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悪の教典 大島優子は、正しかった。 


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 悪の教典
 (2010年 日本映画)69/100点


以前、AKBの大島優子が本作の試写を見た際に、余りの残虐さに途中退場し、「この映画が嫌い」と発言した事が物議をかもしていました。(ま、それ自体、宣伝パフォーンマンスだった可能性もありますが)
そのニュースを聞いた時には、「何を甘いことを…。きっとバイオレンス映画なんて見たこともないんだろうな」などと見損なっておりましたよ、ええ。
今回、満を持して、ついに本作を鑑賞しました。そして、一息ついた後に思ったのです。

大島優子は、正しかったなあ。

いやー、まー、うーん、好きな人には好きなのかもしれないんすけどねー。
こりゃあ、とても恐ろしい映画です。
残虐なんてもんじゃない。ある意味すごいです。
13日の金曜日? エルム街の悪夢? バトル・ロワイアル? 呪怨? そんなもんじゃないんですよ、この悪いものを観てしまったという感覚は。見終わった後の胃の重みと言ったら…確かに悲しくて悲しくて。

けれどそう聞くと、「どんなもんなんだろ」と気にかかるでしょう? それが、大島優子発言の真の意図を勘ぐる理由でもあるのですが、それを差し引いても、確かに彼女の「この映画が嫌い」という感想は正しかったと思います。「ひゃー、すっげー。おったまげましたー。まじパネぇっす、さいこー」なんて感想を漏らそうもんなら、それこそ大炎上でしょう。「A(悪の)、K(教典)、B(万歳!)」なんて言おうもんなら、そりゃあもう!

ということで、そんな本作。
あらすじなんて今さらいりますか。一応いりますか。そうですか。では、あらすじは、「生徒全員、みな殺し」というお話!
本作のキャッチコピーそのまんまですので、これはネタバレではありません。

 無題


バトルロワイヤルも同じように学生が死んでいく話ですけど、本作ほどの残虐性や悲しさを感じることがなかったのは、なぜだろうと考えてみました。

バトルロワイアル
1.生徒が日本で一番残念な学校の生徒たちである。
2.戦い合うので、生き残るチャンスが与えられている。
3.さまざまな死に方・戦い方をするため、エンタメ感が強い。
4.そもそも設定が荒唐無稽なので、現実感に乏しい。


といったことが理由で、近未来のファンタジーとして捉えることが出来ました。

比べて本作は…
1.生徒は、フツーの高校生。
2.戦う術も知らず、ただただ命乞いをするばかり。
3.ひたすら散弾銃で撃たれていく。
4.舞台が、誰もが見慣れた風景である校内。


という、まさに「コロンバイン高校」の銃乱射事件さながらのリアル設定です。

それにしても、いったいどういう狙いで本作を映像化したのでしょう? 世の中には、よほど「高校生」に憎悪を持った需要が溢れているのでしょうか。本作は、ただただ「子供」が撃ち殺されていく様を見せつけることだけに、渾身の情熱を捧げているようでした。

とはいえ、そこは名匠・三池崇監督。残虐性のある物語を、さらに背筋を凍らせるものへと進化させるべく、実に容赦のない演出を練り込んできます。それがなかなか手が込んでいて、巧かったりするものだから、「ただの残酷映画だ」と断罪することも出来ない、何とも始末に負えない映画になっているのです。

 無題1


主人公の蓮見(伊藤英明)は、生徒からハスミンと呼ばれ慕われています。真面目で実直、頭脳明晰でいて、生徒思い。他の教師にセクハラをされている女子生徒の相談を受ける場面では、実に頼もしい教師の姿を見せ、見事な計略で女子生徒を救います。なんだー、結構いいやつだったりしてーと序盤の私は、彼の受け持つクラスの生徒たち同様、完全にだまされてしまっていたのでした。
徐々に異常性を垣間見せ始める蓮見。男子生徒をたらしこむゲイの教師(ろくな教師がいない学校だな)には、弱みを握ったことで、「あなたの命運は私の手の中なのですよ」とさらりと言ってのけ、ゾクリとさせます。風貌とは似つかない軽トラックを乗り回し、時折全裸で筋トレに励みます。娘のいじめを学校に認めさせようと、食って掛かってきたモンスターペアレントを始末し、自分の素性に疑いを持ち始めた同僚教師を葬ります。とにかく、自分の気に入らないヤツ、都合の悪いヤツは、次々に消していく。徐々に蓮見は、自分勝手なゲームを開始していきます…。

