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ソロモンの偽証 <前篇・事件> /中学生日記 ハードver. 


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 ソロモンの偽証 <前篇・事件>
 (2015年 日本映画) 84/100点  


松竹120周年記念として社運を賭けたと言われる本作は、宮部みゆきの大長編の原作を、前編・後編に分けて公開するという独特のスタイルです。
冒険ものやファンタジーものでは珍しくないスタイルですけど、サスペンス系の映画を分けて公開するというのは他に記憶がありません。そうだな・・・「パテオ」以来じゃないですかね? (古い! そして誰も知らない! おまけに微妙にサスペンスじゃなかった気がする!)

正直、当初は「分けて公開」を面倒くさいなーと思いました。だって前編見に行ったら後編見に行かないといけないじゃないすか。私、想像したんですよ。前編見たら、絶対にすごくいい所で「犯人は誰だ!?」みたいになって後編へ続く…ってなるんだろーなーって。しかし万が一にも面白くなかった場合には目も当てられませんよ。後篇を観に行かないとなったらブログにも書きにくいし、全くの無駄な時間になってしまうわけです。
というわけで、結構恐る恐る観に行ったわけなのですが…、正直に言いましょう。

むちゃくちゃ後篇観たい! はよ!

ソロモン3


何が凄いって、本編が面白かったのは当然ですが、本作で最も鳥肌が立つほど面白かったのは、本編終了後に流れる後篇の予告編です! 一体どうなるんだー! 誰が嘘を付いているんだー! 真実とはなんなのかー! あんた一体何者なのかー! …と、見事な後篇への煽りに完全にノックアウトされたものです。
絶対行きますよ、後篇。待ち遠しくて仕方ありません。

では、本編について書いていきます。<ほとんどネタバレしてません。>


本作でもっぱら感心しきりだったのは、役者陣です。それも子役の面々です。恐らく「芝居」や「存在感」重視でキャスティングされたのだなと思うほど、そこそこ華がありません。主人公を演じる藤野涼子(なんと、役名と同じ芸名でデビュー)は、決して美少女ではありません。しかし、格段に強い意志を感じさせる目力には圧倒されます。彼女がじっと見つめる芝居のなんと印象的なことか。恐らく、日本で一番まばたきをせずにいられる中学生かもしれません。その他、多くの中学生キャストが出てきますが、一瞬「中学生日記」かと思うほど地味です。かといってリアルでもありません。しかし、中学生が「校内裁判」を引き起こすという現実味のない設定に説得力を付与すべく、「何となくスゴそーな奴ら」というイメージの面々なのです。なかなか絶妙だと感じました。

そんな彼らが、なんとも頼もしい芝居を見せつけます。
そして、彼らが演じる中学生たちがなんとも力強い行動力を発揮するのです。

ソロモン2


軸にあるのは中学生による大人への反乱。事件をことなかれで強引に処理しようとする大人たちに、中学生の彼らが疑問を投げつけるのです。そう聞くと「僕らの七日間戦争」を想像しますけど、あの映画には随分と反感を覚えたものです。世の中をなめきった少年・少女が大人をコケにした上、一切の反省もせずに「今度は国会議事堂だー」と調子に乗ったまま終わるひどい映画でした。逮捕しろよと思ったものです。しかし、本作はそんな低次元ではありません。頭脳で大人に勝ってみせます。怒りにまかせて体罰をふるった女教師に、秀才中学生が「体罰」と「暴力」の違いについて言って聞かせ、謝罪させる場面は個人的なお気に入りです。

本作では、複数の嫌な教師が出てきます。仕事柄、学校の先生と接する機会が多い私自身、実はあまり学校の先生に良い印象がありません。もちろん全ての教師ではありませが、教師の中には、「社会性が著しく欠けている人」も珍しくないのです。教室や職員室という狭い空間に王国を築いているつもりの井の中の蛙なのです。生徒の服装にはうるさいくせに、自分はジャージにサンダルというおおよそ仕事をする格好ではなかったりします。生徒には時間厳守を徹底させるくせに、自分は平然と授業時間に遅れては謝罪のひとつもなかったりもします。これ、塾などの企業だったらすぐにクレームが付きますよ。それから、本作にも描写がありましたが、上司というものが存在せず、相手が教頭だろうが校長だろうが平然と乱暴に文句を垂れてみせます。また、常に子供に教えてやっているという自負が抜けず、校外でも自分が正義だと疑わず人の話を聞きません。おまけに中立性がなく、生徒に自分の考えを押し付けようと洗脳を図ることさえあります。…モンスターペアレントの問題もありますが、モンスターティーチャーもかなり多く存在するのは確かなのです。

そんな教師どもの不遜な態度に納得がいかず、当初はなりを潜めていた中学生たちがついに行動を起こすのです。ここは拍手喝さいなところだったなー。

ソロモン0


事件の発端から、所々で非常にショッキングな描写が数多くあります。本作の演出に相当な力を入れているのがよく分かります。しかし、それが結構エグいのでご注意を。特にいじめのシーンが衝撃でした。不良中学生の男子3人が女子に暴力をふるいます。無性に腹が立つほど卑劣ないじめです。中学生のヤンキーってのは、大人からみるとまだまだ子供に見えるでしょうが、同じ中学生から見るとほぼ「暴力団」なのです。羊とオオカミを同じ檻に入れ込んでいるようなものです。私も中学時代に、「番長」と2年連続で同じクラスになったことがあります。中3のクラス分けの張り紙を見た時には衝撃だったものです。何で「番長」とイタイケな私を2年連続で同じクラスにしたのか…。「番長」なんて他の不良とまとめて「ごくせん」みたいなクラスにしたらいいじゃん。私の先生嫌いはここから始まった気がします。…まあ、おかげで「ヤンキーに目を付けられない態度の取り方、逆に気に入られる方法、そして利用方法(校外にも名の知れた番長だったため、他の学校のヤンキーに絡まれた時に免罪符として利用できる)」など、様々な処世術を学ぶことができたのが特典でしたが。…ええと、ナンノ話デシタッケ…? そうそう。というわけで、本作の演出がかなり濃い、ということ!
所々で、まるでホラーと見まがうほどの強烈な演出が施されています。

