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隠し砦の三悪人 エンタメの原点にして、最高峰。 


 三悪人
 隠し砦の三悪人
 (1958年 日本映画) 90/100点


『スターウォーズ』の続編が12月に公開されます。だから…というわけではありませんが、その『スターウォーズ』に影響を与えたと言われる本作は、言わずもがな、黒澤明監督の冒険アクション時代劇です。

もちろん、かなり古い古い昔の映画です。
けれど、これがどうして。

決して『古い』などと敬遠出来ない傑作だったのです。いや、本当に。古臭くない…どころか、「新鮮さ」さえ感じる場面がいくつもあって驚きます。はっきり言って、現代の邦画アクションよりも迫力のある映像だったりするものだから、まいってしまいます。絵作りにしても、カメラの動きにしても、随所に遊び心が盛り込まれていて、嬉しくなるほどのハイセンス。黒澤明は、やはりすごかった!


あらすじは、「戦に敗れた秋月家の雪姫とその家来・六郎太は、隠していた財宝を抱えて同盟国領に逃げ出そうと目論む。欲深い百姓二人を金で誘い、奇抜な作戦で脱出を図るが、敵の山名の軍勢がいたるところに関所を設けていた…」というお話。

隠し砦


黒澤監督は、「映画とは、時間を描くことだ」と表現しました。「時間とは、すなわち動きである」と。
本作もしかり。キャラクターたちが、とめどなく躍動しています。決して大げさに感じない、それでいて印象的な動きで魅せる登場人物の面々。ちょっとでも役者が自分のイメージに合わない動きをしたらカメラを止めるという、完璧主義の黒澤監督は、きっと計算に計算を重ねて演出していることでしょう。実に小気味よくキャラクターは動きまわります。振り向き方ひとつに、こだわりが感じられます。

OPから現れるのは、本作の狂言回しの役割を持った二人のお百姓さん。太平と又七。前述した『スターウォーズ』では、C-3POとR2-D2というロボットキャラに置き換えられていました。冒頭から喧嘩をしながら、だだっ広い荒れた平地を歩く姿がとても印象深いです。この直後、一人の侍が眼前でひどい死に方をするカットが凄いものです。無数の馬が、横たわる死体役の役者のすぐそばを駆け抜けます。ヒヤリとします。さすが黒澤監督のきわどい演出…と思いきや、後日談によると、実際馬に頭を蹴られているんですって! わちゃー!

さて、話を戻して、この太平と又七。百姓の二人ですが、大層に欲深いです。『七人の侍』でも、百姓の狡猾さが描かれていましたが、この二人も残念なくらい信用なりません。最後の最後まで、利己的で愚かで、道中の苦楽を共にした雪姫と六郎太を平然と裏切ります。ただ、その裏切りはほとんどうまくいかないものだから、「滑稽さ」を感じるように描かれてはいますが、終盤まで延々とそれが続くので、いい加減イライラしてきます。六郎太が最後まで彼らを仲間として受け入れた意味がちょっと分かりません。また、十分な金を拾い集めているにも関わらず、「まだまだ、もっともっと」と敵の追手を気にしない姿は、「舌切雀」とか「こぶとりじいさん」とか「おむずびころりん」等の日本の昔話によく出てくる強欲ジジイそのものなのです。子供のように金の取り合いをする姿も笑えないくらい醜悪でした。だからこそ、最後の最後での「成長」が印象深いのかもしれませんが。

隠し砦2


それとは真逆に、雪姫に忠義を尽くすのは真壁六郎太(三船敏郎)です。裏切要素ゼロで雪姫を護衛する姿は相当に頼もしく、ノースリーブにも関わらず、こちらは本物のワイルドなのです。ただし、彼は忠義心が強い余り、自分の妹さえ犠牲にすることで、雪姫から見下げられてしまいます。利己も忠義も、ほどほどが良いということ。余計なことを言うと、彼にとっては「忠義」が「金」よりも価値が高いということであり、ある意味、太平らと同じように「強欲」とも言えるのです。この場合、「強情」と言った方が良いのでしょうが。
さて。
彼は、凄腕の剣士ですが、馬術も相当なもの。彼が馬で敵を追い、切り捨てる場面のスピード感たるや、昨今の映画でも見当たらない程凄まじいです。剣を構える為に、両手離しで馬を走らすってそんな…監督が無茶苦茶やらせているに違いないと思うと、いろんな意味でハラハラします。兼ねてから黒澤への不満を抱えていたという三船敏郎ですから、キッと剣を構えながらも「殺す気かー!」という心持ちだったかもしれません。

