アメリカン・ハッスル【感想・レビュー】この世は真っ赤なウソばかり。
アメリカン・ハッスル
(2013年 アメリカ映画)
80/100点
200記事目をようやく迎えました。ペースが遅いです。
で本作ですが、巷では結構高い評価を耳にします。
アメリカ・アカデミー作品賞にもノミネートされてましたね。
私も、面白いんだろーなーと結構期待して観たのですけど…、
ありゃ? そこまでじゃない…?
最近、巷の評価と自分の感想に食い違いがあって戸惑います。
あらすじは、「詐欺師のアーヴィンの協力者であり愛人でもあるシドニーが警察に捕まってしまいまして、減刑のためにアーヴィンは仕方なく警察のリッチーに協力し、市長であるカーマインを収賄でお縄にする作戦を実行します」というお話。
(結末には触れませんが、ネタバレしています。)
イメージ的には、騙し騙されの頭脳戦が次々に展開され、息もつかせぬハラハラワクワクを味わえるのかと思いきや、意外や意外、結構純粋な「人間ドラマ」でありました。
ゆえに、本作の見どころは「役者陣の芝居」です。これに尽きます。
全ての主要人物は、風貌から気合入りまくりで、爪痕残してやる感満載の熱い芝居合戦を繰り広げます。
だから、爽快なエンタメを期待すると、ちょっと違うかもしれません。
お話も結構複雑です。
では、せっかく「役者自体」が見所ですので、各キャラクターごとに書いて行こうかと思います。
アーヴィン・ローゼンフェルド ( クリスチャン・ベール)
で、で、出た! クリスチャン・ベールお得意の役者魂!
『ダークナイト』シリーズでは屈強でシャープな男であったベイルが、今回は「デブ・ハゲ男」に大変身しています。
いわゆる出オチというアレ。
でっぷりしたお腹はCGじゃないのが凄い、というよりも、逆にCGであってほしかったと思わせるほど、その熱意に思わず視線を逸らしてしまいそうになるのは私だけでしょうか。
しかしその熱意のおかげか、醸し出される胡散臭さは、かのニセ聴覚障がいの作曲家に匹敵。
アーヴィンは、慎重であることが信条の一流の詐欺師です。
と同時に、さびしがり屋というか、臆病というか、どこか憂いげな顔立ちなんです。
愛人でもあるシドニーが、作戦のためにでも刑事・リッチ―と仲睦まじくしているのを観ていると正気を保てません。
そんな小動物の雰囲気さえ漂わすアーヴィンに、肉食怪獣・ジェニファー・ローレンス(妻の役)が牙をむく! …かのごとく、翻弄し引きずり回すのでした。
妻と愛人。
ようするに板挟み。
ご勝手に。
リッチー・ディマーソ (ブラッドレイ・クーパー)
強烈なパンチパーマの刑事。出オチ・パート2。
野心に溢れ、政治家どもを次々にお縄にしたくて仕方ない様子です。
作戦成功のためには、ホテルのワンフロアを貸し切ったり、自家用ジェットを借りたりで、税金を際限なく投入することにためらいがありません。
おまけに、反対する上司には殴りかかるという情緒不安定さ。
かと思いきや、恋したシドニーとのプラトニックごっこには結構真面目に付き合っているので、純粋まっすぐなお気楽者なのでしょうね。根は悪い人ではない、というヤツ。
作戦が大成功を収めた後の「バカ騒ぎ」が印象的でした。
ラストはなかなか手痛い目に会う彼ですけど、大して悪い人じゃないものだから、可哀想やらおかしいやら。
しかし税金を無駄使いしまくったわけなので、出来たら記者会見で謝罪してほしいものです。
「じゃあ、俺がー、詐欺師使ってー、この収賄を、うははああああーん! この、この収賄、うひゃあああーん、やっと刑事になったんですぅっ!」とか泣き叫ぶでしょう。
シドニー・プロッサー (エイミー・アダムス)
ざっくりと胸元を開けた…というか、あんなの普段着で着ている人見たことないので、ある意味出オチ・パート3。
知的で、包容力のある雰囲気ながら、プラトニックな関係をリッチ―に強要する様子は、かわいい顔して結構残酷。
「愛情は、あります」とは言うものの、愛情は論文のように簡単にはコピペできなかったようでした。
不遇を乗り越えるために別人になりすまし…いや、別人になりたかった健気で悲しき女性でもあります。
カーマイン・ポリート (ジェレミー・レナー)
こんなとこで、そんなヅラかぶってる場合かジェレミー! と唖然とさせた出オチ・パート4。
彼は、街をよくしたい一心で裏金に手を出してしまうのでした。最初は断ったのに、アーヴィンがうまく取り込み、まんまと警察のおとり作戦にはまったのでした。
…しかし、こんな押し貸しのようなおとり捜査って、法的に意味あるんすかね?
