素人目線の映画感想ブログ

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ブルージャスミン ジャスミンが本当に求めていたこと。 


 ブルージャスミン [DVD]
 ブルージャスミン
 (2014年 アメリカ映画) 80/100点


(完全ネタバレなのでご注意ください。)


ウッデイ・アレン監督の新作です。
いつもながら皮肉に満ちた語り口で、人のねじれた心の部分をさらっとライトに描き出します。
今回の標的は…「転落したセレブ」です。

なんといたって、元セレブ妻・ジャスミンを演じる「ケイト・ブランシェット」が異様に怖いです。表情にエルサにも匹敵する氷の魔力を纏い、西川史子並の「上から目線」でまき散らす不機嫌のパワーは、マツコデラックスさえも凌ぐほど。

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大金持ちの夫・ハル(アレック・ボールドウィン)と素敵なセレブライフを送っていたジャスミンですが、投資詐欺で夫が逮捕され、そこからあれよあれよと転落人生が始まります。
もともと、「成り金セレブ」に過ぎず、さらに本名を「ジャスミン」に改名したことからも分かる通り、筋金入りの「見栄っ張り」であるジャスミン。彼女は、無一文になってからも贅沢癖が抜けず、ファーストクラスに乗ったり、ブランド物を身に付けたりしています。住む家もない癖に居候先の妹のカレシを「ルーザー(負け犬)」と決めつけ、慣れない仕事ではスマイル・ゼロ(無愛想)の接客をこなし、唐突にインテリアコーディネーターを目指すと高らかに宣言したかと思いきや、なぜか遠回りにパソコン教室に通い始める不器用さを露呈します。

つまり、セレブでなければとんでもなく「イタ過ぎるオバさん」というわけなのでした。

物語冒頭では、誰も話を聞いていないのに自慢げに過去の素敵な思い出を人に聞かせ続けていました。
気の遠くなるほどの「自分勝手さ」は、長年のセレブ生活で培ったものなのでしょうか。
欲しいままに「冨」をむさぼっていたジャスミン。
貧乏な妹と品のない妹の旦那に虫唾が走っていたジャスミン。
この世の全ては自分に従属すべきだ、とさえ思っていそうなジャスミン。
そのジャスミンが、蒲田行進曲のヤスも真っ青の見事な転落を披露してくれるのです。ズッテンゴロゴロー――ン!!と音がしそうなほどに。

想像してください、叶姉妹(主に姉)が無一文になっている姿を。
想像してください、神田うのがバナナの皮を踏んでスッ転ぶ姿を。
想像してください、沢尻エリカが目一杯に男にふられている姿を。
想像してください、キンコンの西野がドスベリして震えている姿を。


それをみなさん、どう思われますか。可哀想とか思いますか思いませんよね。

ププププププ・・・ざまあみろ! と快感に思うのではないでしょうか。そんな姿を見たら傑作だわーと手を叩いて喜びはしませんか。少なくとも、「調子に乗っていたからだろう」「人生なめてたんじゃない?」「こうなると分かっていたよ」「自業自得だね」と、人生の賢者にでもなったかのように「上から目線」で評論するのではないでしょうか。

きっとウッディ・アレン監督は、高慢でお金に憑りつかれている鼻持ちならないジャスミンという嫌われキャラクターを緻密にこさえ、彼女を不幸で痛めつけることで、我々観客にたまらなく愉快な刺激を与えようと本作を作り上げた…ってなわけがありましぇん!

さあ。


ネタバレします。


本作は、実は終盤に大きなどんでん返しを忍ばせています。(と、私は思いました)

ジャスミンは「心」を患っています。物語序盤でジャスミンは、華やかだった頃の思い出をポツリと思い浮かべ、空を見つめて独り言を呟き、周囲をぎょっとさせます。
次第にそのフラッシュバックは、ジャスミンと元夫・ハルとの夫婦の危機の様子を紡ぎ初めます。そして本作の終盤では、ハルが迎えた「破滅の発端」に至るのです。
その発端とは、実は。
ハルの詐欺行為を警察(FBI)にタレこんだのは、まさしくジャスミンだったのです。
それは、ハルの浮気…、いや、本気の不倫の発覚と、離婚の危機によるジャスミンの癇癪による「凶行」だったのでした。

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つまり。

ジャスミンは、彼女自身の手によって、意図的に栄華や富を放りだしたのです。

なぜなら。

彼女にとって一番大切だったものは、富や名声以上に、「夫の愛」だったからではないでしょうか。
ジャスミンは、「愛」のために身を滅ぼしたのではないかと、私には思えました。
(ついでに言うと、夫・ハルが、浮気相手を本気で「愛」してしまったのもいけなかったのです)

