素人目線の映画感想ブログ

素人による、素人のための映画感想・レビュー。 映画文法や方程式なんのその。

号泣、嗚咽、一筋の涙。涙は映画の宝石だ!? 


映画には、印象的な涙のシーンがあります。
いや、鑑賞している側が泣ける、ということではなく、「登場人物が泣いている場面」のことです。演技者にとって、泣きの芝居が最も難しいと聞いたことがありますが、それがもらい泣きをもたらすのだから、物語の感動とは別にその巧さに感心・感激したりするのです。元来、涙とは涙を誘うもの。某議員のように、泣き顔を見て爆笑の渦にたたっこまれるというのは、大変稀なのです。
というわけで。
「細かすぎて伝わりにくい映画感想」シリーズ。今回は、心にぐっと響く「泣きのシーン」が好きなもので集めてみました。

ドラなき


<以下、完全ネタバレになります。>


○『となりのトトロ』より サツキ(日高のり子)
「お母さんが死んじゃったらどうしよう!」
これは子ども心に強烈でした。のんきなファンタジーかと思って観ていたら、突然しっかり者のサツキが、子供向けアニメ度外視の本気泣きを始めるではありませんか。ウヒャァァァァァァァーーーーンと、さっきまで堪えて澄ましていたのに、突如決壊するこの子どもの泣き方は、恐ろしいほどリアルです。そして、その胸の内にある、すごく心細い不安がよく分かるから、余計に息苦しさを感じました。サツキは、本当は、うら寂しい見知らぬ田舎から、一刻も早くお母さんと一緒に都会に戻りたいんじゃないでしょうか。宮崎駿は、きっと田舎に漂う負の空気も描きたかったのだと思います。

というようなことを書きます。本記事の趣旨、お分かり頂けましたでしょうか。
以前『悼む人』という映画が大コケしたと聞いた時に、予告編が泣いてばかりで湿っぽいからだよと書いたことを今思い出しました。下記、泣きのオンパレード。


○『ゼロ・ダーク・サーティ』より マヤ(ジェシカ・チャステイン)
号泣するような涙ではなく、はらりと流れる涙もまた、印象的です。
ラストシーン。ビンラディン暗殺を果たした主人公・マヤが、帰投するヘリの中でこぼす一筋の涙。
迷いもなく猛進していたマヤの心に、知らぬ間にうねっていた感情は、失った仲間たちへの想いか。はたまた正義への疑心か。この涙で、映画全般に流れていた一方の空気が簡単に押し戻されました。犯すべきでなかった禁忌に踏み入った後悔の念さえ感じたのです。
ぽつりとだけ流れる涙は、油断していた我々をハッとさせます。『ソロモンの偽証/後篇』で藤野涼子が見せた涙もそれです。押しつけてこないだけに、余計にその人物の深いところにある感情の渦を想像させるのです。
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○『ジョゼと虎と魚たち』より 恒夫(妻夫木聡)
特に巧い俳優さんだと思ったことはないのですが、突然グジュグジュ泣きだす、というのが印象的です(ワンパターンだけど)。主人公・恒夫が、ジョゼ(池脇千鶴)と別れを告げた後、新しい女(上野樹里)と歩いている最中に突然分けも分からず泣きじゃくり始めるのです。別れは静かなものでした。ジョゼに対しあれほど強かったはずの自分の想いがあっさりと薄れたことに、儚さや罪悪感を突きつけられた青春の涙でした。その姿を、そばで訝しげに見ている女の様子が、いたたまれないほどリアルです。そして、颯爽と車イスで走るジョゼの鮮やかさに比例して、どうしようもない切なさが爆発する名場面でした。


