素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

イングロリアス・バスターズ(2度目・後半) 


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(前半からの続き) *前半はこちら


第3章『パリにおけるドイツの宵』

ショシャナ一家惨殺より、3年後。
ショシャナはなんやかんやの内にパリの小さな映画館を手に入れ、エマニュエル・ミミューという偽名で、恋仲である使用人の黒人とともに静かな生活をしていました。
この何やかやの部分は、なんと撮影されたにも関わらず全面カット。ジャッキーチェンの映画でおなじみの香港女優マギー・チャンが元映画館の持ち主・ミミュー夫人を演じていました。どういういきさつでこの映画館がショシャナの手に渡ったのか…語られていた一切は不明となってしまったのです。まー、上映時間のことを考えると致し方ない編集なのでしょうけど、しかし出演シーンをまるまる切られるマギー・チャンの気持ちっていったい…。

ある晩、ショシャナは映画館の外で一人の若いドイツ兵から声をかけられます。
ヤサ男な雰囲気を醸すこの青年兵士は、どうやらドイツ映画の大ファンのようです。
ドイツ兵を心から憎むショシャナは、友達になろうと近づくこの青年兵士につれない態度で応えます。 
横柄な態度をとることもなく、優しげにこの場を立ち去る青年兵士。
次の日に、ショシャナはカフェでこの青年兵士と再会し、この男が戦争の英雄であることを知ります。
本当はかなり良い人なのか…しかし、遠慮がちで照れ屋の面を見せながらも、その挙動はどこか芝居がかっていて、非常に「臭さ」を醸すのです。

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話はあれよあれよと展開し、この英雄の取り計らいで、ショシャナの映画館にて、ドイツ高官の集まる映画のプレミア上映会が開催されることに。

本章は全体的に静かで、特に派手な出来事もない会話だけのシークエンス(そうはいっても、ナチ№2のゲッペルスは会話だけでもキャラ立ちしていて楽しい!)ですが、タランティーノはそう油断させておいて、きっちり緊張場面を持ってきました。
突然のランダ大佐の登場です。
ゲッペルスが、ランダ大佐にショシャナを紹介します。
「いくつか質問していいですかな」とランダ大佐。
ランダ大佐はかつてのショシャナの顔は見ていません。しかし、途方もない洞察力を有しているこの男は、果たしてショシャナを怪しいと睨むのでしょうか。

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モゴモゴとデザートを食べる二人の姿を見るだけでも、なんか印象的なのはなぜなんだろう…?
何を考えているのか分からないランダ大佐。モゴモゴモゴ…
冷静を装っているものの、心臓は跳ね上がる寸前であろうショシャナ。モゴモゴモゴ…

「何を聞こうか…忘れてしまったよ」
デザートの生クリームの上に、煙草の吸殻を押しつける生理的にヘドの出る「絵」を見せつけ、ランダ大佐は去っていきます。
瞬間、ショシャナは泣き出しそうなほど脱力するのでした。

しかし、ショシャナにとっては千載一遇のチャンスが舞い込んだわけです。
なにしろナチ高官を皆殺しにする復讐の大チャンスなのですから。

ここから、物語は終盤に向かって大きく動き出すのでした。

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第4章『プレミア作戦

さあさあ御立ち合い!
前章でちょっとだれかかっていた方でも、この章の面白さ、緊張感たるや、待ってましたの名場面。

ショシャナとは別口で、プレミア上映会にナチス高官のみならず、ヒットラーまでもがやって来るという情報を察知した連合軍は、『プレミア作戦』と呼ぶ映画館爆破作戦に着手します。
この辺りは注意しないと、ショシャナと連合軍がまるで通じ合っているような誤解をしてしまいがちです。
私なんか、そのために、連合軍のスパイとして登場するドイツの有名女優ハマーシュマルク(ダイアン・クルーガー)を一瞬、あれ? この人ショシャナかな? などと見間違えてしまいました。
いつもながらの外国人の顔の見分けが付かないという大失態でござった! ニントモカントモ。 
ゆえに、本章冒頭にて、元・映画評論家という異例の経歴を持つ連合軍のヒコックス中尉(マイケル・ファスベンダー)と、作戦概要を説明する将軍(マイク・マイヤーズ)の会話を注意深く聞いておかないといけません。

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とりあえず、ヒコックス中尉とバスターズは、ハマーシュマルクと接触するために、パリ郊外の地下パブに向かうのでした。

