素人目線の映画感想ブログ

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グランド・ブダペスト・ホテル 最高のコンシェルジュのおもてなし。 


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 グランド・ブダペスト・ホテル
 (2013年 ドイツ・イギリス合作) 90/100点
 
ウェス・アンダーソン監督の映画を観るのは、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」以来です。実は「ザ・ロイヤル―」に関しては、よくあるアメリカの風変わりな家族映画としか思えず、良い印象ではなかったために、それ以降敬遠していたのです。
本作もまた、「なんだかマニア向けで脱力した空気感の、退屈な映画なんだろーなー」と決めつけていました。
ところが。
これが素晴らしい映画なのでした。
恐れ入りました。本当に申し訳ないです。これほどの映画を作る監督を敬遠してしまっていたとは。

何が凄いって、もー映画を観たら分かるんです。
ウェス・アンダーソン監督って、絶対にむちゃくちゃいい人だってことが。
すみません。いきなりレベルの低い感想ですが言いたかったのです。
これほどの豪華なキャストが彼のもとに勢ぞろいする要因は、映画監督としての敬意もさることながら、すこぶる素晴らしい人柄なんだと思います。全く知らないから勝手な想像ですけれど。

というわけで。

批判できる要素や突っ込みどころが全くない、という稀有な映画でした。かといって、面白おかしく感想を書けるような映画でもないので、なんとも扱いづらいです。大切にしまっておきたい宝物のような映画といいましょうか…。
さながら子猫のような映画です。
さながらきれいに巻けただし巻きタマゴのような映画です。
さながら買ったばかりのゲームの説明書のような映画です。
さながらお年寄りにとっての孫みたいな映画です。
もうやめときます。
映像がきれいだとか絵本みたいだとかキャラクターが可愛らしいとかテンポが気持ちいいとか何とか、手あかのついたような感想を述べれば述べる程、この映画に申し訳ないような気がして書く気がしません。…これを、「虜」というのでしょうか。

それほど、この映画に練り込まれていた魔法は、甘く素敵なものなのでした。

書きづらいとはいえ…何とか順を追って感想を書きます。
ちなみに、本作の主人公のモデルとされる1930年代の作家・シュテファン・ツヴァイクについての深い秘密なんてここでは言及しません。そんなこと、気付く人は気付けばいいし、気付かない人は気にせずに、たっぷりと本作の美しさを楽しめばいいのです。

とその前にあらすじを。「一人の作家がグランド・プタベスト・ホテルに赴いた。そこで出会ったのはホテルの所有者である一人の老人。作家は、その男からホテルを手に入れるまでの昔話を聞く。それは、かつて最高のコンシェルジュであった男の物語。そして、その男に嫌疑がかかったある殺人事件についての話だった…」というお話。


<結末には触れません。極力ネタバレしていません。>
それから、私だけかもしれませんが、本作は時代によって画像比率が変わるという演出が施されています。知らなくて私、途中からパソコンのDVD設定が壊れたのかと四苦八苦しました。お気を付けて。


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作家とグランド・ブタペスト・ホテルの所有者との出会い。
これ以降、物語は回想形式で語られていきます。
冒頭からホテルの外観の美しいこと。このホテルに行くまでの道のりで、ケーブルカーに乗る必要があるという設定がまた楽しい。年月が経ち、さびれた感じのホテルですが…ロビーも食堂も浴場も、味のある落ち着いた雰囲気で憧れます。話は全く変わりますが、私、ホテルって好きです。それも、客足の少ないシンとしたロビーが好きです。無意味にソファに座ってぼけぇぇっとするのが好きです。日常には絶対にない「くつろぎ」と「やすらぎ」…安ホテルのキャッチコピーみたいですが…。この世で一番贅沢なモノ、それは何事にも干渉されない時間と空間なのではないでしょうか。そうそう、村上春樹の「羊をめぐる冒険」に出てくるホテル暮らしの描写も大好きです。


第一章【ムッシュ・グスタヴ】
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ホテルの総支配人であるグスタブと、のちに跡取りとなるゼロという少年の出会いが描かれます。この少年が、冒頭に出てきたホテルの所有者の若かりし姿なのです。とはいえ、全く面影がないってのが逆に面白いですな。
グスタブのおもてなしは最高です。どれほどの老齢の女性客ともベッドを共にします…って枕営業なの!? …と驚きましたが、グスタブにはやましい気持ちはありません。狭っくるしい従業員部屋でひとり寡黙に食事をとるほど質素で真面目な彼の、心からの「お も て な し」なのであります。このグスタブにあやかって是非とも滝川クリステルさんにも(ry