○『バベル』より リチャード(ブラッド・ピット)
バス内で妻が銃撃され、何の設備もないモロッコの村落で介抱し続けるという、壮絶な窮地を脱したリチャードは、病院から子どもたちに電話をします。無邪気に話す子供の声を聴いているうちに、ずっと張ってきた緊張が一気に緩んだのか、思わず嗚咽を漏らします。子供たちに悟られないように口に手を当てて堪えるリチャードの姿は、彼が背負っていたものの大きさを感じさせ、胸が詰まります。
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○『シックスセンス』より リン(トニ・コレット)
霊が見える少年の母親・リンは、確執を残したまま自分の母親を亡くしていました。息子に、死んだおばあちゃんから「every day(いつもよ)」と伝えるように頼まれたと聞き、涙が溢れます。リンは、母親の墓の前で、「私を愛してくれていた?」といつも声をかけていたのです。長回しの中、少年の話を聞くにつれリンの感情が溢れだす流れが、凄く巧くて驚きます。物語の中にうずくまっていた陰鬱としたシコリを、綺麗に洗い流す浄化の涙なのです。演じたトニ・コレットが、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのは納得です。こうして見ると、『シックスセンス』は秀逸なラストシーンが二つもある、凄い傑作だと思います。
シクスセンス


○『セブン』より ミルズ(ブラッド・ピット)

またまたブラピです。妻を惨殺した犯人に銃口を向け、抑えようもない復讐心と刑事としての理性の狭間で揺れ動きます。彼は、幾度も正気と狂気を繰り返す自身に恐怖しているかのように、苦悶の表情で涙を浮かべるのです。そして、妻の顔が脳裏にちらついた刹那、彼はスっと前を見据え凶行に及びます。
ブラピは『マネーボール』でも味のある涙のシーンがありましたが、ベストオブ男泣きの名手だと断言したいです。前述の妻夫木聡の号泣の幼さに比べると、やはりブラピの涙は俄然男臭いのです。
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○『ニューシネマパラダイス』より トト(ジャック・ペラン)
出た! 本作は泣き映画の王様です。おすぎだったか…ショートケーキに砂糖をまぶして食べるようなもの、と言っていたほど、本作は泣かせるポイントだらけ。終盤のノスタルジックな空気は、少し触れるだけでも涙腺が緩むほど濃いです。そして、終盤にトトが流す笑顔の涙は、トトの少年時代から老年までを描き切った長い人生譚の物語を、見事な大団円へと導きます。それにしてもこのラストシーンは、伏線の回収の巧さとしても、映画史上ピカイチでしょう。


