素人目線の映画感想ブログ

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ジャッキー・コーガン ちっとも優しくないってば。 


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 ジャッキー・コーガン
 (2013年 アメリカ映画)80/100点


本作の監督・アンドリュー・ドミニクの前作「ジェシー・ジェームズの暗殺」で予習していましたので、私は本作がアクション満載のサスペンス映画ではなく、人間をじっくり描写するアート系の映画だと言う事は知っていましたよ(えへん)

しかし、本作の広告には「セブンを越える衝撃!」とか「ブラピの新境地!」とか、やたら勘違いを狙った宣伝文句が並んでいます。私は劇場で鑑賞しながら、「ああ…この劇場で何人かは、騙された…と思っているのではないだろか」と何故かいたたまれない思いがしたのでした。
鑑賞後、観客の「文句」が聞こえてきたら嫌なので、ささーっと一足先に帰ったものです。

映画会社のみなさん、私にそんな気を使わせないで。

というわけでして、本作にはセブンを越えるどんでん返しなぞ、一切ございません。
大変、人を選ぶ映画です。
非常に骨太で、作り手のこだわりに溢れたバイオレンス映画なのです。
ついでに言うなら、ブラピが大変悪いヤツなんです。
たまに、「あのスターが今度は悪役に!」 なんて煽りで、人気俳優が悪役をやったりします。でも、いざ見てみると結局カッコいい役回りで、ちっとも汚れた役ではなかったりすることが多々あります。例えばトム・クルーズとか…それから…トム・クルーズとか…ええと…、そう! トム・クルーズとか。
しかし、本作のブラピはというと、相当アンダーグラウンドにまみれた、ホントに恐ろしい殺し屋を演じていたのです。

ジャッキー・コーガンは、本当に「悪い奴」です。
「あいつは殺さんでもよかろーもん!」と依頼主に説得されても、「いーや、殺すもんね」と譲りません。
しかも金にうるさいし、人使いも粗いし…。
命乞いされたらいたたまれないから「優しく殺す(突発的に殺す)」と言っておきながら、散々な痛めつけ方をしますよ。

けれど、この映画、結構好きでした。

あらすじは極めて簡単です。「マフィアの賭場で強盗が発生。強盗を見つけ出して始末するために組織が依頼したヒットマン・ジャッキーコーガン(ブラッド・ピット)は、一人また一人と強盗犯を始末していく。」ってなお話。

  無題


政治色がやや濃いです。「オバマ」と「マケイン」による大統領選挙が物語の背景にあります。
ただ、直接ストーリーに絡むわけではありません。エッセンスとして散りばめられているのです。
所々の場面でオバマの演説が流れ、我々に「理想の国家論」を聞かせます。その演説の内容に刃向うような存在が、まさにジャッキー・コーガンなのです。
ゆえに本作には、アメリカ社会への痛烈な皮肉が込められているというわけです。
…が、はっきりとわかりやすい皮肉ではないので、アメリカの現代文化に多少詳しくないと、気づかないまま、何言ってんの? 何の意味があるの? という戸惑いの牢獄に入れられているような鑑賞となるでしょう。

まー、私もそんな感じでしたが。

けれど私が楽しめたのは、意味のない会話劇が楽しいタランティーノ映画マニアだからかもしれません。

序盤こそ、賭場を襲う若い男二人の危なっかしい襲撃シーンが緊張感に溢れ、犯罪サスペンスとして真っ当に楽しめましたが、中盤でブラピが登場してから、怪しげなアウトローたちの群像劇のようになり、楽しく(?)戸惑わせます。

一番の戸惑いは、ジャッキーが呼び寄せた殺し屋・ミッキーの存在です。
突然の登場で、さらりと描かれるかと思いきや…人物描写に結構な時間が割かれます。奥さんとの確執を語り出したり、酒ばかり飲んでいたり、黒人娼婦にジャッキーさえも頭を抱える程の暴言を吐いたり…。
思いもよらず、主要人物な扱いなので、驚きます。
「期待していた人間が、実は全く使えない」って、これはこれで人生あるあるな感じで個人的には楽しめましたが、「こんな映画だと思ってなかった人は、戸惑っておろーな」と、またもや周りの観客のリアクションが心配になるのでした。