その時、これまでのジャスミンの印象がガラリと崩れました。彼女のことが、「愛」を失った一人の儚げな女に見えたのでした。

もう笑えません。ウッディアレンの狡猾さに一杯喰わされた思いです。

そもそもが。

ジャスミンの妹は、貧乏で質素な暮らしを「良し」とし、どこか姉・ジャスミンを我々と同じくバカにしていたと思います。が、姉の「勝ち組思想」に触発され、華やかなパーティーで出会った「趣味と甲斐性の良さそうなサウンドプロデューサー」と出会ってすぐに男女の関係になり、ジャスミンがしていたようにカレシを邪険に扱ったではありませんか。その後、あっさり破局した妹は、何事もなかったかのようにカレシとヨリを戻します。変わり身と切り替えの素晴らしさはジャスミンも見習うべきではありますが、何のことはない、妹も姉と同じく、しっかりと「セレブリティ」に憧れているのです。
妹は、それを手に入れられる力がなかっただけ。
姉は、それを手に入れられるだけの天性の力があっただけ。
その違いでしかないのではないでしょうか。

つまりは、登場人物たち(ひょっとしたら我々)のジャスミンへの批判は、全て「妬み」だったのではないかということ。

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もちろん。

警察(FBI)へのタレこみは「愚か」でした。
彼女だって、理性によって一瞬で後悔したと言っていました。
ただ、彼女の愛を求める本能が、理性を遥かに上回ってしまったのだ、と擁護できる気がするのです。
無論、その罪の代償はあまりにも大きく…。ハルの息子(ジャスミンの義理の息子)はひどいショックを受けて家を出て行きます。ジャスミンは、息子を心のよりどころとしていたにも関わらず、息子はそれどころか、彼女を心から憎むことになるのでした。

もちろん。

ジャスミンの再婚への手口も汚いものでした。
下院議員を目指すセレブな男性を射止める為に、経歴も何もかもキレイな嘘で固めていました。ジャスミンがいくら過去を全て捨ててしまっても、彼女を恨む者は忘れません。その者の告げ口によって、一瞬にして彼女の「再セレブ化計画」は崩れ去るのです。
嘘に怒ってジャスミンを追い払おうとする男に、彼女は「愛は本物だった」と泣きながらすがります。
私は…この言葉は、真実だと思います。しつこいですが…ジャスミンは、実は誰よりも「愛」に重きを置く人なのだと。

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当然反論もあるでしょう。
「それじゃあ、なぜ金持ちな男ばかりを選ぶんだ。金が目当てじゃないのか」と。

けど。

「金持ち」を好きになって何が悪いのでしょう。
所詮男だって、「見た目」で女性を選んでいます。(「美人」とかではなく、「好みのタイプ」という意味です。)
ジャスミンは、セレブな男の持つ「お金」を好きになるのではなく、お金を稼ぐ男が持つ「能力」を好きになるのではないでしょうか。頭がいい人、スポーツが出来る人、優しい人、たくましい人…そういった人間性を好きになることと全く一緒のことです。

それに。
「お金目当てだっていいじゃない」とさえ思います。
結婚って、本来そういう側面があって当たり前なものです。
「愛」より「生活」という側面です。
古今東西古来より、そうやって女は男を選び、男は選ばれてきたのではないでしょうか。
時には妥協によって…。
逆に、「愛」さえあればと、「お金」の計算をしない人の方が、よっぽど「危なっかしい」と思います。

変な話になってしまいました。全て私の個人的な意見というか、疑念です。ジャスミンの純粋なバカっぷりを見ていると、どうしても擁護したくなったのでした。
彼女に、悪意はありません。アヒルの群れに落ちてきた白鳥なのです。それだけで異端で、どう振る舞っても不自然で、戸惑いながらもなんとか馴染もうとしても、張り切るほど滑稽に見えてしまっている哀れな哀れな白鳥なのです。

ラストは、仕事も住む場所も希望も何もかも全てを失ったジャスミンが、街中で独り言をつぶやく最悪な状況で終わります。
そのジャスミンに笑いかける人は、今一度自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。
ウッディ・アレンがにやにやしながら、あなたの顔を眺めているかもしれません。


  

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Posted on 2014/12/07 Sun. 01:40 [edit]

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07

コメント

思うがままの生活から 落ちぶれると・・・ 

はじめまして タイチさん。この作品はDVDで見ました。
ジャスミン 情けないしみっともなかったな~

>気の遠くなるほどの「自分勝手さ」は、長年のセレブ生活で培ったものなのでしょうか。
欲しいままに「冨」をむさぼっていたジャスミン。
貧乏な妹と品のない妹の旦那に虫唾が走っていたジャスミン。
この世の全ては自分に従属すべきだ、とさえ思っていそうなジャスミン。  実はですね このジャスミンの落ちぶれを見てると、 ボクのおじさんを思い出したんです。
 バブル時期に板金の自営業をやってまして、 腕はよかったんですが 
「オレのいうとおり動いてりゃいいんだ」 
「さっさとやれや このばか」etc
従業員は 兄弟 従兄弟などを使ってたんですが 親戚だったためか横柄かつ横暴なふるまいでした。 ふだんの生活でも息子に対して押さえつける言い方だったり・・・そんなおじさんもバブル崩壊後 倒産して 従業員はもちろん子供たちも自立することもあってか みな手のひら返して去っていき 奥さん つまりボクの叔母さんだけしか残りませんでした。

