素人目線の映画感想ブログ

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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

6才のボクが、大人になるまで。 /一人で大きくなったような顔。 


 6歳
 6才のボクが、大人になるまで。
 (2014年 アメリカ映画)
 80/100点



12年に及ぶ撮影期間をかけ、「6歳の主人公が18歳になるまで」を、同じ役者で紡いでいった青春の物語。

大人にとっての12年はあっという間ですけど、「子供にとっての12年」ってたくさんの変化に富み、そして、永遠に続くかのように長く、「二度と訪れない特別な時間」なんですよね。

主人公・メイソンが成長するにつれ、序盤に見た6才の頃の顔が浮かんでは、「大きくなったなあ」と、親戚のおじさん状態に陥ったものです。

もちろん。

お姉ちゃん役の人も、お母さん役の人も、その他の人たちも同じ俳優が演じますから、みんなリアルに年齢を重ねていくなあ…と思いきや! 

お父さん役のイーサン・ホークがちっとも老けません。

ははーん、ひょっとして…、一人だけタイムマシンで行ったり来たりしてる設定だなー、と勘繰りたくなるほど、彼が老けません。

恐らく、監督リチャード・リンクレイター氏は、撮影で顔を合わせる度、アンチエイジングに勤しんでいるイーサンホークを恨めしく見ていたに違いありません。

主人公のメイソンが可愛らしい6歳児だったのに、段々「ノッチ」に似ていくことよりも心配だったはずです。
イーサンの顔に触れて、「老けていく…」と呪いをかけたかったことでしょう。

終盤で、かろうじて「老けた」イーサンの姿を観た時、実にほっとしたもの。

6才2

6才

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この本作の撮影手法に、世界の映画ファンは絶賛。
ベルリン映画祭の銀熊賞を獲得し、さらに次回の米アカデミー賞では、作品賞の有力候補とも言われています。

私も、かなり期待して鑑賞しました。
ところが。
あろうことか…、傑作だとは思いますが、いくつか引っかかる感じもあり、素直な鑑賞になれなかったのです。

その部分とは、以下の通りです。

○実は、我々はとうの昔に、この撮影手法を経験済みです。
そう、日本には超名作ドラマ『北の国から』があるのです。

まさに、「小学生から大人になるまで」を、同じ役者で描き切ったあのドラマで、「純」や「蛍」の成長にどれだけ感動したことか。

何十年も前に、すでに本作の撮影手法を体験しているものだから、本作に「斬新さ」を感じることはできませんでした。
当然、連続ドラマであった『北の国から』の方が、物語は濃厚です。

『北の国から』の出来栄えがあまりに凄いため、本作の特徴をかすめさせてしまったように思います。

○物語には、特別な出来事があまり起きません。
父親が泥まみれのお札を渡すことも、別れの場で誰かが無心に走り出すこともないし、主人公が彼女を妊娠させることもなければ、誰かが死ぬこともありません。

ただ流れるのは、本当に普遍の物語。
もちろん、それは良い点でもあります。だからこそ共感し、心から物語に入り込めるのだと思います。

しかし…、12年間に起きた出来事がこれだけか、と疑問にも思ってしまうのです。
こんなもんじゃないんじゃない?  と。

序盤こそ、母親の再婚相手からの暴力など、大変過酷な場面もあるのですが、中学生くらいに成長して以降は、本当に何事もなく進んでいるように思います。

気づいたら彼女が出来てるし、大学は合格しているし…

村上春樹の小説のように、「過程の苦難」というものがあまり見られません。

受験勉強はスムーズだったのか? 
彼女はどうやって出来たのか? 
失恋はいくつしたのか? 
いじめはどう解決したのか? 
学校とソリが合わない様子があったが不登校になりかけたことはないのか? 
母親と大喧嘩することはなかったのか?
 

その他あるでしょーもん。バカチンな青春時代には、「どーしよー!」とパニくるような失敗がさー。
それが一個もなかったのだとしたら…、これは随分カッコイイ、幸せな青春を送ったものだなー。

青春の苦みが…、ないこともないけど明瞭には見えませんでした。

終盤、「志望校選びに難儀したなー」と言葉で説明されます。しかし、それを映像で見たいわけです。
彼女と寝た次の場面ではもう別れてるし…、いや、その過程を見たいのだと。

つまり、見も蓋もありませんが、12年間の成長物語を、3時間に集約することに無理があったのではないか、と思ってしまったのでした。

矢継ぎ早な編集で、どんどん成長していく主人公の姿に、追いついていかない気持ちが生じてしまったのです。

6才7


しかし。

批判的になってすみません。
本作には、もちろん素晴らしい面も数多くあります。

○イーサンホークの父親ぶりが最高!
私自身、子育てをしている「父」という身ですので、参考になるなあと思います。
ま、父親がイーサン・ホークってのは反則ではありますが、カッコいいんです。
映画や音楽など、息子と共通の話題があります。それを、同じ目線で話し込むのが素敵です。

上からものを言わない、無闇に説教しない、子供たちと楽しむことを優先する!

