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ヘイトフルエイト ぼくのかんがえた、みすてりぃ。 


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 ヘイトフルエイト
 (2016年 アメリカ映画)  85/100点


もはや職人技のように演出力が熟達した、タランティーノの最新作です。

私はそもそもタラのファンですから、今回もかなり楽しめました…んですけど、今まで以上に人に薦めにくい作品でした。正直、「タランティーノってあんまり見ないけど、どう?」って聞かれたら、ちょっと迷って、…泣く泣く首を振ります。間違っても、タランティーノを知らない人とデートで見る映画ではありません。

本作は、前作『ジャンゴ 繋がれざる者』と同じく、「黒人差別」をテーマにしています。無論、タランティーノは差別が大嫌いです。本作には、「白」だの「黒」だの「ニガー」だの、議員だったら辞職が確定するほどの爆弾級の差別語が、皮肉として、氾濫しています。そう、丸山議員は、事前に「差別は許さない」と発言しておかないから、誤解を受けるのです。

ちなみに、私は白はあまり好きではありません。黒の方が好きでした。白い方は最近コメンテーターとして何か偉そうに発言しているのが苦手です。でも、黒い方はちょっと洗脳騒ぎが―

さて。

ヘイトフル1


本作は会話劇と言われています。確かに序盤の雪山の道中でも、メイン舞台の「ミニーの紳士服飾店」でも、前半まではほぼ会話しっぱなしです。私は『デス・プルーフ』の会話シーンにはだれてしまった口ですが、本作の会話には退屈しませんでした。これから巻き起こる「惨劇」の伏線のように、じわり…じわり…と緊張感が滲んでいるからです。「嵐の前の静けさ」だってことが分かるんです。それに、所々で突発的な暴力シーンがあり、笑えるシーンもあり、皮肉が効いたシーンもあり…実に趣向を凝らしています。タランティーノ映画をよく知っているなら、人が人に銃を向けているだけでも異様に緊張します。これまでの実績で、何をしでかすか分かったもんじゃない、と観客に思わせるに至ったタランティーノは大成功です。まさに、油断ナランティーノなのであります(??)。

ただ、本作は「南北戦争」直後の物語ですので、「南北戦争」のことを少し知っていると、会話の内容が理解しやすくていいと思います。私も詳しくはないですが、以前スピルバーグの『リンカーン』を観ていたので、よかったです。とはいえ、「南北戦争とは、黒人の奴隷解放を目指した戦争であった」ということと、北部は「解放側」で、南部が「解放反対側」であった、という知識だけでもオッケー。

ヘイトフル6


さて、この「会話劇」を退屈させない大きなポイントの一つに、キャラクターの面白みがあります。
表情や身振りを見ているだけでワクワクできるのは、監督の力量でもありますが、ひと癖もふた癖もありそうなキャラを演じる役者陣の巧さは、凄いものです。

そして、みんなウソつき臭いです。以下に登場人物と、簡単な説明。

賞金稼ぎ:マーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)
リンカーンと文通友達だという。北部の騎兵隊員だったが、北軍の白人兵士も殺していると言われるクセモノ。当たり前だが、黒人差別主義者を心から憎んでいる。

同じく賞金稼ぎ:ジョン・ルース(カート・ラッセル)
唯一、疑惑なし。マーキスと違い、賞金首は生きて引き渡し、絞首刑にすべきと考えている。疑心暗鬼の塊だが、意外に純粋。

メキシコ人:ボブ(デミアン・ビチル)
ミニーから本当に店を預かったのか。まずいコーヒー作りの達人。

絞首刑執行人:オズワルド・モブレー(ティム・ロス)
紳士面しているが、本当に絞首刑執行人なのか。よっ、ティム・ロス、久しぶり!
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南部の元将軍:サンディ・スミザーズ(ブルース・ダーン)
黒人が大っきらい。老害まるだしのようなジイ様。でも、なぜか彼は口数が少ない…。
ヘイトフル5


カウボーイ:ジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)
おかーちゃんとクリスマスを過ごすんだい、とのたまう。生きてる人間の耳を切り取りそうな顔をして。
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新任保安官:クリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)
黒人が大っきらい。本当に保安官なのか怪しい。

