素人目線の映画感想ブログ

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フレンチアルプスで起きたこと /妻ぶち切れ、という惨事。 


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 フレンチアルプスで起きたこと
 (2015年 スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作)
 85/100点


その昔、『タイタニック』のストーリーに違和感を覚えたことがあります。
確かに感動的でした。だけど言い換えると、あれは「男が犠牲になり、女が生き延びる物語」でもあるのです。
そこに、多大な感動が生まれているということは、女性は、「自分のために死んでくれる男」を求めているということです。
そんな無数の願望光線による強迫観念に襲われたディカプリオは、「う~、寒い。オレだって生きたい…」と怯えながら、極寒の暗い海の底へと沈んでいきました。

ということで。

本作は、そんな女性の理想をまんまとブチ壊してしまった夫の顛末が描かれています。
身も心も凍りつく、普遍的な夫婦あるあるの物語。
人生のとびきりの皮肉がこれでもかと練り込まれていて、長めのコントのようで大変面白かったです≧(´▽`)≦アハハハ。

フレンチ2


素敵なセンテンススプリ…もとい、フレンチアルプスのリゾートにスキーをしにやってきた四人家族。
妻・エヴァは、素晴らしい家族写真にご満悦。
普段、仕事で忙しい夫・トマスは、ここぞとばかりに家族サービス奮発中。
申し分のない家族なのです。

ところが。

見晴らしの良い展望レストランで食事中に雪崩が起きます。
結局は大した惨事にはならないのですが…。
巨大な雪の壁が迫ってきたその瞬間、夫は子どもと妻そっちのけで逃げ出しているではありませんか。
この逃げっぷりが、まー見事です。
振り返りもせず、一目散です。
どこかの育児休暇・不倫議員も真っ青の駆け出しっぷりに、思わず吹き出してしまいました。

旦那―、やっちまいましたなー。
これは、ラインが漏れるよりも救いがありません。確かに、人間というものは、イザとなったらどうなるか分かりません。自分の命が危険にさらされた時、誰しもが陥るパニック症状なのかもしれません…が、見捨てられた方は納得できるものではありません。

ましてや、相手は家族というものを理想で固めている妻なのだから、なおさらです。
その事件から、旦那への不信感でいっぱいになった妻は、執拗な夫いじめを始めます。不機嫌なオーラを纏い、何度も問い詰めては追い詰める地獄の責め苦を与えるのでした。他人事だから、あーおかしい。よくあるやつ、これー≧(´▽`)≦アハハハ。

フレンチ


いったん、妻の機嫌がこじれたら、大変です。もはや、理屈では解決できません。男は黙って嵐が過ぎるのを待つか、コテンパンにやられてあげる他、逃れる術はないのです。ワタクシほど経験を重ねると慣れたものですが、ワハハ、どうやらトマス君は不慣れだったようですな。完全に対応を誤っとります。なんとコノヤローは、ここにきてまだ男の権威を保とうとバカな言い訳を始めちまうのです。あーやっちゃった。「逃げたように見えたかもしれないが、ボクは逃げていないよ」だって。もー際限なくバカ。おまけに知人のフォローも、さっぱり的を外していて火事場に灯油を投げ込むレベル。

気持ちは分かります。こんな問題が勃発した時、夫はどうしても中庸の結末を望みます。悪いのは十分に分かっているのです。しかし、全てを認めるのは男として格好悪い。だから、落としどころを見つけて、お互い譲歩し合って解決しようなどと目論むのです。
「ね、オレの気持ちも少しは汲んでよ」っつーところ…
ダメだっ。それキケンだバカーっ!

妻は、夫を完膚なきまでに叩きのめしたいのです。夫が全ての非を認め、全てにおいて謝罪し、全てにおいて屈伏しないことには、我慢なりません。そこに気づくことが出来なければ、この不毛の言い争いは未来永劫続き、男の精神力を食らい尽くすことになるのです。

案の定、この物語は。
ホラーな演出まで飛び出して、事態はどんどん深刻度を増していくのでした。
時折、突如として鳴り響く「ヴィヴァルディ」の不穏さもまた強烈です。まるで『ファニーゲーム』のOPのような禍々しさです。

かなり昔に観た『死の棘』も思い出しました。浮気をした夫(岸辺一徳)を、妻(松坂慶子)がいびり抜く映画です。もう機嫌治ってくれたかなあと思わせた矢先に、前触れなく追及が再開する恐怖のくだりがそっくりです。

フレンチ4


トマスはとことんまで追い詰められていきます。
奮発して努力して予約した素敵なリゾートホテルだったのではなかったか。こづかいだって、買いたいものを我慢して旅行に回したり。自由な時間も家族の為に費やそうと心に決めたこの五日間だったのでは。
そうしてコツコツと、かいがいしく、丁寧に丁寧に、1点1点を積み上げていった貴重なトマスの父親・夫ポイントが今どうなっているのかというと、
例の逃亡で、マイナス20億点です。

ちきしょー、そんなにオレが悪いのか。あの議員よりも、あのシンガーよりも悪いのか。家族のことなんかほったらかして遊んでるオヤジだって山ほどいるだろーが、それよりもオレが悪いってのか!!??

トマスの精神が崩壊するまで、そんなに時間を要することはありませんでした。

「女らしく」という言葉は許されなくなった時代ですが、「男らしく」という言葉は今だ男に期待されます。
なにしろ男自身が、その言葉にこだわっているのだから。
夫・トマスが「逃げた」ことをなかなか認めないのは、「男」として許されないと思っているからです。トマスの知人も、恋人から「あんたも逃げそう」と言われるや、顔を真っ赤にして否定します。
男は、「男らしさ」を簡単には放り出せません。世の中が男女平等になろうとも、男から呪縛が解けることはないでしょう。

トマスの苦しみは、家族への申し訳なさに加え、自尊心の崩壊でもあるのです。


フレンチ3


<以下、結末に触れます。>


本作は、夫が妻にグロッキーにされる映画です。
しかし実は、完全に夫目線の映画なのです。
それは、ラストシーンでも如実に表されます。
本作のラストは、世の夫たち全員が拍手喝采するであろう「あるある情景」で終わります。既婚者だけに分かってもらえたらいいんだという潔さ! 同じ傷を抱えた妻帯者たちが肩を抱き合い涙を流して同調し合うという、史上まれにみる醜悪な絵が浮かんできそうな、この秀逸なラストシーン! しかし監督、狙いがあざとすぎでは!? 正直、映画の完成度よりも、妻への腹いせを優先して作ったとしか思えません。まさか…と思ったけど、案の定、そんなラストを持ってくるとは…、身を削ったな!

具体的なネタバレは避けますが…、つまるところ、結局お前もやんってやつ。ほんとによくあるやつ。性差別に怒る女性が、「男のくせに!」を連発するようなアレです。

この描写には、男の怨念さえ感じました。制作者は、きっと妻への鬱憤がたまっていたに違いありません。
まー、なんて「男らしさ」をかなぐり捨てた描写。その勇気には、いたく感服します。
その気持ちは、痛いくらい分かるのです。
ですが。
このラストにニンマリしている所を妻に見られようものなら大変。「ちっちぇー男だな」と一刀両断されること請け合いです。

あ、あと、それから。
彼らの子ども達が本当に気の毒です。両親のただならぬ空気に、こっそり涙を流していました。きっと、二度とこの両親と旅行するのはノーサンキューでしょう。雪崩よりも、危険運転のバスよりも、よっぽどトラウマになっているのでした。

そういう面から見ても、おたくら二人は、両成敗なのです。


 

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Posted on 2016/02/15 Mon. 22:06 [edit]

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