素人目線の映画感想ブログ

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バケモノの子 「冒険活劇」を見たかったのに! 


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 バケモノの子
 (2015年 日本映画)  75/100点


「冒険活劇」
このキャッチコピーに痺れました。さすがポスト・宮崎駿と称される細田守監督。よーく観客のニーズが分かっていらっしゃる!
そう。
我々は『天空の城ラピュタ』のような「冒険」が見たいのであります。
女の子同士がうじうじと青春の憂さを晴らすような『思い出のマーニー』なんか、望んでやしないのです。
マーケティング能力に限界が来たジブリになり替わり、細田守監督が「活劇」を作ると宣言した時には、何ともワクワクしたものです。
どんな壮大な冒険が繰り広げられるのだろうかと!

満を持して、本作を鑑賞したのであります。

…。

まあまあだったかなあ…。

いやいや、クオリティが高いのはよく分かります。
面白いなー面白いなーと、序盤くらいはのめり込んでいたような気がします。
が。
何となく…『ベイマックス』のような面白みなんですよね…。

キャラクターの面白さで押し切ってしまっているというか…。
キャラクターが織りなす笑いのワンポイントの積み重ねに過ぎないというか…。

それと、よく思い返してみると…あれれ…? さして「冒険」してなくない?


あらすじは、「一人ぼっちの少年・蓮が、バケモノの街「渋天街」に紛れ込む。そこで出会った熊徹に弟子入りした蓮は、徐々に力を付けていく。しかし、17歳になった蓮は、偶然にも人間界に再び足を踏み入れるが…」という物語。

バケモノ2


本作の見どころの全てと言ってもいいくらい、蓮と熊徹の掛け合いが愉しい本作。
基本的にいがみ合う二人は、王道パターンにのっとって、徐々に絆を深めます。
熊徹のもとでの修行で、徐々に力を付けていく蓮。
17歳に成長し、人間界で楓という女子高生と出会い、勉強の楽しさを覚えます。
蓮と疎遠になっていく熊徹は、寂しさを感じ、力を失っていくかのよう。
そんな中、街の長を決める武道大会が開催され、窮地に陥った熊徹に、観客席で観ていた蓮は心の限りの声援を送るのです。

…。

この物足りなさは何なのでしょうか。
あらすじのような感想しか思いつかない。
母親を亡くしたトラウマから、心に闇を宿し、胸の内にどす黒くぽっかり空いた穴を抱えた蓮と同様に、私の心にもいつしかぽっかりと穴が空いていくような気がしたのです。

巷では、絶賛の声も聞こえる本作ですが、正直に言うと、物語の途中で私は完全に集中を失っていました。

期待したものとは、ほど遠かったからだと思います。
勇気を出して、その原因をあげていきたいと思いますので、本作が好きな方はご覧にならないでください。


<それと、ネタバレで書いていきます。>


<蓮はなぜ修行をしているのか?>
動機がいまいち不明です。なぜ彼は修業をしているのか。活劇であれば、その動機が必要ではないでしょうか。目標もありません。結局行くあてもなく、やることもないから修行しているようにさえ思えます。しかし、蓮は強くなっていきます。不思議なことに、蓮には武道の才能があったのです。なぜなら、熊徹にしっかり教え込まれている場面が見当たらず、ほぼ独学で学んでいるからです。父親の背中を見て育つかのごとく、蓮は熊徹を観察する事だけで強くなっていくのでした。酔拳のジャッキーが見たら仰天しかねません。厳しい修行などないのに、彼は、バケモノに勝るほどの力を付けるまでに至るのです。そしてその力を、別段何に使うわけでもなく、クライマックスを除けば、人間界のヤンキーをボコボコにするくらいにしか発揮しないのです。なぜ、彼は強くなろうとしたのか…。修行シーンは面白おかしいシーンの連続なので気づきにくいのですが、ふと気づくと、この人たち、何やってんだろう…と冷めていく私がいたのです。

<熊徹は本当に強いのか? …ってか何者なのか?>
街の長の候補である二人の中の一人ですから、相当な力の持ち主であると思われます。が、そういう描写が見当たりません。ただ、人づきあいが苦手な乱暴者。といっても、その描写もあまりなく、ひたすら怒鳴り散らしているくらいです。バックボーンがないので、彼が何故独り者なのか、何故心の中では「息子」を欲しているのか、何故、長になりたいのか…よく分かりません。

つまり、主要人物二人が、いったい何がしたいのかがさっぱり分からないまま、物語ではただ修行しているだけ。それも、何故強くならねばならないかも分からないままに。ゆえに、緊張感もなにもない日常が描かれていくのみなのでした。

いや、二人の成長物語だから…というならば、「冒険活劇」なんて言ってもらいたくなかった!