「地下パブ」というシチュエーションに、嫌な予感を滲ませるレイン中尉。
その理由は「地下だから」とのこと。
この接触には、ドイツ語が出来ないレイン中尉は参加しません。
他のバスターズメンバー2人とヒコックス中尉が出向きます。
ドイツ兵はめったにいないと聞いていた3人ですが…出向いてみると、店内は見事にドイツ兵たちで賑わっているという運の悪さ。

ここでは、面白い遊びをドイツ兵が行っています。
それぞれに違う有名人の名前が書かれたカードを全員が額に貼り付け、自分の額のカードに書かれた有名人が誰なのかを探り当てるというもの。
ヒントとして、答えを知っている皆に自由に質問ができます。ただし、「yes」「no」という答えしか得られません。
そうして、答えを推察していくのです。
大盛り上がり大会のパブ店内。
ナチス高官のフリをしたバスターズとヒコックス中尉は、致し方なく席に付き、ハマーシュマルクと接触します。

さあて、ここからが本番。
急転直下で窮地へと猛進していく様が、恐ろしくて恐ろしくて。
こんなはずじゃなかったのに…。
人生の悲劇とは、常に思いがけない所で巻き起こるものですね。

子どもが生まれたばかりで酒に浮かれた若いドイツ兵に絡まれ、激怒したヒコックス中尉はドイツ語で恫喝しますが、その微妙なドイツ語の発音から、疑惑の空気を生み出してしまいます。

それでもその場に、地位の低いドイツ兵しかいなかったならば、ゴリ押しで難を逃れていたでしょうに、本当に運の悪いことに、パブの奥の部屋には、ドイツ兵の少佐がいたのです。

「私も君の出身地には興味がある」
と席に近づいてくる少佐。
ド緊張の瞬間です。
しかし、そこは一流スパイのヒコックス中尉。この程度では動じません。
ハマーシュマルクの助け舟もあって、うまく出身地をごまかし、いったん難を逃れるのです。

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お互いに笑いあう小芝居。
目の奥に光る疑心。
腹の探り合い。
ドイツ兵少佐は、なかなか席を離れてくれません。


少佐は先程のカードゲームを皆でやることを強行します。
さすがにウンザリしかけるヒコックス中尉たちですが、やむなく付き合うことになります。
まーこれって、いわゆる楽しい同僚だけの酒席に、偶然にも煙たい上司が表れて居座るような感じ、まさにそのまんまです。で、プラス命がかかっているというものだから、たまりません。

カードゲームにて、少佐が額につけたカードに書かれてある有名人は…

「キング・コング」
…って、人じゃないじゃん。
実在でもないし。
と、こんなところに細かく笑いを入れ込む演出が見事です。
緊張と弛緩の連続に、見ているこちらもぐったりしそう。
さすがにこんな答え、わかるわけないだろーと思うのですが、ここがこの少佐のキレどころ。
以下、このカードゲームの流れをちょっと再現。
少佐「…ドイツ人かな?」
一同「いいえ」
少佐「アメリカ人?」
一同「いいえ」
少佐「アメリカに行ったことがあるのかな?」
一同「はい」
少佐「幸運な旅だった?」
一同「いいえ」
少佐「生まれ故郷はエキゾチックな場所?」
一同「はい」
少佐「…となると、ジャングルか東洋の国だな…。…ジャングルかな?」
一同「はい」
少佐「実在の人物か架空かを聞いてもいいが…簡単だから私は聞かない。私はジャングルで生まれ、アメリカへ行った。それは幸運な旅ではなかった。しかし…他の者には幸運だった…?」
一同「…」
少佐「ジャングルから…アメリカに行ったのは…船で?」
一同「はい」
少佐「意思に反して?」
一同「はい」
少佐「鎖につながれ、船に?」
一同「はい」
少佐「アメリカで見世物に?」
一同「はい」
少佐「黒人物語の主人公?」
一同「いいえ」
少佐「キング・コングだ!」

かっちょいーじゃん!

