素人目線の映画感想ブログ

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ポンヌフの恋人 ポンヌフ橋に行ってみたら、ホントはこんなとこだった。 


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 ポンヌフの恋人
 (1991年 フランス映画)90/100点


ブログ開始から1年を越えることが出来ました。
更新頻度は最初の勢いがなくなり、随分遅れがちになってしまいましたが、時間の許す限り、これからも続けたいなあと思っております。

さて。

2年目突入に際し、自分にとってメモリアルな作品をと思いまして…
今回は、「ポンヌフの恋人」です。

学生の頃、ブロックバスター映画ばかり見ていた自分が、初めて目にした「芸術系」のヨーロッパ映画でした。
鮮烈な映像に過酷な物語の展開、特異な空気感に心をワシ掴みにされました。それまで「映画」だと思っていたものが、一つのジャンルに過ぎないと気づき、一気に自分の中の「映画」の世界を広げてくれた作品です。

余りに感銘を受けたため、10年ほど前、実際にポンヌフ橋を見に、なんとフランス・パリまで飛んで行ってしまいました。
主人公とヒロインがボロボロになった心を再生させていく、朽ち果てた橋の静寂な雰囲気に痺れ、ここに自分も佇んで、ぜひ思惑にふけってみたい! と青臭い願いを抱えながらフランスの地に降り立ち、ついにポンヌフ橋に到達したその瞬間、私の心に浮かび上がったのは…

思ってたんと全然違うやん!?
…という驚愕でした。

あの頃、グーグルアースがあればこんな勘違いはしなくてすんだでしょうに。
私はあの頃、ポンフヌ橋はいまだ浮浪者の住みつく、やさぐれたスラムのような場所だと思っていましたもので!
実際は、車がびゅんびゅん走ってる、余計な観光客(私もその一人)に溢れた、まーきれいな街でございました。
すぐそばには有名デパートまである始末。
まさに、エジプトのスフィンクスの眼先に「ケンタッキーフライドチキン」があるくらいの衝撃!
やむなく私は、橋の上からセーヌ川を眺めつつ、やたらとでかくて堅いフラスパンのサンドイッチをモゴモゴとほうばってみたのでした。(それなりに満喫してる)

 無題1
 (ちなみに、こんな感じだと思ってました。)

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 (実際はこんなでした…)


あらすじは、「ポンヌフ橋で暮らすホームレスのアレックスは、ある日、失明の危機にさらされて自暴自棄になった女性・ミシェルと出会う。アレックスは一瞬で恋におち、ミシェルと次第に親密になっていくが、ある日、ミシェルの行方を探す張り紙を見つけ、アレックスは懸命に町中から張り紙を排除しようとするが…」というお話。


(今回、ネタバレしてます)


オープニングから、ヨーヨーマのチェロが奏でる「コダーイ」という名曲が、ざわりと胸を掻きむしります。
ただならぬ空気を感じ、とっさに身構えてしまいます。
先に訪れる重苦しい展開を、否応なく予期させる秀逸なつかみでした。

浮浪者である青年・アレックスは、どこからどう見ても…薄汚れた浮浪者です。
とても主人公とは思えません。
ヒロインである画家のミッシェルは、片目を包帯で覆っており、こちらも負けずに身なりがボロボロです。
とてもヒロインに見えな…といったって演じているのはジュリエット・ビノシュ嬢ですから、十分に美人だったりします。
この二人が出会い、やがて心を通わせていくのでした。
うーん。
ミシェルは、もともとが裕福な家の女の子です。
失明に至る病と手ひどい失恋のためにやさぐれてしまっているのですが、それにしたって、アレックスのようなタイプの男子に惹かれるものかなあ、と思わず斜めに見てしまいます。
あ、すみません。そういう事に関して、私もなかなかひねくれているので。

 無題3


さて。

何と言っても本作最大の見せ場は、派手な打ち上げ花火を背景に、橋の上でアレックスとミシェルがうっぷんを晴らすかのように踊り狂う場面です。横スクロールで、舞台上のように展開するこの場面は、若干地味に話が進んでいた物語に、目の覚めるような刺激を与えます。
鑑賞から十数年経った今でも、この場面は印象に残っています。
可憐に舞うミシェルに、不器用な感じで付いていこうとするアレックス。
チグハグなはずの二人が、急速に近づきます。
続くセーヌ川での水上スキーの場面も、驚くべき鮮烈さでした。

