素人目線の映画感想ブログ

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桐島、部活やめるってよ。 /・・・勉強もしましょ。 


 桐島ポスター
 桐島、部活やめるってよ。
 (2012年 日本映画)
 85/100点



本作は、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しています。

ま、日本アカデミー賞って、なんか大人の事情が絡んでいそうで、昔から「臭い」感じがするもので、本作の鑑賞もちょっと斜めの気持ちだったのですが…

面白かった!
本作は、間違いなく傑作の青春映画です。

あらすじは、「金曜日、桐島がいなくなった。桐島がキャプテンであるバレー部の部員や桐島の親友や恋人とその仲間たちを筆頭に、高校で目立つグループに属する者たちは慌てふためく。一方、桐島とは全く関わりのない、目立たないグループの映画部員たちは、もくもくと自分の好きな映画を撮っている。クライマックス、映画部が学校の屋上で大事なシーンを撮影していると、普段は決して交わることのない目立つグループが乱入してくる…」というお話。


(最後まで、ネタバレします。)


みなさん、承知の事と思いますが、桐島は出てきません。
この謎めいた設定が面白い。
「桐島」→「キリシマ」→「キリスト」→つまり「神」という意味があるそうです。
ゆえに、桐島はとんでもないスーパー高校生のようです。

まさに、目立つ高校生グループにとっての「神」である桐島の喪失は、日常で桐島と関わってきた部活のメンバーや親友、恋人、そしてその周辺の人々をも巻き込んだパニックを引き起こします。

一方、目立たないグループの映画部員たちには何の影響もありません。
運動部の輝かしい青春の汗や、きらびやかな恋愛模様など、勝ち組な青春の要素を一切持たない彼らは、完全に別世界と言わんばかりに、淡々と好きな映画を撮り続けるのでした。

本作は、桐島のいなくなった「金曜日(いわゆるキリストの消えた13日の金曜日)」から始まります。
この金曜日が、それぞれの登場人物の視点で何度も繰り返されます。
同じ場面でも、違う人物の視点から見ると新たな真実が浮かび上がったりします。『羅生門』的な、大変面白い手法です。

例えば…、クラスに目立つグループの女子がいます。離れた席に目立たないグループの男子がいます。
最初は女子側の視点で、女子が男子の悪口をこそこそ言っています。その時には、男子には悪口が聞こえていないように見えるのですが…。
しばらくして、男子の視点でこの場面が描かれた時には、悪口はしっかり聞こえていることが分かるのでした。

個人的な感想ですけど、目立つ側の人たちは、自分たちの世界がこの世の全てという心理に陥っているように見えますが、あちらはあちらで世界があって、こちらにはこちらで世界がある…という当たり前の事を、様々な視点から物語を描くことで表現したのかもしれません。

 無題


ゆえに!

本作は、単に「目立たない派」の青春悲劇を描いているわけではありません。

とはいえ!

所々で、やはり「目立たない派」の痛さが垣間見れるのでした。

「目立つ派」は、見た目も爽やかに、大人チックで輝かしい青春オーラを放っています。髪の毛に堂々とパーマをかけ、色を付け、当然彼氏彼女がいて、セックスの話まで余裕に飛び出し、部活の充実感を飛び散らかし、優越感に満たされています。

一方、「目立たない派」はというと、映画部の部室はひどく窮屈であり、漫画を読み漁り、幼く、コミュニケーション能力に自信が見当たらず、外見も安っぽく、常に誰かに陰で笑われ、屈折した劣等感を覆すために屁理屈だけが異常発達しています。

…当然と言えば失礼ですが、「目立たない派」は、何とも映画的にも実質的にも、「笑いの要因」にように見下げられているのでありました。
…身分不相応にも人を好きになってしまえば、スタートラインにも立たせてもらえないまま、天罰のごとく悲しい結末に打ち破れるのですよ、これが。

それは、一つの人生の真理でありましょう!

しかし!

無論、本作では安易にその帰結に下ることはありません。

「目立つ派」が常に人生の勝ち組であり、必ずしも充実した生活を送っているとは限らないのです。
そのことに、他者から蔑まされていることへの自覚から常に息を潜めて生息することで類まれなる観察眼を身に付けるに至った「目立たない派」の重鎮・主人公の前田涼也(神木隆之介)は、気づくのです!

彼らの正体は、「緩慢」と「傲慢」、はたや「己への欺瞞」というウィルスに毒された、ジョージ・A・ロメロ風にヘロヘロと動くあのおぞましき「ゾンビ」に過ぎないのだと!!!

本作のクライマックスでは、無礼にも「目立たない派」の聖域を汚された前田が、沸々とため込んでいた「目立つ派」への憂さを一気に爆発させます。
「みんなゾンビに食い殺されてしまえ!」という号令を放つのです。

・前田に気のあるようなそぶりをしながら、ちゃっかりチャラ男と付き合っていた女子
・「桐島」と付き合っていることだけがアイデンティティーであるかのような学校一のオシャレ女子
・実質学校ナンバー2の男と付き合っていることにステータスを感じ、周囲を見下している女子
・野球部を辞め、一生懸命になることから逃げ、流されるままにしか生きていない男子
・「桐島」がいなければ、焦りから統率もままならない無力なバレー部の面々。
・実は何も考えていない、何も持ち合わせていなかった「目立つ派」の面々。