しかし、その察しの良さが仇となってしまうのです…。
実はこの時点で、少佐は疑心の半分以上を捨てていました。
このままならば、全員無事に生還できたのです。

最後の最後、ヒコックス中尉はとんでもない過ちを犯してしまうのでした。

「(ここは反転で)ヒコックス中尉が、最後に酒をと、グラスを3つ頼む指の仕草…それが、ドイツ人と全く異なる指の出し方を」してしまったのでした。
即座に見抜いた少佐は、ついにヒコックス中尉に銃を突きつけます。
同時に、バスターズとヒコックス中尉も少佐に銃を突きつけます。
出た!
タランティーノお得意の八方塞がりの構図です。
背後には、まだ事態に気づいていないドイツ兵集団がいます。
誰かが1人でも発砲することは、全員の死を表します。

さあ…どうする…?
うーん、さすがにここはネタバレせずにおきましょう。

しかし、ここまでの名場面は滅多に見ることがありません。
まだ未見の方がいるならば、非常にもったいないですよ。

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第5章『ジャイアント・フェイスの逆襲』


前章の興奮冷めやらぬまま5章に突入ですが、本章もそれはそれは名シーン揃いです。
まさに映画の宝石箱やー! (興奮気味)

前章で、ドイツ語ができるバスターズメンバーを失ったレイン中尉は、いたしかたなくハマーシュマルクを連れ、イタリア人になり済ましてプレミア上映会に潜入することにします。
まー、ドイツ人なんてイタリア語できねーんだから大丈夫だろっ!」
修羅場にのぞむには、あまりに軽いノリなのでありました。
「まー、バイトの面接なんてスーツ着ていかなくても大丈夫だろっ!」
に匹敵してます。

プレミア上映会当夜、ショシャナの決意を表すシーンにはデヴィッド・ボウイの名曲「キャット・ピープル」
時代背景など気にしない、特異な選曲のうまさが際立ってます。
高官のみならず、ついにヒットラーまで劇場に現れて、俄然高まるテンション。
いよいよショシャナとバスターズの二つの方向から、ヒットラー暗殺の大作戦が幕を開けるのです。
…と、そこへ、ハマーシュマルクとともにヘッポコイタリア人・ブラピ登場。
すかさず迎えるのは、かのランダ大佐。
前章のラストで足を撃たれていたハマーシュマルクは、目立つほど大きな包帯を足に巻いています。
当然「どうしましたか?」と尋ねるランダ大佐。
さあ、どう切り抜けるハマーシュマルク!

「山で…ころびましたの…」

えええええええええーーーー!?
前章でのヒコックス中尉の見事なごまかし・逃げ切り口上に比べ、なんとヘッポコな言い訳でしょうか。
それを聞くや否や、バカ笑いを始めるランダ大佐なのでした。
「ギャハハハハハハハハ」もう最高レベルのバカ笑いです。
完全に見抜いております。
さらに。
「こちらはイタリア人のお友達ですの」ハマーシュマルクはレイン中尉たちを紹介します。
ボンジュールノ!」ヘッポコイタリア語を披露するブラピ。
英会話教室に行き始めたばかりのオヤジが調子こいて、「ヘロー!」と言っているようなものでしょう。
途端に、ランダ大佐は極めて流暢なイタリア語であいさつを始めるのでした。

こいつイタリア語ペラペラじゃん!

ここからが、もう痛快。
いや、バレることは死を意味するわけですから、前章ではあんなにも緊迫していたのに、本章ではもはやギャクの境地です。あんなに憎々しかったランダ大佐に万歳! なのであります。
もはやヤケくそと、適当にイタリア語をぶちまけるレイン中尉と他2名のバスターズに対し、「もう1回言ってみて」「ん?なんて言いました?」「もっと音楽的な響きで!」「素晴らしいよ!」とほぼコントになっているのでした。

まさかここにきて、声に出して笑える場面があるとは、まいった!

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その後…案の定、レイン中尉とバスターズ1名は捕われるのでした。
しかし、なぜか劇場内に入っていった他2名のバスターズを放置するランダ大佐。

場面変わって、お次はショシャナのターンです。
協力者である恋人に作戦実行を任せ、ショシャナは上映室で息を呑み、事の顛末を見ようと待ち構えているのでしたが、そこへ、あの英雄・青年兵士が現れます。
実は、このプレミア上映会での映画とは、この青年兵士の勇敢な闘いを映画化したもので、主演も青年兵士自らが演じています。(『国家の誇り』というこの劇中劇は、本作で「ユダヤの熊」を演じているイーライ・ロスが監督しています)
「金を返せ! あの主演俳優がひどすぎる!」
空気の読まないギャグを飛ばしてニコニコしてみせる青年兵士なのでした。

ここからがまた、本作の見どころです。
あまりにしつこい青年兵士を上映室に招き入れるショシャナ。
何か喜ばしい事が起きるのだと胸を躍らせる青年兵士に、ショシャナは容赦なく発砲します
崩れ落ちる青年兵士。
ちょうどその頃、上映中の『国家の誇り』では、敵を次々に狙撃しながらも、どこか物憂いげな表情を浮かべている青年兵士の姿が映っていました。
それを見て、わずかばかりの情が湧きあがったショシャナは、思わず倒れた青年将校に手を伸ばすのですが…。

わー。思い出しながら書いてるだけでウルっとくるね、この名シーン。
ここもネタばれしないでおきますけど、むっちゃくちゃにオススメです。
この場面はまた、BGMがとても切なくて素晴らしいです。
エンニオモリコーネ作曲の「Un Amico」
情緒的で感傷的で…ぐんぐん気持ちを盛り上げます。
2回目のサビってところの直前で曲を断ち切り、場面を切り替えるタランティーノの憎さといったら!

