素人目線の映画感想ブログ

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かぐや姫の物語 高畑勲の「好き勝手」 


 かぐや姫
 かぐや姫の物語
 (2013年 日本映画)90/100点


傑作であった。
「風立ちぬ」以上に観る人によって評価が分かれる映画だとは思います。
ゆえに、非常にオススメしにくい!
が。
私は、とても感動しました。
素晴らしい描写力・演出力・物語力・演技力。これ、超1級の工芸品。怖いくらいです。
もうこれでジブリを閉めてもいいんじゃないかとさえ思いましたよ。だとしたら、最高過ぎる締めくくりかもね(個人的には、痛快活劇で締めてほしいが)。
それにしても、大抵巨匠と呼ばれる映画監督は、晩年「落ち着いて」しまって目立った活躍をしないものですが、宮崎駿にしても高畑勲にしても、最後と思われる作品で最高傑作と言わしめる映画を作るとは。

計りしれない才能ですな。

これがラストになるなんて、貴重な日本文化の損失以外の何物でもありません。
しかも後継の世代に対し、「後は任せるよ」なんて優しいメッセージはゼロ。「お前らに作れるもんなら作ってみろ」という、後継の意欲を削ぎかねないほどのクオリティです。

計りしれない「自己中」です。

好き放題やって、後世に苦難を押しつけたバブル世代のごとく。
ただ、高畑勲の「好き勝手」は、まさにグウの音も出ない輝きを放つのでした。

あらすじは、まさに「かぐや姫」そのもの。
竹やぶにて。おじいさんは手のひらサイズの美しい姫を見つける。天からの授かり物と家に持ち帰るが、おばあさんの手の中でむくむくと赤ん坊に変貌する。常人ならざるスピードで成長していく姫。一方、竹やぶで財宝も手に入れたおじいさんは、『都へ家を建て、姫をお偉い方と結婚させねば』と思い込む。村の友達と楽しく日々を過ごしていた姫を半ば無理やりに都へ連れて行き、『英才教育』を施すのであった。次第に姫の噂は都中に響き渡り、結婚の申し出が後を絶たなくなる。しかし、姫は決して都での生活や結婚を望んではいなかった。それに気付かないおじいさんは、位の高い者たちとの縁談を進めていく。やがて姫の心に、後戻りのできない濁りが生じて…」というお話。

 無題2


原作を詳しく読んでいるわけではありませんが、ほぼ「かぐや姫」通りです。
お決まりの筋の中で、「なぜ、かぐや姫は地球にやってきたのか、そして、帰らねばならなかったのか」を脚色しています。
ただし、一般的な映画のように「分かりやすく」描写をしていません。キャッチコピーの「姫の犯した罪と罰」の真意は、容易に腑に落ちるようなものではありませんでした。抽象的といいますか。哲学的といいますか。神秘的といいますか。まあ、難しいのだ。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、言うなれば…そうだなあ…、田舎暮らしに飽いた人が都会に憧れて上京するも、都会の冷たさにコテンパンにやられ、やっぱり田舎帰ろうと思うんだけど、都会でできた人間関係も無闇に捨てれなくて…みたいな!(違うかも…)

けれど、作品の雰囲気は「堅苦しい」というわけではなく、アニメーションならではの「愛嬌」をふんだんに盛り込んでいて、私は序盤のあたりニコニコした気持ちで見ていたように思います。
なんといっても、姫の赤ん坊時代の愛らしさ。これは年齢や経験によって感じ方が違うかもしれませんが、「やたらリアル!」 赤ん坊のハイハイから寝返りから、これでもかと緻密に動きます。これがまた、かわいいのなんの。周りの村の子供たちのにぎやかさも、おじいさんとおばあさんの姫を想う様子も。成長した姫がいたずらしまくるところも。上品なんだけど、気取り過ぎない絶妙な「おかしみ」に溢れているのでした。
たとえば、都に移ったおじいさんとおばあさんが、お偉方を気取って顔を白く塗りたくって姫を迎える場面。腹を抱えて笑うわけではありませんが、ニマ~とさせる名場面です。

 無題


前述した赤ん坊の動きにあるように、本作の大きな特徴は、「動き」だと思います。
「絵」はまるで「絵本」のように淡く、ラフな感じなのに、「動き」に関しては「緻密」。そればかりか、予告編でもあった姫の疾走や桜の木の下の舞い、牛車の暴走や終盤の滑空などは大スペクタクルとして「派手に」動きます。この「派手さ」、全般に大人しい雰囲気が続く本作で、突如雷鳴のように煌くので、緩急のうまさにおののきます。

