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ジャンゴ 繋がれざる者 クリストフ・ヴァルツの功績。 


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 ジャンゴ 繋がれざる者 
 (2013年 アメリカ映画)90/100点


とんでもなく面白かった。
自分がタランティーノマニアであることを差し引いても、びっくりするほどの面白さ。
前作「イングロリアス・バスターズ」もかなりの出来栄えだったのに、本作もまた見事に仕上げてくるとは、職人の完璧なツボ押さえって感じです。もはや「タランティーノ」という映画のジャンルを築き上げたかのようです。
おなじみのタランティーノによるBGM選曲も楽しく、クラシカルな西部劇の名曲が頭をこびりついて離れません。
また、手元の銃や登場人物の表情に急速でクローズアップするカメラワークもかっこよく、隅から隅まで快感原則にのっとったサービス精神溢れる一作です。
ほんと、感心いたします。

それにしても、タランティーノはここにきて、とてつもなく強力な相方を見つけたものです。
その名も「クリストフ・ヴァルツ」
そう…前作「イングロリアス・バスターズ」の成功も、彼の力による所が非常に大きかったのと同様、本作でも彼が物語の面白さの大部分をけん引している、と私は思います。
本作で彼が演じるドイツ人の賞金稼ぎであるドクター・キング・シュルツは、飄々としたキャラクターを装い、時折見せる鋭い眼光がキレ者の本性を感じさせ、情に厚い面がありながら、悪漢にはとことん冷徹になり、策士として頭脳明晰であって、師としての教え方も極めて的確…
2013年理想の上司像NO1に決定ですぞ、こりゃ。

どっしりした安定感もあって、彼が画面に出てくるとなんか安心するという…圧倒的信頼感。
本作で二度目のアカデミー助演男優賞は、誰の文句もありますまい。


無題
(ご評価頂き、こらまた、どーも)


主人公のジャンゴ演じるジェイミーフォックスも、つぶらな瞳が無垢な空気を引き出していて好感が持てます。
シュルツのもとで、一人前の賞金稼ぎになるべく銃の腕を磨いていきます。
どうやら銃に関して天賦の才があるようで、遠距離からの狙撃も早打ちも隠し銃の使い方も、あっという間にマスターしていきます。
素直でいて、大変良き生徒という感じで、シュルツがジャンゴのために一肌脱ごうとするのも頷けます。

無題1
(あんたを殺せて嬉しいぜ!)


物語は、ジャンゴとシュルツが出会う所から始まります。
西部劇の時代、黒人は白人の奴隷として扱われていました。
ジャンゴもその奴隷の一人として、凶悪な白人二人に連れられていました。
そこへ現われるのが、シュルツです。
「デンティスト(歯医者)」という印象的な発音で自分を紹介するシュルツ。
シュルツは、懸賞金のかかったブリトル三兄弟の顔を知っている者を探しているとのこと。
それが、ジャンゴなのです。
ジャンゴを手放す気のない白人二人は、シュルツにライフルを向けます。
「私を殺すために銃を向けているのか」と冷静沈着に尋ねるシュルツ。
「そうだ」と答えるや否や、明かりを消しての電光石火の銃撃で白人兄弟を仕留めます。
「だって殺す意思があるなんて言うから…」とシュルツは吐き捨てます。
魅せるなー!
完璧なまでのオープニングシーンに、ただただワクワクしっぱなしでしたよ。

物語はブリトル兄弟の始末を経て、ジャンゴの生き別れた奥さんを助け出す話へと動いていきます。
奥さんは、大農場主であるカルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の元に買われていったと判明。ジャンゴとシュルツは、まともに交渉しては奥さんを譲り渡してはくれまいと判断し、巧妙な作戦を練ってカルヴィンに近づくのでした。

無題3


さあ、ここからが本作の真骨頂です。
重量級の黒人同士に命じ、お互いを殺し合わせる「余興」に喜びを感じる残虐な男・カルヴィンから、果たして奥さんを取り戻すことができるのか。
前作「イングロリアスバスターズ」でもハラハラさせられた、いつバレるか分からない芝居合戦が見ものです。
シュルツはお手のものですが、ジャンゴはまだ素人です。侮蔑的な言葉を浴びせられたり、奥さんがいたぶられている姿を見かけるや、今にも銃をぶっぱなしそうなほど危なっかしく、これには冷静なシュルツもたまらずジャンゴを諌めます。
またキャルビンの従者であるスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)がとんでもないキャラクターで、自身が黒人であるにも関わらず、キャルビンがジャンゴを丁重に扱うことが気に入らず、「ニガー」と差別語を連発。
妙なハイテンションで登場するもので、アクセル全開だなーサミュエル…と思ったら、終始そのテンションなもんで、次第におかしくって吹いちゃいました。
キャンベル「ジャンゴをお客として扱えよ」
スティーブン「えーーーー! いいんですかーーーー! ぼっちゃーーーーん!」
キャンベル「ベッドも用意してやってよ」
スティーブン「ひぇえええーーーーー! 本気ですかーーーーー! ぼっちゃーーーーーん!」
キャンベル「黒人扱いすんなってば」
スティーブン「ひょえええええええええええええええええーーー!」

キャンベル「いい加減にしろ、この野郎!」


切れるディカプリオなのでありました。
通常では絶対に許されないタブーな漫才をやらかすあたりが、恐るべしタランティーノなのです。

無題1


本作の根底にあるのは、「黒人差別」です。
時代性とはいえ、異様なほど黒人への扱いがむごく、虫唾が走ります。
また、スティーブンに代表されるように、所々で優遇される黒人もいて、黒人自身が差別を助長しているところに人種差別の闇の深さを感じます。

