素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

セブン それでもこの世は、大罪だらけ。 


 セブンa
 セブン (1995年 アメリカ映画)  90/100点


昔観た映画をおさらいしようシリーズ。今回は、1990年代の大傑作『セブン』です。気付いたら250記事目を超過していたので、メモリアルな映画という意味でも、本作をチョイスしています。間違いなく映画史に残る本作の「衝撃のラスト」は、今だに私の記憶にべったりとこびりついているのでした。

なんてったって。

ブラピが若い!
20年近く前ですから当然なんですが、こうも青二才な顔付きだったっけ!? と驚きました。
モーガン・フリーマンに立て付く場面なんて、「青っちょろい若造が、モーガンに勝てるわけないだろ」とイラつくほど、小生意気で勢いだけの青年を演じています。とはいっても、終盤で、同年代の有名俳優の中でも頭ひとつ飛び抜けた芝居を見せるところが、さすが世紀の大スターです。ちなみに、モーガン・フリーマンは今と全く変わりません。物心ついた頃からずっとお年寄りなのは、菅井きんさんにも匹敵なのです。

セブン1


というわけで、久しぶりの鑑賞でしたが、記憶の通りの大傑作でした。
二度目の鑑賞でも鳥肌が立つ緊張感。
全体に流れるじめじめして暗欝とした空気感。それを醸すのは、有名なOPシーンのみならず、特殊な技法で創られた独特の暗みを持つ映像美。
才気あふれる若造と疲れた初老の男のシニカルな対比。
悪寒が走るほどの異常殺人と、正気を通り越えカリスマ性さえ見せる犯人像。
無論、先が読めないストーリーも非常に興味を惹きつけます。

『エイリアン3』の失敗で埋もれてしまったデヴィッド・フィンチャーの起死回生の大出世作。
しかし、その先でフィンチャーは、『シックス・センス』のシャラマンのように「衝撃のラスト」を期待されるようになり、その後の作品『ゲーム』では、大層苦しげな結末をひねり出していましたね…。

あらすじは、「連続殺人が起こる。刑事ミルズ(ブラッド・ピット)とサマセット(モーガン・フリーマン)は、その犯行がキリスト教の七つの大罪に関係している事に気付く。」というお話。


<完全にネタバレします!>

セブン


もはや知らない人はいないと思いますが、本作のタイトルの『セブン』とは、キリスト教の定めた「七つの大罪」のことです。
事件の被害者たちは、この大罪を犯した(と犯人に見なされてしまった)人たちだったのです。
特筆すべきは犯人による被害者への異常ないたぶり方。目を覆うほど凄惨な手法で、犯人は罰を下しているつもりなのです。
…しかも、楽しみながら。

それぞれの事件を見ていきます。

<大食の罪:GLUTTONY>
初めに起こる事件です。大食漢の男がスパゲッティに顔を埋めて息絶えています。決して「恐竜が現代にいる」という賭けに負けたわけではありません。

のび太
(犯行のイメージ)


実際の映像はあまりにひどく掲載し難いです。虫が湧く室内、おう吐物が入れられたバケツ、異様に膨れ上がった被害者の身体…もう、序盤からしてこのグロテスクさ。どうやら犯人は、被害者のこめかみに銃を突きつけ、胃が破裂せんばかりに食事を強要していたようです。異様な事件の幕開けに、7日目に定年を迎えるサマセットは担当から外れたい旨を上司に伝えます。「この事件はまだまだ続く」と予感して。

大食が罪と言うならば、テレビ東京の「大食い選手権」も相当な怒りを持って犯人は見ていることでしょう。個人的にも、確かに、私もあまり好きではありません。美味しそうに食べていないので、食べ物を粗末にしているように見えるからです。しかし、小柄なギャル曽根が次から次にたいらげる様子を犯人が見たならば、「これは逆に『奇跡』なのかも」と考えを改めたかもしれません。ようするに、見栄えの問題なのかもね。


<強欲の罪:GREED>
二番目に発見された遺体は、有名な弁護士でした。あることないことを並べたて、犯罪者を無罪にして金を稼いだ罪でした。被害者は身体の一部を1ポンド切り落とすことを強要されており、強欲の金貸しの物語「ヴェニスの商人」になぞらえたことが分かります。その物語では、強欲の側は切り落とされる方じゃないので…ちょっと、趣旨をはずしているのでは…? とか思うんですけど、まー犯人も一生懸命考えているのでしょうから、よしとしましょう。