そして。

囚人の女:デイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)が最も強烈な印象を残しました。躾けの悪いガキんちょのように牙をむき出しながら、憎めない愛嬌も醸します。男どもから、けちょんけちょんに殴られまくる彼女が痛々しいです。頭からつっーっと血を垂らしながら睨みつけるアップにドキリとします。でも、彼女は全くめげません。そこに、健気ささえ感じさせるのです。暴力をふるう男たちはひどいじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。いえ、確かに彼女が圧倒的に悪いです。人が大事にしている手紙に、何の恨みもなくツバを吐きかける場面がバカウケです。その時の「ま じ か」というサミュエルの目の剥き方が忘れられません。目が口ほどにものを言った瞬間を見ました。

じぇにふぁー2

ジェニファー
デイジーを演じるジェニファー・ジェイソン・リーは、アメリカでも無名、けれどキャリア30年以上のベテラン女優だそうです。『イングロリアス・バスターズ』のクリストフ・ヴァルツのように、タランティーノに見事掘り当てられた逸材です(2016年アカデミー賞助演女優賞ノミネートです)。

主人公は、一応サミュエル演じるマーキスですが、サミュエルが演じるんですから、ちょっと普通じゃありません。かなり冷酷な過去を持ちます。それは、ドン引き必至のおっそろしい過去です。他の場面では一切回想シーンはないのに、さすがタランティーノ、 そ こ だ け は、 しっかり回想させてますよ。 …
お ま え は ア ホ か 。


そんなこんなで、一筋縄ではいかない連中が、吹雪に追われて一つ屋根の下で過ごすことになります。舞台劇のようなワンシチュエーションの物語ですが、「ミニーの紳士服飾店」は、見栄えに飽きない魅力を放っています。美術を担当した種田陽平の力です。この魅力的な舞台で、コーヒーを飲みながら…、めちゃくちゃ旨そうなシチューにがっつきながら…、一時は平穏に過ごします。しかし、無関係と思われていた連中の因縁が徐々に明らかになるにつれ、疑心暗鬼を溜めこんでいく面々が腹を読み合います。タランティーノ念願の起用であるエンニオ・モリコーネの、西部劇調…と思いきや、『遊星からの物体X』調のこわ~い音楽が盛り上げます。

ところで。

本作は、予告編でもミステリーのように宣伝されていますが、恐らくミステリーだと思わない方が良いのだと思います。タランティーノは、たまたま脚本書いている途中で…「お? …なんか…ひょっとして、ミステリーに出来んじゃねーこれ…?」となって「こりゃ、新境地かねー」とノリノリだったものの、最後らへんで「やっぱやーめた!」って子供みたいに放り投げたんじゃないでしょうか(推測)。マーキスは頭を掻いてフケを飛ばすこともなければ、じっちゃんの名にかけることもありません。何より、見た目も頭脳もサミュエルです。

改めて言います。ミステリーと思わない方がいいです。
・・まあ、いつもの…バイオレンス…どバイオレンスです。
血のりが半端ないです。『椿三十郎』かと思うくらいです。耐性のない人は、眉をひそめると思います。

ヘイトフル7


けど、面白くないワケじゃないんです。
暴力的なシーンばかりではなく、重量感のある演出で、心理的にも追い詰めてきます。終盤に降りかかる極限の窮地には、嫌になるくらい緊張するし、一体誰がどうなるやら、全く先が読めません。
前半の会話劇でちょっと疲れていましたけど(やっぱりちょっと長すぎかな)、後半は、本当にワクワクドキドキして実に楽しかった。

ちょっとネタバレなので反転で…「ラストに救いがないのは不満でした。勝っても負けても死ぬんだったら…と思ったら、緊張感が薄れました。生き残ってほしかったけどなあ。けど、タマ撃たれたら無理だわなあ。

前述のように、本作は「黒人差別」を批判しています。印象的だったのは、ある事で非難してくるジョンに、マーキスが放った言葉です。「黒人が安心できるのは、白人が丸腰の時だけだ」 当時の過酷な差別を浮き彫りにします。
そして。
最後には、黒人のマーキスと一人の白人が共闘します。リンカーンの手紙の内容に添うように、嵐の過ぎ去った後の二人の絆は、果たして永遠となったのでしょうか。それは、「白」だの「黒」だの、作中であえて差別を炸裂させてきたタランティーノが望む、理想的な結実の象徴なのだと思います。

タランティーノ映画が好きな人には、至極の映画体験が待っております。是非ご覧ください。アメリカではコケたそうなので、日本では挽回できるといいけどね。

ヘイトフル


  

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Posted on 2016/03/08 Tue. 22:45 [edit]

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