おまけに、一足先に大人の階段を登りつつある娘に、意を決した「性教育」を実行する場面では、照れくささで笑いあったり、実にリアルな芝居で魅せます。素晴らしいと思いました。

もちろん、妻とは離婚しているため、主人公や娘とたまにしか会えないからこそ、うまくいっているのかもしれません。
にしても、とても理想的な関係性だと思いました。

ギターの弾き語りを息子に聞かせるってのは、どうあがいても私には無理ですが。

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○子役の芝居の素晴らしさ。
子役の芝居といえば、日本では是枝監督を思い出します。
本作の子役たちも、見事な自然体の演技で引き込まれます。
何度注意しても騒いだり、遠慮のない兄弟ゲンカをしたり…、信じられないくらい自然です。

○「家庭」という戦場。
メイソンの小学生時代は、「家族の修羅場」の連続です。
父親と母親の言い争いや、母親の再婚相手の暴力的な場面は緊張します。というか、とても「不快」でした。

大学教授である再婚相手は、酒に酔うと暴力をふるいます。もともと支配欲が強く、子供をルールで縛り付けます。
イーサン父とはまるで真逆のこの「父親」には、イライラした。死ねばいいのに。

母親の三度目の相手もまた、強権タイプです。最初の数年だけは、家族を守ってくれる「たくましさ」に見えるのでしょーが、いつしかそれは、「暴力性」として家族に向けられるのです。

「家族を平和に保つ難しさ」を、ストレートに描いている点に、興味津々でした。

しかし、青春の苦難はそれまで。
あとは、順風満帆に普遍の成長を難なく遂げるメイソンなのでした。

6才5


(以下、ラストのネタバレをします)


そんなこんなで。

無事に18歳になったメイソンですが、単に「人生の本当のスタートライン」に立ったに過ぎません。
ここから、彼がいかに将来を築くのか。そう、まだまだこれからなのです。

そう考えると本作は、メイソンの人間的成長が、ハッキリしない頃に終わるのです。
大人になんてなっていませんよ。18歳になっただけです。

巣立つメイソンに、私は素直に拍手を送る気持ちにはなれませんでした。
それより、子供を育て上げた母親が賞賛されるべきだと思います。

選択の過ちもあったかもしれませんが、パートナーに悩み、教育費に悩み、大学に通って博士号を取ったり…、血のにじむような苦労と努力の12年間を、母親は乗り越えたのです。

果たして…、「子育て」とは何のためにあるのでしょうか。
大昔であれば、大事な「労働力」という合理的な意味があったかもしれません。
けれど、現代において、「子育て」には合理的な意味などありません。
子供を多く育てたからといって、年金を多くもらえるわけではありません。
莫大な教育費を絞り出したって、戻ってくるお金ではないのです。

どこかの経済学者が、「子育ては、ハイリスク・ローリターン。最悪な投資だ」と言っていました。

「近年、家族の絆が薄まっている」などと、「昔はよかった主義のコメンテーター」は言い放ちますが、私は真逆だと思います。
現代ほど、「愛」もしくは「義務」だけで家族が成り立っている時代はないのではないかと。

まさに、「無償の愛」で育て上げた子供が巣立つ時。
果たして、親は誇らしいでしょうか。
…それとも、むなしいのでしょうか。

終盤、メイソンの母親は息子が離れていく寂しさを漏らします。
メイソンら子供たちは、巣立つことで「自由」を得て、希望に満ち満ちています。(ラストシーンが、新しい女の子との出会いで終わるってのが、単純で残念です)

しかし母親は、子育てから解放され、同じく「自由」を手に入れられたのに、悲しみを爆発させるのです。

ここで母親がメイソンに投げつけた言葉が、そのまま私の感想です。

つまるところ…。
「一人で大きくなったような顔してんじゃねーってこと。
その時の母親の暗い表情が、私の心に影を残しました。

まあ…

それもこれもね、一人だけ大して歳をとらず、バンド仲間と仲良くしていつまでも青春気取ったり、なんかしらんが若い女性と再婚してハッピーを振りまいていた、イーサン・ホークが全て悪いんです。


 

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Posted on 2014/11/16 Sun. 23:05 [edit]

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