隠し砦4

隠し砦5


さてさて。続きましては雪姫(上原美佐)です。本作の胆となるキャラクター。秋月家の命運を背負わされた哀しくも気丈な姫。演じる上原美佐は演技経験のない素人で、黒澤監督の大抜擢だったと言います。棒読み演技ではあるものの、セリフを過剰なほど張り上げる芝居が、姫の強さと、強がりさえも表しているようで見事な演出だと思いました。物言いは激しく、立ち姿は常に凛としていて大将としての貫録を見せつけます。六郎太や他の家臣がこそこそ話していると、フイに現れては画面中央を陣取り、正面を見据えて立ちはだかる姿が、指原ばりに「センターはわたしじゃ」と威勢を張っているようで、不思議な魅力の姫なのでした。
敵地を進むため、六郎太の作戦で耳の聞こえない少女を演じるくだりで(今じゃ差別表現でNGですが)、太平たちが、本当に耳が聞こえないものと信じ込み、姫の前で平然と裏切りの相談をしている場面が笑わせます。彼らの後ろで押し黙ったまま、「おのれら…」と胸の内に怒りの炎を燃やしているであろう姫の表情が絶品です。
しかしこの雪姫、顔に能面を模したメイクを施しているので、どこから見ても只者ではありません。六郎太は「身を隠すには人に紛れるのが一番」と町の中に入り込みますが、即座に注目を浴びております。通りすがりの遊び人と言いながら、大物オーラが隠し切れていない松方弘樹の遠山の金さんかと。

隠し砦3


これら魅力的なキャラクターたちが織りなす敵陣突破の道中においては、様々な機転が愉快です。一端、敵の領地に入り込んでから同盟国の領地へ抜け出す作戦や、源義経と弁慶の「勧進帳」をベースにしたような関所突破での「名案」も痛快でした。
また本作は、アクション場面の映像が迫真です。前述の騎馬戦シーンにとどまりません。
序盤で、群衆が階段を駆け下りてくる映像は、まさかの『ワールド・ウォー・Z』の大群ゾンビシーンに匹敵するような迫力で仰天しました。
六郎太と盟友・田所兵衛(藤田進)との一騎打ちは、見事な殺陣で見惚れます。
ラストの脱出では、鳥肌ものの逆転劇です。馬に乗った六郎太が仲間の娘を拾い上げて逃げ去る場面では、「最後のチャンスだ、すり抜けながらかっさらえー!(byドーラ)」と胸熱になるほどなのです!

隠し砦6


数多くの名場面が散りばめられた本作ですが、私が最も痺れたのはラストシーン。
雪姫が、お白洲にて太平と又七に正体を明かす場面です。
「わたしじゃ、オシ娘じゃ」の一言とともに、突如囃子(はやし)が鳴り響き、立ち上がった姫が脇にいる六郎太と歩みだすシーンの抜群のカッコ良さといったら! 
正体を知った太平と又七の呆けたリアクションもまた素晴らしいもので、まさに遠山の金さんに桜吹雪を見せびらかされたような衝撃。あまりのショックに、二人がいい人に成長するってのがご都合主義ではありますが。
とにかく最後の最後まで、嬉しくなるほどエンターテイメントに徹している本作は、実はあまりに娯楽性が強すぎるため、黒澤ファンからあまり評価されていないと言います。
しかし。
今の娯楽映画に通じる全てを含んでいるような完璧な映画と言っても過言ではありません。
黒澤監督のサービス精神に彩られた本作は、まぎれもない傑作だと断言します。


隠し砦7


  

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Posted on 2015/06/04 Thu. 12:29 [edit]

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コメント

 

お初です
三船さんが一対一での勝負の場面(お互いに槍)。
その殺陣シーン、かなり動きが不自然(おっかなびっくりでぎこちない)だと思いました
一度再視聴してみては?

URL | 通りすがり #- | 2016/03/01 12:24 | edit

通りすがり 様 

コメントありがとうございます。
やや脳内で補正しているかもしれませんね。
もう1回観てみます。

ただ、あの映画で好きなアクションシーンは序盤の暴動や
中盤の馬上の闘い、終盤の馬での救出場面です。

その辺りの迫力は凄かったと思いますよ。

URL | タイチ #- | 2016/03/01 12:27 | edit

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