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ジェシー・ジェームズの暗殺 /どちらが先に、裏切ったのか。 


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 ジェシー・ジェームズの暗殺
 (2007年 アメリカ映画)
 85/100点



「ジャンゴ 繋がれざる者」「続・荒野の用心棒」を見て、西部劇に興味を持った…というわけではなくて、もうすぐ公開予定の「ジャッキー・コーガン(主演・ブラット・ピット)」が面白そうだったもので、アンドリュー・ドミニク監督の前作を予習気分で手に取ってみたのでした。
こちらも、同じくブラット・ピッド主演です。

以前から興味を持っていましたけど、他のブログの方の評価に、「長くて地味」というコメントが目立っていたもので、ちょっと躊躇していたのでした。

しかし、実際観てみると、確かに長く、派手さもなく、人の心理を中心に描いた映画ですが、映像の美しさと非常に丁寧な心理描写と、リアルな銃撃シーンが巧くて、結構画面に引き込まれていました。

そして何より、ジェシー・ジェームズを演じるブラットピットのほとばしるスター性。
尊大なほどの存在感と吸引力は、ただならぬものがあって痺れます。

ベネチア国際映画祭では、見事に主演男優賞を獲得したブラピなのでした。

さて。

本作は、アメリカでは知らない者がいないという西部開拓時代のアンチヒーロー・ジェシー・ジェームズが、ロバート・フォードという青年に暗殺される物語です。
何でもジェシーは、世界初の銀行強盗を成功させた義賊と言われ、当時多大な人気があったそうです。

では、あらすじを簡単に。
「西部開拓時代、強盗で一躍名を馳せたジェシー・ジェームズに憧れる青年ロバート・フォード(ケイシー・アフレック)は、彼と行動をともにするようになる。強盗団を解散したジェシーは、かつての仲間から裏切られる恐怖で精神不安定に陥っていき、傍にいることを許したロバートさえも信用できずにいた。やがてロバートの心に、憧れと憎悪の入り混じった思惑が生まれてくる…」というお話。

 無題5


<最後まで、ネタバレしています。>


さて、義賊の逸話が本当か嘘か。
本作では、ジェシーの本当の人間性を暴き出すことに焦点をあてています。

彼は、とにかく「キレやすく、疑心に溢れた人間」であり、いうなれば、自己中心的でわがままな人間とも言えるのです。
まー、ようは強盗ですから、清き美しい人間であるわけがないわけで。

英雄なんていっても実際はこーだよ、という身も蓋もない語り口です。

しかし、多大なるカリスマ性で多くの人気を集めたジェシー。
彼を暗殺したロバート・フォード・通称ボブも、最初は彼に憧れ、目をキラキラさせて彼に近づいたのです。

当初は寛容な態度でロバートを受け入れてみせるジェシーでしたが、強盗団解散の後、様子が一変します。
「あいつが怪しい。こいつが胡散臭い」と、ギラギラした疑心をまき散らかしては、仲間から怯えられる始末。
挙句には、仲間を射〇するに至ったり、仲間の子供を拷問するまでに堕ちていきます。

昔読んだ仏教本に、「あの人に嫌われているんじゃないだろうか。嫌われているに違いない」と心配ばかりしている男が、ある日、その相手から、「あなたは私のこと嫌いでしょ?」と言われてしまう話がありました。
本作でもしかり。ジェシーが人を疑うあまり、逆に仲間が彼を過剰に恐れ、絆が薄まっていくのです。

ジェシーの複雑な心理を、ブラットピットはまさに情感たっぷりに演じます。
時に狂気をはらんだ目で相手を威嚇したり、憂い気に窓の外を眺めてみたり、突如泣き崩れてみたり、子供と戯れてみたり、おどけてみたり、スカしてみたり、怒鳴りつけてみたり、何を考えているか分からない不気味さを醸してみたりと、見事に演じています。

その演技の中で特に好きなのは、ジェシーがロバートの首を切る素振りをした後、ブチ切れるロバートに「冗談だよー」とケタケタと笑って見せるところです。
ロバートも負けじと笑うのですけど、空気が冷たいったりゃ、ありゃしない。
ロバート役のケイシーアフレックも良い味出してます。

  無題2

  無題6


物語が終盤に近付くにつれ、ロバートの心変わりが始まります。
「憧れ」が「憎しみ」を生み出すねじれた想い。

なぜ、ロバートの心にジェシー暗殺の気持ちが芽生えたのか、はっきりと示されてはいません。
ジェシーの弱い部分に嫌気がさしたのか、それとも、大物を殺すことで名声が欲しかったのか。

やや単調であった物語が、急に緊張の色を濃くし、この先の惨事を予感させます。

ジェシーとロバートの腹の探り合いが見ものであるように聞いていましたが、実際は、分かりやす過ぎるだろってほど、ロバートが裏切る気100%なもんで、ちょっと失敗かな。
逆に、最後の辺りまで、ジェシーがロバートを「疑う」程度だったのが信じられません。
だってロバートの怪しさたるや、次のようなチェックシートが必要ないほどですもん。

裏切る仲間のチェックポイント!
□目が泳ぐ。
□冷や汗をかいている。
□言葉がたどたどしい。
□夜中に忍び足で歩く。
□他の仲間と、遠くでこそこそ話している。
□会話がそっけない。
□目が反抗的。
□あなたに懸賞金がかかっていることを知っている。

3つ以上のチェックで、かなりの確率で裏切ります…って、ロバート君には全部あてはまってますから!

ただ…
ジェシーはすでに、「殺されてもいいや…」という心境だったのかもしれません。
ロバートの嘘に完全に気付いた時、ジェシーは誘うように銃を置き、無防備に背中を向けます。
そして、背後のロバートが銃を抜いたことに気づいても、ただ静かに…、小さくうなだれるだけ。

ジェシーは、疑心にさいなまれた自分自身に、嫌気がさしているかのようでした。

それにしても、ジェシーの家の中で…、しかも子供のそばでの「暗殺」ってのは、あんまりかな。
ジェシーの奥さんの驚愕たるや…、胸が痛みました。

  無題


物語は続きます。
その後のロバートの悔恨、そして…最期までが描かれます。
ロバートは世間から、「卑怯者」のレッテルを張られてしまうのです。
名声どころか、アメリカ一有名な卑怯者として歌になるほどに。

憧れた男を殺してしまった最低な男の物語。
確かに上映時間が長くて、そのエピソードいるかなあという場面もありますが、見応えはあります。
ブラピの力によるところも大きいと思いますが、作家性の強い演出も十分に楽しめます。

アンドリュー・ドミニク監督の最新作『ジャッキー・コーガン』 期待できるかも。




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Posted on 2013/04/02 Tue. 21:24 [edit]

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コメント

そうでしたか・・・! 

昨日見ました。
こちらの解説を読み、大変スッキリ納得しました。

やはり、良い映画だと思います。
どうもありがとうございます。

URL | 美-ishiki #F4a5SQlk | 2015/05/04 17:02 | edit

美-ishiki  様 

コメントありがとうございます。

解説なんてほどのものではありませんが、読んでいただいて嬉しいです。
丁寧な映画なので、じっくり見ると本当に面白いです。

URL | タイチ #- | 2015/05/05 00:52 | edit

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