素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

フィクサー /映画史上、最弱のラスボス。 


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 フィクサー
 (2007年 アメリカ映画)
 75/100点



あけましておめでとうございます。
『リーガル・ハイ』も終わり、さあ映画感想に戻るぞー。更新頻度上げるぞー。
と思った矢先。

新年早々パソコンがおかしくなりまして…

「カーソルが勝手に左に動き続ける」という現象に悩まされています。
パソコン起動後、しばらくは大丈夫なので、症状が出るたびに再起動を繰り返すというウンザリな状況です。

というわけで、再起動を繰り返しながら地道に文章を綴って、やっと新年第1回目の感想です。

新年一発目はジョージ・クルーニー主演のサスペンス『フィクサー』です。


<完全ネタバレです。>


スティーブン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーコンビが放つ、「俺たち、ハリウッドのシステムに真っ向勝負してやるぜ」シリーズです。監督は、『ボーン』シリーズの脚本家、トニー・ギルロイですけど。

『ゼロ・グラビティ』では完璧な頼もしさで魅せたジョージですが、本作では、うじうじとした表情も披露し、人生への憂いをさらけ出した複雑な人物を演じます。

本作は、大人の味わいのサスペンスとなっておりますので、比較的物静かな雰囲気で展開します。その為、少々刺激の少ない感じです。派手めな映画を好む人には、ちょっと好かれないかもしれません。

あらすじは、「マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)はNYの大手弁護士事務所のフィクサー(揉み消し屋)である。マイケルの弁護士事務所は、今、農薬会社の大型訴訟を抱えていた。その担当弁護士・アーサーは、ある理由から原告側に味方するようになる。考えを改めるようアーサーを説得するマイケルだが、ある日、アーサーが不審な死を遂げる…」というお話。


本作の特徴の一つは、時間軸にひねりを加えている所です。

たぶん、物語がちょっと物静かなものだから、少し奇をてらってみようという気持ちだったのかもしれません。
残念ながら、その「ひねり」が、本作の面白味を消しているから、さあ大変。

具体的に言うと。

オープニングでのシークエンスは、実は物語の終盤部分なんです。
そこで初登場する主人公のマイケルは、実は物語終盤のマイケルなんです。
つまり、「金に汚いフィクサー」から、「人生、金だけじゃないよねフィクサー」に成長したマイケルなんです。

だから、せっかくのマイケルの初登場シーンが、大人しいったらありゃしない!

その初登場シーンとは。

マイケルはある大物の家に呼び出されます。その大物から、「ひき逃げ」を揉み消すように頼まれるのです。
当然、オープニングの最初の見せ場ですから、「颯爽と軽やかな手法で、この『ひき逃げ』を揉み消しちゃうわけねー」と期待するのですが…、マイケルは言います。
「罪は…、消せませんよ…」っておい!

顧客の怒りもよそに、一切の後ろめたさがなく、きりりとジョージ・クルーニーの顔して「できません」ってあんたね。ビジネスの基本がわかっていないんですか? できないことでも「まず検討します」でしょ? はじめっから「できない」はありえないでしょーが! 
と思わずツッコミまくったのでした。

出だしの見せ場で完全にハズした主人公…。
これが、時間軸を不必要にいじったために起きた難点の一つです。

次に。

特に説明もなく、映画が物語の終盤部分から始まった上、前述のように主人公がそんな感じなものだから、一体何の物語なのか。何を軸に描かれていくのかが行方不明。

何かの書類作成に追われているオフィスの大勢の従業員たちも、その連中に絡むジャーナリストも、トイレに汗びっしょりで籠っている女も、突然車が爆破されてしまうのも、なーんも意味不明。

物語が過去に遡り、ようやく事の発端が語られるまでが結構長いので、置いてけぼり感が半端なかったです。

おまけに。

マイケルの車が爆破される場面を前もって見せちゃったのも痛い。
映画終盤、改めて顛末が描かれるこの車の爆破場面ですが、せっかくの緊迫のシーンが台無し。

『シックス・センス』でいえば、最初に「ウィリスが幽霊だよ」と言っているようなものです。

そんなこんなで、大変に損しているオープニングだったのですが、中盤以降はやっと物語が浮き彫りになっていきます。
人物描写の深みに感心できるほどの余裕もでき、何とか楽しめるのでした。

それ以外の演出は丁寧です。

アーサーの暗殺を流れ作業のように見せる場面にて、機械的で冷ややかな「人殺し」に見入りました。
マイケルが金銭的にも社会的にも追い詰められていく様は、社会の厳しさをリアルに感じてピリっと効きます。
敵側を騙す手法も、ありがちだけどカッコ良かったです。

私が一番興味を持ったのは、敵側である農薬会社Uノース社の法務部本部長:カレン・クラウダーという女性です。

恐らく、誰よりも勤勉で真面目な人間だったのだと思います。しかし、まさかの大役への抜擢に、途方もないプレッシャーに押しつぶされそうになっていくのです。
テレビカメラや重役、株主の前でスピーチをする前に、自室で何度も何度も練習している様は、何事にも「懸命」の二文字。

彼女は、懸命過ぎたのです。

彼女はノース社に不都合な弁護士やマイケルを始末しようと目論むのですが、どこか虚ろです。
殺し屋に「どうする?」と尋ねられても、罪悪感に呑まれそうな顔をします。
「超えてはいけない一線」であることは十分に承知しているのです。

しかし、ノース社を守るため、超法規的で非情な決断をしなければならないと自分を追い詰めます。
「だって…、そういうもんなんでしょ?」

真面目な彼女は、何かしらのドラマや噂話で見聞きした「裏社会の描写」に、感化されたのでしょうか。
「会社を守るためなら、仕方ない。誰でもやっていることだ」と。

ひょっとして、彼女の上司は彼女のしでかした事を知って、「なんでそんなことまで…」と啞然としたかもしれません。

だから、全くの素人であった彼女は、マイケルの策略にまんまとハマるのでした。
その罠を知った時の彼女の愕然とした表情は、失神しそうなほどの「後悔」を露わにしていました。

気の毒。

そう思いました。

本来、彼女は自分の手を汚す事など全くできない人です。
「スイッチを押せばいいだけだよ」とばかりに、簡単に殺しの依頼が出来るものだから、彼女は意を決して闇に堕ちたのでした。

というわけで、ラスボスが圧倒的に弱い、ある意味「斬新」な本作。

できれば、時間軸はいじらないでほしかったと、やっぱり思います。


 

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Posted on 2014/01/08 Wed. 23:00 [edit]

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