バケモノ3


<まさかの『思い出のマーニー』現象>
蓮は17歳になって、いったん人間界に戻り、そして楓と出会います。
そこから二人は傷をなめ合うかのごとく、抱えた悩みを打ち明け合うのです。あらあ…。それ、『思い出のマーニー』で見たよ…。そして深い闇を吐露した蓮は、楓にきゅっと抱きしめられてすぐに平静を取り戻すという、思春期の男子の単純さをここぞとばかりに発揮します。つーか、リア充ですね…。本当の闇を教えてあげようか…。おまけに、これ見よがしな「壁ドン」や、説明的な「落ち着いたよ、ありがとう」というセリフも、ちょっと陳腐ではないでしょうか。この部分に、監督の「受け狙い」というあざとさが見え隠れしたような気がして落ち着きません。


<心の闇ってなんだ?>
前述したように、蓮は闇を抱えています。そして、彼と敵対するに至る一郎彦(彼もまたバケモノに育てられた人間です)にも闇がありました。二人とも、身内をなくしたという共通点があります。しかし、蓮は熊徹や仲間たちに囲まれ、一郎彦にも、親代わりの優しいバケモノの家族がいます。育ての親では物足りない…ということもありましょうが、「闇」を宿すまでのいきさつが不明で、「親がいないと闇が宿るのは当たり前だよね」と言わんばかりです。あまりに唐突です。ひょっとして、「親不在」ということではなく、人間の少年は17歳くらいになると必ず闇を宿すんだ、ということなのかもしれません。とすると、その闇とは、そう「反抗期!」

ええええええ!?

つーことは、行儀よくマジメなんて糞くらえとひねくれた二人が、夜の渋谷の車や建物を壊して回ったというのでしょうか!?

冒険活劇のラスボスが、まさかの「反抗期」! ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」が物語に絡み、楓が「船長にとって白鯨は自分を映す鏡だ」と言っていたように、物語の真の敵は蓮たち自身の「青春のうずき」なのでありました。
ついでに言うと、一郎彦は、連と楓の仲むつまじーい様子を目撃したところ、さらに闇を増幅させたとかいないとか。

そんな…そんなの「冒険活劇」じゃないやい!
もっと単純明快でもいいじゃない。悪が襲ってきたらいいじゃない。心の葛藤をなだめ合うようなクライマックスなんて消化不良もいいところ。この物足りなさは「敵の不在」。だから、闘いにもあまりのめり込めません。なぜなら、相手は反抗期をこじらせただけのひねくれ坊やなので、絶対倒すなんてしないだろーなーって分かっているから。熊徹が「神」に昇華して「伝説の剣」になって蓮に加勢をするんですけど、大きな子供の喧嘩に親がしゃしゃり出ているような気がしてノレない。おまけに蓮は、自分を犠牲にして胸の内に宿ってくれた熊徹を連れ、人間界に戻って勉強に(恐らく楓との恋愛にも)励むのであろうなんて、熊徹は納得するのか!? オーレーをー、渋ー天ー街にー、かーえーしーてーくーれー、という心の叫びが聞こえてきそうなのですが。

バケモノ5


と…まあ、ひねくれた鑑賞になってしまいました。

細田守監督の持ち味は、「絆」を照れもなく描くことであることは、過去作からよく分かります。
青春の友達関係を甘酸っぱく描いた『時をかける少女』。頼もしい家族の団結を描いた『サマーウォーズ』。どちらも鳥肌がたつほどの傑作です。どちらとも明確な事件が起き、その物語の解決に動く中で自然体にテーマがたゆたっていました。しかし、本作はテーマそのものが物語になっているから、ド直球過ぎなのです。そこには、「毒」も「皮肉」もなくて物足りなさを感じます。それもこれも、何度も言うけれど、「冒険活劇」だなんて言うから! 無駄な期待をさせるから! 「ハートフルコメディー」とでも言ってくれていたら、まだ良かったかも。
つまり。
細田守監督には、照れもなく、活劇の爽快感を出してほしかった。悪い奴がいない活劇なんて。ヒリヒリするような緊張感や燃える要素のない活劇なんて。

バケモノ4


その他いろいろ。

・渋谷の描写が実にリアルで見応えあります。
・役所広司と大泉洋、リリー・フランキー、津川雅彦の声の巧さ! 
・巧いが、そんな豪華俳優陣のせいで、端役をやらされる山口勝平が不憫だ!
・熊徹の教え方って、完全に長島茂雄流ですね。
・人間にだけ闇が宿ると言いますが、差別主義的なバケモノたちもなかなか。
・バケモノ達は何をしに人間界をほっつき歩くのか?
・卵かけご飯がマズイという珍しい描写。
・空飛ぶクジラの描写は、『オマツリ男爵と秘密の島』のでかい金魚そのまんまでしたね。
・9歳から一切勉強していない蓮が短期間に大学を目指せるまでに。ビリギャル越えてます。
・唯一爽快であるはずのヤンキー一掃シーンが画面外だった衝撃。
・忘れてはいけません。一郎彦は「殺人未遂」です。


何だか悪く書いてしまいましたけど、期待が大き過ぎただけであって、普通に秀作だとは思いますよ。
和風『ベイマックス』みたいな感じですかね。
しかし、「もう大丈夫だよ」と言えば解放されるベイマックスと違い、もはや永遠に蓮から離れられなくなってしまった熊徹は、きっとオーレーをー、(以下同文)


↓オススメの記事です。
・細田監督が提案する親のカタチ 映画『バケモノの子』/カゲヒナタのレビュー


  

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Posted on 2015/08/21 Fri. 21:05 [edit]

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