素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

グランド・ブダペスト・ホテル /最高のおもてなし。 


 61iumfomsZL_SS400_.jpg
 グランド・ブダペスト・ホテル
 (2013年 ドイツ・イギリス合作)
 90/100点


 
ウェス・アンダーソン監督の映画を観るのは、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』以来です。
実は『ザ・ロイヤル―』に関しては、よくある風変わりな家族映画としか思えず、それ以降敬遠していました。

本作もまた、「脱力した空気感の、退屈な映画だろーなー」と決めつけていたら…。

これが…、素晴らしい映画なのでした。
恐れ入りました。本当に申し訳ないです。
これほどの映画を作る監督を、敬遠してしまっていたなんて。

何が凄いって、もー映画を観たら分かるんです。

ウェス・アンダーソン監督って、絶対にむちゃくちゃいい人だってことが。

すみません。いきなりレベルの低い感想ですが、言いたかった。
豪華キャストが彼のもとに勢ぞろいする要因は、映画監督としての敬意もさることながら、彼の素晴らしい人柄に惹かれるのだと思います。勝手な想像ですけど。

というわけで。

批判できる要素や突っ込みどころが思いつかない、という稀有な映画でした。
大切にしまっておきたい宝物のような映画といいましょうか…。

手あかのついたような感想を述べれば述べる程、この映画に申し訳ない気がして書く気がしません。

それほど、この映画に練り込まれていた魔法は、甘く素敵なものでした。

…何とか、順を追って感想を書きます。

ちなみに、本作の主人公のモデルとされる1930年代の作家シュテファン・ツヴァイクについての深い秘密なんてここでは言及しません。
そんなこと気にせずに、たっぷりと本作の美しさを楽しめばいいのです。

まずは、あらすじを。「一人の作家がグランド・プタベスト・ホテルに赴いた。そこで出会ったのはホテルの所有者である一人の老人。作家は、その男からホテルを手に入れるまでの昔話を聞く。それは、かつて最高のコンシェルジュであった男の物語。そして、その男に嫌疑がかかったある殺人事件についての話だった…」というお話。


<結末には触れませんが、少しネタバレしています。>
それから、私だけかもしれませんが、本作は場面によって画像比率が変わる演出が施されています。
知らなくて、私、途中からDVD設定が壊れたのかと四苦八苦しました。


プロローグ【作家とホテル所有者との出会い】
ホテル9


冒頭から、ホテルの外観の美しいこと。
このホテルまでの道のりで、ケーブルカーに乗るという設定が楽しいです。

年月が経ち、さびれた感じのホテルですが…、ロビーも食堂も浴場も、味のある落ち着いた雰囲気で憧れます。

話は全く変わりますが、私、ホテルが好きです。
それも、客足の少ないシンとしたロビーが好きです。無意味にソファに座って、ぼけぇぇっとするのが好きです。

日常には絶対にない「くつろぎ」と「やすらぎ」…安ホテルのキャッチコピーみたいですが…、この世で一番贅沢なモノとは、何事にも干渉されない「時間」と「空間」ではないでしょうか。

そうそう、村上春樹『羊をめぐる冒険』に出てくるホテル暮らしの描写も、大好きです。

これ以降、物語は回想形式で描かれていきます。

第一章【ムッシュ・グスタヴ】
ホテル


ホテルの総支配人であるグスタブと、のちに跡取りとなるゼロという少年が出会います。
この少年が、冒頭に出てきたホテルの所有者の若かりし姿なのです。全く面影がないってのが、逆に面白いですな。

グスタブのおもてなしは最高です。
どれほどの老齢の女性客とも、ベッドを共にします…って枕営業かい!? 

