素人目線の映画感想ブログ

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ある過去の行方 大人なら。 


 KAKOKAKO
 ある過去の行方
 (2013年 フランス映画) 85/100点


<結末には触れませんが、ところどころネタバレしています。>


タイトルが割と地味なもので、本作がイラン映画の大傑作「別離」のアスガル・ファルハーディー監督の新作とは気づかず、危うくスルーするところでした。

過去7


本作もまた、家族を軸にした人間関係の綻びや、何気なく秘密をひた隠す登場人物それぞれを描きます。

というか、いきなり言わせて頂きますが、本作の大人たちは随分勝手だなー、おい。
と、乱暴なまでにイライラしてしまったのは、本作で素晴らしい演技を見せる子役のファッドにいたく感情移入してしまったからなのでした。
ファッドとは、本作のヒロインであるマリ(ベレニス・ベジョ)の再婚相手であるサミールの息子です。彼は情緒不安定な面を持っていますが当然です。そりゃあ、こんな大人たちに囲まれていれば心が深く傷つくものでしょう。それにも関わらず、「ちゃんとしろ。しっかりしろ。ちゃんと謝りなさい」とふざけた大人たちは彼を叱るものだから、余計に腹が立ったわ。

あ、本作は傑作です。めちゃくちゃ楽しめましたよ。

それとこれとは別で腹立って腹立って。
…ということでその不甲斐ない大人たちをご紹介。


・ファーマド(アリ・モサファ)
【損な役回り度:95% ホームシック度:99% M度:90%】
過去3

マリの二番目の旦那ですが、フランスに馴染めず故郷・イランに逃げ帰っていた男です。
そのため当然離婚となりますが、その手続きのために彼がフランスへ戻ってきた所から映画は始まります。
真面目で優しく寛容的で理性的な男です。…だもんでそんな男の宿命ですが、マリからいいように扱われています。マリがホテルの予約を怠っていたため、仕方なくマリの再婚相手の男と同じ屋根の下で寝る羽目に。よせばいいのに深夜に階下に降り、マリとサミールのいる寝室の電気が点いているのを見て傷付いたりするのでした。
本作の「事件」に関して仲介役を務めます。出過ぎたことをしているようで最終的には丸く納める手腕を発揮しますが、結局彼には何も残らなかったように思います。結局誰からも感謝されず、頑張る割に「そういえばいたね」と思われるタイプでないかと思うのですが。「さよなら…もう帰るよ…」「うん! サヨナラー!」みたいな感じで。


マリ(ベレニス・ベジョ)
【男依存度:90% 逆ギレ度95% ベレニス・ベジョ度2%】
過去

「アーティスト」では天真爛漫で元気いっぱいの女性を演じていたベレニス・ベジョが、幸の薄いワガママヒステリック女を演じているからさあ大変。二番目の旦那と再婚相手を同居させるという震え上がるほどの気まずい状態を作りだし、シレっと家のペンキ塗りに勤しんでいる肝っ玉です。自分が散々っぱら迷惑をかけている人々に平然と逆ギレする辺り、彼女の元から男が逃げ出す原因はそこにありそうなのですが、彼女も彼女で二人の子供を抱え、ギリギリいっぱいの選択の中で生きているのかなと同情できないこともありません。とはいえ、再婚相手との関係が「略奪愛」であるために、物語は深刻な色合いを強めることになるのです。


サミール(タハール・ラヒム)
【色男度70% 子供の気持ちが分からない度89% 当事者意識度:10%】
過去4

クリーニング店を営む青年です。マリと不倫関係にある中で、妻は自殺を図り植物状態になってしまいます。彼の息子が前述のファッドです。サミールは妙に厳格にファッドをしつけます。ファッドの受けた心の傷について何も知らない人のような叱り方です。おまけに自分がした妻への裏切行為は何のその。妻の自殺の原因は自分ではないと言い張って他人を攻撃して見せるなど、ずいぶん利己的なところを持っていますな。


