素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

ウルフ・オブ・ウォールストリート /ビジネス版、悪の教典。 


 p-1658.jpg
 ウルフ・オブ・ウォールストリート
 (2013年 アメリカ映画)
 80/100点



(結末以外、ネタバレしています。)


営業にとってツラいことは、「自信のない商品」を売らなければならないことです。

質の良くない商品、魅力のない商品、大手ブランド品に比べて二番手三番手の商品なんて、たとえ売っても相手は損をするだろうな…。
そういう気持ちでセールスをすることは、とても酷だし、無理です。

じゃあ、どうすればいいのか。
営業マンの多くが抱えるその悩みに、この映画は素晴らしい答えを用意しました。

客を騙しゃいーじゃん!

いやいや待ってよ! …罪悪感はどうするの…?

自分の家族のことだけ考えりゃいーじゃん!

明快だわー。そっかー。そうすりゃ胸張って仕事できて、金持ちになって遊びまくれるってわけですな。

…。

注意! 本作は、大変ゲスな映画です。
今、営業で悩んでいる人にとって、有益なビジネスのヒントなんてありゃしません。

しかし、ゲスといっても、そこは名匠マーティン・スコセッシ監督です。
素晴らしいテンポとギラギラしたエネルギーを画面上にほとばしらせ、3時間の長丁場を飽きさせません。
毒は強いですが、確かに見どころの多い映画です。

主演のレオナルド・ディカプリオも、お得意の「堕落したお金持ち役」を、これまで以上のハイテンションで演じます。

しかも、実話なんですってよ。
まじかー。アメリカの金持ちってそうなの…? と思わずゲンナリ。

あらすじは、「株屋を起業したジョーダン(ディカプリオ)は、得意の営業トークで会社を大きくしていく。大金持ちになり、日々をドラッグと女に費やす毎日。しかし、ジョーダンの不正を暴こうとするFBIの手が次第に伸びてきて…」というお話。

ジョーダン2
(客には強気でいけ! 「say yes」だ!)


ネタバレしない…といっても、こういう物語の結末は、大抵において破滅ですよね。
本作においても同様。
序盤・中盤で調子ぶっこいていたジョーダンが、FBIに追い込まれていく様子を描きます。

しかし、ジョーダンも最初からゲスだったわけではありません。株の業界に入りたての時、彼は確かに「儲けたいけれど、客も儲かれば素晴らしいことじゃん!」と語っています。
しかし、ジョーダンのその純粋性を木端微塵に砕いたのは、マシュー・マコノヒー演じる株屋の先輩でした。

「バカいってんな! 客を儲けさせるな。株を換金させるな。投資させ続けろ。そうすりゃ、手数料でガッポリでしょーが!」と、見も蓋もないビジネス論を教え込みます。

ジョーダンの純粋性は…、「そうっすね!」
あっさり陥落するのでした。

この先輩、さらにジョーダンをおかしな道へと引きずり込むべく、ドラッグとセックスを、理路整然とした正当化でオススメするのです。

それに対してジョーダンは…、「そうっすね!」 
ある意味純粋なのでした。

この先輩の悪魔のささやきが、映画全体を表現しています。
まさに、この先輩の生き様を、そのままディカプリオは(加速して)体現します。

それにしても…、先輩があまりにどぎついです。レストランという公の場で、奇妙な歌まで歌いだします。

悪い先輩が有能な後輩におかしなことを吹き込む描写は、北野武監督の『キッズ・リターン』を思い出します。

果たしてどこまでが実話で、どこまでが虚構なのか。
物語は、先に進むにつれて信じられないような光景を表していきます。

ジョーダン
「僕はこの瞳で嘘をつくんだ!」と先輩)


ジョーダンが起こした会社はみるみる大きくなっていくのですが、ジョーダンの社員への「やる気育成法」が半端ない。

ジョーダンの演説は、奇妙なくらい社員を高揚させます。ほとんど新興宗教です。
会社にストリッパーを呼び、会社内で乱痴気騒ぎを起こします。
丸坊主に髪を刈るパフォーマンスを披露したOLに、豊胸手術費用を渡します。
社内でのバカ騒ぎイベントを、重役たちが「どうする?」と真剣に会議します。

こんな会社で働きたいか?

