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her/世界でひとつの彼女 そうです。わだすがナイーブなホアキンおじさんです。 


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  her/世界でひとつの彼女
 (2013年 アメリカ映画) 70/100点


<すみません。完全ネタバレです。>


AIが超発達し、ほとんど人間のように話せるというのは、映画やドラマやアニメではおなじみの設定です。
今さらそこに「違和感」を感じるのは、いわば「野暮」であることは十分に承知なのですが…

本作には何故か違和感を感じ、それが終盤までぬぐえませんでした。
ああ…本作はかなり高い評価を得たというスパイク・ジョーンズ監督の新作なのですが…またしても世間と評価がズレてしまいました。

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本作のAI・サマンサは、パソコンのOSの音声ガイドみたいなものです。
最初は機械的に話し始め、次第に人間味を身に付けていくのかと思いきや…しょっぱなからフル回転でしゃべっとるがな! 「よー、こんちはー、あたしサマンサー」みたいな軽いノリで。そんな設定にしたわけでもないのに。
これは恐ろしいですよ。
テレビ番組で「自動販売機が話しかける」ってドッキリがありますが、ほぼそれですよ。
まともな人なら、まず信じません。
パソコンから「うへへへー」なんて笑ってくるOSなんて信じないし、ましてや声がスカーレット・ヨハンソンばり(実際スカーレット・ヨハンソンだが)のセクシーボイスという時点で、普通ならまず、「出会い系詐欺」かと疑うところです。

しかし。

本作の時代設定は、そんなことさえ起こり得る近未来なのです。主人公・セオドア(ホアキン・フェニックス)は、それを「すげーなー」くらいで受け入れ、そしてあろうことか…OSのサマンサと恋に落ちるのでした。

しかしまー。

ううむ…。

それって、「二次元への恋」と何ら変わらない気がするのですが。

もちろん、本作の大きな特徴は、OS・サマンサもセオドアに恋をするという双方向性にあります。
ありますが…サマンサはただのプログラミングです。人間ではありません。人間っぽく喋れるだけなんですよ。そもそも「女性」じゃないはずなんです。だまされないでください。声がスカ子なだけなんです。…あれって音声を「男」にしてたらどうなってたんだろー。セオドアが最初の設定において軽く考え、OSの性別を「女」に設定したムッツリ具合とか、妊婦ヌードをちらりと確認するムッツリ具合とか、サマンサに「あなたのパソコンのファイルを確認していいか」と聞かれてちょっとためらうムッツリ具合とかも気になりますが、ともかく、サマンサはただのOSです。OSが「恋」をするという設定にノレるかどうか…この根本を受け入れられなかった私には、この映画は無理だったのです。

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じゃードラえもんはどうなるんだ。ドラえもんだって、みいちゃんやタマちゃんやノラミャー子ちゃんと恋をしていたではないか(しかも意外に多い)と。そもそものび太と友情を育んでいるじゃないかと。「ロボットにも感情があるという設定」を受け入れられないとは、今さら何を言っているんだ。…と言われるのはごもっともなんですが…。

本作の時代背景が、そこまで高度に発達した未来ではないことも、この違和感の原因なのかもしれません。また、映画やドラマに出てくるAIは、「ナイトライダー」のK.I.T.Tとか、「2001年宇宙の旅」のHALもそうですが、感情があるように思え、でもどこか機械的な面も残しているじゃありませんか。人間よりも温度が低い感じがするのです。それに比べ、サマンサは明るく気さくで人の悩みにも精通した上に「性欲」「嫉妬心」まであるというから、もはやスカーレット・ヨハンソンがマイクを通して声優として吹き込んでいるようにしか思えないのです。実は、私は往生際の悪いことに、主人公が「代筆業」をやっていることから、サマンサもまた「寂しい人への代理恋人」という設定で、誰かが隠しカメラを通じて喋っているんじゃないかとか、実は「元・嫁」が喋っていたとか、そんなだったら救われるのになーと願っていたものです。もしくは…、「LUCY」の後日談だったら面白いのになーとか。
また私には、サマンサが「姿」を持たない点にも、ノレない要因があると思うのです。しかし、セオドアは序盤で見知らぬ人とテレフォンセックスをしていました。彼が「声だけでもOKな人である」という前フリがされていましたね。

しかし、本作は評価が高い。
それがショックです。

「僕は綾波レイを愛しているのです」
「ときめきメモリアルの藤崎さんを心から想っています」

と40歳代の顔して公の場所でキリリと宣言するのと何の違いがあるっていうのさ!?
それなのに会社の同僚も女友達もみんなして、「おかしいことじゃないよ」などと理解しているし! 「私もOSが友達なの」とサラリとまあ!
もう知らん! お前たちみんな、知らず知らずに課金されとったらいいんだ! …と最後までノレない私がいるのでした。

けれど。

素晴らしいどんでん返しがありました。
セオドアが離婚調停中の妻に、このサマンサのことを打ち明けた結果。

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 「あんたバカじゃないの!?」

とすべてをひっくり返す見事なツッコミを入れてくれたのです。
この瞬間、全ての溜飲が下がりました。
もうエンドロール流してもらってもいいくらいでした。
それで、この物語は「オチ」てますもの。
まさに王様に裸だ! と叩き付けた少年のごとく、セオドアに一ミリの遠慮もない立場の嫁はズバリと言ってやるのでした。拍手! この妻を演じるのは「ドラゴン・タトゥ―の女」で最強のツンデレ女だったルーニー・マーラ。彼女が繊細な美貌の裏側に隠し持つ攻撃性は、意表を突くからこそ大きなダメージを相手に与えます。

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ガビビビーン!(注・イメージ)

と衝撃を受けるセオドア。オレってリアルじゃないんだー、と。そうそう、私もそれを言ってやりたかったのだ。なんか胡散臭いんだよ、いつもイジイジして。それでいて「いいおじさん」ぶって。 このムッツリ! ヘンタイ! ホアキンの癖に!

と、何だか意地悪な気分になってしまう本作。

終盤、進化を遂げたというサマンサから、他にも多くの「恋人」がいたと話されてうなだれるセオドアの姿は、もはや銀座のクラブのルールも知らずに、もて遊ばれたと喚き散らしているチャチな男にしか見えませんでした。それだから、それ以降彼がどんなに素敵な言葉を吐こうとも、画面にはシラケ鳥が飛び、彼のようになってはいけないよ、ナイーブを長所にしてしまった男の末路はこんなものだよ、という教訓にしか見えないものだからさあ大変。
ラストに突然思い立ち、嫁に「知ったような」謝罪メールを送りつけて悦に入っていましたが、これが現実なら、「着拒」に発展するだけだってばよ。

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とはいっても。
セオドアは、どーせ最後は女友達「エイミー・アダムス」とくっつくんですよ。えーそうですとも。エイミー・アダムスと…。
…いーなあー…。

ということで、セオドアに一切感情移入できなかった私には、残念なことに全く何にも残らない映画でした。
(本作の映像の美しさや色使いの素晴らしさは、他に見たことがないぐらい凄いのですが…)
あまりオススメはしません。しかし、本作への世間の評価はかなり高いですので、あしからず。


  

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Posted on 2014/12/21 Sun. 22:08 [edit]

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