 倒産後 板金の腕を活かしたり 別の職種に再就職しようとしましたが いかんせん 上からもの言う態度や 他人に使われるのがイヤで 仕事も上手くいかない・・・

 最終的に ただのニートのおっさんに 成下がったんですよ。 
威張ることしか能がなく 生活費も 叔母さんがパートを掛け持ちで やっと生活できたくらいだったんですよ。

 正直この叔母さんも ダンナのいいなりで ボクの母や よそに住んで親戚中から借金しても 返そうとする努力もしない・・・(呆れ)
後で知ったことですが こともあろうに スナックで飲みに行ったりしてたんですよ。 もう 母や他の親戚の人たちも 愛想尽かして 縁を切られたんです。

 ジャスミンもね、普段の態度がね・・・あんな 上から目線な尊大な態度じゃ 社会人としてね・・・・

URL | zebra #ngCqAwRo | 2015/08/25 19:59 | edit

zebra 様 

コメントありがとうございます。

人間、成功している時の態度で「根」が分かってしまうのですね。
栄枯盛衰でいつかは必ず落ちぶれるのに、そんな瞬間が来るとも知らず、せっせと人の恨みを買い続けていると後から本当に痛い目に会います。
ちらと聞いた話では、昔からずううっとテレビに出続けているタレントほど、人によく気を遣い、天狗にならず、威張らないんだとか。それは、いやらしい言い方をすると計算なのかもしれませんが、その計算が出来る人が、本当に優れた人間なのではないでしょうか。

まーしかし、今の年配は態度が横柄な人が多いですよ。人には礼儀正しくと躾けてきた人たちだと思うんですけどね。


実は結構、「団塊嫌い」だったりします。

URL | タイチ #- | 2015/08/25 21:34 | edit

 

まずDVD見てから超映画批評見て、書いてあることがいまいちわからず、ここを見てやっと映画の本筋に得心いったという感じです
ただ、個人的にはジャスミンの性格やら発言やらに共感したり憧れたりできる部分がなさすぎて、真相がわかっても、ジャスミンは純粋な人なんやなとなるよりは、こういう人が自分の近くにいなくてよかったくらいの感想しか持てないでいます 笑
いずれにせよ女優さんの怪演も相まって凄い印象に残るキャラクターでした

URL | 通りすがり #- | 2016/08/17 16:10 | edit

通りすがり 様 

コメントを頂戴しありがとうございます。

「純粋=いい人」ではないから、共感しにくいですよね。

ただ、結局のところは、拝金主義の嫌味なババア…ではなく、
「愛情」を求めていた人なんだなあというところで、
哀れな人なんだと思ったものです。

もちろん、こんな人が周りにいたら、すごく大変。
みんな逃げていくでしょう。
だから、最後は一人ぼっちです。

だからこそ、そんな自分を受け止めてくれるほど、
愛を持った人を欲していたのかもしれません。

URL | タイチ #- | 2016/08/18 17:43 | edit

 

初めまして
ブルージャスミンを観てここにたどり着きました。
見る人で意見はそれぞれ違うんだなぁと思いました。

私はジャスミンをいい気味だとは思わなくて、むしろ必死に何かにしがみつこうとしている彼女にただただ切なかったです。
私は嘘もつくし見栄っ張りなので彼女を笑えません。むしろあるあるすぎていたたまれませんでした(笑)

私は、彼女が求めていたのは愛というよりも、完璧な自分だと思います。
何もかも持っている完璧な相手から愛される自分は完璧であると思いたかったのかなって。
完璧主義者はちょっとのミスが許せないので、完璧な世界が手に入れられないなら全てぶち壊してやる!とばかりにFBIに売ったジャスミンの気持ちはよーくわかります。

自分はジャスミンよりの人間なので、自己愛もほどほどに人のフリみて我がフリなおせって思わされた映画でした。


昔の記事に長々とすみません。

URL | たき #nJY05RGA | 2016/11/27 15:17 | edit

たき 様 

コメントを頂戴し、ありがとうございます。
昔の記事でも、コメントをいただくと嬉しいです。

確かに、ジャスミンは自己顕示欲が強いのだと思います。
完璧な相手から「愛されているアタシ」という、
完璧な状態を望んでいたのだと思います。

価値判断の基準が他にない…。

仰る通り、これは誰にでも、少なからずある感情です。
時に、それは「愛」と見間違うことも多いと思います。
ジャスミンの妹もその罠にはまりかけていました。

だから、ジャスミンを笑うことなど、
誰しも簡単にできるものではないと思います。

URL | タイチ #- | 2016/11/28 12:47 | edit

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