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嘆きのピエタ 「愛を知らない」罪と、 「愛を知る」罰。 


嘆きのピエタ [DVD]
嘆きのピエタ
 (2012年 韓国映画)85/100点


本作は、第69回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞である「金獅子賞」を受賞しました。これ言っとかないと、「なんて映画をお薦めしやがる」と思われそうです。一応、世間様のお墨付きの傑作なんですよと。
というわけで。
これは、傑作の人間ドラマです。

韓国・キム・キドク監督の作品を見るのは初めてです。
「ドギツイ」描写で賛否を巻き起こす監督ですので、ある程度覚悟してましたが…まあ、本当に陰惨です。
終盤、これまた極限すぎる状態にクギ付けでしたよ。

 嘆きの1


あらすじは、「高利貸しの取り立てを行う主人公・ガンドは、債務者に『障害者保険』を利用した返済を迫る冷酷な男。血も涙もないガンドの前に、ある日、母親だと名乗る女が現れる。初めは全く信じなかったガンドだが、次第に心を開き始め、初めて家族の愛を知る…」
というお話。

あらすじだけ聞くと、美しい話を予感してしまうのだけれど、そうはいくもんか。

ラストは衝撃的ですが、ネタバレなしで綴ります。

さて。

ガンドは、かなりひどい男です。
ありがちな設定だと思っていませんか。いいえ、これはガチでひどいですよ。
前述したように、借金の返済が出来ない町工場の人たちを、容赦なく、無慈悲に、顔色ひとつ変えずに足を折ったり手を砕いたりして、障害のある身体にします。そうやって、保険金で返済させようって魂胆なわけです。

相手に愛する家族がいようとも。
家族が必死にやめてくれと懇願しても。

ガンドは、「家族」を知りません。
家族の愛情を知りません。
なぜならば、幼き頃に捨てられてしまっていたからです。
それと対比するように、ガンドの取り立て相手は「家族持ち」だらけ。それも、お金がなくとも幸福な家族を持った人々です。その家族を、ガンドは日々打ちのめしていくのでした。

そこへ現れるのが、母親と名乗る女です。

wikiによると、本作のタイトルにある「ピエタ」とは、「聖母子像のうち、死んで十字架から降ろされたキリストを抱く母マリアの彫刻や絵の事を指す」とのこと。
つまり、ガンドを救う聖母としてこの女は現れます。

ガンドが、この女を母親と認めるまでの執拗ないたぶりは、かなりキツイ描写です。
変態なんじゃないの!?
と一瞬、鑑賞を後悔するほどでした。
何やってんの?
あきれかけるところでした。
本作の良さはその後から始まりますので、どうかここまでは歯を食いしばって耐えましょう。

ガンドが母親の存在を認めた時、ガンドに全く新しい感情が芽生えるのです。
次第に心が解きほぐれるガンドが素晴らしい。
債務者への優しさ、母親を心配する思い、楽しくて綻ぶ笑顔。
街中で風船のかぶり物を身に付けてはしゃぐガンド。まるで、ディズニーランドのミッキー帽をかぶる千原ジュニアに見えました。こわもてが無邪気にしてる様子が微笑ましいのは、万国共通の感情のようです。いわゆるギャップ効果がふんだんに出てます。
あんなにひどい男だったのに、どうにもガンドが憎めなくなっていくのは演出の巧さかもしれません。

とはいっても。

因果応報。

犯した罪は、簡単に洗い流されることはないのです。

嘆き2


母親が誰かに連れ去られ、ガンドは必死に探しまわります。
高利貸しの社長から、「そりゃ、今までお前が傷つけてきた者の仕業だろう」と言われ、ガンドは、これまで自分が暴行してきた債務者の元を訪ねて回ります。
訪ねるたびに、ガンドは、正気を失っているかに見えるほどの憎しみを相手から浴びせられるのです。

これは、ガンドが犯した罪を巡る旅だったのでした。
ガンドは、自分が決して許されることのない罪を犯してきたのだ、ということを悟るのです。

みなさん、ネタバレはしませんが、本作のあらすじをいろんなサイトで見ても、「母親を名乗る女が現れる」とあり、決して「母親が現れる」とは書いていません。なぜか。この女は、ある悲劇を抱えていたからでした。

物語は、「家族の美しさ」を一瞬描いた後、振り子の法則のように、急速に奈落へ加速していきます。

かつて感情というものすら持ち合わせていなかったガンドの、終盤で見せる絶叫が心に刺さります。

なんて残酷な物語か。

男は、これまで「愛情を知らなかった」がゆえに罪を犯し続けました。
その男は、「愛情を知った」がゆえに地獄へ落ちたのです。
もし、ガンドが「愛」を知らないままであったなら…被害者は増え続けてしまったでしょうけれど、彼自身は苦しまずにすんだのかもしれません。

それとも、一瞬でも「愛」を知ったガンドは幸せだったというのでしょうか。

しかし、その一瞬さえも嘲る凶暴さを、本作は孕んでいます。
終盤の展開に、私は目が離せませんでした。

怖いもの見たさでもいいので、ぜひ、オススメしたい一品です。

嘆き3


  

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Posted on 2014/03/04 Tue. 22:57 [edit]

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