ただ。

それが、時に過剰で陳腐になり過ぎな時もあり、かなりアンバランスなんです。そこが、本作の大変惜しいところ。
例えば、やたらとショックを受けて人が失神するシーンが目立ちます。また、ある人物が車に撥ねられる、電車に撥ねられる、それぞれの場面で全く同じような構図での演出があります。同じことの繰り返しは陳腐です。
マスコミの取材の仕方も、あそこまで露骨に粗暴に決めつけてくるものですかね…? 元・担任の先生の隣人の女が、爬虫類っぽく動くのも失笑してしまいました。
それからすごく気になるのは、涙を流すシーンが多過ぎなところです。最近の日本映画の悪しき習慣です。現在公開中の「悼む人」が衝撃的に大コケしていると聞きましたが、よく分かります。予告編が泣くシーンばかりだからです。泣けばいいってもんじゃないのです。食傷気味になります。ここぞとばかりに泣いてほしいものなのです。例えば「ゼロ・ダーク・サーティ」のラストシーンのように。本作では、主人公の藤野涼子が幾度も涙を流します。ここまで泣かれると、ひょっとしてこの子って情緒不安定なのかなーと不安になります。正義感が異様に強く頑固に真実を追い求め、常に泣いている…ってかなりイタい人です。涙の演出ばかりに頼っていると、逆に主人公の行動への説得力が揺らぎかねません。昔…「たけしの教育白書」って番組の中で、ものすごく生真面目な生徒会長の女子生徒が、校内ルールが破られていることで涙を流す場面があり、ビートたけしが「気持ち悪いな」と一刀両断したことがあります。「世の中なんてルール違反だらけなのに、この程度で泣いていて社会に出れるのか」と。

そう、大人になるとは、ウソまみれの社会の中で生き抜くことでもあります。ヤンキーだらけの中で私が処世術を身に付けたように、まずウソがあって当然の世の中を理解することが大事のような気がします。「真実、真実」と言っている主人公の思考は、実は頼もしいようで危なっかしくも感じるのでした。本作の最初の犠牲者・柏木卓也にも同じことが言えます。彼は「偽善」が大嫌いでした。綺麗ごとを並べる者を、「偽善者め」と断罪します。彼は生まれ変わったら、うさぎになりたいと言います。「うさぎの世界には嘘がないから」だとか。それは、彼が「現実」を受けとめられなかったことも意味します。彼は弱かったとも言えるのです。世の中から嘘はなくならないのだから、「真実に価値を置き過ぎる」彼ら中学生の行動を、無闇に支持してばかりいることは、それこそ「偽善」ではないかなーと思ったりもします。それよりも、嘘つきな社会の現実と、それらへの接し方を教える方が良いように思うのです。残念ながら、嘘を付かない大人が健やかに生きていけるほど、世の中は甘くないもので。

ソロモン01


さあて。

せっかくのラストシーンが、またもや「過剰」な演出でハズしていた気がします。一瞬、ギャグテイストのようにも見えたので驚きました。そういう面でも分かる通り、本作は演出の完成度が安定していないのが、不安材料です。

しかし、原作で保証されている物語が、どっしりと重量級なので、見応えは凄いものです。
途中、主人公たちが唯一の味方の先生に、「裁判の進め方」について相談するところなんかは、まさに「中学生日記」みたいな雰囲気でしたが、終盤では、そんな軽い印象をズンと突き破ります。そしていよいよ後篇では、中学生だけで行われる「校内裁判」が開廷されるのです。
柏木卓也は自殺なのか、殺されたのか。
不良の大出俊次が犯行におよんだのか、どうなのか。
告発文を送りつけた人物は、どうなってしまうのか。
柏木卓也の旧友という神原和彦とは、何者なのか。
藤野涼子が傷つくかもしれない隠された秘密とは、何なのか。

一体、誰が嘘をついているのか。


といった真実も知りたいけれど、とにかくこのたくましくも優秀な中学生たちが、一体どんな裁判劇を繰り広げるのかを見届けたくって仕方ありません。さあ、大人を巻き込んで知略を巡らせろ!

めちゃくちゃ、後篇が待ち遠しいですね!

後篇の感想はこちらです。


本編を観ると、さらに鳥肌具合がうなぎ登る予告編を下記に!



ソロモン4

ソロモン5

ソロモン6

ソロモン7


  

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Posted on 2015/03/15 Sun. 14:48 [edit]

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コメント

こんにちはー 

読みやすくて、客観的な良い感想でした
ネタバレしていないのに映画の雰囲気が伝わってきます
他の感想も読みたくなりました

URL | 鈴木 #- | 2015/03/31 13:53 | edit

鈴木様 

コメントありがとうございます。

いつもネタバレしているのですが、今回は頑張りました。
けど、ネタバレしたくって仕方ありません。

他はネタバレしまくってますが、是非ご覧になってもらえたら嬉しいです。

URL | タイチ #- | 2015/03/31 16:07 | edit

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