さて。

前述のように、演出の巧さ(斬新さ)が際立っている場面が多々あります。

もっとも衝撃だったのは、屋上へ続く階段へ生徒数名を導き、屋上に出るための扉を施錠することで行き止まりに追い込むシーン。残虐ですが…実は巧い。見たことのない場面を作り上げたという点では、凄いと言わざるをえません。優しい声で近づく蓮見。蓮見に助けを求める生徒が階段を下りかけようとするやの発砲。次から次へと発砲。ワンカットの長回しで撃ちまくります。吹き飛ぶ血、泣き叫ぶ高校生、嗚咽を漏らす女子高生。生徒の中には、うまく銃弾をかわし階段から飛び降りる者もいますが、容赦なく背中を撃ち抜かれます。拝むように命乞いをする生徒を、何のためらいもなく撃つ…。行き止まりの壁際に、生徒の遺体が一つ、また一つと増えていきます。次は自分だ…と思い知った生徒の恐怖心たるや…。トラウマ必至のこの場面は、もはや二度と鑑賞する気が起きないほどの衝撃です。ある意味、これは「すごい」のかもしれません。この場面に流れる場違いな軽快な音楽も、狭い空間に大きく響く発砲音にいらつくように、いちいち蓮見が頭を振る仕草も、もう、全てが恐ろしい。

 無題2


地獄の黙示録やらプライベート・ライアンやらキルビルやらシンドラーのリストやら、大量虐殺を見せつける映画は多々ありますが、それをも超えた「おぞましさ」を内包しています。何度も言いますが、それはある意味で「すごい」のです。正直言って常軌を逸しており、危険です。とてもオススメできません。

ただ、以下のような演出が物足りない点も多々あります。(多作で多忙であろう三池監督は、所々で無意識に手を抜くんじゃないかとさえ思ってしまうほどです…)

・物理教師を自殺に見せかける列車場面での、蓮見の登場の仕方が極めてふつーです。まるで刑事が尾行しているような感じで物足りず。

・あれだけ大量の虐殺現場を見た警察のリアクションが希薄。窃盗事件並みのふつーの空気感でした。そこは、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であろうに…。

・おまけに、蓮見の逮捕の場面も緊張感なし。ふつーに手錠をかけただけ…。もっと盛り上がる見せ方ないんかなー。あるんじゃないかなー。

・山田孝之演じるチンピラ教師が、撃ち殺される直前にパンツの匂いを嗅ぐのがナンセンスだなあ。変な笑いを入れたい三池節は分かるんですけど、なんか表現が下衆いなあと。

・生徒が全く応戦しないのが寂しいです。恐怖で立ち向かえないのがリアルなのかもしれませんが、戦ってほしかった。唯一、アーチェリー部の生徒が立ち向かいますが、まー実にあっさりと…。勇敢な生徒でしたが、思いっきり大声で好きな女の子の名前を叫んでしまったために、蓮見に居場所がバレるというあたりは、もう皮肉にもほどがあります。…もしかして笑うところなのかもしれませんが、笑えるわけがありません。蓮見は嗤っていましたが。


 無題4


あと、これは原作通りなのか分かりませんが、突っ込みどころも多いです。

・蓮見が犯す中盤までの殺しの方法は、今ひとつリアリティがありません。物理講師の殺しでは、目撃者が出る可能性が高いし、モンペアの家を焼く方法も、偶然性に頼り過ぎではないでしょうか。