この犯行現場に残された絵画をきっかけに、犯人への手がかりが判明するという、ざわっと興味をそそる仕掛けがお見事です。先程の大食漢の犯行現場でも、後から新しい発見があるなど、本作は、止めどなくドキドキする展開が流れていくので、見ていて一切だれることがありません。


<怠惰の罪:SLOTH>
のびた2
(この罪の一例)

さきほどの「強欲」の犯行現場で発見された指紋から、一人の容疑者・ビクターが浮かび上がります。早速、特殊部隊とともに犯人の家屋に乗り込むと、そこではベッドに縛られたまま、ミイラのようにやせ細ったビクターが発見されるのでした。何てひどい死に様だ…と思わせておいて、ビクターが突如動き出します。捜査官の一人がビクターに顔を近づけるから、もしや…とは思ったものの相当にびびりました。しかし、生きていたとはいえ、地獄以上の苦しみがこれから待っているとミルズたちに告げる医師。生きている事に何か意味があるのかと言えば特にありません。エンタメとして、ショッキングシーンを入れたのだと思います。けど、効果的です。いよいよもって犯人の異常性を印象付け、口をつぐんでしまう程の「恐怖」が映画全体を支配していきます。

怠惰な生活を送っていたビクターに、「だったら好きなだけ寝ていろ」という罰が与えられたのでした。先程ののび太氏も対象になりかねないと思われますが、彼が0.93秒で眠りにつける世界記録保持者だと犯人が知ったならば、「これは逆に『奇跡』なのかも」とまたしても考えを(以下、略)

セブン3


さあ、ここまでは犯人が好き放題に犯行を続けていますが、ミルズとサマセットも指を咥えているわけではありません。
サマセットは、犯人が実に巧妙に「7つの大罪」を犯行に組み込んでいることに気付き、違法な手を使い、図書館の利用者リストを手に入れます。そして、「7つの大罪」に関する本ばかりを借りている一人の男を突き止めるのです。本作で唯一犯人にひと泡吹かせることに成功する瞬間でした。
とはいえ、すぐにカウンターを食らうんですけどね。
訪れた男の住処の玄関口で、ふいの銃撃を食らうミルズとサマセット。本作は重厚なアクションシーンも実に期待通りに魅せます。知識ばかりが膨れ上がっている奴かと思いきや、意外にすばしっこく逃亡し、嫌な待ち伏せ方をするので、ミルズは翻弄されっぱなしです。腕を折られ、散々な目に合った上に取り逃がしてしまいます。

激しい雨がとても印象的で素晴らしいシーンなのですが、その雨に足を滑らせ、撮影中に本当に腕を折ってしまったブラピ。ここまで映画と同化するとは、これも、スター性の一つなのかもしれません。


<肉欲の罪:LUST>
この事件も凄惨です。娼婦の客の下半身に刃を付けた<ピー>を装着させ、娼婦の<ピー>に<ピー>させて、<ピー>するまで<ピー>なのでした。これは、ひどい…。どうせならリア充なんかに焦点を当ててほしかった。
客の男は、取り調べ室で狂ったように繰り返します。「ああ…神よ、神よ、お助けください…」と。


<高慢の罪:PRIDE>
美貌を誇る女は顔面を傷付けられ、片手には電話機を、片手には睡眠薬を持たされました。しかし、電話で警察を呼び、無残に変貌した顔を見られる事にプライドが許さなかった女は、睡眠薬で自害に至ったのです。
塩対応なんかと言われている某アイドルも危ういかもしれません。しかし、彼女たちは厳しい芸能界を生き抜くために、必死にキャラ作りをしているのでしょうから、大目に見てあげてほしいです。その代わりと言ってはなんですが、彼女らのボスなんかは、7つのうち4つくらい当てはまっている気がするので、どうぞ。

セブン4


残る罪は二つ。「嫉妬:ENVY」と「憤怒:WRATH」です。
しかし。
手がかりを完全に失っていたミルズとサマセットの前に、血まみれの姿で犯人のジョン(ケビン・スペイシー)が出頭してくるのでした。
これには驚いた。
「犯人が誰か」とか、「どうやって追い詰めるのか」という展開は早々に打ち切られ、「犯人の狙いは何か」に焦点を絞った展開が、突如として始まるのです。
つまり、まだまだ犯人の攻撃ターンが続くというわけです。
それはある意味、この時点で「時間切れ」を宣告されたに等しく、刑事側の勝利の可能性が薄れてしまったことを意味します。