…と驚きましたが、グスタブにはやましい気持ちはありません。
狭っくるしい従業員部屋で、ひとり寡黙に食事をとるほど質素で真面目な彼の、心からの「お も て な し」 
このグスタブにあやかって、是非とも滝川クリステルさんにも(ry


第二章【マダム・ C.V.D.u.T.】
ホテル2


ホテルの常連で、グスタブを愛していた「マダムD」が亡くなったことを聞き、グスタブはゼロを連れて彼女の屋敷へ向かいます。

細かいんですけど、屋敷の中での移動の描写が、とても印象的。
まるでRPGのパーティーが移動するように、スイスイと歩いていくのが気持ちいいのなんのって。

初心者意見で恐縮ですが、ウェス・アンダーソン監督の「移動描写」って、本当に特異で見惚れます。
左下に消えたと思ったら、左奥の上部からひょっこり出てきたりします。
そこから、横スクロールのゲームっぽく動きます。
人形劇を観ているような…、本当に不思議な感覚です。

ところで。

いよいよ物語は動き出します。
マダムDから遺産相続として、名画「少年とリンゴ」を受け取ることになったグスタブは、怒ったマダムDの息子の計略により、殺人犯として刑務所に送られることになるのです。

ホテル3
ちなみに、レア・セドゥも出てます! 

レア・セドゥは、ウェス・アンダーソン監督が撮影した「プラダ」のCMにも出演しております。
多彩な才能から愛される女優・レア・セドゥ。


第三章【第9犯罪者拘留所】
ホテル6


グスタブの脱獄の話が展開します。
その作戦を指揮する囚人にハーヴェイ・カイテル! 
ちょっと歳をとりましたねえ。スキンヘッドで分かりづらいですが、特徴的な声で分かりました。

脱獄のための工具を手配するのは、ゼロとその恋人のアガサ。
ケーキ職人であるアガサは、ケーキの中にハンマーなどを忍ばせ、刑務所に送り込みます。

あまりのケーキのかわいらしさに、厳密に荷物検査をしている看守の心がほだされちゃうってノリがいいね。

そう、この映画のように、大事に扱いたくなるような魔法のケーキ。

ホテル5


逃亡途中、突如の殺戮シーンが生々しくてぎょっとします。
所々、強めの毒も入れ込む絶妙なバランス感覚が、やばいっす。


第四章【カギの秘密結社】
ホテル7


グスタブの逃亡のために、彼の人脈術が炸裂します。
仲間のコンシェルジュたちが、次々に連絡を繋いでいくテンポの良さに見とれます。

ここでは、ビル・マーレイが活躍! 
初見では彼とは気付きませんでした。豪華なものです。

本章で特筆すべきは、スキーチェイスの場面。

あえてジオラマ感満載の雪原に、チマチマっとした敵のスキーヤーとグスタブたちのソリが、ピュンピュンって滑走します。
もー、身もだえがする程おかしくって困ります。
爆笑ではないのですよ。フフフ…と、人を優しい気持ちにさせるのです。


第五章【二通目の遺書の二通目】
ホテル8


最後の章では、再びホテルに戻ったグスタブとゼロが、身の潔白を示す書簡を巡る冒険を繰り広げます。

ハラハラしようのない優しい映像と演出ですが、時々残酷な面も見せてきた本作だから、アガサの行く末とかやっぱり心配です。
アッチコッチに気持ちが揺さぶられる演出が、巧みです。

銃撃戦のシーンなんて、ほとんどおちゃらけているのにね。

最後の最後には、ちょっとしんみりさせたりなんかして。

人生の悲喜こもごもの全てを可愛くコーティングし、
誰も傷つけず、
しかし、綺麗事にしない見事な手腕に、脱帽です。


  

記事を読んで頂きありがとうございました。
↓よかったら、クリック1票お願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
<スポンサードリンク>


Posted on 2015/03/05 Thu. 11:58 [edit]

TB: 0    CM: 2

05

コメント

良作 

豪華キャスト、確かに監督はいい人なのかもしれませんね〜。
豪華キャストのわりに、派手派手しくならず、どこか小作品の趣があるところがとても素敵でした!
グスタフの枕営業をふくんだ究極のおもてなし!口は悪いけど、なんだか魅力的でした。
そう言われれば、若かりしゼロは面影まるでなしですね。わりとすんなり見ちゃってましたが。笑
とても好きな映画なのでコメントさせてもらいました♪

URL | ihuru #- | 2015/04/02 07:22 | edit

ihuru様 

コメントありがとうございます。

アート系の退屈な映画かなーと侮っていたのが恥ずかしいくらい
良い映画でしたね。

この監督にスターが集まってくるのが、とってもよく分かりました。

URL | タイチ #- | 2015/04/02 23:33 | edit

Comment
list

コメントの投稿

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→http://eigamove.blog.fc2.com/tb.php/240-c84abb9b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Trackback
list