素人目線の映画感想ブログ

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クロニクル 「異端者」にエールを。 


クロニクル [DVD]
クロニクル
 (2012年 アメリカ映画) 80/100点


POV方式の映画。
それは、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」から始まったフェイク・ドキュメンタリー映画のことです。
画面に映し出されるのは、登場人物が持っているビデオカメラの映像であるという設定。
普通の映画よりも臨場感やリアルさが各段にアップするこの方式は、これまで、ホラー系、ゾンビ系、怪獣系等、様々なジャンルの映画に適用されてきました。

本作は新鮮です。「超能力系」映画および「青春系」映画のPOV方式なのであります。

実は、本作のことはまるでノーマークだったのですが、巷での高い評価を見聞きし、遅ればせながらの鑑賞となりました。

あらすじは、「アンドリューと従弟のマット、高校の友人のスティーブの三人は、あるきっかけから超能力を身に付ける。家庭や学校での不遇とは反比例し、アンドリューの能力が次第に強力になっていく中、アンドリューにとって最悪の事態が発生する…」というお話。

クロニクル


根本は「青春映画」なのです。
それもかなり「苦み系」の…そう、そこのあなた。ブログをコソコソ書いているあなたの青春時代のようなお話ですよ…あ、オレか。
主人公・アンドリューは、暴力的な父親と病気の母親とともに暮らしています。
学校でもいじめを受けています。
人と馴染めず、人に心を開かず、陰鬱とした表情で日々、負の青春を過ごしているのです。
そんなアンドリューが超能力を身に付け、一躍大スターにのし上がるサクセスストーリーかと思わせて、ハイ、ドーーーン! と落下させるストーリーがなかなか辛辣です。

前述したように、本作はPOV方式なので全てが現実味を帯びて描写されます。
アンドリューが父親から暴力を受ける場面も、実際に目の前で起きている出来事を見せつけられているようで、ひどく痛々しいです。
いや、身体の痛みではありません。
アンドリューの心が様々なことで傷ついていく様を目の当たりにすることが、胸の詰まる想いがして痛いのです。
学校でもお調子者になぶられ、からかわれ、アンドリューの暗い気持ちはどんどん膨らんでいくのでした。

冒頭から、アンドリューはビデオカメラで自分の生活を撮影しています。
(まさにその映像が、我々が観ている映像ってこと)
アンドリューは、彼にとってのビデオカメラは「バリアー」だと言っています。ビデオカメラを通すと、この辛辣な世の中は、すべて架空の世界で起きている出来事のように感じられるからでしょうか。それとも単に、自分に巻き起こるヘドの出る現実を冷静に記録することで、心のバランスを保とうとしているのでしょうか。
いずれにしても、この「撮影」という行為は、彼が極限近くまで追い詰められていることの裏返しなのです。

ただ、当然ながら彼のその態度は、周りからはさらに奇異に見え、ますます「キモい」「ウザい」と同級生や父親から蔑まれる結果を生むのでした。

このあたり、実に普遍的な「青春の悲愴」だと思います。
思春期の子供は様々です。中・高生の時期は、人生で最も不安定な時期ですから。
「自分の事をなにものにも替え難い特別な存在だと思ったり、次の瞬間には、まるで価値のない存在ではないかと悩んだりする」時期です。
そして、スクールカーストで言えば、「常にきらきらしている男子・女子」がいる一方、馴染めず、「根暗」「変わり者」に見られてしまう個性は確かに存在します。
しかし、それは単に、その特異な個性が圧倒的多数の占める「普通組」ではない、ということに過ぎません。
「普通」でなくて何がいけない。そういう子ほど、心の芯では深い思慮を携え、実は人一倍に大輪を咲かす可能性を秘めている場合も多いのではないでしょうか。
現場経験者から言いますと…特別な能力を持った生徒ほど、「不登校」に陥りやすいという事実があります。
例えば…エジソンだってそうですよね。
「普通」と言われる「世界」からつまはじきになり、「異端」のように扱われる嫌われ者。しかし、「普通」の世界なんてこっちから願い下げじゃ! と開き直ればいいんです。その強ささえあれば…

そう、まさに「アナと雪の女王」のエルサのように。

が。

そういう子たちがどんどん心を閉ざし、ほの暗い部分を膨らますのもまた事実。それは、「やっぱり普通がいい」「普通でないと生きてけない」「そもそもモテないし・・・」という「普通の世界」に捕われているからなのでしょうね…
上っ面では、「バカには付き合えんよ」とプライドを掲げてみても、内心は「リア充死ね」と妬みを燃やしています。
そう…結局はね…「普通」に憧れるよね…。
そうだとしても…
そうはいっても、ここではあえて「異端」を支持したい!
本作では、アンドリューの他に二人の同年代の子が同じ「能力」に目覚めますが、「異端」であるアンドリューが飛びゆけて能力を強めていくのです。
彼が「異端」だからこそ。人一倍に暗い経験を積み重ねてきたからこそ、反動のように才能が開花したのだと。
そのことにアンドリューが気付き、いや、思い込みでもいいけれど、もっと「自信」を深めていさえすれば。
本作のラストの悲劇は避けられたのかもしれません。
もっと「自信」を持つんだ!!

