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THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 歴史は、実写で繰りかえ…されなかった。 


 首都決戦
 THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦
 (2015年 日本映画) 前半30/100 後半74/100点


<ネタバレあり、です。>


往年のパトレイバーファンですけれども、「実写化」にはとても懐疑的でした。
なにゆえ「実写」にせねばならないのか。
恐らく潤沢な資金があるわけではないだろうし、どうせ低いクオリティになっているに決まっていると。
ハリボテのような等身大イングラムがお披露目されるというイベントが、かえって痛々しく…
そもそもテレビドラマのようなものを「1章」~「7章」まで分けて劇場で流す、という企画自体が正気と思えないのです。

誰が観に行くんだろう…・

とはいうものの、長年の付き合いっつーもんもありますし、この度、シリーズ最後の長編である本作「首都決戦」は観ようと劇場へ。
なにげに押井守監督の新作の長編映画でもあるわけだし。

それで観に行きました。

というわけで。

はい。想像以上でも以下でもありません。期待値を低くしていたものだから意外に良い面を見つける事ができたよ、というネガティブな結果でありました。

ほーらねー。

言わんこっちゃない。

首都決戦4


とにかく前半が最悪です。
観ていられません。映画鑑賞史上初めて、席を立とうかと思ったほどでした。
いろいろと話が唐突だったり、見えなかったりしたのは、本作のプロローグである「7章」を見ていないからかもしれません。
しかし。
やはり思うのです。
アニメーションでは許される描写や適切な間の取り方でも、実写になると途端に安っぽくなったりすることがあるのだと。
それを意識できずに映画を作ると、とても痛い事になるのだと。

本作は、見事にその罠にひっかかっております。巨匠・押井守がそのことに気づくことが出来なかったのが残念でなりません。まー、これまでの押井守の実写作品を見ていれば十分に推測できることだけれども。
「制作費さえあれば、ロード・オブ・ザ・リングくらいなら簡単に撮れるよ」…などと、どの口が言うたものか! 現在、公開が待たれる押井守の最新作『GARM WARS the last druid』への期待値がさらに急落することになるのでした。

ふう…。

本作は、名作「機動警察パトレイバー 2 the Movie」(以下、P2)の続編のようでもあり、リブートでもあります。P2と同じBGMで始まり、物語の流れもP2をなぞっています。同じカットも多数出てきます。
しかし、本作の前半を恐ろしくつまらなくしているのは、会話シーンの恥ずかしさであります。
P2の時には、後藤隊長と荒川の長々しい会話が妙に印象的で、深みがあるように思われ、聞き入ることが出来たのに…本作での後藤田隊長(筧利夫)と公安三課の高畑(高島礼子)の長ったらしい会話は背筋が凍るほどつまらないです。カッコ付けの難しいセリフが、完全に浮わついちゃっててカッコ付いていないのです。高島礼子演じる高畑が、突如「正義って何?」…なんて問い始めるのが寒くて寒くて。会話シーンが「実写向け」にリアル化されていないのだ…と思います。おまけに時間の関係か予算の都合なのか、単純なカット割りばかりで本当に安っぽい。アニメの方の劇場版では、非常に印象的で特徴的だった押井守の作家魂に溢れた演出など、一体全体どこへやら。

その他の会話で言うと、福士誠治演じる佑馬の軍事オタクな説明セリフも面白みがなく。
乱暴キャラである大田原勇の非日常的すぎる元気の良さも、見ていられないくらいイタいです。多少過剰な方が映画として印象的なのかもしれませんが、実写にするからには、最低限のリアリティは人物描写に不可欠だ…と思うものの、実は同じく元気な千葉繁演じるシゲさんは素晴らしかったので、演じる人の力量なんですかね…?

pato.png


さあて…。

あんまり悪口ばっかりなのも良くないので、少し褒めます。

後半になると、アクション場面が増えていきます。
これが…そこそこ、頑張っています。
テンポが急に良くなるし、川井憲次の音楽は盛り上げるし、何より音響が凄いです。
特に、おそらく軍事マニアなこだわりなのか、銃撃の音響が相当に迫力があるおかげで、中盤での銃撃戦には鳥肌が立ちました。そして、ややネタバレしてしまいますが、最期の闘いの場面、橋の上でのイングラム(劇中に出てくるロボットのこと)と敵側の戦闘ヘリと戦闘能力の高い女性陣による銃撃シーンの顛末には、爽快なカタルシスを感じました。これは良かった! 

