素人目線の映画感想ブログ

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薄氷の殺人 その人は、真昼の花火。 


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 薄氷の殺人
 (2014年 中国・香港合作)  80/100点


あんまり記憶にないタイトルだったんですが、ベルリン映画祭で金熊賞(最優秀作品賞)と銀熊賞(最優秀男優賞)のW受賞を果たしたバイオレンスミステリーの傑作です。中国や香港、韓国勢のこういうタイプの映画は、邦画のそれと違って重量感があります。暗さの中に禍々しいほどの黒味があります。時折目を覆いたくなるほど鮮烈です。そして、結構生臭いです。本作もしかり。人を選ぶタイプの映画かもしれませんが、映画好きにはたまらない見応えがあります。

映像にも演出にも、普通でない撮り方をしてやる! という気概を随所に感じるのです。

特に驚いたのは、序盤の銃撃シーンです。観客も登場人物も、油断している時に勃発します。しかもワンカットだから凄い。計算ずくめのシーンで、物凄いパワーです。とっても生臭いですけどね。おののきました。地面にカランと銃が落ちてから、その銃を拾って撃つまでに不思議な間があります。この間が、「演出ミス?」「それともリアル?」と、どちらのようにも思えるギリギリの境界です。そこに妙な味わいを感じました。

そう。本作は油断ならない映画なのです。

薄氷


あらすじは、99年に起きたバラバラ殺人事件が未解決のまま、5年の歳月が流れる。その間に発生した、似通ったバラバラ殺人事件の被害者全てに、一人の女が関係していた。それは、99年の時の被害者の妻であった…というお話。


バラバラ…っていうと口当たりが軽いですが、本作での事件の描写は、これまた生臭いです。腕一本くらいですが、ハッキリと映します。写真だけですが切断面もくっきりと見せます。99年に起きたバラバラ殺人事件は、各部位が100キロほど離れた複数の石炭工場で発見され、単独犯とは思えぬ謎を提示します。そして、被害者は石炭工場で働くリアン・ジージュンという男であることが判明します。

さて、そこから一気に5年の歳月が流れます。
時の流れをトンネルで表現するのが面白いです。川端康成の「雪国」から着想を得たそうで、トンネルを抜けると、時も季節も移り変わって、そこは吹雪いていました。おまけに主人公ジャンが、トンネルの出口でへばってます。こんなとこでか!? という奇抜な場所です。先程の銃撃シーンで驚かされているだけに、何か起こるのではと無駄に緊張させますが、飲んだくれて倒れているだけでした。さらに、通りすがりの男に、まんまとバイクを盗まれる始末。「オ…オレのバイク~」と情けない醜態の主人公。本作は、たまにとぼけた味わいも見せます。全体的に生臭いから、あんまし笑えないけど。

薄氷2


このジョン刑事、離婚後なのに、恋しい妻を駅のホームで押し倒してキレられるという実に生臭い奴です。金のネックレスをちらつかせた見た目が、ほぼチンピラで…まー、生臭い。彼は前述の銃撃で負傷し、今は捜査から外れています。

このジャンが、99年の被害者の妻であり、その他幾多の殺人事件の被害者にも関与している一人の女・ウーに惚れちゃって、さあ大変。というファムファタール(運命の女。男を破滅させる小悪魔)の物語。それにしたって、こんな生臭い雰囲気の中、ウーだけは、とびきり現代的な美人です。(個人的に)絶妙なショートカットです。画面に出てきた瞬間…「ちょっと狙いすぎでは?」と感じました。画面に浮きまくっているからです。美人過ぎてリアリティがありません。絶妙なショートカットなんです(二度目)。薄幸な雰囲気がまた、男気スイッチを押しまくります。実際にこんな人が目の前に現れたら、十中八九、人生の罠です。人生ってのはさ、生ぐせーもんだよ、実際。(誰?) あ、ちなみにウーが働くクリニーニング屋の、ベンガルと佐藤二郎を足して二で割ってカツラをかぶせたオーナーみたいな人が現れたら、それも別の意味で「罠」かもしれません。

薄氷3


さて。

本作の面白みは、ジャンの行動の一貫性のなさにあります。ジャンは、ウーに興味を持ち、捜査課でもないのに首を突っ込みますが、「ウーへの情愛」と「刑事魂」が常にぶつかり合っているのです。恋心を全面に出した次の場面では、仲間の刑事にあっさりと彼女の情報を流しています。果たして「助けたいのか?」、否、「追い詰めたいのか?」 そこには、「揺れ動いている」というような繊細な表現は当てはまらず、その場その場の気分で動いているだけ、という粗さを感じます。この二面性(優柔不断さ)に不快感を感じると、本作にはノレません。私はノレました。主人公のいー加減な感じが、実に、生…人間臭いじゃありませんか。

作家性の強い映画なので、賛否両論だと思います。
おまけに、ミステリーについては、さほど目新しい謎解きなどはありません。結構、予定調和です。「あの人最近見ないわね~」なんてセリフ、分かりやす過ぎです。連続殺人の動機も無理があり過ぎです。それこそ犯人は、「彼女を守りたいのか」、どうなのか。
ただし、ミステリー自体は予想通りで物足りなさがありますが、人物の感情は全くもって想定ができません。
みんな複雑なんです。自分勝手なんです。出世したいし、逃げたいし、助けたいし。愛したいけど、疲れているし。どーでもいいけど、なんとかしたいし。笑いたいようで、泣きたいようで、救われたいようで、捨て去りたいような。

たいせつなんだけど。

もう、いなくなってくれてもいいような。

ラストシーンで昼間の空に炸裂する無数の花火は、的が絞りきれない感情のように飛び散らかって。
愛しい人の微笑みは、それこそ白昼の花火のように痩せた煌めきを見せるだけ。
それが精一杯の手向けだった哀しい男が、最後に想ったことは。

薄氷4


という映画です。たぶん。


  

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Posted on 2016/04/05 Tue. 12:59 [edit]

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