…なんか変な文章になってきたな…

クロニクル3


話を変えまして。

本作の見どころは、「超能力描写」にもあります。
POV方式ですから、まるでテレビ番組の「衝撃の瞬間映像」並みのリアルさで超能力が披露されていくのです。
女の子のスカートをめくる、とか、投げつけられるボールを目の前で止める、とか。
序盤は結構地味なんです。
それが、逆にリアルで良かった。

しかも、本作ではPOVとしての最大の欠点である「何で緊急時にさえビデオカメラを手放さないの?」という疑問をクリアしている点も面白いです。ビデオカメラは、中盤から「アンドリューの超能力で動かしているよ」設定なので、宙にぷかぷか浮いています。ゆえに、どんな時でもビデオカメラが彼らを捉えていても不思議ではない、というわけ。おまけに、監視カメラやら、従弟や従弟のガールフレンドの持つカメラの映像も利用される設定なので、あらゆる画面を無理なくPOVとして成り立たせているわけです。うまいな。

ところで。
これ、個人的な意見ですけど、POV映画はあくまでリアリティーにこだわってほしいと思っています。だから、カメラに映る現象は極力現実味があった方がいいのではないかと思います。本作では、突然その現実味が崩れ去る瞬間があるのです。それは…リアル舞空術の場面でした。大空を滑空し始めてから、あれ? なんか変な雰囲気になっていきます。
彼らがスーパーマンのように空を舞い始めてから、「思ってたのと違うなあ…」という違和感がありました。途端、普通の「作り物の映画」になってしまったようでした。心霊映像番組でも、あまりにそのものズバリが画面に現れた時ほど胡散臭いものはありません。途端に冷めてしまいます。

クロニクル2


それにしても。

これほどの能力を授かり、意を決して「マジック」として学校で披露し、一躍人気者に躍りでるアンドリュー。
人生のピークといってもいいくらいの幸福を味わったことでしょう。
宝くじに当たったような幸運ではありませんか。
しかし、この幸運を持続できない不遇がアンドリューを襲います。
確かに、かなり手ひどい不幸な出来事が起こります。
起こりますが・・・アンドリューよ、もうちょっと持ちこたえることはできなかったのかと残念でなりません。
彼は、「不幸」に完敗してしまうのでした。
それこそ、「誰でもよかった」とのたまう通り魔のようです。

しかし、彼には素晴らしい力があったわけで…人生の逆転はいくらでもできたのではないかと悔やんでやまないのは、彼ほどの不幸を抱えたことのない人間の戯言なのでしょうか。
しかし…そんなもったいなことするなら、その能力をワシにくれ、と思ったけど。
どうもアンドリューは、不幸な選択をしてしまいがちです。比べて従弟といったら…元々勝ち組の匂いのする彼ですが、能力をもってからも自分を律する力に長けていて、実に上手に立ち振る舞うのでした。
アンドリューは、やはり従弟に負けているなあ。「異端の星」になってもらいたかったのですけどねえ。
もっと「自信」を持って!!

クロニクル4


ラストには触れません。
しかし、超能力大決戦とか、これほどの衝撃のラストとかが、本作に果たして必要だったかと疑問に思います。
(『AKIRA』や『キャリー』の影響が見え過ぎ、という理由もあるけれど)

もっと別の落としどころはなかったものかなあ。

例えば、「超能力」で人気者になったアンドリューの能力が次第に衰えていくや、元の木阿弥になってしまうといったような結末の方が、地味ですが、「苦々しい青春映画」としてのテーマをもっと掘り下げられていたと思うのですけど。(すみません、偉そうで)

続編が計画されていると聞いて驚きました。
これ、続編やったら、単に「超能力バトル映画」になってしまうのでは?
それこそ、POV映画の利点を吹き飛ばすような気がして…あまり期待できないなあ。


  

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Posted on 2014/08/21 Thu. 23:25 [edit]

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