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ある子供 そして、父になる。 


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 ある子供
 (2005年 ベルギー・フランス映画)80/100点


正直言いますと、父親にとって「生まれたばかりの赤ん坊」ってさほど可愛くないんです。
生みの苦しみを体験した母親と違い、実感が薄いものなのです。
私なんて、子供が生まれた時には、なんとか感動を装おうとしていたくらいです。
よくわかんないんだよなー。
やたら脆弱な存在に思えるために、抱くことも恐ろしく、全くもって不可思議な存在でしかないのです。
経験談ですが、父親にとっては、実際に育児が始まり、いろんな子供の病気や怪我のトラブルなんかに四苦八苦し、2歳か3歳くらいから少しずつコミュニケーションが取れるようになって、ようやく子供に愛着が湧き始めるものなのです。

ゆえに!

本作の主人公、スーパー・ネグレクト:ブリュノの気持ちって、百分の1くらいならわかるんだよなー。うーん、そうだよねーって。

…すみません。

さて。

本作はカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)受賞作品です。
監督・ダルデンヌ兄弟が、大人になりきれないまま子供を授かった者に起こりえる、背筋の凍るような物語を淡々と紡いでいきます。
簡単にあらすじを。
20歳のブリュノと18歳のソニア。二人の間に子供ができる。ブリュノは盗みなどで生計を立てているが、赤ん坊に興味を示さない。ある日、ソニアから預かった赤ん坊を、ソニアに内緒にして売りさばいてしまう。それを知ったソニアは直後に失神してしまう。ようやく事態のまずさに気付いたブリュノは、何とか赤ん坊を取り戻すが、ソニアの怒りは収まらず…」というお話。

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なんたって、主人公・ブリュノは大バカ者です。
生まれたばかりの赤ん坊を抱えたソニアが、嬉々として近づいてきても、ほとんど興味を示しません。
「赤ん坊を抱いてみてよ」と言われても、ほんのりと「うぜーなあ…」という気持ちが出てます。
ただし、ブリュノに「悪意」はないという点がポイントです。
前述した通り、父親が生まれたばかりの赤ん坊に興味がないのは、不思議ではありません。
しかし、ブリュノの場合、決定的に欠落していることがあります。
それは、「他人の気持ちを慮る」ことです。
赤ん坊を売りさばき、唖然とするソニアに、「また作ればいいじゃん」とのたまいます。
たとえ自分が赤ん坊に興味を持てなくても、赤ん坊を抱くソニアの嬉しそうな顔を見ていれば、やっていいことと悪い事の区別は付くものです。
それから、「未来予測」が一つも出来ません。
ブリュノは、ソニアが卒倒して初めて、「やってはいけないことをした」と気付きます。フツーなら、事前にわかるでしょーが。ブリュノの脳裏には目先のことしかなく、「売りたい」から「売った」という単純極まりない判断でしかなかったのです。

つまりは、「未熟」ということ。「窃盗」のパートナーが十代半ばくらいの少年であることからも、彼の精神年齢が分かります。

だからこそ、彼には「悪意」がありません。大変、始末が悪いのですが…。
ただね。
「悪意がないのは、もっと悪い」などと巷ではよく言われますが、悪意がないのは「やってはいけない」ということを「知らないだけ」だ、とも考えられます。
実際、赤ん坊を取り戻した後のブリュノは、それでも怒りの収まってくれないソニアに対し、頭を抱えて思い悩みます。きっと頭の中には、「なぜ」「なぜ」「なぜ」という問答が繰り広げられたことでしょう。
「バカ」は死ななきゃ治らない。けど、いったん死ぬ想いをすれば、治ることもある。
その言葉の通り、失敗続きで苦しみ抜いた彼に、徐々に人間らしさが芽生えていきます。
監督であるダルデンヌ兄弟の作品は、「少年と自転車」でもそうでしたが、見ると憂鬱になると評されます。しかし、本作はブリュノの成長物語になっているので、ラストはそこそこ爽やかです。

ま、それまでに何べんも凍りついたけどね!

無論、ソニアが「子供はどこ?」とブリュノに尋ねる場面での戦慄といったらないです。
まともに見ていられません。
どのツラさげて、「売っちゃった」なんて言うんだよ、ってそのツラかーーーー!
子供のゲームソフトを勝手にブックオフに売っちゃったくらいのツラかー! (それもひどい)

子供が絡んだ家庭内のゴタゴタ話は、実は苦手です。
赤ん坊を抱えたソニアが点々と歩いている姿を見ているだけで、切なくなります。
生活費が苦しいのに、後先考えずにソニアに服を買ってあげるブリュノの気まぐれな優しさが切ないです。
この先に待ち受ける苦難も知らず、無邪気にじゃれあうソニアとブリュノが、切ないです。
本作のみならず、「少年と自転車」でも「ネグレクトの父親役」に配役されたジェレミー・レニエの気持ちを考えても、切ないです。(「俺って…そんなに無責任な顔付きかなー」って)

283.jpg
(かっこつけてますが、今やネグレクトと言えば、ジェレミーさん)


ソニアの怒りは甚大です。
無事に赤ん坊が戻ってきてからも、当然ですがブリュノへの信頼は完全に消滅しています。
しかしね…。
厳しく言いますと、ソニアにも責任はあるのです。
ブリュノがそういう男だってのは、お付き合い当初から分かっていたはずです。

「彼って純粋なのよねー」
「無邪気で少年のようなのー」
「大事なのはお金じゃないっしょ、愛っしょ」


みたいな感じでさ!
友達に自慢したりなんかしてさ!

で、子供が産まれると、途端に女性は「現実」に覚醒します。
「純粋って馬鹿ってことだわー」
「子供っぽいのよねー」
「この甲斐性なしが!」

ってなるんだわい、そう、そう、それが真理。

いかん。映画の枠を超えて、切なくなってきました。

 ある子ども


丸く収まっていくかに見えるラストは、先行きの苦難が想像できて手放しでは安心できないのですが、しかし、着実にブリュノは「大人」へと成長し、そしていつしか「父親」になるのだと思います。

自分自身もそうですが、親だって、「日々成長」なのであります。
ということでね、多少は大目に見てもらえませんかね。ね。…もらえませんかね。


 

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Posted on 2013/08/07 Wed. 22:00 [edit]

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07

コメント

 

自分の感覚的にとても共感できるコメントでした❗️
当時シアターで見ました。
当時の自分の彼氏と重なるキャラクターで、すごく入れ込んでみたのを覚えています。ブリュノが少年の足を必死にさする場面、実家?母親を訪ねた場面の、ドアが閉められる場面 ( 彼の生い立ちがありありと説明されていたように ) 、そして!ハリウッド映画には絶対にないような、印象的で光の暗示みたいなラストシーン( 胸がいっぱいになり過ぎました)、上映中に500ccくらいは涙が出ました。ありありと思い出し、ぐうぜん通りすがりコメントしてしまいました。乱文失礼致しました。

URL |  #- | 2017/01/24 19:36 | edit

 

コメントありがとうございます。

本作は、徐々にブリュノが成長していく様子があって、希望が持てます。
人は、親になることで成長するように思います。
「自分本位」から、「他人(子供)本位」になれるのです。

そこに、下心も打算も何もない、心からの「愛情」が生まれるのだと。

この頼りない二人の若い夫婦が、少しずつ穏やかな生活へ導かれることを祈って、本作のラストシーンを見ていたものです。

URL | タイチ #- | 2017/01/24 22:09 | edit

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