・よく考えてみると、蓮見にとって最後の大量虐殺は、リスクが高すぎませんか。一人でも生徒が生き残ればアウトになるこの方法は、非現実的すぎて乗れません。生徒たちだって、本当ならいくらでも校外に逃げ出せるはずです。それなのに、蓮見は虐殺の途中で殺した生徒を出席簿から消す作業を行っています。そんな余裕があるわけない。

・蓮見にはシリアルキラーの友人がいた、とか、神話に出てくる「オーディーン」という神を恐れている、などという裏設定が出てきますが、あまり描写が丁寧でないので、かえって邪魔な気がしました。

・あと専門的なところで、アーチェリーで応戦するのは実際は不可能。矢は、あんなにまっすぐには飛ばないんですって。


 無題5


役者陣はなかなか素晴らしかったです。みんな本当に恐怖におびえた芝居なので、そんなに頑張らないでよと泣けてきます。また、主要な高校生を「ヒミズ」でのコンビでもあった二階堂ふみと染谷将太が演じていますが、存在感ばっちりでした。染谷将太は、ほぼ「ヒミズ」のまんま。眠そうな目が印象的。二階堂ふみは、他の生徒よりも思慮深くて有能そうな女子で好印象でした。
無論、主演の伊東英明も見事にサイコ・キラーを演じています。海猿で培った爽やかなイメージとのギャップ効果の妙技。これはキャスティングの巧さだと思います。

それにしても、蓮見が上機嫌になると口笛で奏でる三文オペラの「Mack the Knife」という曲が、やたら怖いです。悪魔の歌かと思うほどの禍々しさ。これは見事な効果ですが、見終わった後、このメロディーがトラウマ並みに頭にこびりついてしまう恐れがあります。いや、これマジで危険かも…。それだけに、EDのエグザイルは最低でした。いや、逆にずっこけて、多少本編でのショックが和らいだので良かったのかもしれませんが。

せめてラストは平和に終わって欲しかったのに、最後の蓮見の行動と思惑は、本当に本当に震えました。奇跡的に生き残った生徒たちの心情を思うと気の毒でならず、最後まで終わらない恐怖に辟易するほどです。
感情移入が強い人は、決して見てはいけません。
バイオレンス映画をある程度見慣れていた私でも、なんだかグッタリとへこみました。

何度も言いましょう。

大島優子は、正しかったのです。


    

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Posted on 2013/06/30 Sun. 23:24 [edit]

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コメント

 

バトル・ロワイアルな

あとBRは高校生ではなく中学生

ちゃんと調べてから語ろうか(笑)

URL | あ #5hqumHx6 | 2014/01/22 20:03 | edit

 

えー!中学生設定だったっけ?

忘れてましたー。失礼しました。

そっかー。山本太郎も藤原竜也も柴咲コウも中学生設定だったかー。

URL | タイチ #- | 2014/01/23 13:37 | edit

 

ショットガンを口に、殺し方を言動、嘘に、命を気持ちに。導くものは死。目に見えないだけであり、見えた時は映画の描写のようになってるだろう。人間としてあなたが恐れているのではなく、生体として血に恐れていると願いたい。

URL | 偽善 #iZV6NA3g | 2014/11/10 20:47 | edit

 

個人の好き嫌いはともかく
人間の心にどれだけ残酷に見せるか計算して作る
「絶対的な悪」というジャンルの映画なんです


年齢制限も有りましたしそういうことも全て踏まえて見て頂きたい

URL |  #- | 2015/01/25 13:50 | edit

 

私は本作を否定しているわけではありません。
否定したくなるほどの「残酷さ」を感じさせるのは、
本作の「演出の素晴らしさだ」と思っていますよ。

URL |  #- | 2015/01/25 19:39 | edit

 

こんなに前の記事に今更?って感じですが、最近huluで配信されて見たので、色んな感想や評価を掲載しているブログなんかを回っています。

私が色々見てきた感想の中で、一番素直で読みやすく共感できる感想でした。
違和感のある部分も、とても良く分かりますし、私も同じように感じました。
ただ、友人の一言で色々納得できました。「想定外の殺人が起きちゃって、その死体の説明が付かないから、生徒全て殺してしまおう。なんて発想になる奴の思考を理解出来るわけがないんじゃね?www」とのこと。私も同感でした。
蓮見は、気が狂っているのではなく、根本的に違う生き物と理解することしかできないのではないかと思っております。

URL |  #- | 2016/10/13 09:43 | edit

コメントありがとうございます。 

以前の記事でも、コメントを頂戴すると有り難いです!

