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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 役者は、狂気だ。 


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 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
 (2014年 アメリカ映画) 90/100点


大傑作でした。かなり面白かった。観終わった時、映画評論家の水野晴郎のように「いやー、映画って、本当にいいものですね」と言いたくなるくらい感激しました。「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ監督が放つ渾身の野心作です。

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本作の最大の特徴は、なんといっても「全編ワンカット」のように撮影された映像です。この点が一番興味津々でした。かつて大友克洋の「大砲の街」がワンカットのように撮られていましたが、あちらは短編映画です。本作は2時間弱のほとんどが、高度な撮影技術によって本当にワンカットのように見えるから凄い。これは撮影スタッフのエマニュエル・ルベツキの功績です。(彼は「ゼロ・グラヴィティ」のOPでも驚異的な映像を見せてくれていました。)
この「全編ワンカット」がもたらす効果は、まるで舞台劇を観ているような気持ちになることです。本作自体が「舞台演劇」の表舞台と裏舞台を描いた物語なわけですが、その臨場感や緊張感がワクワクするほど伝わってきました。私、この映画こそ「3D」で見たいと思います(本作の3D上映はありません)。本作を「3D」で見ることが出来れば、さらに臨場感は増し、まるで役者の傍に立って、ものすごく広い空間の「舞台劇」を鑑賞しているような信じられない効果があるんじゃないかと思うのです。こういアトラクションがあっても面白いんじゃないかと思うくらいです。それほど、舞台上での緊張感の再現レベルが半端なかったのです。これは、すごく斬新な感覚でした。

ただ。

序盤はその「ワンカット」に集中してしまって、物語を把握しづらい感じもありました。おまけにカットの区切りがないまま過去と現在、明日などに時間を飛び越えるものだから、後ろの席のおじさんが「どういうこっちゃ…?」と戸惑っていましたよ。そのあたり、前情報として知っておくと良いかと思います。

さて、本作のあらすじは…「かつて『バードマン』というヒーロー映画の主人公を演じ、一世を風靡したリーガン(マイケル・キートン)は、今では落ちぶれていた。彼は復活を目論み、舞台演劇の世界での成功を目指し、演出と出演を兼ねるのだったが、わがままな役者、薬漬けの娘、映画スター嫌いの評論家などに翻弄され、上演初日を前に自信を失っていく…」という物語。


<結末には触れません。>

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コメディ映画だ、という宣伝もありましたけれど、さほどコメディではありません。ただ、皮肉めいたセリフがたくさん出てくるので、「フフ・・・」程度の笑いは随所に散りばめられています。
その皮肉加減がまた…陰険です。
例えばハリウッド映画への批判・映画俳優への酷評がふんだんです。しかし、ハリウッド俳優をしたり顔で批判している評論家への逆批判もあるようなので、そこそこバランスはとっているみたい。
そして、スーパーヒーローだったのに落ちぶれてしまった俳優の役を、実際にかつて「バットマン」であったマイケル・キートンが演じるというのも、狙いを定めたスマッシュな皮肉です。娘役のエマ・ストーンも「アメイジング・スパイダーマン」に出てますしね。

本作では、そんな皮肉がピリリっと利いて楽しませるセリフ劇です。終盤で、「本当はお前らアクション映画が見たいんだろ!? セリフ劇はつまんねーんだろ!?」と、もはや被害妄想の域であるような問いかけさえ出てくるのは…ちょっと失笑しましたけど。

