素人目線の映画感想ブログ

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サンドラの週末 捨てる神あれば、 


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 サンドラの週末
 (2014年 ベルギー・フランス・イタリア合作)  85/100点


人生の四苦八苦を淡々と映像にしています。
淡々といっても、主人公の抱えている境遇は悲惨です。見ていて苦しいものです。しかし、過剰な演出はありません。カメラは扇情的に動くこともなく、ドキュメントのように無言で寄り添っているばかりです。

だから、独特の突き放した冷たささえ感じます。それでかえって冷静に見れるのか、内容によく集中でき、あれやこれやと考えさせられるのでした。

本作は、労働問題や貧困問題を捉えたダルデンヌ兄弟の新作です。
ダルデンヌ兄弟は、辛辣な物語の中にも、一筋の美しさや希望を光らせます。

なかなかの傑作です。

あらすじは、「サンドラは、会社から解雇を告げられる。唯一の復職のチャンスは、月曜日に行われる【ボーナスか、サンドラか】を選ぶ同僚たちの投票。サンドラは週末、同僚たちを訪問していく。」というお話。


サンドラ


<すみません、結末に触れたいのでネタバレしています。>


そもそも。

従業員にこんな投票をさせる会社ってどうなのよ。
どういう社長なのよ。
会社側の経済事情も深刻なのでしょうから、リストラすること自体は悪とはいえませんが、解雇の罪悪感を従業員に押しつけるとは、卑怯極まりない所業です。
また、どちらの結果になろうとも、従業員同士で遺恨が残りかねず、士気にも大きく影響するでしょう。実際にこんな選択をさせる会社があるかどうかは分かりませんが、非常に下手なやり口です。こんな会社、多分じきに潰れるんじゃない? とさえ思いますから、サンドラは無理に復職しなくてもいいように思いますが。

といっても…転職も簡単なものではないのでしょうね。本作の舞台・ベルギーの失業率は約8%。なんと日本の2倍以上だそうです。ゆえに、サンドラはどん底の不安に落ち込んでいるのでした。

さて。

サンドラは、とても逆境に弱いです。すぐにへこたれます。やる気が出たかと思いきや、うまくいかないとすぐにふて寝します。子どもを抱えながら、そんな根性無しでいいのかよと、度々イラっとしましたが、彼女は心理的な不調を患っていた様子なので、あまり強く非難はできません。

けれど。

以下のような疑問も湧くのです。狭量な見方で申し訳ないのですが…

サンドラには旦那がいます。旦那は調理人のようですが、サンドラが失職すれば、彼の給与では「家賃」も賄えないと言うのです。え…? だったら…なんでそんな不相応な家に住んでいるの? サンドラは、いざとなったら「公団」に移り住むと言っていたのですが、こんなことになる前に、とっとと移り住んでおくべきだと思うのです。家計のリスク管理が希薄です。荻原博子先生だったら、怒り出すレベルでしょう。

※サンドラさんにおすすめ!
 家計を見直しましょう。

それに…その…何となく旦那さんが他人事な気がするのです。もちろん、サンドラを精一杯にサポートしているのは分かるのですが、外部ポジションな感じがするのです。言いにくいですが…もとはといえば…あんたが甲斐性なしだからいけないんじゃないの? 日本が舞台だったら、絶対に嫁は旦那を責めますよ。西川史子先生だったら、あきれ返るレベルでしょう。

※サンドラの旦那さんにオススメ!
 読んで震えなさい。(古いけど)

しかし!
サンドラは旦那を責めません! なんで!? と思うほどです。ようやく責めたかと思ったら、「4ヶ月御無沙汰…」って…そっち…。
日本とのカルチャーギャップを感じました。しかしこれはある意味、ベルギーの社会では女性がしっかりと自立し、責任を背負っているということなのかもしれません。

さて。

話を戻しまして…。

サンドラは、自分に投票するようお願いするため、同僚たちを一軒一軒訪問します。ボーナスをカットされてでも、サンドラを選ぶのが人の道ってもんじゃないのけ? …と思いがちですが、なかなかどうして。同僚たちの抱える「経済事情」も、サンドラと同じく生易しいものではないのでした。
サンドラが可哀想なのは分かっていても、後ろ髪を引かれる思いで「お金」を選ぶしかない人たちもいるのです。
特に家族を抱えている場合は、心を鬼にでも、悪魔にでもせねばならぬ時があります。
ちなみに、サンドラと天秤にかけられているボーナスの額1,000ユーロは、おおよそ日本円にして130,000円くらいです。
非常に悩ませる金額です。諦めてもいいような金額でもあるし、あてにしていた者にとっては、非常に大きい額でもあります。

サンドラ2


地味なタイプの人間ドラマですが、サンドラが一人一人に会う様子は、サスペンスのように緊張します。
辛辣に断る人もいますが、涙を流しながら、サンドラへの投票を約束する人もいます。時に暴力的な対応をする人もいます。断られると、すーっと血の気が引くサンドラの顔色にもハラハラします。それだけに、望んだ答えを得た時のサンドラの笑顔が無邪気で、こちらもほっとします。

捨てる神あれば、拾う神もいるのでした。
それは、サンドラの人柄がなせる技かもしれません。
同僚が言うには、人のミスを肩代わりしたこともあるようです。
自分の為に、本当は、同僚たちに迷惑をかけることがツラいようです。本当は、こんなことで復職したとしても、職場でどんな顔をしたらいいのかと悩んでもいます。
サンドラは、良い人間なのです。だからこそ、同僚たちも悩むのですが…。

そして。

秀逸なラストが訪れます。
どちらの結果になるのか。開票までの長回しの待ち時間に、緊張が募ります。

サンドラ3
(考えてみたら、マリオン・コティヤールにこんな顔されたら、断れないよね…。)


<完全に結末に触れます。>


サンドラは、あと一歩必要な票を得られず、失職します。
そこで。
諦めかけていた矢先、社長は彼女を部屋に呼びます。これほどの善戦をした、サンドラの努力と能力に報おうと、なんと復職を認めるのです。
しかし喜ぶサンドラに、社長は信じがたい一言を告げます。
「代わりに、臨時雇いを切るから」
臨時雇いとは、サンドラの復職に票を入れてくれた人です。
「クビではない。そいつとの契約を継続しないだけだ」

サンドラは、良い人間です。
迷いもなく、その悪魔の提案をきっぱりと断るのでした。

その帰路。サンドラは清々しく、力強く歩いていきます。
もう、泣き虫で弱いサンドラではありません。

彼女は、見事に復職を果たしたのです。
そして、自分からそれを断ったのです。

捨てる神あれば、こっちから捨ててやれ。

ラストでは、サンドラのみなぎった自信が、明るい画面にほとばしっていました。


 

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Posted on 2015/12/19 Sat. 06:37 [edit]

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