結果を出す社員には、恐らく手厚い報酬が約束されているのでしょう。それは素晴らしいことです。

しかし…その陰では、結果を出さない社員への容赦ないののしりや制裁が行われているはずです。
現に、金魚鉢の掃除をしていた社員は、「こんな時に掃除か!?」と罵倒され、解雇されました。

また、ジョーダンや上層の役員たちは、ドラッグやりたい放題です。
仕事中でも、スナック菓子に手を伸ばすほど気楽にドラッグを摂取します。

ドラッグの影響によるディカプリオたちの暴走っぷりはひどいです。
しかも公然と暴れているのに、なぜ逮捕されないのかが不思議です。
これには、のりピーもASKAも首を傾げることでしょう。 

このジョーダンたちの金持ちぶりや破天荒ぶりは、見ていて不快です。
もちろん、この先に待つ破滅への前フリです…が、ディカプリオファンが観たら青ざめかねません。

「オレはファンより、アカデミー賞!」
と言わんばかりのディカプリオの捨て身の熱演は、すごい…ように思いますが、絶叫したり尻にろうそくを刺したりスチュワーデスにセクハラしたりと過剰で、狙いすぎでは? と心配になるほどでしたよ。

ジョーダン6
「YAH-YAH-YAH」と歌いだすジョーダンと部下たち)
※実際は「んーんーんー♪」と歌います。


さて。

ビジネスの参考になる描写はほとんどない、と前述しました。

ただ、序盤で見せたジョーダンの電話セールストークは確かに見事で、(特に参考にはなりませんけど)、その自信に満ちたトークは魅力です。
例え嘘八百のトークであっても、客に一瞬でも夢を見せることは容易なことではありません。

部下へのアジテーションの巧さといい、ジョーダンは天賦のトーク力があるのでした。

途中、セールストークの練習として、ジョーダンが部下に一本のペンを掲げ、「このペンを私に売ってみろ」と迫ります。
ありふれたペンの説明をしようものなら、ジョーダンはすぐにペンを取り上げ、次の者に同じ問いかけを始めます。
営業を経験した者であれば、ちょっと考えを巡らせてしまう場面です。

大変余談ですが。

思えば私も若いころ、似たような経験をしました。
ある飛び込み営業で訪問した客に、「営業とは?」を教わったことがあります。(今思えば、おせっかいな客です)

その客は、卓上にあった紙コップを掲げ、「これを売るにはどうしたらいいか?」と問うたのです。
しどろもどろしていると、その客は言いました。
「商品には、付加価値が必要だ。単純に機能だけ伝えても魅力がない。例えば…、紙コップでコーヒーを入れれば、洗い物がなくなる。そうなれば、わずらわしい洗い物で女子職員がカリカリすることがない。ゆえに、この紙コップがあれば、職場の健全な雰囲気が保たれる…」

思わず、なるほどと思った若かりし20代のあの頃なのでした。
※「洗い物は女子職員」という発想は、今ではアウトですけど。

さてさて。

物語が進むにつれ、FBIはジョーダンの息の根を止めるべく狙いを定めてきます。

FBIとジョーダンの最初の対峙。
ジョーダンは、全くもってFBIとうまく渡り合えていません。信じやすい人を騙してのし上がったジョーダンの言葉は、百戦錬磨の刑事に通じるほど甘くはなかったのです。

金で好き放題に夢を買ってきた子供と、嫌というほど現実を見てきた大人との、人生経験の格の違いが出ました。

自分の思い通りにならないFBIに対し、ジョーダンは腹いせにポケットの中の札束を放り投げ、「お前らの年収なんて、こうだもんね!」と散らばすのです。
なんというガキ臭さ。

FBIの正義感に火を付けてしまったジョーダンは、この後、完全に追い込まれていくのでした。

ジョーダン7
「終章(エピローグ)」が始まる…)


所詮ですが。

金でつながっていたジョーダンと社員・友人たちの絆は、あっけないほど、もろく崩れます。
ついさっきまで、「家族のように思っているぞ。愛しているぞ」と讃えあった者たちとさえ、いとも簡単に。

しかし、不思議と大切なものを失っていくジョーダンを見ても、スッキリした快感はありませんでした。
全てを失った後でも、彼が語るセールストークのセミナーは大盛況しているのです。

彼には需要があります。
一度花開いた才覚は、そう簡単には消え失せないのです。

そうそう。

ジョーダンの「私にペンを売ってみろ」の問題の正解は…。
「ハンカチに名前を書け」と相手に強要し、ペンの「需要」を作り出すことでした。

今まさに、ジョーダン自身が「需要」のある商品と化したのです。

それにしても…世の中、そういう胡散臭いものに溢れています。
騙され、取り込まれ、金持ちの肥やしにならないように気を付けたいものです。

最後に。

余談も余談ですけれど。

香川照之も真っ青の顔芸までたんまりと披露し、大人の汚さを演じた今回のディカプリオを見ていて…、なんだか無性に『ギルバート・グレイプ』が見たくなりましたよ。

ディカプリオの少年時代の傑作です。
心の綺麗な…少年の…お話…。

ああ…なんか今見たら、時の流れの残酷さが身に染みて、泣いてしまうかもしれません。

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「あの時君は若かった」…あ、これチャゲアスじゃないや。)


  

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Posted on 2014/07/08 Tue. 00:25 [edit]

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