素人目線の映画感想ブログ

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もののけ姫 /私たちは、凶暴な才能に期待し続ける。 


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 もののけ姫
 (1997年 日本映画)
 80/100点



誰もが知るところの宮崎駿監督の本作品は、ジブリ映画の興行収入が一気に膨れ上がった大ヒット作です。

ナウシカ、ラピュタ、トトロと興行成績は右肩下がりでしたが、続く『魔女の宅急便』はヤマト運輸との上手なタイアップもあり、グンと上がって20億円のヒット。
『紅の豚』の30億円を経て、『もののけ姫』は100億円以上もの成績を叩き出しました。

いろいろな見方はあるでしょうけど、宮崎駿ファンの中に、これこそ長年待ち望んでいた作品だという想いが強くあったからだと思います。
「ナウシカから13年、宮崎駿の凶暴な才能が溢れ出す」というナレーションの予告編を初めて見た時、正直ものすごくわくわくしました。
近年は、どこか大人しい作品ばかり続いていると思っていたからです。
 
宮崎駿さん、あなたは既成概念の道徳的、模範的な作品を作るような人じゃないはずだ。サディスティックでひねくれ者で傲慢で自信家で実は戦争大好きで人間なんかみんな死んだらいいのに、くらい考えている自己矛盾を抱えたテロリスト気質の人間のはずでしょうが!(言い過ぎ)

本当は『ナウシカ』を超越した深遠な活劇を作れるはずだ、なぜ作らないのか、という長年の鬱積が、私のみならずファンの間にはあったのです。
そこでの本作ですよ。
マサニ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
いよいよ、来た。これだ、こういうのが見たかったんだと、当時は随分と興奮したものです。

さて、結論から言いますと。

その期待と興奮は、半分以上は叶えられたのかな? …という印象です。
狙い自体は抜群で、まさに期待のドストライクでした。
タタラ場の過酷な状況、自然対文明という建前では解決できない対立…など、映画には、かなり混沌とした深みがあります。
 
アシタカという主人公自体に、強烈な魅力があります。
「凛」としたまっすぐな目、姿勢、信念。何より、腕っぷしの強さ。全てを受け止める包容力など、当時のアシタカの女性受けは抜群だったそうです。

ほかのキャラクターも実に魅力的。タタラ場の統率者エボシは、外面は人が好さそうですが、内面には「クシャナ」に負けないほどの狂気をはらんでいそうで、複雑です。
ジコ坊のどす黒さも、非常に好きです。

エボシを切り殺そうとアシタカの腕を操る、邪悪な呪いの存在。
アシタカが、誤射とはいえタタラ場の女に撃ち抜かれるハードな描写。
シシガミの首を狙う場面での緊張感は、抜群。

もちろん、アクション映画としてのかっこよさもあります。
さすが、刀の構え方ひとつひとつに、人の動きの描写にうるさい宮崎駿のこだわりが見えます。
矢の描写も、まるでこちらに飛んできそうな恐怖を感じました。
 
全体的に、本当に見せ場が多いです。
ただし…、『ナウシカ』を超えてはいない。
以下の点が解決されていれば、もっと大傑作になっていただろうに、と実は個人的に思っていることがありまして…

難点はいくつかあります。
作り手の悩みの跡が見えるというか…、ちょっと物語に消化不良がある印象です。 
確かに、「自然と文明の共存」という結論の出るはずもないテーマですが、すごく尻すぼみで終わった印象。

え…? あの程度で「シシガミ」に許されるものなの…?
で、この後、どういう風に自然と文明が折り合っていくの? …いかないの?

物語の大風呂敷が、中途半端に畳まれている気がしたのです。 
上映時間が限られますので、テーマを、もっと絞ったほうがいいと思ったのでした。

また。
『ナウシカ』の時のような、「死の匂い」がしません。
首や腕が飛ぶハード描写もありますが、何故かあまり「人間の死」を感じません。

『ナウシカ』には、アスベルの妹、ナウシカの父、墜落するトルメキアの艦船、自決を覚悟するペジデの人達など、作品中に「死」が蔓延していますが、本作には、間違いなく死者はたくさん出ているにも関わらず、はっきりと死ぬ描写が見えないのです。(終盤、シシガミにたくさん殺されますが、それでも「死の描写」が軽い気がしました。)
  
また、有名人を声優に使い出したのも今作からですが…
映画の宣伝をしやすい、という狙いはわかります。
しかし、そのことで作品の質を著しく下げてしまってよいわけがない。
この映画には、その問題点があると思います。
それが顕著なのが、サンです。

誰とは言いませんが、有名な女優さんです。
とてもヤマイヌに育てられた過酷な運命の少女とは思えない、腹に力の入っていない弱弱しい声。

…もしも、このサンの声優が、もっとサンの狂気を演じられる人であったなら、『もののけ姫』はもっと面白くなっていたに違いない、と私は個人的に思っています。

ただし。
美輪さんの演じたヤマイヌは、素晴らしいものでした。
味をしめたのか、後にポケモンのアルセウスの声もされていましたね。
人間でないキャラの声といえば、今や美輪さんか、犬山イヌ子かってぐらい。

さて。

本作以降も、宮崎駿はいくつもの精力的な作品を作っています。
現在の『ポニョ』まで、確かにパワーは凄いし、けっして衰えていないと思います。
しかし、『ナウシカ』以上の狂気、凶暴さを求めている我々ファンにとっては、実はあまり満足していないのが事実です。
 
こうなったら、庵野秀明にやられる前に、原作の続き、『ナウシカ2』、『3』をやるしかないのじゃなかろうか? 


  

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Posted on 2012/09/09 Sun. 18:13 [edit]

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