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レッド・ファミリー あまりに過酷な家族コント。 


 レッドファミリー
 レッド・ファミリー
 (2013年 韓国映画) 79/100点


軽快なコメディーかと思っていたのですよ。

「韓国国内で暗躍する北朝鮮のスパイたちが『疑似家族』を形成している物語」なのですが、OPで仲睦まじいおじいちゃん・妻・夫・娘の4人家族が登場したかと思ったら、自宅に入るやいなや、美しく優しそうな妻の顔色が一変。直立不動のおじいちゃんに蹴りを一発。続いて夫にも一発、そして娘にも一喝して「お前らたるんどるぞ、コラ」と戒めます。実は、「妻」を演じている女が、この『偽の家族』であるスパイ一味の班長なわけですな。その豹変ぶりが面白くて、結構愉快だったのです。昔観た明石屋さんまの軍人コントを思い起こしました。「貴様それでもニッポン軍人か!」ってやつ。
そんなノリ。
結構、軽い感じ。
それで、面白く観れそうだなーと…油断した我々を、はいズドーーーーーーン!
奈落に落とします。
考えてみればキム・ギドクの脚本なわけで。優しい展開なわけないのです。(監督はイ・ジュヒョン)

恐ろしいほどの物語の振り幅です。
観客を、振り落とす気満々で揺さぶってきます。

そこが本作の良さというか欠点というか。賛否ある部分なんだと思うのです。

レッド


個人的には、もっとエンタメに徹したら良かったのに・・・と甘いのを承知で、そう思ってしまいました。
それだけ、序盤の「笑いの掴み」が素敵だったのです。

このスパイ一味と隣人家族との関係性も面白くて。
隣人一家はとにかく夫婦仲が悪く、それで家族でいつも揉めています。その争う声がスパイ一味の家にも聞こえてくるや否や、班長が「ほらみろ、これが資本主義の限界だ!」と批判し始めます。隣人の散財にも班長閣下はお怒りの様です。「堕落しとる」と。このカルチャーギャップ感が愉しいわけです。
隣人家族との食事会で北朝鮮問題の話題になった時、批判的で侮辱的なことばかり言う隣人に対し、スパイとしてのプロ根性ゼロの猛反論。「何気にお宅は親北派なんですねえ…」って言われちゃうなんて、もー素敵なゆるさ。

…なんですが、ズズーーーーーーン!と重たい空気がすぐに舞い込みます。

考えて見れば、本来、コメディーにできるわけのない題材なのです。
ブラックコメディーにもなりえない過酷な事情が、このスパイ一味には課せられています。彼らは皆、本国で本当の家族を人質にとられているのです。家族との再会を夢見て、彼らは祖国からの指令に従っているに過ぎません。

すなわち、どう考えても逃げ場ゼロ。
…私は、途中から、この物語をハッピーエンドにするにはどうしたらいいのかと考えあぐねいていました。
まるで浮かびません。そして、結末への嫌な予感がじわりと滲んでいくのです。

レッド2


さて。

彼らが祖国から命じられるのは「脱北者の暗殺」です。

彼らは、脱北者を否応なく始末していきます。
脱北者の家族は、子供でも容赦されません。
物語が中盤に差し掛かる頃、ある過酷な指令が彼らに降ります。正視に堪えないほどの残酷な指令です。
その頃から、物語の中の「笑い」の要素は薄らいでいき、彼らの心に少しずつ「疑問」が差し挟まれていきます。
「こんなことが正しいのか」という「疑念」です。
それは、彼らの祖国への忠誠心を揺らがせ、次第に心を弱くしていきます。それにつれて、家族を想う気持ちは急速に強まっていくのです。
何だか…中盤以降、ずっと彼らは泣いているようでした。あまりに過酷な境遇なのだから当然とはいえ、ちょっと湿っぽい描写が多過ぎるような気もします。班長も早々に「弱さ」を露呈しますが、物語の効果としては、もうちょっと終盤まで堪えてもらった方が良かったように思うのですが。

いったん頭がコメディーと感知しているものだから、急速な涙の展開に付いていきづらいのは確かです。
おまけに、彼らはどこか頼りない雰囲気でありながら、「資本主義の堕落した者など簡単に痛めつけられる格闘術」に長けていて、隣人家族を困らせる「悪者」を時に痛快にやっつけたりするものだから、このまま爽快に終わってくれればいいのに…と思わせるのですが、ドドドーーーーーーン! もう疲れてしまいます。

ついでに言うと、班長役のキム・ユミが滅法に美人で、それが物語をファンタジーにさせていることもあり、それもまた、この現実的な展開にはミスキャストのように感じます。

とにかく、コメディーとシリアスのバランスが悪い…というか、観ていてつらいものがありました。

レッド4


<若干、結末に触れます>


本当の家族に会いたくても会えない彼らは、いがみ合うダメな隣人家族をうらやましく思い始めます。そして、自分たちの叶わぬ夢を託すかのように、隣人家族をある事から守り抜こうと決意するのです。

彼らを最大の危機に陥れるきっかけが、なぜかコメディーチックなまでに非現実的なのがまたアンバランスで、それから至るとんでもない悲劇が残念でなりません。ファンタジーでも、無理やりでもいいから、素敵な結末にしてほしいと最後まで願ったものです。
一つ思い付いたけれど、彼らと同じように南に染まった監視役の男(野うさぎ)の弱みにつけこんで、祖国に嘘の報告をさせるとか…ダメかな…?
しかし、そんな我々の願いもむなしく、物語は最悪の結末に突き進んでいくのです。

最後の最後に、彼らは一世一代の即興の家族コントを披露します。
彼らの「家族」への気持ちが痛いほど伝わる名場面なのですが…もはや、あまりに残念で涙も出ませんでした。

あっけにとられるといいますか…。

その刹那。
切望してやまなかった「家族」への想いが炸裂し、彼らは一瞬だけ「本当の家族」になりました。
それが、許された唯一の奇跡だとしても、後には、祖国に残された本物の家族の永遠の悲しみが始まるのです。


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Posted on 2015/05/12 Tue. 20:34 [edit]

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