シュルツは、黒人差別が無性に嫌いのようです。
所々で、そういった描写が見受けられます。
さすがのシュルツも黒人が犬に襲われる場面では、キャルビンの前にも関わらず、役割を忘れて青ざめてしまうほどです。
これは、終盤のシュルツのある決意につながっていきます。

そして、前作では「ナチ」を絶対悪として扱うことで、殺戮シーンを正当化してしまったように、本作では、まさに「白人(黒人差別主義者)」がその対象として、これでもかと殺されていきます。
罪があるのないのか…ほとんど関係ねーよ、とばかりにバッカンバッカン倒していくのです。
挙句に正当化のダメ押し。タランティーノ自身が出演し、ジャンゴにぶっ倒されることで、もう誰にも文句の言えない大殺戮シーンを撮り上げてしまったのでした。

さすがの悪趣味全開ですね、タランティーノ!

緊張感がマックスにまで登り詰めた終盤では、ライバル視しているかのような渾身のディカプリオ対ヴァルツの芝居合戦が展開されます。(ちょっと、主役のジェイミー・フォックスを食っちゃったかな…)

無題2


ただし!
終盤のクライマックスが終わった後がやや冗長ではないでしょうか?
おまけに、そこから続けざまに巻き起こる銃撃シーンが意外に単調で…あれ? なんか退屈…?
ジャンゴのある窮地からの脱出方法も、ちょっと単純かなーって。

とはいえ、各界絶賛の本作は、十分に見ごたえのある超エンターテイメントなのでした。
アカデミー脚本賞もかっさらい、ますます映画界での地位をランクアップさせたタランティーノは、不動の地位の名のもとに、次の殺戮対象を虎視眈々と探っていることでしょう。

うーん。悪趣味っすな! (嫌いじゃないけど)


*最後にもう一点だけ、苦情を。
「繋がれざる者」ってひどい邦題ですね。
ほぼ中学生レベルの直訳じゃないですか。
普通に「ジャンゴ・アンチェインド」で良かったような気がします。
ダサい邦題というだけで、興行収入が下がりそうだけどな…。


  

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Posted on 2013/03/02 Sat. 22:42 [edit]

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コメント

フィルムスタイリスト 

自分の表現スタイルを確立している点で、タランティーノ作品はそれだけでひとつのジャンルだというご指摘は同感ですね。
たとえば小津安二郎作品然り、黒澤明作品然り、キューブリック作品然り。ビートルズだってそう。ビートルズは間違いなくビートルズっていうジャンルですからね。彼らにしか表現できないステレオタイプな枠組みを超えた何か特別なオーラが各作品の隅々から醸し出されている。
そういう意味で彼らクリエイターに対して、一ファンとして憧れに似た感覚を私は持ってます。

私も「パルプ・フィクション」以来のタランティーノ作品のファンです。
これが今のところ彼の最高傑作と思ってますが、今回のジャンゴは久しぶりにタランティーノがやってくれたっていう痛快さがありました。
作風自体はイングロリアスやジャッキーブラウンとかわらないけど、マカロニウェスタンスタイルを借りてタランティーノタッチで味付けすると今までになかった映画的興奮が生まれたって感じで、私は大歓迎でした。

マカロニウェスタンのパターンを踏襲しながら随所でわざと崩すストーリー展開がいいし、台詞回しもひねりが聞いてて見逃せないし。
何よりもいつものことながらキャスティングは圧倒的でした。
主役ばりばりのフォックスがかすむくらい脇役は注目でしたね。
ディ・カプリオは新しい引き出しを披露したし、ジャクソンも相変わらずのタランティーノ一味を再確認。
ヴァルツはお目見えして二回目なのにこの不思議な個性は一体何?というくらい光ってましたね。パルプフィクション然り、やっぱり役者が適材適所ではまっている映画は絶対面白い。役者がいきいきしててうれしくなってしまう。これは純粋な映画ファン心理ですね。

びしょびしょに飛び散る血糊表現とかクイックなズームアップのカメラワークがいかにもB級テイスト狙いでこっちもワクワクでした。
見たことあるはずなのにリミックスされて全く違ったものに生まれ変わらせたタランティーノ才能はまだまだ注目できそうでうれしいです。

URL | 龍丼(ドラゴン・ボウル) #- | 2013/10/11 23:59 | edit

龍丼(ドラゴン・ボウル) 様 

コメントありがとうございます。

タランティーノは、実はいろんな映画を吸収して、それを混ぜ合わせて、新しいものを生み出している感じなので、パクリ屋のように言う人もいますけど、私はそこに「映画愛」をふんだんに感じるので、好きなのです。
毎回タランティーノセレクションの、「ボクの好きな映画音楽」を披露してくれるのも、大変楽しみだし、やはりわれらオタクの存在価値をうなぎのぼりに挙げてくれた功労者でもあります。
ほんと、尊敬しますよ。タランティーノ!

ジャンゴも好きですが、ちょっと後半はおぶさけ感が強かったので、
どちらかというと、「イングロリアスバスターズ」の方が大好きです。

「ジャッキーブラウン」の後、若干世間から消えていたころは、本当にさびしかったですけど、
復活して、本当に良かったなー。

ちなみに、「デスプルーフ」も好きです。
ようは、最後にジェイソンやフレディをめっためたにやっつけちゃおう、
というコントみたいな発想が素晴らしくって、痛快です。

URL | タイチ #- | 2013/10/14 21:44 | edit

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