また。

声優陣のうまさも特筆すべき特長です。ジブリは本職の声優さんを使わないことで「批判」が出ることもあるし、私も「もののけ姫」のサンの声には大変な失望を感じたクチですが、今回は素晴らしいものでした。なんというか、「ベテラン勢」はうまいですよ。
特におじいさん役の「地井武男」 序盤ではただの朴訥なおじいさんですが、大金を手に入れて優雅な生活が始まるや、次第に俗っぽい雰囲気に変わっていく「変化」が凄い。

そして。

「忠臣蔵」と一緒で、みんな、この物語の大筋はわかっています。だから、クライマックスに「何が起きるか」はすでに知っているわけです。そう、「別れ」です。債務があろうとなかろうと、姫は月に帰らねばなりません。お約束の場面にも関わらず、泣けますな。特に達観しているかのように見えていたおばあさんが、最後に見せる姫を帰らせまいとする姿が、もう。記憶を失ったはずのかぐや姫が、「歌」を聞いて涙を流すとこなんて、もう、もう。

暗転後に静かに流れ出すEDテーマ「いのちの記憶」もまた、素晴らしい余韻を残します。

 無題1


とはいえ、最後に「つっこみ」も少々。
・「男は横暴、女性は賢明」高畑監督のフェミニズム思考に賛否があるかもしれませんね。
・原作とは違って、「帝」さえ「軽い女たらし」に描いている点は、監督の共産・左翼思考とも言われています。しかも「帝」のデザインが、「クレヨンしんちゃん」のキャラかと思うぐらいにラフでびっくり。
・最大の本作の欠点ですが、尺が長すぎです。姫に求婚する5人の大臣だちが、姫からの難題に一人ひとり挑む場面は、さすがに長すぎて眠くなりました。
・月のお迎え楽団の演奏曲が、いろんな意味ですごい。類まれなセンス。ここは賛否すごいだろうなあ。一瞬不条理コントかと思いました。
・(これはラストカットなので、反転で)「お月さまに、姫の赤ん坊時代の姿が被さる場面は、本作唯一、『センス古いなー』と興ざめするカット。」ラストカットなだけに、残念。

それぐらい!

当初「かぐや姫」を作ると聞いたときには、「今更?」と不安になりましたが、見事、素晴らしい映画に仕立て上げる手腕に脱帽です。「製作期間8年、制作費50億(ほぼ人件費であろう)」という高畑勲の「好き勝手」は、間違いなく「活きた」のでありました。鈴木さん、よかったなー。けど、ヒットはしないだろーなー。


  

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Posted on 2013/12/10 Tue. 23:00 [edit]

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コメント

 

この映画も私は敬遠しています。
そもそもアニメの映画を何年も見ていないですし、
特にかぐや姫は話をしりすぎていることとかもあります。
監督自身はいい映画をつくっていると思いますが
どうしても気が進まないなぁと思っていた頃にこの記事は朗報でした。
見る気がなかったのを見てやらんでもないくらいのレベルにw
そういえばこれってセリフあるんですよね?
地井武男がでているということはあるに決まってますが。。。
予告では一切セリフを聞いたことがないので。。。

ゼログラビティとかキャプテンフィリップスとか見たいのがいろいろとあるのでかぐや姫は考えものです。
数年後、金曜ロードーショーでやってたら見るレベルですw

債務のくだりは最高でしたwww

URL | しろの #w9Pu.CNw | 2013/12/12 14:11 | edit

しろの様 

コメントありがとうございます。

正直言って薦めにくい映画です。

そりゃあ、「ゼロ・グラヴィティ」の方がいいと思いますよ!

ただ、この本作の描写力。私は感激したんですよねえ。
私は「作家性」の強い映画に惹かれる傾向があり、
これは、まさに高畑勲のソレが、ふんだんに盛り込まれていて、
他の人には同じように作れないパワーを感じました。

「債務のくだり」はもっとひねりたかったんですけど…ありがとうございます。
あのCM、「え~、月からは遠いしな~、ぶ~」というかぐや姫のわがままぶりに、
「相談したら?」となおも食い下がるおばあさんが最高です、ね。

URL | タイチ #- | 2013/12/12 21:27 | edit

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