作でのお気に入りの場面です。もちろんタランテーノによる臨場感にあふれた演出が素晴らしいせいもあるのでしょうけど。

無題4
「このままじゃヤバいからさあ、逃げちゃおーよ!」…実写版スネオはぜひ彼を!


☆エディ(クリス・ペン)
強盗チームの総元締め・ジョーの息子で、ブランドとは無二の親友のようです。直接銀行強盗に参加はしていませんが、バックアップを行います。仲間や父親への想いは強く、終盤、ホワイトが父親に銃を向けたことに我を忘れて怒ります。看護婦のボニーと親しいという話が未公開シーンに出てきますが、「看護婦のボニー」って、『パルプフィクション』にも出てきましたね。


☆ジョー(ローレンス・ティアニー)
銀号強盗チームの総元締め。老獪な男。警察はこの男を逮捕するために躍起になっています。


☆ブルー(エディ・バンカー)
今回一番影の薄い人物ですが、特徴的な笑い方がなぜか印象的でした。実は本職の俳優ではなく、タランティーノお気に入りの犯罪小説家だとのこと。しかも、元犯罪者だってー。さっすがー。

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(タランティーノの、タランティーノによる、タランティーノのためだけのカメオ出演)


☆ブラウン(クエンティン・タランティーノ)
本当に、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」の変態講釈のためだけのキャラクターです。
その後、もう言い残すことはない…とばかりにすぐ退場します。


無題5
(ペインッ! ペインッ!)(痛いのはあんた…)


↓ちなみに、このタランティーノの講釈中のメンバーの表情はこちら。


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何言ってんだろう…この人…

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皆さんも、熱弁をふるっている時は、くれぐれも聞き手の表情にご注意ください。

↓本作の素晴らしさを、あともういくつかご紹介。

・構成の妙
やはりうまい。アジトに逃げ付いた男たちは、銀号強盗の失敗を反芻し、起きた出来事を話し合います。
しかし、その場面は決して映像では出てきません。
ブロンドの銃の乱射や警官が突然現れた場面は、その話し合いを聞いた観客の想像に任されています。
それによって、ブロンドの不気味さや、隠れていた警官が現れた時の男たちの驚き、強盗失敗の無残さといったイメージが、とめどなく膨れ上がっていくのでした。

・臨場感
ブロンドがアジトから出て、車に戻り、石油缶を持ってまた戻ってくる一連の流れがワンカットです。
ブロンドの背中をずっと追いかける映像が、空間を感じさせ、リアリティーを演出。

・オレンジのジョーク
オレンジが仲間に話して聞かせる過去の失敗談ですが、その再現映像が味わい深い。
麻薬所持中に、警官たちがたむろしている公衆トイレに入ってしまったオレンジは、クールを装いながら手洗い乾燥機のスイッチを押しますが、その瞬間、警察犬含めた警官全員がジロリと彼を睨みます。
非常に緊張感のある演出。
警官たちがやたらと粗暴に描かれているのも印象的でした。

・驚き
かつてタランティーノは言っていました。
映画には「驚き」が必要だ、と。
数多いバイオレンス映画には、予定調和な展開だらけのものも多く、「もうちょっとひねってくれよ」と思うこともありますが、本作にはちょっとビックリな展開が待ち受けています。
ネタバレはしませんが、OOがOOを突然射殺した場面は痺れたね。


さて、そんなこんなで素晴らしい映画ではありますが、少しばかり不満点を述べるなら、「全体的に暗い」かな、と言うところ。
男臭すぎるといいますか…。
タランティーノが後に作っていく映画に盛り込まれているような「可愛らしい所」や「笑える所」というものがなく、全編ハードボイルドなので、見る人によってはゲッソリするかもしれません。
ホワイトが仁義に厚い良い男のように描かれながらも、警官を二丁拳銃で射殺したり拷問したりするのは、なんともアメリカ映画ならでは。
邦画だったら、日本の警官を平気で射殺する男が主人公と言われてもノレないでしょう。
お国柄っすかね。

とはいえ、タランティーノの記念すべき1作目は、映画界を牛耳るだけの才能を見事に見せつけました。
挙げく「オタク」の地位向上まで果たすという、世代交代の予感を含んだ歴史的な映画なのです。

よくやった! タランティーノ!


 

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Posted on 2013/02/17 Sun. 23:55 [edit]

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コメント

タランティーノ作品の方がかわいい 

おはようございます!
これは私の大好きな作品です。
バイオレンスな中で登場人物のそれぞれの立場と考え方が各人の立場で際立っていて、見応えあります。
>ヴィンセント・ベガの兄弟設定
知りませんでした!いいですねー、こういうの!

今までバイオレンスならタランティーノだと思っていましたが、最近観た『キラー・スナイパー』。人でなしのオンパレードで救いの無さはタランティーノと同じなんだけど、なんかこう薄ら寒くて、タランティーノ作品の方が明るく正しい健康バイオレンスだと感じました。
(TB打たせてもらいます!)

URL | momorex #- | 2013/03/01 10:47 | edit

Re: タランティーノ作品の方がかわいい 

momoさん、お久しぶりです。
コメント頂戴できるとは、光栄です。

タランティーノのバイオレンスは、どことなく可愛い部分がありますよね!
キャラクターの造形が抜群に魅力的だからだと思います。
新作「ジャンゴ」も観ましたけど、クリストフ・ヴァルツと、
サミュエル・L・ジャクソンのキャラが最高で、
いつも以上におバカなフリした超A級のバイオレンスでした!

URL | タイチ #- | 2013/03/01 18:37 | edit

渋谷のバーカットで流れてました 

この作品は大好きで、15年ぐらい前に一回見ていたのですが。
南青山のCUTというバーに打合せに行ったら、後ろのテレビで「レザボア・ドッグス」を流してまして。
仕事の打合せをしていたのに、「レザボア・ドッグス」の映像が気になって、打合せに身が入りませんでした。
さすがに、バーの店長に「その映画を流すのを止めてくれませんか」、とは言えなかったので、改めてDVDを借りて見ました。
全部、覚えたら、もう再びバーの後ろのテレビで流れてても、無視して打合せができますからね。
でもまた、バーに行ったら、別の作品が流れてたりして。

URL | 赤間俊秀 #- | 2015/12/14 16:11 | edit

赤間俊秀 様 

タランティーノの映画は何度見ても面白いです。
セリフだらけなのに引きつける力って凄いと思うのです。

それにしても、シャレっ気のあるバーですね。
東京なんですね。
福岡にもないかなあ…?

URL | タイチ #- | 2015/12/14 17:28 | edit

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『レザボア・ドッグス』(1992) - Reservoir Dogs -

代表作の一つ『パルプ・フィクション(1994)』へと続くタランティーノ監督のデビュー作。 拳を繰り出す方が早いような男達が延々とくだらないおしゃべりを続け、くだらない事で小学生

momoな毎日 | 2013/03/01 10:47

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