いい人のように見せかけて、実はあくどいんだろーなーと思っていたもので、ほんまに良い人キャラなので驚きました。
ネタバレですが、本作にはそういった意味でのどんでん返しは一切ありません。
本作には悪人がいないんだなー。それが吉なのか凶なのか。
彼は、街に投資する人物に「黒人」を望みます。差別意識なんてないのです。
彼ならば、質問者が女性議員だろうがなんだろうが、ヤジ一つ飛ばすことはないでしょう。
ロザリン・ローゼンフェルド ( ジェニファー・ローレンス)
アーヴィンの妻です。もー、すでに顔からして「肉食」。
最初は、分からず屋の面倒くさい女かーというだけの印象でしたが、出オチな奴らばかりのせいか、段々と彼女が一番まともに見えてくるという不思議さ。
ヅラもいらない、太ったりもいらない、無駄なセクシー衣装も別に…。
私は、私のままで度肝ぬかせたるわ
という気迫で、全てのシーンで他の役者陣の立場を奪い取っているから恐ろしい。
現・ハリウッド最強レベルの「姉御気質」でしょう。
「お前ら、あたしに内緒で好き勝手に楽しそうにやりやがって、あたしだって、もー好き勝手にさせてもらうもんねー」という開き直りが、めちゃくちゃ魅力的でカッコいい。
そして…好き放題に騒いだ後に見せた一筋の涙は、真から切なく見えました。
アーヴィンを危険にさらしたというご批判もありましょうが、そもそも愛人をこさえた旦那のアーヴィンが悪いんです。
そのせいか私には、ジェニファー・ローレンスが、小川菜摘に見えて仕方ないんですが。
ヴィクター・テレジオ ( ロバート・デ・ニーロ)
で、で、出た。妖怪ぬらりひょん! …じゃなくて、デニーロ御大です。
元・殺し屋という「デニーロ節」を期待せずにはいられない役柄です。
ワンシークエンスしか出てきませんけど、存在感たっぷりで、衰えぬ眼光の鋭さには恐れ入ります。
そもそも、主演のクリスチャン・ベールの恐るべき役作りはデニーロ・アプローチと言われています。
そのデニーロとクリスチャン・ベールの競演ですから、ここは役柄を越えての芝居対決が見どころです。
突然アラブ語を話し始める場面は面白いはずなんですけど、『イングロリアス・バスターズ』に似たシーンがあるから、そこまで驚きはなかったですな…
さてさて。
というわけで、物語自体は意外にシンプルに収まり、どんでん返しの詐欺技も、「あー、へー、ふーん」というレベルではあります。
けれど、個性を極限まで引き立てたキャラクターたちが、「友情」とか「愛情」とか、そんな青臭いものを年甲斐もなくまき散らかす青春劇のような物語。
BGMの選曲も素敵な部分ですね。個人的には、OPクレジットの出るタイミングと曲がツボであった。
ただ、私は洋楽は詳しくないので、過去の洋楽が好きな人には堪らない映画なのだと思います。
ということで。
今回はこのへんで。
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