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プリズナーズ 「親」にしか出来ないこと。 


プリズナーズ [Blu-ray]
 プリズナーズ
 (2014年 アメリカ映画) 85/100点


とても重みのある映画です。
ずしりと胃にきます。
これが、単なるアメリカ映画ならここまで苦しくなりません。
最後のハッピーエンドが約束されているであろうから。
しかし、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督には、前作「灼熱の魂」で見せた容赦のない描写の実績もあって、本作でも「何が起こるか分からない」と思わせます。
最悪の事態だって描きかねない「怖さ」があるため、どうなるどうなるの? とハラハラした鑑賞となりました。

本作は、少女が行方不明になるというお話。
<頑張ってネタバレしません。事前情報なく観た方がいいと思います>

プリズナー0


子供がいなくなるというのは、親にとっては張り裂けんばかりの悲しみと不安をたぎらせます。
私自身、迷子になった子供を探す時の「恐怖心」はひどくつらいです。背筋に冷たいものが流れ、心拍数はあがりっぱなしになります。
ゆえに、本作で描かれる「子供の行方が分からなくなった」両親の悲痛がイヤというほど分かります。

本作の胆は、娘が行方不明になった主人公・ケラー(ヒュー・ジャックマン)の常軌を逸した行動です。
彼は敬虔なクリスチャンですが、娘を誘拐したと疑われる「容疑者」を自ら捕え、監禁し、拷問し、娘の居場所を吐かせようとします。

その拷問は素人丸出しのものです。なぜならば、彼は「素人」だからです。他の映画にありがちな元特殊工作員などという設定はありません。等身大の一般人です。カギ爪伸ばして新幹線の上で闘っていそうですが、断じて彼は一般人です。それなのに、彼の拷問はやたらと残酷なのです。
人によっては彼の行動を理解できると思うだろうし、逆に全く感情移入できず、ヘタしたらケラーにだけでなく本作自体に嫌気がさす可能性もあります。

私は、理解できます。

親にとってみたら、子供が犠牲になるかもしれない事態に、冷静に、倫理的に、常識的に対処などできるわけがありません。
間違っていたって構わないのです。
子供が救われるなら、なんなら世界が滅びてもいいんです。
ケラーの犯していることは完全な「犯罪」です。
けれど子供が戻ってくるならば、「刑務所行き?」 へっちゃらでしょう。
もちろん、完全に親のエゴです。はた迷惑です。冷静に考えれば、これは「間違っている」のです。わかります。
けど、それでもあえて言うと、「親」とはそういうものなのです。

ケラーは、「今ごろ娘は、なぜ父親が助けに来ないのか理解できずにいるはずだ」と言います。その言葉から、ケラーの痛切な気持ちが伝わってきます。
そう。
子供が行方不明になったら、「今頃、どこで、どうしていて、どんなに苦しんでいるのか…」と、その様子を想像し、それが頭にこびりついて離れないはずです。
泣き叫んでいる顔や声がずっと心を支配して「ろくに眠れない」のは当然です。

以前、イーストウッド監督「チェンジリング」の感想の時にも書きましたけど、あの映画では「(反転で)失踪した子供の安否は最後までわからないままで終わります。
「ひょっとしたら、どこかで生きているかもしれない」と、主人公の母親が希望を持った明るい顔をしていたことが私には疑問でした。「今頃どこかで苦しんでいるかもしれない」と永遠に思い続けなければならないとは…私には想像を絶することだと思ったからです。(ゆえに、拉致被害者の家族の苦しみとは計り知れないものだと思います)

そういうわけで。
ケラーの犯した行動は私にはよく理解できたのでした。

プリズナー3


以前にも書きましたが、子供のことについて、「警察に任せっきり」「病院に任せっきり」「学校に任せっきり」はとても「危険」なことだと思います。いや…信用しないというわけではありません。プロの手を貸してもらうことは当然です。
しかし、子供のために最大の心配をし、最大のパワーをみなぎらせ、身を削って行動できるのはやはり「親」でしかないのです。
逆に言えば、ケラー並の行動を「親」は義務として課されていると言ってもいいくらいです。

ただし。
ケラーに一つだけ突っ込みたかったことがあります。
それはケラーの長男のことです。
ケラーは自身の自暴自棄な姿を。ケラーの嫁は鬱になり落ち込んでいる姿を長男に見せてしまいます。気持ちは分かるものの、彼らはもう一人の子供である長男へのケアを怠っていると思いました。
妹が消え、両親が壊れかけている様子に、長男だって相当な恐怖心を抱えているでしょうに。
その長男をもう少し慮ってほしいと思いましたが…ケラーは長男に「強くあれ」と言うばかり。
小さく震える長男の姿がとても可哀想でした…。

さて。

ネタバレしないと本作はとても書きにくい事この上ないです。
盛り込まれている伏線や宗教的に示唆されているあらゆる表現が、見事にラストへと続いているからです。
(↓宗教的示唆については、こちらが詳しいです)
神への反抗 映画「プリズナーズ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

プリズナー4


ってことで、今回は短めに終わろうと思います。
逆に本作の上映時間は153分と結構長めです。
テンポは序盤はややゆったりです。終盤は畳み掛けていくし、行方不明の少女の行方が気になって気になって、ふんだんに感情移入したので途中でだれることはありませんでしたが。

人間ドラマが濃いなあと思いきや、「羊たちの沈黙」のような秀逸なサスペンスの様相も見せます。

ロキという刑事役であるジェイク・ギレンホールがカッコイイ雰囲気を醸します。
また、ケラーから捜査の手際を責め立てられ、舌打ちしたりうなだれたり、人間味もあって面白いです。
刑事としてのプライトと責任に追い詰められた彼が、後半に見せる大奮闘ぶりが相当に熱く魅せます。
ケラーに容疑者として目を付けられた、10歳の知能しかないというアレックスを演じるポール・ダノも相当な演技力です。
とはいえ、キャスティングがややハリウッド的(知っている顔が多い)なのが、逆に緊張感を奪うかな…? と思ったりもしますが。
また、話がやや複雑過ぎるようで、話にまとまりがないような気もしますので、賛否両論の部分もあります。特に「模倣犯」のくだりは唐突過ぎるような…。

プリズナー2


本作のタイトルであるプリズナーズは「囚人たち」という意味ですが、複数形になっている通り、本作にはたくさんの「捕われた者」が出てきます。行方不明の少女たちやアレックスだけでなく…この辺りのタイトル通りの展開はうまいなーと思いました。
そして。
ラストシーンが抜群です。並大抵のものではありません。こりゃ見事に鳥肌が立つってもんです。

オススメの傑作サスペンスです。


  

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Posted on 2014/10/13 Mon. 00:36 [edit]

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