確かに、蓮見はサイコパスですので、普通の思考では太刀打ちできません。
「やばいなー、どうしよっかなー。そうだ、やっちゃおう」
先を考えない。人道なんて感じない。恐ろしい生き物なんですね。

ただ、「生徒を全員始末する」ことを目的にするのは分かるのですが、
あのやり方では、現実だったら、数人には逃げられちゃうと思うのです。
実際、そうでした。
ゆえに、蓮見のあの選択は、捕まえる(失敗する)危険が大き過ぎじゃないかなあという
違和感を感じたのです。

無論、そんなことも何もかも、彼は気にしないのかも知れませんね。
積み上げた「美しい信頼」をぶち壊す快感に、ひたすらワクワクしていただけかもしれません。

URL | タイチ #- | 2016/10/13 11:17 | edit

 

同じく今更ながら見たのでコメントですw
感想としては不評という点は同じなんですが理由が正反対でした
個人的には残虐さが足りないかなぁと
というのも、殺害シーンのほとんどがシンプルな射殺ばかりで
唯一オリジナリティの高かった顔に穴を開けるシーンを映像で見せないっていう・・
同じく残虐な映画であるホステルの足元にも及ばないかなって感想でした
お話自体はとても恐ろしく残虐なのですが映像にする意味が無いと思いました

>屋上へ続く階段へ生徒数名を導き、屋上に出るための扉を施錠することで行き止まりに追い込むシーン
この手法はだいぶ昔からありますし新しくもなんともないです

URL | 通りすがり #- | 2016/11/03 21:09 | edit

 

私もhuluで見ました。(前にレンタルで1度見ています)
職員室に監視カメラ的なものがありましたし、逃げようとしたらわかるのでは?
職員室は基本的に一階ですし…(学校建築の規格かなんかであった気がします。)
降りて来るのを発見してからでも間に合う気がします。
射殺に関しては、『罪を他の教師になすりつけるため』ということで個人的にはそれほど気になりませんでしたね。

ただ、知的サイコパスはハンニバル・レクターのイメージが強すぎて少し間抜けな印象を受けました。

URL |  #- | 2016/11/04 01:46 | edit

通りすがり 様 

コメントを頂戴し、ありがとうございます。
いろいろな捉え方があるなあと思います。

個人的には、
「学校」という見知ったシチュエーションがとてもリアルに感じたもので、
あれ以上の残虐シーンはいいかなあと思いました。

残虐パターンが豊富である必要がありますでしょうか。
普通の高校生が次々にやられていく…というだけで、十分な気がしています。
高校生たちの恐怖演技が秀逸で、それだけで、もう十分だと。

URL | タイチ #- | 2016/11/04 12:35 | edit

コメントを頂戴し、ありがとうございます。 

そうです。そうです。
ハンニバル・レクター博士だったら、あんなことするかなあ…。
ただ忽然と姿を消すだけのような気がします。
ただ。
つまり、本作の主人公の方が、
捕まる捕まらないを全く考慮しない、
本来のサイコパスな選択なのかもしれませんね。

URL | タイチ #- | 2016/11/04 12:39 | edit

サイコパス蓮見先生 

伊藤英明が演じるサイコパス蓮見先生にぞっとしてしまいました。現実にはありえない話だとは思うけれど、ひとりひとりの登場人物は現実にもいそうな気がするんです。自信過剰のサイコパス教師、気の小さい教師、わいせつ教師とか。

URL | MORIKANA #- | 2017/05/18 08:00 | edit

MORIKANA 様 

それにしても、ロクな教師のいない学校ですね。

私も教育関係にいるから、時折「教師」と接しますが、確かに常識から外れたような人は多いですもの。

URL | タイチ #- | 2017/05/23 14:09 | edit

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