前半で、かなり本作の面白みに絶望感があったので、後半でのドッカンバッカン描写には大いに救われましたよ。

が、しかーし!

これがまた、本作最大の残念な部分を際立たせることにもなるのです。それは、本作には、全くもって緊張感がないということ。

もし、本作に「緊張感」があったならば、終盤の展開を、もっと面白く観れたに違いありません。

しかし、本作には「緊張感」が皆無です。東京都内で、擬似的とはいえ「戦争」が勃発してしまうという緊急事態が起こっているというのに、驚くべきことに「緊張感」がないのです。

こ れ は 痛い…。

首都決戦5


一体どういう意図なのでしょうか。

透明で撃墜不可能と思われる最凶の戦闘ヘリが、次々と東京の印象的な建物を破壊しているのに、犠牲者の描写など皆無だし、きっと恐怖におののいているはずの都民の姿もあまり見かけません。別に残酷描写が見たいわけではないけれど、そのために、ちっとも「恐怖感」がないのです。「崖っぷち感」もないのです。当然、「やっつけたれー!」という高揚感もありません。
これは、P2でも同じでした。
しかし、P2では、「驚くべきほどリアルなニュースのアナウンス」「幻の爆撃シーン」「都内での自衛隊の出動シ-ン」などによって得体の知れない空気が作り出され、犠牲者描写なくして、見事「緊張感」を漂わせていました。

本作には、何もありません。
高畑が、捕獲したテロリスト達から情報を得るために容赦なく銃撃し、恫喝する描写は頼もしいのですが、いかんせん、そこまでの緊迫感がないものだから、過剰捜査に見えて仕方ありません。

そう。

前半から、コツコツと緊張感を溜めていかねばならなかったのに、無駄な会話描写にかかりっきりだったせいですよ。

大失敗だと思います。

その他にも、すでに各方面から言われているように、主人公である泉野明と戦闘ヘリの天才パイロット・灰原の対決の動機がうっすいです。ゆえに、明が灰原の心理を読んで作戦を立てる展開も不可解です。その他の敵側の動機もうっすいです。おまけに、敵側はいずれ大人しく投降する企てなので、泉野たちが命を賭けて止める意義もありません。灰原の正体の衝撃的な設定も唐突…けど、そのイメージ自体はワクワクするものなので、もっと活かされていたら…と残念です。

 首都決戦2


上映時間が90分と短いせいなのかと思いきや、大傑作のP1もP2も、2時間ない時間の中であの濃さだったワケだから…こうなってしまうと、押井守の演出力の退化を感じずにはいられません。

せっかくのパトレイバーの復活だというのに…。
押井守がパトレイバーに還ってきたというのに…。

あの頃、凄まじい物語の先見性と神がかった演出とハイレベルな作画に驚愕した歴史が、再び繰り返されることはなく、幕を閉じました。

噂では、興行成績は散々だそうです。

…。

当たり前だ!


名作「機動警察パトレイバー the Movie」の感想はこちら。

傑作「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の感想はこちら。


   

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Posted on 2015/05/06 Wed. 00:38 [edit]

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06

コメント

やっぱりそーなっちゃいましたか(-ω-) 

とてもよいレビューでした(≧▽≦)
管理人さんのレビューから4つの〝真理〟を感じました

①漫画原作をコピー&ペーストすると実写じゃつまらない
 漫画の映画化、という奔流は止めどないようで最近でも「マンガの~~がついに映画化!」という宣伝をみるたびに、「うわぁ・・・」という嗚咽が漏れます。猫も杓子もマンガ原作に便乗しすぎて、もうガンジーでも助走つけて殴るレベル・・・ええ加減にせい、と。(-ω-)

②AとBは全然ちがう 
・マンガとして面白い表現と映画としておもしろい表現は全然ちがいますよね。
・勉強ができることと仕事ができることも全然違う。鳩山さんが東大で安倍さんは成蹊大学だったり。
・有名芸能人を国会議員にしてみたり、ラノベ原作者をマンガ原作者にしてみたり

世の中「AとBを混同してしまう人」が多いと思います。
マンガの映画化はその最たる例ですね(むしろ自分も漫画は大好きなんですけど)
多少はあっていいと思うんですが、それが年間ランキング上位を占めてメインストリームの一角を担うようになったら業界としてお終いです。