シチュエーションはほぼブロードウェイにある劇場内部かその周辺に限られ、主人公が携わる舞台劇のプレビュー上演から初日の開幕までに巻き起こる人間模様が展開されていくのですが…出てくる人物が曲者揃いで素晴らしい。特にエドワード・ノートン演じるマイクが強烈です。彼のおかげでチケットがバカ売れする程の人気者であり、芝居の技術も最高レベルの舞台俳優なのですが、これがスーパー変人というわけで。前述したように本作の臨場感は抜群ですから、彼が舞台上で巻き起こす騒動にこちらまでハラハラして仕方ありません。危なっかしく、破壊衝動に駆られ、人に嫌われることを望んでさえいる扱いにくい男。…ある意味、おいしい役どころであります。
対する主人公のリーガンは、深層心理に根深く過去の栄光が食い込んでいます。彼の興味はとにかく名声を取り戻し、皆から愛されることのようです。マリファナに漬かる娘に、「こんな大事な時に!」と思わず自分自身の心配ばかりしてしまいます。彼には心の声が聞こえてきます。もう一つの自分の願望です。それは、バードマンの声のようです。「バードマンに戻ろうぜ」とささやきます。表面上ではそれを拒否する彼ですが…妄想が生み出す超能力描写からも分かる通り、簡単に逃れることは出来ません。彼はその葛藤から…次第に壊れていくのです。…それにしても、キートンの落ちぶれた雰囲気が真に迫っており怖いです。随分変わったなあ…と。彼が芝居用のカツラを脱ぐたびに、なんかドキンとします。

本作の見どころは、このリーガンとマイクの根性の入った芝居合戦にあります。序盤から二人は(特にマイクは)遠慮のない演技論を爆発させ、なにやら胸の内をざわりとさせますが、案の定、次第に激しくぶつかり始める二人が、もー、めっぽう子供っぽく、 アホ 青臭くて素晴らしい! まさに役者バカ! 感激するほど彼らは「役者」なのであります!

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他にも。

映画俳優を心から嫌う ニューヨーク・タイムズの演劇批評家・タビサも強烈にイヤな女です。観もしない内からリーガンの芝居は最低だと決めつけ、史上最低の批評をしてやると粘着質な意地悪を言ってのけます。
私、素人なのでよく分かりませんが、そんなに「舞台俳優>映画俳優」なんでしょうかね…? 本作には実際の俳優の名前がよくセリフ上で出てきます。ジョージ・クルーニーだとか、ロバート・ダウニー・Jrだとか…おお、みんなヒーローを演じた俳優さん達ですな。つまり、彼らを批判しているということなんでしょうかね…? タビサのあまりの断言ぶりに、別の意味でハラハラしましたよ。
そいでもって、エマ・ストーン演じるリーガンの娘・サムもかなり痛々しいです。マリファナ浸けであり、恐らくは父親のかつての「稼ぎ」のおかげで生活しているはずですが、その父親を非難して止みません。リーガンにとって一番近づかないでほしいマイクに接触していく様子もなかなかハラハラさせるイタイ子です。前述の通り、エマ・ストーンは「アメイジング・スパイダーマン」のヒロインですが、本作では散々なキャラ設定です。なんか…大丈夫ですかね…。

そういった大人のようで大人でない彼らが、一歩また一歩とリーガンを追い詰めていくのでした。そして、リーガンはついに「ぶっ飛んだ」行動に出るから、さあ大変!

どんな風に「ぶっ飛んでいる」のかは…ご覧あれ!

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そうだ。
ドラムが鳴り響く音楽もかなり好きでした。この世の全ての悲哀と嫌味とワガママが詰まっていそうな「小宇宙のような劇場」の世界観に、さらに深く没入すること間違いなし。
それもあってか、流れるような、それも濁流のような展開は非常に小気味よく、本当に「楽しい」と思える映画です。

しかし、内容には意外に深みがあって、いろいろな解釈ができるように作られています。
ラストには触れませんが…ハッピーエンドかどうかも意見が分かれることでしょう。私は…娘・サムが最後に観たものは、あがらい難き儚い夢だったのではないかと思います。つまり、「悲劇」だと捉えましたが、果たして。

アメリカ・アカデミー賞の最優秀作品賞受賞も納得の傑作。

ところで、「舞台」を観に行きたくなりますね。


  

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Posted on 2015/04/11 Sat. 21:31 [edit]

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