セブン5


「他の二つの遺体があるから」と、犯人のジョンに導かれた場所で、一体何が起きるのか。音楽の盛り上げも素晴らしく、得体のしれない緊張感はうなぎ登り。一台のバンが疾走してきた時には、息も忘れるほどの食い入りようでした。

そして。

ミルズとサマセットは、この世の地獄を見ます。

ラストに見せるブラット・ピットの素晴らしい演技力。妻を殺された男の「憤怒」の感情と、刑事である「正義」の感情が入り乱れて苦しむ姿は、心の奥底にまで深く印象を残しました。

ただ、公開当時に鑑賞した時にも思いましたが、犯人・ジョンがミルズの夫婦関係を羨ましく思ったから、「私にも『嫉妬』の罪があるのだよ」と言って、今回の犯行の狙いを完成させようとしたのは、こじつけ過ぎじゃないかなあと思うのです。おおよそ「嫉妬の罪」に見合う標的がうまく探し出せず、何とか考えを巡らせ、「よし! この手でいこう!」とやっつけ仕事に走ったように思います。この事から、ミルズは無理にしても、サマセットは犯人を嗤ってやれば良かったのです。「設定に無理ありすぎんだろww」と。たぶん、ジョンは地団太踏んで悔しがったはずですが。

セブン6

それから…。

巷には、<サマセット共犯説>という衝撃的な深読みがあるそうです。
その説を読んでみると、確かに「なるほど」と思える部分に気づかされます。
・犯人とサマセットが互いに厭世的であること。
・退職の七日前に七つの大罪に絡んだ事件が起きたこと。
・時折サマセットが殺気立ってナイフ投げをしていること。
・犯人の犯行が単独では難しいこと。
・犯人がなぜかミルズの妻の妊娠を知っていたこと。妊娠を知っているのは、ミルズの妻とサマセットだけだったはず。


と、いろいろとあるようです。
中でも面白いのは以下の話。キリスト教の大罪には、本来あと「憂鬱」と「虚飾(外見だけの飾り)」がある。ミルズの妻はたえず「鬱気味」だったので、「憂鬱」の罪を負った。残る「虚飾」も、きっと物語の誰かがを負っているハズである。となると、残ったキャラクターはサマセットしかいない。つまり、サマセットは「刑事」という「虚飾」を背負って犯罪を犯していると推測される、というお話。…面白いですなあ…。

私個人としては。
サマセット共犯説は実に面白いけれど、やはり違うと思います。
あえて、犯人と思わせようと演出している様子はあります。
しかしそれは、一つはミスリードというやつに過ぎません。
それともう一つ。
たとえ考え方で犯人と似ている部分があるとしても、サマセットは本作の良心として存在している、と私は思います。
この世の者たちのあまりの堕落に嫌気がさしても、犯罪者になる者もいれば、そうでない者もいるということです。その境は、犯人とサマセットから感じ取れる通り、とんでもないほどの溝があるのです。そしてそれは、ある意味このどうしようもなく後味の悪い物語の、唯一の救いなのだと思います。サマセットは、犯人と似た考えであろうとも、最後まで犯人・ジョンを理解しませんでした。ヘミングウェイを引用し、「戦い続ける」と決意するのです。それは、どれほど世の中が愚かであろうとも、今回のようなやり方で人を罰する仕業は決して許されはしないと、犯人を断罪していることに他なりません。それがあるからこそ、本作のエンディングの先にあるであろう本当の結末に、救いが見い出せるのです。そう。犯人は思惑通りに犯行を達成しましたが、決して、その先の世の中は、犯人の思った通りにはならない。犯人の名が歴史に深く刻まれ、一部で神のご意思だったと崇められることもなく、ミルズの言った通り、「せいぜいワイドショーで騒がれて2週間」の事件で終わる。そう。アンビリーバーボーで再現される程度の事件として落着するのだと、そう予感させるのです。

それは…ほんの少しの…小さな小さな、刑事側の勝利だと思わないでもないのです。

セブン2


  

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Posted on 2015/07/07 Tue. 23:26 [edit]

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