なぜならクオリティで勝負せずに、知名度のゴリ押しになってしまう危険があるからです。それに金をだす客も悪いんですが。。・゜゜・(≧д≦)・゜゜・。

③素晴らしい天才でも大御所化すると劣化する
 押井監督・・・過去にすばらしい作品を創ってくれました。天才の名を冠するにふさわしいクリエイターでした。
 しかし、もう今は押井守と同姓同名の別人。どこにでもいるおっさんになり果てましたね。
 映画監督でもマンガ家でも芸能人でもなんでも、大御所化すると全盛期のキレを失って劣化するという印象です。なぜならクオリティの低い仕事をしてもネームバリューで客は金をだすから・・・。(結局そこなんですよね)( ̄□ ̄;)!!

④言うは易し するは難し
>>「制作費さえあれば、ロード・オブ・ザ・リングくらいなら簡単に撮れるよ」

~~くらい簡単につくれるよ系はいうだけなら簡単。するのは至極困難。

URL | 富士 #VWFaYlLU | 2015/05/10 07:56 | edit

富士 様 

コメントを頂戴しありがとうございます。

漫画を原作にしてはいけない、ということはないんですけど、
実写化するなら、リアリティを出さないといけないと思うのですよ。
ただ、原作ファンは、キャラクターの似てる似てないを意識するから、
似せないといけないんでしょうけれど。

押井守の劣化は残念でなりません。
演出力は確実に落ちてると素人ながら思います。
イノセンスの時から、特殊技術に走り過ぎて、
大事な映画の部分をないがしろにしてしまっている、
というか。

あと、有能な脚本家を手放したのが痛い。
押井守は脚本の力はあまりないと思っています。
「映画」になっていないから。

宮崎駿も決して脚本力があるわけじゃないけど、
神がかり的な演出力があるからカバーできていると思いますが。

次回作の「ガルム~」も予告編から地雷臭が漂っています。
人の表情の動きの撮り方がなんか変…。

アニメに戻ってきてよ!



URL | タイチ #- | 2015/05/10 22:07 | edit

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  # | 2015/06/01 04:35 | edit

ドラピー 様 

コメントを頂戴しありがとうございます。

私も押井ファンですが、最近の押井守の映画には全くノレないでおります。
私は、話が小難しくても構わないと思います。
けれど。
かつての素晴らしい演出力が全く見られません。
話が小難しいだけ。小難しい物語をうまく演出できていないのは、滑稽です。観ている方が恥ずかしいです。

CG技術ばかりが先行しているようです。

作家性の強い人だからこそ、新しい技術・表現を見出したいのかもしれません。

しかし、そのためなのか、逆にCGを使っていない画面が手抜きと思えるほど陳腐で仕方ないのです。

それを今回の劇場版で痛感しました。

1回、原点に戻ったらいいのじゃないだろうか…。

URL | タイチ #- | 2015/06/01 23:26 | edit

 

「一緒に作りたがる職人」がいないってのは、
つまりそれが現在の押井のひととなり人望ってことなんだけどね。
久保さんの件から察するに、まだまだ沢山不義理をしてそうだもんな
僕がアニメを作らないのは」て主語がずれてて「作らせてもらえないのは」じゃないのかなぁって。
だって2011年か12年頃に本人が「押井は金がかかるみたいなことを言われててなかなか作らせてもらえない」とか最近では「アニメ映画そのものが業界で減った」て言ってるんですよ。
で、この言い方。
あー、もう自分の言ったことを忘れちゃう歳なんだなぁと思ったのです

URL | まどかマギカ #- | 2016/05/29 08:42 | edit

まどかマギカ様 

コメントを頂き、ありがとうございます。

「ガルムウォーズ」も案の定不評のようで…残念です。
押井守には、早くアニメに戻って欲しいと思いますが、
才能のある人ほど、同じことを繰り返さず、
新しい技術、表現方法を模索してやまないのかもしれません。
そんな呪縛に絡め取られ、成功するまで突き進んじゃうという…。
この「自己満足」に、たくさんのお金が動いているのが凄いです。
まだまだ、ネームバリューの威光が衰えないのですねえ。

言ったことがコロコロ変わるのは、天才にありがちのようですが、
作品が良くなければ、ただの困ったちゃんですからねえ…。

それにしても。 
君の実写はかなりマズイよ! って、周りの人は誰も言わないのかな?

URL | タイチ #- | 2016/05/29 14:25 | edit

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