上記三人の大人たちが、自分がしでかしている事もさらっと忘れて子供に説教って「そりゃ、あんた棚に上げ過ぎよ~」とオギママに叱ってもらいたいくらいです。
終始言い争いの絶えない大人たち。子供の前でも平然と争っています。私なんか絶対に子供の前では夫婦で言い争いません。子供を傷つけたくないからです。嫁はお構いなしで言ってきますけどね。そのため、子供がこそっと私の傍に来て、背中を「ぽん、ぽん」とします。…ドンマイっ…って慰めるんじゃない! 叱られてるみたいじゃん!

さて話を戻してまして…

サミールの子供・ファッドの境遇が不憫でなりません。最悪なことに、サミールの妻が自分の息子であるファッドの目の前で自殺を図っているのです。つくづく何を考えているのか。ファッドはそのために自殺現場であった自宅兼クリーニング屋の1階に「怖くていけない」とつぶやきます。入院中のママに会いに行くのも「怖い・・・」と寂しそうに顔をしかめるのがあまりに可哀想で、とても見ていられませんでした。そんなファッドに、お前らよー説教が出来たものだのう。100%グレますよ、マジで。

ファッドの他には、マリの一番目の夫との娘が二人。その内の一人はもう高校生くらいですが、彼女もまた母の奔放な男性関係に悩んでいるためサミールをひどく嫌います。彼女はファーマドが好きなようですが、ファーマドはようするに彼女も捨てて故郷に帰ったわけです。優しいフリして、結局最後は逃げるタイプの男なのですわ。

過去5


さてさて。

本作にはミステリー要素があります。それは、「なぜ、サミールの妻は自殺を図ったのか」です。
何がきっかけだったのか。そのきっかけを誰が生んだのか。
登場人物それぞれに嫌疑があります。ひょっとすると全ての人間に原因があるような描き方もされます。しかし、その全てが意図的ではないことに、本作の悲劇性があるのです。

それぞれが抱えた葛藤。前作「別離」でもあったように、みんなただ自分の理想とする家族が欲しかっただけなのかもしれません。ゆえに、誰を責めることも出来ないのかもしれません。
ただ、何度も言うように、かえってそれが家族関係をぐちゃぐちゃにするならば、特に大人は、それが子供を傷つけまくっているならば早急に止めるべきだと個人的に思うのです。

大人の事情に、ただ怯えるしかできない子供たち。
本作の感想はもっと他にあるべきなのかもしれませんが、私にはその1点が気になって仕方ありませんでした。

過去6


それにしても、マリが残念です。結局のところ、たくさんの人を傷つけているように思います。もちろん、彼女自身も愛する男たちから見放されていく不幸を抱えていますが、自業自得でもあるのです。
彼女には、不幸を種にしているとはいえ「狡さ」が潜んでいます。ファーマドがフランスに着いてから再婚相手がいることを告白し、同じ屋根の下に住まわせ、離婚協議の直前に「妊娠」を告白し、そのことを咎められるとブチギレて恫喝します。おまけに、あてつけのようにヘビースモーカーを装います。終盤では、過去を振り返らないことで前進しようとする強さを見せますが、彼女には是非過去を振り返り続けていただきたい。過去にこだわらないことは、彼女にとって「逃げ」のように思います。でなければ、必ずこの先も同じ過ちを繰り返すと思うのです。

ラストはとても素晴らしい長回しのカットです。
この監督の特徴でもありますが、観客の想像に任せるものになっています。
個人的には。
その時に流れた一筋の涙が、大人たちの罪の全てを浄化してほしいと願ってやみません。
何が一番大事であり、何を守るべきで、何を捨て去らねばならないのか。大人なら、しっかり考えて決めねば。

と、それからね、子供たちの心のケアをしっかりオギママにでもご相談くださいね。


  

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Posted on 2015/02/03 Tue. 23:41 [edit]

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