その全ての者たちが、好きな子をチャラ男に取られてしまった前田の、超絶嫉妬による妄想によって「殺戮」されていく圧巻のシーンが展開されるのです。

いやはや…、なんだかんだと結局は、「目立つ派」への一矢として、映画は機能しているのでした。

  無題1


さて。

本作で唯一、成長のそぶりを見せる「目立つ派」の男子、菊池 宏樹 (東出昌大)は、ラストで前田との会話の直後に涙を流します。
それは、「ドラフトに呼ばれもしていないのに、ドラフトが終わるまで野球を捨てられない先輩」と、「映画監督になるわけでもないのに、好きな映画を撮り続ける前田」の二人の姿に打ちのめされたことが要因でした。

潜在的にあった「何も頑張っていない自分」への罪悪感でしょうか。

映画のラストシーンは、涙を拭いた菊池が、野球部の練習を遠目に、ついに「桐島」に電話をかける場面で唐突に終わります。

余韻の残す、バッチリ最高のラストだと思います。

ラストシーン直後に、目の覚めるような白幕に浮かんだタイトルの素晴らしさ。
ちょっとウルルっと来ましたね、こりゃ。

人によっては、「で、結局、何?」と思うそうです。

いろいろなところで、人によって解釈の異なる映画だと思います。
・みんなにとって「桐島」とはなんなのか。
・菊池と前田、実際どちらが充実していると思うか。
・「目立つ派」を食い殺させた前田の気持ちが分かるか。
・泣きだした菊池の気持ちをどう想像するか。

自分自身がどういう高校生活(青春)を送ったかで、解釈や評価は異なるのかもしれません。

結局、本作で表現された高校生の心理って、特別なことでもなんでもない「焦り」と「あがき」でしかないわけで、ゆえに本作に劇的な展開は皆無です。
とはいえ普遍的すぎる生々しさは、良い意味でリアルで苦々しかったですねえ。

ケータイ小説的な青春映画とは、相対する地味さなので、あっち方面を期待する人には合わないでしょう。

芝居も見ものです。
本来なら、最も「目立つ派」であるはずの神木隆之介が、イケてない男子に変身しており(内またで上手に走ります)、また他の高校生たちも極めて自然な芝居で、いたく感心しました。

結構オススメしたい映画です。
久しぶりの邦画の収穫にご満悦です。

  無題3


ところで…
本作で一つだけに気になったことがありました。

それは、登場人物の高校生みんなが、とにかく「勉強」している様子がないこと。
「部活」「友情」「恋愛」は二の次であり、実は学生の本分は「勉強」です。

スポーツ推薦狙いや就職希望であるならばともかく、本作は「部活重視」であり、「勉強」は完全に軽んじられているようでした。
私の職業柄、ちょっとそこが気になってしまったのです。個人的に。

まー…彼らの中の何人かは、高3からパパっと勉強をして、大学に受かったりするのかもしれませんね。
以前、女遊びばかりしていた超有名高校の男子が、高3の最後の辺りで仕方なく勉強を始め、いとも簡単に慶應に入ったのを目撃したことがあります。(人生とは、なんだかんだと不平等です。)

「目立つ派」「目立たない派」の人生ゲームは、高校編のところでは、圧倒的に不利な「目立たない派」ですが、この先は完全逆転のチャンスがいくらでも転がっています。
大学編、就職編、結婚編…人生は長い。
ショーブハ、マダマダツイチャイナイヨー!

ふう…本日はこの辺りで…
え? お前は結局どっち派だったのかって?
もちろん「目立たない派」だったけどさー、でも、あえてだからね。あえての「目立たない派の帰宅部」! (わー、サイテー…)


↓こちらの感想は詳しいですよ。
・何もしていなかった人間 映画版「桐島、部活やめるってよ」/カゲヒナタのレビュー

・桐島、部活やめるってよ・・・・・評価額1700円/ノラネコの呑んで観るシネマ

・桐島、部活やめるってよ/映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


  

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Posted on 2013/04/23 Tue. 00:19 [edit]

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「映画ベース」のご案内 

素人目線の映画感想ブログ 管理人様

はじめまして。紀平と申します。

私は現在「映画ベース」という映画のレビューサイトを開発しており、
是非映画に関心のある方からレビューの投稿や、
サイトをご利用頂いてのご意見やご感想などを頂ければと思っております。

「映画ベース」
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まだまだ立ち上げたばかりの未熟なサイトですが、
一度サイトにお越し頂き、
ご利用をご検討頂けますと幸いです。

どうぞよろしくお願い致します。

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// 映画ベース
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// 紀平 光太
// kihira@kota.lolipop.jp
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URL | 紀平 光太 #- | 2013/04/24 13:22 | edit

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  # | 2013/04/26 03:12 | edit

いつもコメントありがとうございます。 

こんにちは。

いつもご覧になっていただいて、大変感謝しております。

「桐島、部活やめるってよ!」は最高の青春映画でしたよ。

良い映画をオススメするのは、筆が進みます。

悪い映画のダメ出しは…やはり筆が進みます。

何とも普通の映画は、筆が進みません。

これからも、とても良い映画か、とても悪い映画に出会いたいものです。

また、ぜひ遊びに来てください。

リンクよろしくお願いいたします。光栄です。


URL | タイチ #- | 2013/04/28 18:35 | edit

お邪魔します 

お邪魔します。

このレビューで語られている骨子で考えると 「あのラストはあれでよかったのだな。」 と思えてまいりました。 勉強になりました。

僕も今作のレビューを書いておりますので、何卒、トラックバックさせて下さいませ。

URL | マーク・レスター #- | 2014/02/02 09:09 | edit

マークレスター様 

コメントありがとうございました。

自分がいけてないグループだったので、なんか共感した、
という感じです。
そういう目線の映画だと思います。

トラバよろしくお願いいたします。

URL | タイチ #- | 2014/02/03 12:24 | edit

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