第二章【マダム・ C.V.D.u.T.】
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ホテルの常連でもあり、グスタブを愛していたマダムDが亡くなったことを聞き、グスタブはゼロを連れて彼女の屋敷へ向かいます。細かいんですけど、屋敷の中での移動の描写がとても印象的。まるでRPGのパーティーが移動するようにスイスイと歩いていくのが気持ちいいのなんのって。初心者意見で恐縮ですが、ウェス・アンダーソン監督の「移動描写」って本当に特異で見惚れます。左下に消えたと思ったら、左奥の上部からひょっこり出てきたりします。そこから横スクロールのゲームっぽく動きます。人形劇を観ているような…本当に不思議な感覚です。

ところで。
いよいよ物語は動き出します。マダムDから遺産相続として、名画「少年とリンゴ」を受け取ることになったグスタブは、怒りに駆られたマダムDの息子の計略により、殺人犯として刑務所に送られることになるのです。(ただし、計略はひどくとも、グスタブが怒られるのは当然です)

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ちなみにレア・セドゥも出てます! レア・セドゥはウェス・アンダーソン監督が撮影した「プラダ」のCMにも出演しております。多彩な才能から愛される女優・レア・セドゥ。


第三章【第9犯罪者拘留所】
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グスタブの脱獄話が展開します。
その作戦を指揮する囚人にハーヴェイ・カイテル! ちょっと歳をとりましたねえ。スキンヘッドで分かりづらいですが特徴的な声なので分かりました。
脱獄のための工具を手配するのは、ゼロとその恋人でありケーキ職人のアガサ。ケーキの中に巧みにハンマーなどを忍ばせ、刑務所に送り込みます。あまりのケーキのかわいらしさに、厳密に荷物検査をしている看守の心がほだされちゃうってノリがいいね。そう、まるでこの映画のように大事に扱いたくなるような魔法のケーキ。
逃亡途中、突如の殺戮シーンが生々しく描かれていてぎょっとしますが、所々で強めの毒もきっちり入れ込む、絶妙なバランス感覚がやばいっす。

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第四章【カギの秘密結社】
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グスタブの逃亡のために彼の人脈術が炸裂します。
次々に仲間のコンシェルジュたちが連絡を繋いでいくテンポの良さに見とれます。
ここではビル・マーレイが活躍。初見では彼とは気付きませんでした。豪華なものです。

本章で特筆すべきは、スキーチェイスの場面。あえてジオラマ感満載の雪原に、安っぽくチマチマっとした敵のスキーヤーとグスタブとゼロのソリがピュンピュンっと滑走します。もー、身もだえする程おかしくって困ります。爆笑ものではないのですよ。フフフフ…と人を優しい気持ちにさせるのです。


第五章【二通目の遺書の二通目】
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さて、最後の章では再びホテルに戻ったグスタブとゼロが、身の潔白を示すための書簡を巡る冒険を繰り広げます。全体的にハラハラしようのない甘い映像と演出のようでも、時々残酷な面も見せてきた本作だから、アガサの行く末とかやっぱり気が抜けません。アッチにコッチに気持ちが揺さぶられる演出。銃撃戦のシーンなんて、ほとんどおちゃらけているのにね。

最後の最後には、ちょっとしんみりさせたりなんかして。

人生の悲喜こもごもの全てを可愛くコーティングして、誰も傷つけず、しかし綺麗事にしないという見事な手腕に脱帽。
誰もかれもにオススメです。


  

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Posted on 2015/03/05 Thu. 11:58 [edit]

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コメント

良作 

豪華キャスト、確かに監督はいい人なのかもしれませんね〜。
豪華キャストのわりに、派手派手しくならず、どこか小作品の趣があるところがとても素敵でした!
グスタフの枕営業をふくんだ究極のおもてなし!口は悪いけど、なんだか魅力的でした。
そう言われれば、若かりしゼロは面影まるでなしですね。わりとすんなり見ちゃってましたが。笑
とても好きな映画なのでコメントさせてもらいました♪

URL | ihuru #- | 2015/04/02 07:22 | edit

ihuru様 

コメントありがとうございます。

アート系の退屈な映画かなーと侮っていたのが恥ずかしいくらい
良い映画でしたね。

この監督にスターが集まってくるのが、とってもよく分かりました。

URL | タイチ #- | 2015/04/02 23:33 | edit

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