他に、賭場強盗の二人が麻薬に溺れる描写では、不思議なくらい長い時間、ラリラリ感が描かれます。目の前に明るい光が満ち満ちたり、人の声が反響したり…結構長く繰り返され、何の意味があるんだろーと思わせておいて、特に何も起きません。

むむむ…。特異な匂いがするこれらの描写は、本当に人を選ぶでしょうね…。

さて、バイオレンス描写はというと、鮮烈で凝りまくった映像で見せます。アウトレイジ真っ青の痛々しさです。
襲われた賭場のオーナー・マーキーが、かつての狂言強盗の前科から仲間に疑われ、コテンパンにリンチを受けるシーンは強烈です。思わずこちらがお腹を抑えたくなるほどの「痛み」があり、非常に気の毒に感じました。
本当に今回の賭場強盗に一切関わっていないにも関わらず、そして組織さえも「殺すまでしなくても…」と言っているのにも関わらず、ジャッキーはやたらとマーキーを始末したがるもんだから、みんなジャッキーを「殺人狂」の変人のように思うかもしれません。
しかし、超現実主義的なジャッキーは、裏社会の生き方を熟知したプロフェッショナルなのです。きれい事を嫌うジャッキー。確かにスターが演じるキャラとしては、あり得ないくらいアンチ・ヒーローに偏っていて斬新です。

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ラストシーンは、オバマ大統領の演説が流れるバーで展開されます。
全ての仕事を終えたジャッキーが、これまでに作中の端々で聞こえていた「オバマの演説」に対し、初めて突っ込みを入れるのです。
「国民が一つになるべきだ」というメッセージに、ジャッキーは噛みつきます。

簡単に言うと…「表でどんなに美辞麗句を並べようと、生きていくことに精一杯な者には関係ねーよ」ってとこでしょうか。

それにしても、オバマ大統領の顔がまともに出てくる映画って、私は本作が初めてです。彼はどちらかというと、清潔感と正義感に溢れた優しい顔つきなので、ちっとも映画向きではないと思います。少なくとも、本作のような重苦しいハードなバイオレンスとは相容れぬ、ミスキャストのように感じた点が、本作一番の弱点だったとさえ思います。
ただ逆に、そんなオバマ大統領の演説に毒を吐くことで、改めてジャッキーの「悪人っぷり」の印象を強める効果があるともいえるので、何とも。

ブッシュ大統領の時の映画だったら良かったね。

ということで…

結論:オバマ大統領は優しい…気がする。


  

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Posted on 2013/05/10 Fri. 00:09 [edit]

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コメント

はじめまして。 

はじめまして。うろうろしていて流れつき、拝読させていただきました。ぺこり。
これって、そういう映画だったのですね! 個人的には俄然観たくなりました。
某アメリカポリティカルドラマにはまっておりまして、オバマが絡めてあるところも
興味深く。お陰でジェシー・ジェームズの方も見届けたくなりました。
また遊びに伺わせて下さいませ。

URL | あ き ら #JzHzoTz. | 2013/05/13 00:58 | edit

あきら様 

コメントありがとうございます。

単純バイオレンスかと思いきや、意外にメッセージ性が強くて、
人を選ぶ映画でしたよ。

オバマさんはしかし、真面目な顔つきで、映画的とは言い難い気がしました。
何か…やっぱりノッチに似てるなあと。

アメリカのドラマいいですね。
何かオススメがありましたら、教えてください。
またのお越しを!

URL | タイチ #- | 2013/05/13 22:23 | edit

面白かったです 

映画もそこそこ面白かったですけど、書いてらっしゃる内容が面白かったです。

自分がうっすら思っていたことを的確に文章にしてくださっていたので、読んでスッキリしました。

結局なにもしない殺し屋のヤバい奴感は、なかなか映画で表現するのが難しいニュアンスも含まれてた気がして、怖いし笑えるしでけっこう気に入ってしまいました。

URL | キリマンダロ #- | 2017/04/16 04:50 | edit

キリマンダロ  様 

コメントありがとうございます。

すごく不思議な雰囲気のマフィア映画でしたね。
『パルプフィクション』みたいな、ファンタジーヤクザ映画というジャンル。

作家性が濃いんで、人を選ぶでしょうけど。
凄い期待していた人が、「全くダメダメ」ってのは、
人生よーくあることなんで、この映画のそういう部分で「おもしれぇ」と思えるかどうかですよね。

URL | タイチ #- | 2017/04/16 09:05 | edit

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