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※ネタバレがある時は、必ず<赤字>で標記します。点数の説明はこちら。

ブルー・リベンジ /世の中、裏目ばっかりよ。 


 ブルーリベンジ_SS400_
 ブルー・リベンジ
 (2013年 アメリカ映画)  
 80/100点



第66回カンヌ国際映画祭にて、国際批評家連盟賞を受賞したバイオレンス映画です。
ずっと鳴かず飛ばずだったジェレミー・ソルニエ監督の崖っぷちの覚悟が、傑作を生みだしたと話題になりました。

何より驚いたのは、髪もアゴヒゲも伸ばし放題だった主人公・ドワイトが、中盤から身ぎれいにして登場した時のこと。

ブルーリベンジ
荘厳な作曲が出来そうな雰囲気ですが。

ブルーリベンジ2
は・・・だれ…?
作曲をゴーストライターに依頼しそうな、ただの中年男に変貌。

「中年男、ロンゲにしてヒゲをたくわえると、誰でもイケてるアーティストに見える説」を、ぜひ『水曜日のダウンタウン』で検証してほしい今日この頃なのでした。

さて。あらすじは、「両親を殺されたホームレスの男・ドワイトが、復讐に立ち上がったら、復讐の連鎖を生んでしまった」という物語。


<結末以外、ネタバレしています。>


主人公・ドワイトはヘタレな中年です。両親が殺されたショックからなのか、親族から離れ、無気力なホームレス生活をしていました。
しかし、その犯人が司法取引によって出所するという情報を聞くや、ドワイトは復讐を決意するのです。
生きる糧を見つけたかのように立ち上がるドワイト。
いまこそ、募る恨みを晴らす時。

天の裁きは待ってはおれぬ。この世の正義もあてにはならぬ。闇に裁いて仕置きする!

…しかし、本作全編を通し、我々はドジっ子ドワイトの「やることなすこと裏目だらけ」を目撃して行くことになります。

・敵の車のタイヤを傷つけようとして手を負傷。

・自分がパンクさせた車で逃走。

・復讐したせいで、自分の身内に甚大な迷惑。

・謝罪のつもりの記者会見でさらに印象が悪化。


などなど。
物語では、さらにこの程度で済まない数々の裏目を見るのです。

リベンジ


ブルーが散りばめられた画面から、独特の静寂な雰囲気が漂ってきますが、序盤で彼が果たす復讐からして、バイオレンス描写は容赦ありません。
「復讐の重み」を表すかのように、残虐です。

おまけに。

踏み越えてはならない一線の先には、後戻りできない地獄が待ち受けているのでした。
そもそも相手は、ギャングのような集団です。少し考えれば、復讐後の出来事を想像できたのではないかと思うのです。

ドワイトの浅はかさが、彼の人生にさらに暗い影を落とします。

ドワイトの姉は、復讐を果たした話を聞いた時、当初は喜んでいました。
しかし、自分の子に危険が及ぶかもしれないと知るや、我を忘れてドワイトをひっぱたきます。
よかれと思ってしたことなのに…。
たくさん御馳走した時は喜んでたくせに、翌日に「おかげで太った!」とキレられたりする、よくあるやつですよね、これ。

身内を始末されたのに、その家族が通報しないのはなぜだろう…、ということから推測される恐ろしい事態に、ドワイトと姉同様、息を呑みます。やはり、ドワイトが仕掛けた相手は、尋常ならざる一派だったのです。

この瞬間、物語はただのバイオレンス映画から、上質なサスペンス・スリラーの本領を発揮していくのです。

リベンジ3


ドワイトは後始末を強いられます。涙目です。一人で姉の家に立てこもり、素人ながら敵の襲来を待つのでした。
待ち伏せが有利に働き、窮鼠猫を噛むのごとく、ここでの闘いはドワイトに軍配が上がるという奇跡をもたらしました。

彼は、きっと人の為になら頑張れるタイプの人間です。
両親の恨みを晴らすため。姉の家族の安全のため。マンガだと、それは万倍のパワーを引き出す美しい感情だとされますが、現実にそういう人間は、実は自分のことを諦めているタイプだったりします。

彼は、自分に嫌気が差しているのだと思います。
彼には破滅願望があるように思うのです。本作の原題「blue ruin(青い破滅)」が示す通り、彼は陰鬱な気持ちを抱えながら、一歩一歩死に向かっていくのでした。

彼は、何をやってもうまくいかない人生だったのだと思います。
姉から、「あなたはバカじゃない。弱いだけ」と指摘されますが、弱さを抱えるに至った経験値があるのだと思うのです。

張り切れば張り切るほど、カラ回るってやつ。

早く想いを伝えたくて、速達でラブレターを出したら気持ち悪がられたり…

喧嘩の仲裁にかって出たら、自分が一番の悪者になっていたり…

就職の集団面接で目立とうとしたら、しどろもどろになったり…

家族を旅行に連れて行こう! と計画するたびに雨…

新しい企画を立ち上げるぞー! と意気込んだ瞬間、大クレーム発生…

もう…いいや…、頑張るのやめよう…。

となってしまう人生ってあるのですよ。
ドワイト君がまさに、それ。そんな彼が、今回人生で初めてくらい躍起になったのは、やけくそになっただけなのかもしれません。

リベンジ2


そんなこんなで。

腰抜けであるはずの主人公・ドワイトは、急にランボー風に頑張りだすのであります。

途中、射撃マニアの旧友の協力で銃を手に入れたドワイトは、ついに決戦の場に足を踏み入れます。まったくもって頼りなく、薄氷の上を歩くのを見ているようでハラハラします。

しかし、意外にも彼は、「待ち伏せ」に関してはなかなかの才能を発揮するのです。血で血を洗う抗争を終結させるべく、ドワイトは一世一代の大勝負に出るのでした。

といってもこの復讐劇って、そもそもドワイトが「(反転で)無実の人を殺したことが発端」なんだけどね!

根本が裏目だから、この物語って、実は序盤で終結しているようなものなのです!

だから言ったでしょう。
最初から、自分で作曲するべきだったんだ!(それはS村G内さん)

監督が本作で描きたかったことは、復讐のむなしさではないでしょうか。
ドワイトも敵側の家族も、そのために多大な犠牲を払いました。
「恨み」や「憎しみ」は、人を決して幸せにしません。
なぜなら、それは「過去の因縁」へのこだわりだからです。そんな後ろ向きな考え方は、未来への自分の成長(発展)を阻みます。

本作の唯一の希望は、この連鎖を止めるであろう新しい血(子孫)の存在です。
新しい時代を生きる者は、過去にこだわらず前進していくことで、新しい世界に出迎えられるのです。

え…?

いやいや…違います違います。
新垣さんのことを言ってるんじゃありませんよ。


  

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Posted on 2015/08/30 Sun. 20:03 [edit]

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