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さあこの先、それはそれは、決して痛快とは言い難い、野蛮なナチス大虐殺シーンが展開されます。
上映スクリーンに、突如『国家の誇り』から切り替わり、ショシャナの顔のドアップが映し出されます。
「え…? なにこれ?」
戸惑うナチスたちに、スクリーン上のショシャナはナチスへの復讐のメッセージを高らかに宣告するのです。
と同時に、スクリーン裏に控えていたショシャナの恋人は、大量のフィルムに火を付けます。(映画フィルムは紙の3倍燃え上がるとか)
燃え上がるスクリーン。たちまち飛び火し、燃え上がる映画館内。
CG嫌いのタランティーノは、完全実写でこの迫力の炎上シーンを作り上げました。

撮影中は予想以上に燃えて危なかったとか! まさに映画への情熱並みにね!

そこへ、バスターズ2名が2階席からマシンガンをぶっぱなします。
うへえ…とナチスの方々が気の毒になる程の大パニック。
中には、罪のないナチスの家族も混じっているのですけど…。
これはもう、ヤッチマイナーの世界です。勧善徴悪のファンタジーなのです。各国の抱えていた事情であるとか、みんながみんな悪人か? とか、そんな考察はいりません。タランティーノのやることなのですから、みなさん、許してあげて。あの子は悪い子ちゃうねん。ただのヤンチャやねん。
だから、ほら…画面の中ではさっき、ヒットラーが撃ち殺されていましたよ。ハハハ…。

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ラスト。

ランダ大佐の曲者ぶりは、やはり常識はずれなものでした。
上映館内のバスターズ2名を放置したのは、ヒトラー暗殺を見逃す代わりに、好条件で亡命したいという思惑だったのです。
最後に来て、スーパーミラクルな裏切りですか!?
おまけに、バスターズに代わって映画館内のゲッペルスの椅子の下に、爆弾を仕掛けておいてあげるという始末。
まー、ややご都合主義的な展開で苦しいような気もしないでもないですが、ランダ大佐ならやりかねないのかもしれません。
釈然としないながらも、その申し出を受け入れるレイン中尉。
無線によって、連合国側の将軍(声・ハーヴェイ・カイテル)に、裁判免除やら報奨金やら不動産やら、好き勝手に要求をするランダ大佐の声を、苦々しい顔で聞いているレイン中尉。

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そして、連合国軍の戦線までトラックで移動したレイン中尉とランダ大佐とドイツ通信兵。
キャラ崩壊しとるがなってくらいのウキウキな態度で、ランダ大佐はレイン中尉にナイフと銃を渡します。
レイン中尉、とっさに通信兵を射殺。
初めて取り乱すランダ大佐。
初めてのピンチです。
「私を保護するように将軍に言われたはずだ! 命令違反は銃殺だぞ!」とランダ大佐。
嘲笑したレイン中尉は言います。「いや、なに…小言を言われるだけさ」

そして、2章での伏線(ここ試験出るよーポイント)が、ここでいきてくるわけです。
レイン中尉は言います。「お前は、戦争が終結したらナチの軍服を脱ぐんだろ?」
ぎらりと光るナイフが、ランダ大佐の帽子を持ち上げ、額がむき出しに…。
ぎゃああああああああああああああああああ!
散々にショシャナやバスターズを苦しめてきた、冷静沈着な悪魔・ランダ大佐の悲鳴が響きます。

2章のラストカットと、全く同じカットで、レイン中尉は自信たっぷりに言い放ちます。
「これは、オレの最高傑作だ」
当初、ブラピ演じるレイン中尉の役は、タランティーノが演じる予定だったとか。
そこからこのセリフは、タランティーノの本作への自信を重ねていると言われています。

ふー。
長かったですけど、これにて終わり。
それにしても、4度目の鑑賞にしてまた思いました。
確かに最高傑作だったと!


 

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Posted on 2013/03/07 Thu. 01:02 [edit]

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