○『ラスト・サムライ』より 勝元(渡辺謙)
この作品をきっかけにハリウッド俳優に昇格した渡辺謙ですが、それも納得。死の間際、眼前に広がる桜の美しさに感極まった勝元は、目に涙をたたえ、「見事だ…」と漏らします。彼は、侍の誇り、日本の魂を心から愛していたのです。それと同時に、アカデミー助演男優賞にノミネートされ、日本人俳優の底力を世界中に知らしめました。
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○『ニキータ』より ニキータ(アンヌ・パリロー)
ニキータはベソっかきです。いつも泣いているイメージです。チワワのようにプルプル震えながら。泣き過ぎる映画は好きではありませんが、演じるアンヌ・パリローの泣き顔は自然体なので受け止められます。思えば、裏切られてばかりの人生だったのかもしれません。そんなニキータを心から想う恋人が、心配して隣室のドア越しに優しい言葉を投げかけるのを聞きながら、彼女は涙をこらえながらライフルで要人に狙いを定めるのです。そう、彼女は泣き虫の殺し屋(これ、当時のキャッチコピー)。「何をしていたの…」と問いかける恋人に、「別に」とすまし顔で答え、恋人が出ていくと、ウソを重ねる自分を責める様に顔をゆがめるのです。
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○『インターステラー』より クーパー(‎マシュー・マコノヒー)
これは強烈でした。恐らく映画鑑賞史上、最強の泣きシーンです。滅びかけた地球から人類を救うため、クーパーは苦渋の決断で悲しむ娘と別れ、人間の移住可能な惑星探査へと旅立ちます。できるだけ早くこのミッションを片付け、とっとと帰還して娘を安心させたいと念じていたであろうクーパーですが…最初に訪れた惑星は、地球とは時間の流れが異なり、1時間滞在しただけで7年もの時が過ぎる場所でした。巨大な津波に襲われ、命からがら宇宙空間の母船に戻った時には、23年もの歳月が流れていたのです。なに…? この絶句するほどの「やっちまった感」は…。溜まりに溜まっていた娘からの通信映像を見ながら、クーパーは泣きます。娘は、もう知らぬ間に、大人へ成長していたのです。必ず帰ると約束したのに、23年もの間、音信不通にしてしまったクーパーの強烈な悔恨の念が、とめどなくこちらに流れてくるのです。それは、受け止めきれないほどの感情でした。この場面は…まいった…。SFならではとはいえ、背筋が凍りつくほどの残酷な運命に青ざめました。
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○『そして父になる』より 野々宮良多(福山雅治)
『容疑者Xの献身』の終盤では、メッキが剥がれまくった大根芝居を見せつけた福山雅治ですが、本作での涙は共感するからこそ、心に響きました。取り違えによって、6歳の息子が実の子ではないと知った福山パパは、周囲の白い眼をよそに本当の両親に引き渡します。その後、その息子がいつも自分の背中を見つめていたのだと知った福山パパは、育ててきた6年間の重さにようやく気付くのです。親も日々成長です。あとから子供への接し方を後悔することはいくらでもあります。福山パパがここで見せる涙は、親であれば、心の中だけでも一度は流したことがあるものではないでしょうか。


○『キャロル』より テレーズ(ルーニー・マーラ)
友人であり、ほのかに恋心が芽生え始めていたキャロルの不遇を知り、帰りの電車の中でテレーズは唐突に目を腫らします。普通だったら、家に招待しといてあんな目に会わせるなんてどうよ! と怒りそうなもんですが、天使顔のルーニーは純粋性をいかんなく発揮。込み上げるものを抑えきれずに溢れだすこの芝居の巧さといったら。予告編でこの場面が流れた時、こりゃ見ようと即決させたほど心をわし掴まれたのです。
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というわけで、陰気な記事になったような気がしないでもないですが、やはり「涙」は映画になくてはならないものなのです。
思い起こすと、あれもあった、これもあったと、名シーンが無数に頭をよぎります…そうだ、野原しんのすけの父ちゃんなんて良かったね(『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』より)。背負ってきた人生の楽しさも哀しさも、重さも何もかもを、靴の臭さと涙でこれでもかと表現するなんて。ブラピに並ぶ男泣きの渋さなのです。
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ということで、きりがないので、本日はここまでで。

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Posted on 2016/04/28 Thu. 13:31 [edit]

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コメント

わかります! 

はじめまして。素晴らしいまとめ、面白く拝見させていただきました。「ブラピの涙は男臭い」確かにその通りですね!
妻夫木くんは『マイ・バック・ページ』のラストの泣きも良かったですね。彼の実力というより監督がうまかったのかもしれませんが。

URL | ナオミント #ch2f7abI | 2016/04/30 20:47 | edit

ナオミント様 

コメントを頂いてありとうございます。

記事にも書いたんですけど、福山雅治にしても、
監督の力が違うと、やっぱり巧く撮るんだなあと思いました。
妻夫木聡は、「涙そうそう」でも、「東京家族」でも、
泣き方が特徴的なだけに、全部一緒感が強くて損しているような気もします。
「マイ・バック・ページ」は見ていないんですけど、良かったんですね。
ただ、日本映画は役者に無駄に号泣させ過ぎな気がします。
ブラピの男臭い泣きは、抑え気味だからこそ切ないのだと思うのです。

URL | タイチ #- | 2016/05/01 01:06 | edit

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