本作は、実はそういった派手な見せ場も多く、観客を飽きさせることはありません。

 無題2


ミシェルとの距離が縮まるにつれ、アレックスは充実します。
これまでの孤独の反動か、次第に、異様な束縛の想いまで抱き始めるのでした。
しかし、ミシェルはそれを寛大に受け止めようとするので、大きなトラブルには到りません。
うーん。
大抵は、「うぜーよ」と煙たがれると思うのですけどね。すみませんね、ひねくれた見方して。

とはいえ、絶望感をまとうミシェルとは異なり、二人きりの世界に浸ってはお調子良く飛び跳ねて見せるアレックスなのでしたが…。
ふと目にした地下通路の張り紙に、アレックスは凍りつきます。
その張り紙には、「目は治るから帰って来い!」とミシェルの行方を探している内容が書いてありました。
アレックスの痛々しい想いが炸裂します。
ミシェルにその貼り紙を見せまいと、町中に貼られたそれを引きちぎり続け、人目もはばからず焼き尽くそうとするのです。

 無題7


「本当にミシェルのことが好きなら、そんなことしないはず」と言う声が聞こえます。
確かに、アレックスの行為は自分勝手です。
しかし、アレックスの心中は複雑です。
孤独からようやく解放され、生きる糧を見つけたにも関わらず、それを放棄してしまう勇気を持つほどアレックスは余裕のある人生を歩んではいません。
アレックスは、痛いほど知っています。
目の治ったミシェルが、今と変わらずに自分と付き合っていくなどありえない、と。

→生活に追い込まれ、八方塞がりのアレックス。
→画家としての可能性を取り戻し、裕福な家庭に戻るミシェル。

…。

所詮は住む世界の違う二人。引き裂かれる運命なのでありました。
よーやく、現実的な展開になってほっとしましたわー。(ひねくれ過ぎ)

アレックスの懸命な努力もむなしく、ラジオから流れてきた自分への呼びかけを聞いたミシェルは、案の定、「じゃ、そーゆーことなんで」とあっさりと帰宅するのでした…。

 無題12


数年後、二人は再会を果たします。
そこで現れたミシェルの変貌ぶりが凄い。ほぼ、別人。年齢まで相当に若返っているかのよう。
このジュリエット・ビノシュ嬢の本領発揮は、あまりに計算が過ぎると憤るほどに…ギャップ効果をまき散らかしています。
こうなっちまうと、もう男はかないません。
矢も盾もたまらず、文字通り、滑るようにミシェルのもとに駆け寄るアレックスなのでした。
「近くにホテルを予約してある」と、文字にすると陳腐なメロドラマのように誤解されそうですが、ようやく報われる気がしているアレックスの神妙なその言葉に、視線をさっと逸らすミシェルの心境が怖い。
こりゃあれだ、バッドエンドだ間違いない、おっそろしー…と一瞬の目の芝居だけで場を凍りつかせる、恐るべきジュリエット・ビノシュ嬢なのです。

 無題9


(ここから結末に触れます)


さあ、お立合い。監督・レオス・カラックスは、ほぼお約束のようにバッドエンドを目論んでいたようですが、当時交際していたというミシェル役のジュリエット・ビノシュに異を唱えられ、なんとハッピーエンドのように改変したといいます。
二人は、一隻の船でパリを抜け出そうというのです。
ただ…。
ラストのセリフは、「まどろめ、パリよ!」というもの。分かりにくい日本語訳ですが、「目が覚めるな、パリよ」という意味だそうです。
二人にかかったパリの夜の魔法。これを「覚めるな(明けるな)」と言っているのでしょうか。
しかし、夜は必ず明けます。
これは、二人が幸せになっていくかのような奇跡の魔法は、いつかは解けてしまうのだ、という暗喩なのでしょうか。
ラストシーンの変更を余儀なくされた監督の、精一杯の反抗だったように思うのです。

ってか、そうだとしたらジュリエット・ビノシュに振り回され過ぎ! ま、そんなんだから、後に破局するんでしょうけどね! それでこそ真理だね! (ってひねくれ過ぎ!)

といっても、本作が恋愛映画の傑作であることは間違いありません。オススメです。


  

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Posted on 2013/08/17 Sat. 01:26 [edit]

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